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第7章 英国における公共部門内部監査基準と地方自治体適用注釈

4 LGAN の概要

4-1 LGANの特徴

PSIASとLGANはともに2006年実務規範に代替する内部監査基準および地方自治体特

有の適用注釈として開発された。LGANの適用範囲は、LGANの注釈1.15で規定されてい るとおり、すべての主要な地方自治体およびその他関連団体のうち、2011年会計監査規則、

2005年会計監査規則(ウェールズ)、1973年地方自治法(スコットランド)第95条、お よび、2006年地方自治(会計監査)規則の改正(北アイルランド)の対象となる団体は、

PSIASとLGANに準拠した内部監査についての規定を設けなければならない23。以下にお

いて、LGANの主な特徴と考えられる3点について整理する。

4-1-1 2006年実務規範の引用

LGANにはCIPFAが策定した2006年実務規範が多く引用され、地方自治体の内部監査

人がPSIASおよびLGANを活用できるように配慮がなされている。

LGAN の構成は資料7-1のとおりである。序文のなかで、PSIAS との関係、法定要件、

範囲と適用可能性、重要なガバナンスの要素など、LGANの特徴について解説がなされて

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いる。内部監査の定義以降は、人的基準および実施基準について、PSIASの該当する基準 を示したうえで注釈が付され、巻末における 2 つのチェックリストによって、PSIAS と LGANへの準拠性評価および2006 年実務規範、PSIAS、そして、LGANの対応関係を確 認することができる。

資料7-1 LGANの構成 第1章:序文

英国における公共部門内部監査基準 法定要件

適用注釈の範囲と適用可能性 重要なガバナンスの要素 内部監査の定義

定義についてのコメント 第2章:人的基準

目的、権限および職責 独立性と客観性

熟達した専門的能力および専門職としての正当な注意 品質保証と改善プログラム

第3章:実践基準 内部監査部門の管理 業務の内容

個別業務に対する計画の策定 個別業務の実施

結果の伝達 進捗状況の監視

第4章:公共部門における内部監査基準と地方自治体適用注釈への準拠性評価チェックリスト 第5章:2006 年地方自治体実務規範、公共部門における内部監査基準、および、地方自治体適

用注釈の比較

出典:CIPFA, Local Government Application Note for the United Kingdom Public Sector Internal Audit Standards, April 2013.

4-1-2 PSIASとの関係

LGAN の注釈 1.19 のとおり、LGAN によって、PSIAS についての詳細な解説および

PSIASを適用する際の実務指針が示されている。このようなLGANの解説や実務指針は、

2006年実務規範で規定されている事項がPSIASでは対応されていない場合など、2006年 実務規範を地方自治体に引き続き適用する必要があると考えられる事項に限定される24

なお、2006 年実務規範で規定されている項目のうち、PSIAS では規定がなく、LGAN のみで規定されている項目が多く見られたのは、基準10「報告」についての8項目および

基準11「成果、品質、有効性」についての6項目であった。これらの項目については、地

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方自治体では他の公共部門とは異なる内部監査実務の運用が実施されていることを表して いる。

4-1-3 会計監査規則上の適切な内部監査慣行

LGANの注釈1.16のとおり、イングランドでは、より詳細な要件が2011年会計監査規 則において規定されている。すなわち、一定規模以上の地方自治体は「内部統制に関する 適切な慣行に沿って、会計記録および内部統制システムに関する適切かつ効果的な内部監 査を運用」しなければならない。DCLGが2006(平成18)年3月に発した通達のとおり、

2003年会計監査規則について、内部統制に関する適切な慣行を含むように考慮された関連 指針は2006 年実務規範であった。前述のとおり、記載事項には改正や改訂版が含まれる ものとして解釈されるべきであると規定され、DCLG が明示的に説明しているとおり、

PSIASとLGANは、会計監査規則で規定されているように、特定の大規模団体25に関する

要件を満たす、適切な慣行を構成していると考えられる26

なお、LGANの注釈1.17のとおり、ウェールズでは、規則によって内部監査部門の継続 的な運用を自治体へ課していないが、2005年会計監査規則(ウェールズ)において「地方 自治体は内部監査に関する適切な慣行に沿って、会計記録および内部統制システムについ ての適切かつ効果的な内部監査を継続的に運用」しなければならないと規定されている。

スコットランドおよび北アイルランドの地方自治体では、特に法令で具体的に規定されて いないが、効果的な内部監査にはすぐれた実務慣行が必要であると広く認識されている27

4-2 2006年実務規範との主な相違点

LGANには2006年実務規範が多く引用されているが、LGANと2006年実務規範の主な

相違点は、「内部監査基本規程の作成」と「ガバナンスについての規定」の2点である。

これらの2点について、地方自治体では従来、他の公共部門と異なる運用を行ってきた。

そのため、PSIASの適用にあたりLGANによって適用注釈を付すことで、以下のとおり対 応することとなった。

4-2-1 内部監査基本規程の作成

LGANの注釈 2.2のとおり、「内部監査基本規程」という用語がPSIAS の基準1000に おいて使用されているが、地方自治体ではこれまで一般的に採用されてこなかった。伝統

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的に地方自治体の内部監査部門は、PSIASの基準1000で説明されている事項を規定した

「内部監査の権限」を整備してきた28。LGANの注釈2.3のとおり、2006年実務規範と内 部監査規程が要請する内部監査の権限を比較した結果、違いは以下の2点のみであった29

① 内部監査の権限は、内部監査人が行う統制環境の有効性検証における、内部監査人 の貢献を特定するものでなければならず、内部監査の権限によって内部監査責任者は 年次監査意見の表明が課され、また表明することが可能となった。

② PSIASにおいて、PSIASの基準1000に対する公共部門の補足指針で規定された特

定の論点を除き、ほとんど内部監査権限と同様の内容が要請されている。

つまり、2006年実務規範で規定されていた内部監査の権限とPSIASで要請されている 内部監査基本規程は実務的に大きな相違はなく、地方自治体には内部監査基本規程の規定 にあわせて内部監査の権限を書類として作成することが求められている30

4-2-2 ガバナンスについての規定

ほかの公共部門や民間企業とは異なり、住民やその代表者である議員を中心とした多数 の利害関係者がいる地方自治体においては、そのガバナンス構造にも議員が深く関与する など独自の性格をもっている。つまり、英国地方自治体において、議員は、議会の構成員 として執行機関である内閣を監視するだけではなく、内閣の構成員も議員から任命される。

地方自治体向けの内部監査基準であった 2006 年実務規範では、基準 4「監視委員会」

を中心に地方自治体のガバナンスについて規定されていた。しかし、公共部門へ統一的に 適用される PSIAS においては、ガバナンスについての補足指針及び解釈指針が付され、

LGANにおいては第1章の「重要なガバナンスの要素」や第2章の「地方自治体における 経営会議」を中心に、地方自治体特有のガバナンス構造を考慮し、LGAN全体にPSIAS適 用へ向けた注釈が付されている。

LGANの注釈1.21のとおり、PSIASにおける「経営会議(board)」と「上級管理者(senior

management)」という用語は、個々の組織におけるガバナンスの取り決めとの関連で理解

されなければならない31。公共部門のなかでも地方自治体、中央政府、国民医療サービス など部門は多岐にわたるうえ、たとえば、地方自治体のなかでも自治体ごとにガバナンス の取り決めが異なるためである。各組織におけるガバナンスの取り決めを踏まえた用語の 理解は、内閣、本会議、監視委員会などが経営会議の役割を果たす可能性があり、各組織 が異なるマネジメント構造をもつ場合がある地方自治体にとって特に重要である32

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また、LGANの注釈1.22のとおり、地方自治体においては組織的選択に幅があるため、

LGANにおいて、各地方自治体がどのように経営会議や上級管理者を定義すべきか特定す ることは不可能である33。多数の事例において監視委員会が経営会議の役割を果たすこと が想定される。この場合、各地方自治体の「地方自治体規約(Constitution)」で本来、本 会議が担う権限を監視委員会へ委譲し、監視委員会の権限(Terms of Reference)に規定 することで、監視委員会が経営会議の役割を果たすことになる。このような権限を委譲せ ずに本会議が経営会議の役割を果たすことも可能である。したがって、PSIASにおける経 営会議や上級管理者といった用語に相当するものを検討し、組織の状況においていずれの 委員会やその他の組織がその役割に合っているのか決定することは各組織が担うべき義務 である34

5 わが国地方自治体における内部監査基準の課題とPSIASによる示唆