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第2章 英国地方自治体における内部監査の保証機能 ―内部監査報告による考察―

3 内部監査の保証機能

英国地方自治体における内部監査の制度的フレームワークのなかで、内部監査業務の結 果であり、内部監査部門長が実施する監査報告について考察することで、英国地方自治体 における内部監査の保証機能を明らかにする。

3-1 内部監査報告の種類と保証内容

英国地方自治体においては、前述のとおり、内部監査部門が実施した監査に関する報告 の提出先、報告時期、報告内容などは法令ではなく、内部監査基準であるPSIASによって 規定されている。内部監査報告についての具体的な取り決め事項は、各地方自治体の内部 監査基本規程または内部監査の権限において規定されている。内部監査部門の位置づけ、

上級管理者の範囲など組織マネジメント上の相違によって、内部監査報告の実務は自治体 間で若干異なっているが、図表2-2に示したサウスエンド・オン・シー(Southend-on-Sea

Borough Council)21における内部監査報告は、概ね英国地方自治体における一般的な内部

監査報告の例であると考えられる22

図表2-2 サウスエンド・オン・シーの内部監査報告

提出先 報告時期 報告内容 職務上/管理

上の報告 上級管理者

(Corporate Management Team)および監 視委員会

年次(1月およ び3月)

(業績指標を含む)内部監査基本規 程、監査戦略および監査計画

職務上の報告 監査客体(監査対

象業務の所管部 長および課長)

※事務総長およ び最高財務責任 者へも回付

個別監査業務 の終了後

内部監査報告書には以下を記載す る。

・ 監査の対象および範囲

・ 監査結果の概要

・ 意見および改善計画

- 実施または改善を必要とする 措置または統制

― 措置されていないリスク

― 実施されるべき措置

― 主担当者

― 措置すべき時期 上級管理者およ

び監視委員会 四半期

監査の進捗概要報告書(Summary of Audit Progress Report)には以下を 記載する。

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・ 業務に関する業績指標の進捗

・ 監査計画の進捗

・ 個別レビューによる監査結果の 措置概要

・ 以前になされた勧告が適切およ び適時に実施された否かの評価

上級管理者およ

び監視委員会 年次(6月)

内部監査部門長が作成した年次内部 監査報告書には以下を記載する。

・ 内部統制システムへの意見

・ 意見の基礎となる監査証拠の概 要

・ 業績目標および計画に対する最 終的な業績

・ 関連する職業的専門家の基準に 準拠しているか否かの評価

上級管理者およ び監視委員会

月次、四半期、

半期または年 次

(※業務目標 によって異な る)

地方自治体の内部管理業務計画

(Corporate Services Plan)または 財政資源サービス計画(Finance and Resources Service Plan)に記載され ている目標または指標に対する業績 の進捗

管理上の報告

年次

年次評価書で設定された目標および コンピテンシーに対する内部監査部 門長の業績

出典:Southend-on-Sea Borough CouncilのHIAであるリンダ・エバラード氏からの聞き取りを基に筆者作 成。

図表2-2からは、英国地方自治体における内部監査報告の特徴として、以下の3点をあげ ることができる。第一に、監査報告が「職務上の報告(Functional Reporting)」と「管理 上の報告(Administratively Reporting)」の2つに大別されることである。職務上の報告と は内部監査部門固有の業務であり、内部監査の実施に対して要求される報告である。PSIAS では、基準1110「組織上の独立性」において、内部監査基本規程の承認、リスク・ベース の内部監査部門の計画の承認、内部監査部門の予算および監査資源の計画の承認など監視 委員会への職務上の報告例が列挙されている23が、これらはすべて図表2-7に含まれている。

一方、管理上の報告とは、内部監査部門固有の業務ではなく、ほかの部門においても共通 して実施される内部管理上の報告である。図表2-7のとおり、直属の上司に対する内部管理 業務としてPDCAサイクルの進捗状況や人事評価に関する業績の報告などが含まれる。

第二に、職務上の報告は、①内部監査基本規程、監査戦略および監査計画、②監査の進

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捗、③監査意見の表明、の3つから構成されることである。①に基づいて内部監査を実施 し、②によってその進捗管理を行うことで、内部監査業務のPDCAサイクルを企図してい ると考えられる。①および②に基づく監査の結果に対する保証を提供するのが③であるが、

③は個別監査業務(Engagement)についての意見と個別監査業務の監査結果を踏まえて 表明される総合的意見(Overall Opinion)とに分かれている。総合的意見は、単なる個別 監査業務についての積み重ねではなく、「特定期間における多くの個別の内部監査業務結果 やほかの活動の結果に基づく内部監査部門長の専門職としての判断である24」とされてい る。

第三は、職務上の報告の提出先が、地方自治体内部の上級管理者または監査客体と、地 方自治体外部にある監視委員会の2つに分かれていることである。この点について、PSIAS では、基準1100「独立性と客観性」の解釈指針において、「内部監査部門の責任を有効に 果たすのに必要なレベルの独立性を確保するために、内部監査部門長は、上級管理者およ び監視委員会に対する、直接かつ無制限な報告の機会を有する。これは内部監査部門長が 両者に対する2つの報告経路を持つことにより実現できる25」と説明されている。内部監 査部門が地方自治体から独立した監視委員会と結びつくことで、「内部監査の基本的役割の なかに最高経営者層の行動そのものの評価も含まれ、内部監査を『経営者への奉仕』とす ることは妥当ではなくなる26」のである。つまり、内部監査は、マネジメントに加えて、

監視委員会へ監査報告を行うことで、組織ガバナンスへ貢献する機能を備えることになる のである27

3-2 英国地方自治体における年次内部監査報告書の実証分析

英国地方自治体では、内部監査部門長が、内部監査基準に基づき監査を実施し、意見の 基礎となる監査証拠によって、地方自治体における内部統制システムの妥当性および有効 性を評価し、意見を表明している。内部監査部門長が、当該年度における内部統制システ ムの妥当性および有効性を保証する際に、総合的意見を表明するのが年次内部監査報告書 である。

3-2-1 年次内部監査報告書の記載事項

地方自治体を含む英国の公共部門で適用されているPSIASやLGANでは、具体的な年次 内部監査報告書の様式は示されていないが、記載すべき内容として以下が規定されている。

43 ① 内部監査部門の目的、権限、責任

② 重要なリスク・エクスポージャー(リスクに曝されている度合い)とコントロール 上の課題

③ 総合的意見

④ 内部監査部門の計画に関連する業務遂行 ⑤ 不正のリスク、ガバナンス上の課題

⑥ 品質のアシュアランスと改善のプログラムの結果

⑦ 最高経営者または取締役会が必要とするかあるいは要求するその他の事項

3-2-2 実証分析の概要

この節における実証分析の目的は、①地方自治体の規模と年次内部監査報告書の分量の 相関関係を明らかにし、②相関関係があれば特徴のある年次内部監査報告書を、③相関関 係がなければ最も標準的と考えられる年次内部監査報告書を抽出し、考察することである。

分析の対象は、イングランドの一層制自治体(Unitary:ユニタリー)が2012/13年度に 公表した年次内部監査報告書とした。イングランドは、ウェールズ、スコットランド、お よび、北アイルランドと比較して人口および自治体数が多いため、分析対象として適当と 判断した。最も一般的な地方自治体を抽出するという観点から、ロンドンなどの大都市圏 ではなく、非都市圏のユニタリーを分析の対象とした28。年次内部監査報告書の収集にあ たっては、各ユニタリーにおける議会のホームページから、監視委員会などの議事録や提 出資料を検索した。英国地方自治体の会計年度は、わが国と同様に年度末が3月であるた め、主に2013年6月に開催された監視委員会を参照し、内部監査部門長の提出資料として 公表された2012/13年度の年次内部監査報告書について分析を行った。

なお、調査対象の自治体では、①監視委員会報告用の概要版、および、②内部監査部門 長が作成した年次内部監査報告書をあわせて内部監査報告書として公表している場合が多 かった。本節では、②を内部監査報告書として捉え、各地方自治体の内部監査報告書を同 じ基準で分析するため、合計頁数からは監視委員会報告用の概要と年次内部監査報告書の 表紙および目次を除いている。

3-2-3 実証分析の結果

図表2-3は、2012/13年度のイングランドにおける56ユニタリーの人口および年次内部監