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第7章 英国における公共部門内部監査基準と地方自治体適用注釈

2 英国地方自治体における内部監査基準の変遷

1972年地方自治法のもとに制定された1974年会計監査規則によって、地方自治体にお いて、最高財務責任者に承認された内部監査を継続的に実施する義務が課された。しかし、

それ以前から、多くの地方自治体は、施策を独立的に評価するという内部監査の機能に着 目し、自主的に内部監査を導入していた9

CIPFAが1979(昭和54)年に公表した本基準は、①役割、②目的基準、③その他の基

準から構成されており、英国公共部門における最初の内部監査基準と考えられる。13の基 準から構成されているが、各基準の解説は非常に簡潔であり、用語集のように整備されて いる。

2-1-1 『内部監査人のためのガイダンス10

APC(Auditing Practices Committee:監査実務委員会)は、1977(昭和52)年にCCAB

(Consultative Committee of Accountancy Bodies:会計団体合同諮問委員会)11の委員会 として設立された。APC が 1990(平成 2)年に公表した本ガイダンスは、民間や公共と いった部門や適用される組織の規模にかかわらず、すべての内部監査人に適用された。

策定された基準は9つのみであるが、幅広い分野において活躍する内部監査人へ適用さ れるため、CIPFAが策定した『公共部門における内部監査実務基準』に比べて各基準によ

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り詳細な解説が付されている。本ガイダンスは『公共部門における内部監査実務基準』に 代わって公共部門における内部監査にも適用された。

2-1-2 『英国地方自治体における内部監査の実務規範12

ブレア労働党政権が導入したベスト・バリュー政策、2000年地方自治法の改正などに対 応するため、地方自治体の現状に適合した内部監査基準が必要となった。2000(平成12)

年にCIPFAが公表した本実務規範はAPCの『内部監査人のためのガイダンス』に代わっ

て地方自治体における内部監査へ適用された。

現在、地方自治体の内部監査を規定している会計監査規則には、適切な内部監査慣行と して本実務規範があげられている13。英国地方自治体における内部監査の制度的フレーム ワークは、11の基準から構成される本実務規範14に基づいて構築されている。

2-2 英国公共部門における内部監査基準の概要と課題

英国の公共部門における主な内部監査基準の変遷と特徴は図表7-1のとおりである。

図表7-1 英国公共部門における内部監査基準の変遷と概要

基準名

公共部門における内部監査 実務基準

(Statements on Internal Audit Practice – Public Sector)

内部監査人のためのガイダ ンス

(Guidance for Internal Auditors)

英国地方自治体における内 部監査実務規範

(Code of Practice for Internal Audit in Local Government in the United Kingdom)

公表年 1979 1990 2000

策定団体 CIPFA APC CIPFA

基準数 13 9 11

概要

・英国の公共部門における 初の内部監査基準

・各基準の解説は非常に簡 潔であり、用語一覧のよう に整備

・公共や民間といった部門、

組織の規模などにかかわら ず、すべての内部監査人に 適用

・幅広い分野の内部監査人 へ適用されるため、各基準 を詳細に解説

・地方自治体の内部監査を 規定している会計監査規則 のなかで、適切な内部監査 慣行として規定

出典:筆者作成。

これらの内部監査基準には、共通する2つの特徴がある。

第一の特徴は、監査基準の策定主体が職業専門団体という点である。国は、各公共部門

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に対して法令によって内部監査の実施を義務づけている。しかし、具体的な内部監査の実 施については、職業専門団体が策定した内部監査基準に基づき、それを具体化した内部監 査基本規程など各監査主体が作成した規程にしたがって行われている。職業専門団体が内 部監査基準の策定に関与することによって、たとえば特定のリスクへの対応、会計基準の 改訂などへの対応に必要な監査基準を追加、変更するといった、職業的専門家としての知 見を活用した弾力的な対応が可能になると考えられる。

第二の特徴は、内部監査基準の策定者のなかに、公共部門の会計、監査、財務管理など の職業専門団体であるCIPFAが関与している点である。民間部門とは異なる公共部門の特 徴を理解しているCIPFAが関与することで、公共部門における監査の行為基準として有効 性の高い内部監査基準の策定が可能となっている。

APCの策定した『内部監査人のためのガイダンス』が適用されたあと、英国公共部門に おける内部監査基準は、図表7-2のとおり、部門ごとに策定主体が異なる状態が続いてい た。

図表7-2 PSIAS施行以前の英国公共部門における主な内部監査基準

部門 監査基準 策定主体

地方自治体

2006年実務規範

(Code of Practice for Internal Audit in Local Government in the United Kingdom 2006)

CIPFA

中央政府 政府内部監査基準

(Government Internal Audit Standards: GIAS)

英国財務省

(HM Treasury)

NHS

(国民医療サービス)

NHS内部監査基準

(NHS Internal Audit Standards)

英国厚生省

(Department of Health)

出典:筆者作成。

公共部門のなかで、策定主体の異なる内部監査基準が各部門へ適用されることによって、

以下のような問題が生じた15

・ 公共部門における各内部監査基準の一貫性の欠如および一貫性のない改正手続

・ 相違はあるが関連した部門であるにもかかわらず、異なるガイダンスを使用

・ 公共部門の要望を集約し、ベスト・プラクティス開発に影響を与える仕組みの欠如 これらの課題を解決するために、CIPFAが策定した『公共部門における内部監査実務基 準』のように、公共部門へ統一的に適用される内部監査基準を策定する必要性が高まって いた。

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