第3章 英国地方自治体の組織ガバナンスにおける内部監査の役割 ―監視委員会の現状
3 組織ガバナンスにおける内部監査の役割
監視委員会との関係において、第2節では内部監査に関する3つの目的および4つの機 能について明らかにした。これらの役割を担うために、内部監査部門は監視委員会とどの ような関係を構築すべきでろうか。以下においては、CIPFAが2006年に公表した『地方 自治体における監視委員会実務ガイド24』(以下、『監視委員会実務ガイド』という)の規
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定に基づき考察を進める。組織ガバナンスにおける内部監査の役割を考察するため、英国 地方自治体における実務の観点から、監視委員会と内部監査部門の関係に焦点を当てる。
3-1 内部監査部門と監視委員会の関係
『監視委員会実務ガイド』では、①戦略と計画、②報告体制、③内部監査人と監視委員 会の非公開による議論、④内部監査業務の提供、および、⑤内部監査基準への準拠という 5つの観点から、内部監査部門と監視委員会の関係が以下のとおり考察されている。
①戦略と計画25
内部監査人は、業務を計画する際にリスク・アプローチによる組織的な監査手法 を採用する。その計画にあわせて、内部監査は、地方自治体の業務、監査資源、監 査従事者、監査業務、および、利害関係者との関係を含め、地方自治体全体のリス ク・マネジメント、統制、および、ガバナンスの整備状況を考慮すべきである。監 査計画は、いかなるパートナーシップとの関係においても、地方自治体を守る統制 を含め、地方自治体に関するすべての活動を対象にすべきである。
リスク・マネジメント、統制、および、ガバナンスに関するすべてのシステムを 考慮することは、すべてのシステムを監査すべきということではない。これがリス ク・アプローチの本質である。内部監査人がリスク・マネジメント体制を信頼し、
リスク・マネジメント体制によって効果的にリスクが軽減されるのであれば、その リスクは追加的な監査が必要と評価されない。しかし、経営管理者によってリスク が十分に優先づけられていない、もしくは評価されていないと確信するに足りる理 由を内部監査人がもつのであれば、そのようなリスク・マネジメント体制は監査計 画に含まれると考えられる。
②報告体制26
内部監査部門長から監視委員会へ明確な報告経路が存在すべきである。地方自治 体は、通常、監視委員会と相談することによって日々の内部報告体制を決定しなけ ればならない。上級管理者が組織上、内部監査部門を所管する者として指名される べきである。多くの場合、この職責は最高財務責任者が担うが、内部監査は事務総
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長または同等の者および監視委員会委員長へ直接面談する権利をもたなければなら ない。
内部監査報告書を監視委員会へ提出する前に、被監査部局および上級経営管理者 にレビューを求めるべきである。報告書の内容によっては、監視委員会は報告対象 の上級管理者に該当事項について会議への出席を求めてもよい。
監視委員会は、被監査部局および上級管理者と合意された措置が事前に決定され た期間内に実行されるようにしなければならない。監視委員会はこの期間内に適切 な措置がなされることに納得すべきである。この領域における内部監査の役割は、
このような措置の有効性をレビューすることである。
現在進行中の監査計画に関する内部監査報告の受領と同様に、監視委員会も地方 自治体の内部統制環境の妥当性および有効性についての意見を表明する内部監査部 門長から、年次報告を受け取るべきである。
③内部監査人と監視委員会の非公開による議論27
民間部門およびほかの公共部門においては、内閣の上級経営管理者が同席せずに、
監視委員会が内部監査部門と定期的に非公開の議論をもつことがグッド・プラクテ ィスとみなされている。非公開の議論はCIPFAの『監視委員会の実務指針』におい て推奨されている。非公開の議論によって、監視委員会委員は業務上の関係を保ち 続けなければならない内閣の上級管理者とは別に、内部監査人の見解を聞くことが できる。
④内部監査業務の提供28
第三者によって内部監査業務が提供されたり、単独または別の地方自治体との共 同監査として契約に基づいた内部監査業務を受けたりしている地方自治体もある。
このような契約は、監査法人、または、内部監査業務を地理的に近接した地方自治 体の集まりに提供するため地域を基盤として設立されたコンソーシアムと締結され るかもしれない。同じ監査人による外部監査・内部監査業務の同時提供は許されて いない。
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⑤内部監査基準への準拠29
監視委員会は、内部監査業務がCIPFAの『英国地方自治体における内部監査の実 務規範』にどの程度準拠しているかを、以下のような方法で、評価すべきである30。
・ 内部監査業務の評価にあたり外部監査によって実施された評価結果を考慮す る。
・ 上級管理者の意見を求める。
・ 内部監査の有効性レビューについての成果物を検討する。その検討は、改正 された2003年会計監査規則に準拠した内部統制報告書31の裏づけとして毎年実 施されるべきである。
また、監視委員会も独自の判断をするべきである。この判断には、内部監査が 以下を備えているか否かの検討を含めてもよい。
・ 効果的な品質保証プログラム ・ 十分な監査資源
・ 適切に熟練し、経験を備えた有資格者の監査従事者 ・ 適切な独立性
内部監査部門と監視委員会の関係で重要なことは、必ずしも監査の職業的専門家ではな い監視委員会に対して、内閣のガバナンス、リスク・マネジメント、および、内部統制に ついての適切な情報を提供することである。そのために、内部監査部門は、リスク・アプ ローチによる監査計画によって実施した監査の結果を監査報告として監視委員会へ提出す ることが求められる。年に4回程度しか開催されない監視委員会による審議を補強するた め、監視委員会には内部監査人と非公開の議論が推奨されている。これらの情報提供を経 た結果、監視委員会は通常は本会議を経て、内閣に対してそのガバナンス、リスク・マネ ジメント、および、内部統制の有効性を評価し、保証を提供するのである。その際、監視 委員会の判断基準となるのが、現在はPSIAS(Public Sector Internal Audit Standards:公 共部門内部監査基準)である。PSIASとあわせて、監視委員会は独自の判断基準を設定し、
内部監査部門の評価をすることが推奨されている。その判断基準の一つとして想定される のが、以下に示される業績指標による評価である。
74 3-2 業績指標
内部監査部門の評価は、監視委員会が担うべき重要な役割である。監視委員会は、内部 監査業務の有効性を監視するために、内部監査部門や地方自治体の経営管理者と協力し、
内部監査部門の業務を測定するために適切な業績指標を策定・維持することが求められて いる。
内部監査について想定される業績指標が『監視委員会実務ガイド』のなかで、資料3-1 のとおり示されている。
資料3-1 内部監査部門の業績指標
① 金銭的価値
・ サービスの総費用 ・ 1日あたりの平均費用 ・ 予算・決算比率
・ 代替的な業務と比較した1日もしくは1年あたりの費用 ・ 予算と比較した1日もしくは1年あたりの費用
・ 類似団体と比較した費用
② 監査従事者の品質 ・ 離職率
・ 内部監査人への研修・継続的な専門能力開発の提供
③ 技術的品質
・ 関連する基準への準拠
・ 地方自治体における内部監査基準への準拠 ・ 内部監査と外部監査の関係
・ 監査人あたりの技術的研修
・ 外部監査による内部監査業務の信頼性
④ 監査計画
・ 年次計画に対する進捗 ・ 長期計画に対する進捗
・ すべての監査業務のうち、時間どおりかつ計画どおりに終了した監査業務の割合
⑤ 監査報告
・ 報告の適時性・正確性
・ 報告書の体裁が読者にとってわかりやすい ・ 結論が明確で曖昧ではなく、十分な裏づけがある
・ 情報技術など、複雑なシステムについての報告における専門家の技能活用
⑥ 監査範囲
・ 対象となるリスク領域の範囲
⑦ 時間
・ 請求できる時間の計画・実行比率 ・ 請求できない時間の計画・実行比率
⑧ 付加価値
・ 監査に価値があったとみなす顧客の割合 ・ 勧告に対する措置比率
・ 統制環境の改善
⑨ 勧告
・ 勧告が監査結果から導かれ、統制の脆弱性を改善し、VFM(Value for Money:最少 の経費による最大の効果)を向上するための実証策に関係している
・ 上級経営管理者によって承認された勧告の割合 ・ 承認された日程内で実施された勧告の割合
出典:CIPFA, A Toolkit for Local Authority Audit Committees, 2006, p. 43.を一部修正。