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第 4 章 分析結果

4.4 L2 能力の高い教職経験者グループ…

4.4.1 L2 能力の高い教職経験者グループのライティング

ここでは、L2能力の高い教職経験者グループのL1、L2ライティングの傾向をまとめる。

表27は、L2能力の高い教職経験者グループを構成するH、I、JのL2能力テストの結果 であり、表28はプロダクト評価の結果である。

表27 L2能力テスト結果(L2能力の高い教職経験者グループ)

H I J

CELT文法部門 100 96 72 CELT語彙部門 100 76 76

合計 200 172 148

表28 プロダクト評価結果(L2能力の高い教職経験者グループ)

得点 H I J

L1 TotaL (200) 164 130 154

L2 Total (200) 160 152 165

Content (60) 49 44 50

Organization (40) 32 32 33

Vocabulary (40) 34 29 34

Language use (50) 37 38 39

Mechanics (10) 8 9 9

表27より、L2能力の高い教職経験者グループは、文法部門では約7割から10割、語彙 部門では7割以上の正答率であった。Hは合計200点の満点であるが、Jは148点と、個人 差がある。L2 能力テストの合計平均は 173.33 点で、L2 能力の高い学生グループの平均を 43点上回る(表4参照)。表27と表28より、最もL2能力の高いHが、最も質の高いL1 プロダクトを産出したが、グループ内で最もL2能力の低いJのL2プロダクトが、最も高 い評価を受けた。このグループでは、L2能力の差がL2プロダクトの質の差とは一致してい ない。後に見るように、時間をかけて再帰的プロセスを辿るJのライティングが、質の高い L2プロダクトの産出につながった可能性がある。

3名のL1プロダクトの評価平均は149.33点で、2つの学生グループの平均を25点以上超

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えているが、L2 プロダクトの評価平均は 159.0 点であり、L2 能力の高い学生グループ

(M=170.33)には及ばなかった(表5参照)。

表29 流暢さ(L2能力の高い教職経験者グループ)

H I J

L1字数 994 415 872

L1字数/分 34.16 14.75 19.81

L2語数 145 103 282

L2語数/分 9.49 9.44 5.87

表29は、L2能力の高い教職経験者グループに属する3名の書く流暢さを表している。こ のグループでは流暢さの個人差が大きい。L1 ライティングにおいて、Hは速く長く書いた が、IとJは速くは書かず、Iは長くも書かなかった。L2ライティングでは、L2能力が非常 に高いHとIには速さの観点からの流暢さが見られ、1分間当たり9語以上を産出したが、

量的には L2 プロダクトの語数が少ない。逆に、J は速さの点で流暢ではなかったが、282 語の長いL2プロダクトを産出した。

表30 書き出し前の計画時間とライティング総時間に占める割合

(L2能力の高い教職経験者グループ)

H I J

L1:

計画時間(割合%) 5’00”(14.7) 4’45”(14.4) 1’20”(2.9) ライティング総時間 34’6” 32’53” 45’21”

L2:

計画時間(割合%) 4’28” (22.6) 1’20”(10.9) 3’6”(6.1) ライティング総時間 19’45” 12’15” 51’7”

表30は、L2能力の高い教職経験者グループ3名についての、書き出し前の計画時間とラ イティング総時間に占める割合を示したものである。HとI は、L1ライティングの総時間 は比較的長いが、L2ライティングの総時間が短かったことが特徴的であった。これに対し てJは、L1でもL2でも全参加者中最も長い時間をかけて書いた。Jの計画時間の割合は、

L1、L2ライティング共に小さいが、L1及びL2プロダクトの質は高い。書き出し前の計画

時間は短かったが、書き出した後も、図式化したメモを作成していた。書き出し前に長い 時間をかけて計画することが、そのままプロダクトの質に結びついているとは限らないよ

97 うである。

書き出し前の計画で、Hは、L1、L2ライティング共に、メモを作成し、丹念に計画した。

ただし、L2ライティングでは「構成計画」や「結論計画」が見られず、冒頭の主張と最後 の結論がやや一貫性に欠ける。L2ライティングのメモにはほとんどL2が使用された。また、

L1、L2ライティング共に、プロセスの途中でメモを2、3回確認した。

Iは、L1ライティングでは、メモを使用し、賛成の立場、「成功」の定義づけ、主張の理 由と結論、構成の計画を立て、途中でメモの確認も行ったが、L2ライティングでは、メモ を使用せず、賛成の立場のみを決めて書き出した。L1で行われた「構成計画」はL2では見 られなかった。

Jは、L1ライティングでは、いつもは計画しないが、今回はメモを使用して、「テーマの 計画」を立て、L2ライティングでは、いつも行うようにメモを作成し、L1より詳細な計画 を立てた。L1ではほとんどメモの確認を行わなかったが、L2ライティングでは、何度もメ モを確認し、メモに沿って書き進めた。プロセスの途中でもメモを使用した「アイディア 創出」が行われた。L2ライティングのメモには、中盤で行った「アイディア創出」におけ るL2使用を除いて、主にL1が使用された。

以上のように、L2能力の高い教職経験者グループの書き出し前の「計画」は、メモ作成 の有無や方略のバリエーションなどにおいて、言語間で一致していない。JのL2ライティン グの書き出し前の詳細な「計画」は、プロセスの途中で何度も検索され、ライティング・

プロセスを導いた。ライティングの途中でもメモを使用して「アイディア創出」するなど、

直線的ではなく、再帰的なライティング・プロセスを辿った。このような再帰的プロセス が、質の高いL2プロダクトの産出につながった可能性がある。

次に、ライティング方略使用について見ていく。表31は、ライティング方略の使用回数 の平均とライティング・プロセス全体に占める割合を示したものである。プロトコルのセ グメント数の平均は、L1ライティングの方が長い時間をかけて書いていることもあり、L1 で平均235.3、L2ライティングで136.7であった。

表31 ライティング方略使用平均回数と割合

(L2能力の高い教職経験者グループ)

方略 L1ライティングn(%) L2ライティングn(%)

課題の確認 7.7(3.3) 6.3(4.7)

計画全体 11.7(5.0) 8.6(6.3)

包括的計画 0 (0) 0 (0)

テーマの計画 2.7(1.1) 2.3(1.7)

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局所的計画 5.0(2.1) 5.3(3.9)

構成計画 2.3(1.0) 0.3(0.2)

結論計画 1.7(0.7) 0.7(0.5)

アイディア創出 10.3(4.4) 4.3(3.2)

メタコメント 18.0(7.6) 9.0(6.6)

ポーズ 37.3(15.9) 13.3(9.8)

文章化 50.0(21.2) 32.0(23.5)

読み返し 21.0(8.9) 13.7(10.0)

評価全体 24.7(10.5) 18.6(13.7)

L1/L2能力評価 0 (0) 0 (0)

局所的評価 23.7(10.1) 17.3(12.7)

包括的評価 1.0(0.4) 1.3(1.0)

修正 18.0(7.6) 19.0(14.0)

自問 11.3(4.8) 4.0(2.9)

質問 0.7(0.3) 0.3(0.2)

リハーサル 20.0(8.5) 5.3(3.9)

身体活動 1.7(0.7) 2.0(1.5)

その他 3.0(1.3) 0 (0)

L1、L2ライティング方略の使用は概して類似している。ライティング方略のバリエーシ

ョンは、L1もL2も変わらない。あまり差は無いが、「テーマの計画」、「局所的計画」の割 合がL2で若干多く、逆に、「構成計画」や「結論計画」はL1で若干多かった。計画全体の 方略使用の割合は、L1ライティングで5.0%、L2ライティングで6.3%と、L2ライティング の方が若干多い。

「評価」に関しては、「包括的評価」も「局所的評価」も、「局所的評価」の後に行わ れることの多い「修正」についても、L2ライティングでの使用割合の方が大きかった。

L1ライティングの方が多かった方略使用は、他に、「ポーズ」、「リハーサル」、「自問」な どがあり、より慎重にライティングが行われたと考えられる。このグループでは、L1 にお いてライティングの平均総時間も長かった。ライティング総時間が長いとプロダクトの質 が高くなる傾向は、先に述べたとおりである。