第 4 章 冷却システムの構築 34
4.3 GM 冷凍機予冷希釈冷凍機
前述のように希釈冷凍機は,3He−4He混合液の特性を利用した冷凍機であり,その運転の ためには4 K程度の温度まで予冷する必要がある.GM冷凍機とよばれる機械式冷凍機を予 冷に用いた希釈冷凍機は,液体4Heを消費せず長時間容易に極低温を保持できる.
4.3.1 GM 冷凍機の原理
GM(Gifford−McMahon)サイクルは 1950 年代後半に開発された冷却サイクルであり,
GMサイクルを利用したGM冷凍機は,4Heガスの断熱膨張と圧縮により4 K程度の温度ま で冷却が可能である.図4.3および図4.4にそれぞれ模式的に表した GMサイクルおよびシ リンダー低温側の圧力と体積の関係を示す.GM冷凍機はシリンダーとシリンダー内を機械 的に往復運動するディスプレーサー,4Heガスの膨張圧縮を制御する圧縮機,蓄熱材から構成 される.シリンダー内のディスプレーサー上下の空間は蓄熱材を通して接続されている.GM 冷凍機は図4.3の(a)→(b)→(c)→(d)→(a)で示すサイクルで動作し,4 Kの温度を生成する.
(a) 圧縮動作
ディスプレーサーは最下部に位置し,圧縮機のバルブLを閉じ,バルブHを開く.このとき,
高圧4Heガスがシリンダー室温(上)側および低温(下)側の空間に充填される.
(b) 吸気動作
圧縮機のバルブLを閉じ,バルブHを開いた状態のまま,ディスプレーサーを最上部まで引 き上げる.このとき,室温側の4Heガスは蓄熱材で冷却されて低温側へ移動する.冷却に伴い
4Heガス圧力が低下すると同時に,圧縮機から4Heガスが供給されるため,圧力変化はない.
(c) 膨張動作
バルブHを閉じ,バルブLを開く.このとき,高圧4Heガスは圧縮機により排出され,圧力 が低下するとともにサイモン膨張により4He ガスの温度が低下し,シリンダーの低温側に低 温が生成される.
(d) 排気動作
圧縮機のバルブH を閉じ,バルブLを開いた状態のまま,ディスプレーサーを最下部まで押 し下げる.このとき,低温側の4Heガスは蓄熱材を冷却して室温部へ移動するため,次のサイ クルの高圧4Heガスを冷却できる状態となる.
(a) (b)
(d) (c)
圧縮機
バルブL 開
蓄熱材 シリンダー
ディスプレーサー 室温側
低温側 閉
バルブH
図4.3 GMサイクルの模式図
(a)
(b)
(d)
(c)
図4.4 GMサイクルにおけるシリンダー低温側の圧力と体積の関係
4.3.2 GM 冷凍機予冷
3He −
4He 希釈冷凍機
本研究で利用した,GM冷凍機を予冷に用いた希釈冷凍機の模式図,ガスハンドリングシス テムおよび写真をそれぞれ図4.5,図4.6および図4.7に示す.
GM冷凍機は 2ステージで構成されており,第1ステージが約30 K,第2 ステージが約
5 Kの温度を保持する.断熱真空容器をターボ分子ポンプを用いて10−3 Pa程度まで真空引 きした後,循環ラインに3He−4He混合ガスを導入し,GM冷凍機を起動する.極低温ステー ジを4 K程度の温度まで冷却し,希釈冷凍機を起動する.室温部に設置したドライ真空ポンプ
(NeoDry30E,Kashiyama)およびメタルベローズポンプ(MB-151,IBS)より構成されるオ イルフリーポンプシステムを用いて,分溜器の3He ガスを排気し,圧縮して希釈冷凍機内へ 戻すことで,ガスを循環させる.希釈冷凍機内に入った室温程度の循環ガスは,GM冷凍機の 2つのステージと熱交換し,十分冷却され,液化される.一般的な希釈冷凍機では,1Kポッ ト内の凝縮器で循環ガスを液化するが,GM冷凍機予冷による希釈冷凍機では,液体4He を 消費せず,JT(Joule−Thomson)インピーダンスにより液化する.JTインピーダンスでは,
循環ガスに140 kPa程度の圧力をかけ,JT膨張により循環ガスを液化する.液化された循環 液は2段直列に接続された混合器(MC1およびMC2),分溜器に入りポンプシステムに排気 される.さらに,液体窒素トラップ(LNT: Liquid Nitrogen Trap)により微量の不純物を除 去され,再び希釈冷凍機に戻される.冷却試料はMC2と接触するプレート(極低温ステージ)
に設置する.
図4.5 GM冷凍機を予冷に用いた希釈冷凍機の模式図
Pump V6 V12
V4
LNT V9
V7 V3
P2 P1
3He-4He Tank
DR DR
MFM
P3 V18 V11
V19 V10 V15
Compressor V5
図4.6 GM冷凍機を予冷に用いた希釈冷凍機のガスハンドリングシステム
希釈冷凍機 GM冷凍機
温度モニター ガスハンドリング
システム
図4.7 GM冷凍機予冷希釈冷凍機
GM 冷 凍 機 予 冷 希 釈 冷 凍 機 は ,GM 冷 凍 機 の 第 1 ス テ ー ジ と 第 2 ス テ ー ジ ,混 合 器 内 部 ,極 低 温 ス テ ー ジ の 4 箇 所 の 温 度 計 お よ び 混 合 器 に ヒ ー タ ー を 搭 載 し て い る .本 研究においては,混合器内部の温度計の指示値を参考値として混合器のヒーターを PID
(Proportional−Integral−Differential)制御し,極低温ステージの温度を制御した.GM 冷 凍機の第 1 ステージおよび第 2 ステージの温度測定には温度モニター(218 Temperature Monitor,LakeShore),混合器と極低温ステージの温度測定およびPID制御にはACレジス タンスブリッジ(370 AC Resistance Bridge,LakeShore)を利用した.