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第 5 章 誘電体温度計の静電容量の温度依存性 61

5.4 検出信号波高の見積もり

図5.9に示す静電容量測定結果より,このKTN(x = 0.01)誘電体温度計を用いたDMC による放射線検出の可能性を調査する.本研究で試作したKTN誘電体温度計は,焼結等にお ける技術的な課題からその大きさは1×2×0.2 mm3と比較的大きなものしか製作できなかっ た.それに伴い,組み立てるDMCの熱容量が大きくなるため,エネルギーが低いX 線を対 象とした検出器動作は困難であると考えられる.そこで,エネルギーが高く,検出が比較的容 易であるエネルギーE =5.5 MeVのアルファ線検出信号の波高値を見積もった.式(2.9)よ

り,バイアス電圧Vbで割った検出信号波高値vheightは,

vheight= 1 Cf

E Cv

dCd

dT (5.1)

と表される.フィードバックキャパシタンスCf は,市販の電荷有感型前置増幅器における典 型的な値としてCf = 2.2 pFとした.温度感度dCd/dT は,実測したCd−T 特性を微分して 得た.静電容量Cdおよび温度感度dCd/dT と温度の関係を図5.11に示す.図5.11において 赤丸および赤線は,それぞれ実測した静電容量およびそれをフィッティングした結果を示す.

温度感度は,平均3 pF/K程度であり,600 mK程度の温度において極大をとる.また,低温 ほど小さくなり,温度100 mKにおいて1 pF/Kの値をとることが分かった.DMCの実効的 な熱容量Cv は,KTN 誘電体結晶および2枚の金電極の熱容量の和として扱った.本実験に おいて温度感度が確認されたKTN(x = 0.01)誘電体の比熱は,報告されていないためKTN

x= 0.09)誘電体の比熱を用いた.また,KTN(x= 0.01)誘電体の密度も報告がないため,

KTN(x= 0)の密度である7×106 g/m3を用いた.KTN誘電体結晶および金電極と温度の 関係を図5.12に示す.KTN誘電体結晶の熱容量は金電極のものと比較して2桁程度大きな値 を持ち,DMCの熱容量はKTN誘電体結晶により決定されていることが分かる.温度感度お よび見積もった波高値vheight と温度の関係を図5.13に示す.直流バイアス電圧10 Vを印加 したDMCにおけるエネルギー5.5 MeVのアルファ線検出信号として,動作温度100 mK おいて30 mV程度の波高値に期待でき,KTN(x= 0.01)誘電体温度計をDMCに十分利用 できることが分かった.また,動作温度600 mKにおいても十分計測可能な10 mV程度の波 高値に期待できる.誘電体温度計の温度感度が広い温度領域に及び,これに伴いDMCの動作 温度も広い温度領域から決定できることは,DMCの大きな利点である.動作温度が低温であ るほど大きな検出信号波高を得られることが分かる.これは,温度感度は低温になるほど小さ くなるが,比熱も低温になるほど小さくなるためであると考えられる.温度感度およびDMC の熱容量と温度の関係を図5.14に示す.

5.11 静電容量と温度感度の温度依存性

5.12 KTN誘電体結晶と金電極の熱容量の温度依存性

5.13 温度感度と検出信号波高値の温度依存性.動作温度100 mKにおいてエネルギー 5.5 MeVのアルファ線検出信号として70 mVの波高値に期待できる.

5.14 温度感度と熱容量の温度依存性

6 誘電体マイクロカロリーメータの