第 6 章 誘電体マイクロカロリーメータの放射線検出信号パルス波高分布測定 73
6.2 DMC の交流電圧バイアス駆動
6.2.2 バイアス印加方法の検討
DMCの直流バイアス電圧印加時においても同様の現象が起こり,安定動作できなかったと
仮定し,DMC02についてバイアス印加方法を検討した.
印加バイアス電圧の模式図を図 6.12 に示す.周波数が0.01 Hz または 0.005 Hzで様々 なデューティー比D を持つ ±10 Vに振動する矩形波,周波数が 0.1 Hzまたは 0.01 Hz で
−10∼+10 Vに振動する正弦波によりDMC02をバイアスして駆動した.矩形波および正弦
波の電圧値は極性が反転するように決定し,周波数は,DMCのアルファ線検出信号の立ち上 がり領域に相当する周波数である50 kHz程度に対して,4∼ 5桁低く,バイアス電圧が変化 せず一定と見なせるように決定した.交流バイアス印加によるDMCの駆動回路図を図6.13 に示す.交流電圧は波形発生器(WF1975,NF)により出力し,室温部に置いたカットオフ周 波数5 Hzの低域通過フィルタ(SIM965 Analog Filter,Stanford Research Systems)を通
してDMC02をバイアスした.信号読み出しは直流電圧バイアス駆動時と同様に電荷有感型 前置増幅器(2003BT,CANBERRA)を用い,電荷有感型前置増幅器の出力電圧を整形増幅 器により整形増幅した波形をトリガ信号として,オシロスコープで印加バイアス電圧,電荷有 感型前置増幅器および整形増幅器の出力電圧を取得した.
Voltage
Time
Voltage
Time
図6.12 交流電圧バイアス印加方法.(a) 矩形波(b) 正弦波.
bias
output KTN温度計
LPF
電荷有感型 前置増幅器
整形増幅器
オシロスコープ
極低温ステージ 信号線 FPC
コネクタ
フィードスルー コネクタ
室温部
バイアス源
図6.13 交流電圧バイアス印加によるDMC駆動読み出し回路
それぞれのバイアス電圧印加方法により,電荷有感型前置増幅器の出力において図 6.14 に示すように検出信号パルスを取得することができた.図6.14(a) は動作温度 220 mK の DMC02を ±10 Vの矩形波電圧でバイアスしたとき,(b)は動作温度 100 mK のDMC02
を−10 ∼ +10 V 正弦波電圧でバイアスしたときに取得した検出信号パルスであり,図中 のVb は検出信号取得時の印加バイアス電圧の平均値である.±10 V に振動する矩形波お
よび −10 ∼ +10 V に振動する正弦波でバイアスした場合には,1 時間あたり数 10 波形
(events/h)の取得頻度で連続して検出信号パルスを取得できた.周波数0.01 Hzで+9 Vを
中心に+8.5 ∼+9.5 Vに振動する正弦波電圧でDMCをバイアスしたところ,直流電圧でバ
イアスした場合と同様に,駆動直後に数イベントのみ検出信号パルスを取得できたが,その後 は検出信号パルスを取得できなかった.このことは,バイアス電圧印加によりKTN誘電体温 度計内で分極が生じ,不感状態となると考えると,電圧極性が反転するようにバイアスするこ とでKTN誘電体温度計内の分極を緩和し,DMCの不感状態をなくすことができたと説明で きる.KTN誘電体温度計へのアルファ線入射数と比べて少ないものの,正負に振動する矩形 波または正弦波バイアス印加によりDMCを安定して動作することに成功した.矩形波電圧バ イアス印加の場合,低域通過フィルタを通しているものの,バイアス電圧の急激なスイッチン グに伴い,図6.15に示すように,電荷有感型前置増幅器の出力が大きく急激に変動する.変 動し安定するまでの時間はDMCが放射線を検出不可能な状態となり,また,その時間を決定 するのは困難である.したがって,正弦波電圧バイアス印加によるDMC駆動が適当であると 考えた.
図6.14 交流電圧バイアス下のDMC02の検出信号パルス.(a) 矩形波電圧(b) 正弦波電 圧でバイアスしたときの検出信号パルス.
図6.15 矩形波バイアス印加時のDMCの応答.バイアス電圧の急激なスイッチングによ り電荷有感型前置増幅器出力が大きく乱れる.