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第 6 章 誘電体マイクロカロリーメータの放射線検出信号パルス波高分布測定 73

6.4 まとめ

6.30 フィルタ回路を用いたトリガ信号生成によるDMC03のアルファ線検出信号パル ス波高分布(|Vb| ≥7 V).全119カウント.

本実験では,周波数フィルタを用いた検出信号パルスの減衰領域に着目する信号生成によ り,検出信号パルスとノイズを効率的に区別する手法を確立し,検出信号パルスの取得頻度を 大幅に改善できた.

6.2 DMCのアルファ線照射実験まとめ

DMC01 DMC02 DMC03

バイアス電圧 直流 直流/正弦波 正弦波 導電性ペースト カーボン 銀 カーボン

導線 銅線 銅線 銅線

トリガ信号生成 整形増幅器 整形増幅器 フィルタ回路

取得頻度 [events/h] /50 200

全カウント数 [events] /116 264

さらに,検出信号パルスの取得頻度を改善できた結果,バイアス電圧で割った検出信号パル ス波高値で約0.3×103 [-]の位置にアルファ線のエネルギーに対応するピークを示すDMC のアルファ線検出信号パルス波高分布を計測することができ,DMCの安定動作を実証するこ とに初めて成功した.しかしながら,波高分布のピーク位置は,Cd−T 測定結果より見積もっ た波高値の1/30程度と小さいものであった.その原因は,波高値見積もりにおいてDMCの 熱容量を荒く近似して扱ったことである.より厳密な波高値見積もりのためには,報告例のな

いKTN(x = 0.01)誘電体の極低温領域における比熱を測定し,さらに,誘電体温度計の配

線に用いた導線や導電性ペーストを考慮してDMCの実効的な熱容量を求める必要がある.

本研究において取得したアルファ線検出信号は波高値が3 mV程度に対して振幅が5 mVpp 程度のノイズを含んでおり,SNが悪かった.波高値を大きくし,SNを改善するためには,ま ず,KTN誘電体温度計を幾何学的に小さくすることが有効である.これにより熱容量を小さ くでき,エネルギー吸収に対する温度上昇を大きくすることが可能である.本実験の結果よ り,例えば,誘電体温度計の大きさを100 µm角程度にできれば,X線の検出も可能であると 予想できる.また,実用的な有感面積を維持しながら,さらに低熱容量化を諮るには誘電体の 薄膜化が適当である.単結晶SrTiO3 誘電体等の一部の量子強誘電体の薄膜化には成功してい るが,KTN誘電体の薄膜化の例はない.また,結晶が幾何学的に小さくなると誘電損失が大 きくなるという結果もある.したがって,KTN誘電体の薄膜化手法や誘電体薄膜の特性を詳 細に調査する必要がある.

DMC出力に含まれる大きなノイズは主に,DMCと電荷有感型前置増幅器を接続する長さ 約2 mの信号線の浮遊容量に起因するものである.したがって,SN改善のためには,電荷有 感型前置増幅器の初段FETを冷却することも有効である.初段のFETを冷凍機内部の極低 温領域に配置し,誘電体温度計と隣接させることで,ノイズを大幅に抑制できるはずである.

将来的なDMCの実用化に向けて,DMCの多ピクセル化の検討が必要である.現在想定し ている多ピクセル誘電体温度計を図6.31に示す.まず,焼結等により1枚の板状の誘電体結 晶を製作し,微細加工により溝を彫り,ピクセル構造を作る.そして,誘電体結晶の各ピクセ

ルに信号読み出し用電極およびそれと向かい合う面全体を覆うバイアス電圧印加用電極を蒸着 して多ピクセル誘電体温度計を製作する.これにより,ピクセル境界の熱伝導度が悪くなり,

放射線のエネルギー吸収に伴う温度上昇を局所的に発生させることができるため,多ピクセル DMCを実現できる.電気回路的には誘電体温度計がバイアス源に対して複数並列に接続され ることになるため,バイアス電圧印加用配線1本と,1ピクセルDMCあたり1本の信号読み 出し用配線のみで駆動することが可能である.このような多ピクセル化方式により,ジュール 発熱がなく,優れたエネルギー分解能を有し,広い有感領域を持つマイクロカロリーメータを 少ない配線数で実現できる.

信号読み出し回路

バイアス電源 誘電体結晶

信号読み出し用電極

1ピクセルDMC

バイアス電圧印加用電極

6.31 誘電体温度計の多ピクセル化手法