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第 6 章 誘電体マイクロカロリーメータの放射線検出信号パルス波高分布測定 73

6.1.2 結果

ツイストペアケーブルからなる長さ約2 mの信号線を接続した.信号線のもう一端は希釈冷 凍機の断熱真空容器に設置したフィードスルーコネクタに接続しており,フィードスルーコネ クタから冷凍機外の室温部に設置したバイアス用電源および電荷有感型前置増幅器に接続し た.試料温度を測定するために,試料ホルダー側面に開けた円柱形の穴にRuO2温度計を挿入 した.穴とRuO2 温度計筐体の間の隙間はアピエゾンNを塗布し,十分な熱接触をとった.

極低温ステージ

Am線源

信号線 RuO2温度計

試料ホルダー

6.3 冷凍機に組み込んだ試料ホルダー

ずに直接電荷有感型前置増幅器を接続し,バイアス端子にはシールドケーブルを用いてバイア ス源を接続した.電荷有感型前置増幅器の入出力端子の筐体にグランド線を接続し,グランド 線は冷凍機のフレームに接続した.

予冷用GM冷凍機運転時および停止時における電荷有感型前置増幅器の出力信号をそれぞ

れ図6.7(a)および(b)に示す.GM冷凍機は機械的動作を伴うため,その振動が測定に影響

し,電荷有感型前置増幅器出力に周波数140 Hz程度,振幅 100 mVpp程度のノイズが現れ ることが分かった.そこで,機械的振動の測定への影響を低減するため,アルファ線検出信号 パルス波高分布計測はGM冷凍機を一時的に停止して行うことにした.GM冷凍機の振動は RuO2温度計を用いた温度測定にも大きく影響を及ぼしており,GM冷凍機停止によってより 正確な温度測定および温度制御が可能になる.一方,GM冷凍機を停止することで,定常的で はない熱流入により温度安定性が悪くなることが予想される.GM冷凍機を停止した場合の極 低温ステージの実際の温度揺らぎはpeak-to-peakで0.5 mKであり,GM冷凍機を運転して いる場合と比較して良くなっている.GM冷凍機を停止して試料ホルダーにおいて極低温を保 持できるのは1時間未満であり,測定可能時間も1時間未満に制限される.

bias

output KTN温度計

バイアス源 電荷有感型 前置増幅器

整形増幅器

オシロスコープ

極低温ステージ 信号線 FPC

コネクタ

フィードスルー コネクタ

室温部

6.4 DMC駆動読み出し回路

電荷有感型前置増幅器 グランド線

コネクタ変換器 電源ライン

整形増幅器へ 接続

バイアス電源と 接続

フィードスルー コネクタ

6.5 フィードスルーコネクタ,コネクタ変換器,電荷有感型前置増幅器の接続

増幅器・

フィルタ回路 整形増幅器

バイアス源

オシロスコープ

6.6 室温部に配置した測定回路

6.7 GM冷凍機運転の測定への影響.(aGM冷凍機起動時(bGM冷凍機停止時にお ける電荷有感型前置増幅器出力.GM冷凍機を停止することで大幅にノイズを低減できる.

DMC01を動作温度200 mKに保持し,直流電圧+6 Vでバイアスして取得した電荷有感型

前置増幅器出力におけるアルファ線検出信号パルスを図6.8に,DMC02を動作温度400 mK に保持し,直流電圧7 Vでバイアスして取得したアルファ線検出信号パルスを図6.9に示 す.波形整形時間は10 µsとした.図6.8および図6.9の円はオシロスコープで取得した電荷 有感型前置増幅器の出力,実線は電荷有感型前置増幅器の出力を関数フィッティングした波形 を示す.DMCを大きさおよび極性の異なる直流電圧でバイアスして,検出信号パルスを複数 取得し,DMCによるアルファ線検出を確認できた.図6.8および図6.9に示す検出信号パル スはどちらも立ち上がり時定数がµsオーダー,減衰時定数が電荷有感型前置増幅器により決 定されるCfRf = 250 µsであった.本実験においてDMC01では,数回駆動後に図2.3の端Aに相当する配線が電気的にグランドと短絡し,詳細な測定ができなかった.これは,試

料ホルダーに設置した低域通過フィルタを構成する電気抵抗器またはキャパシタの足が回路 基板裏面に飛び出したため,電気的絶縁のためのカプトンテープを貫通し,DMC 回路が試 料ホルダーと短絡したことが原因であった.図6.9 に示す検出信号パルスに含まれるノイズ

は振幅5 mVpp程度であるのに対し,図6.8に示す検出信号パルスに含まれるノイズは振幅

80 mVpp程度であり,大きなノイズの原因はDMC回路とグランドの短絡である可能性もあ

る.用いた導電性ペーストによらず検出信号パルスを安定して観測することはできず,検出信 号パルスの特徴に大きな差異はなかった.このことから,以降の実験では,導電性ペーストに は接着や剥離が容易であるカーボンペーストを用いることとした.

6.8 DMC01のアルファ線検出信号パルス.バイアス電圧+6 V,動作温度200 mK

6.9 DMC02のアルファ線検出信号パルス.バイアス電圧7 V,動作温度400 mK

DMC駆動直後に数個の検出信号パルスを取得でき,DMCのアルファ線検出動作を確認す ることができたが,その動作は不安定であり,アルファ線検出信号パルス波高分布計測には至 らなかった.