50 STS-106 2000.09.10
③ EVA工具、EVA支援機器
これらはさらに幾つかの要素から構成されます。
EVAを実施するために必要なシ
ステム全体の構成概要を図7-1に示します。EVAを実施するためのシステム
エアロック ハッチ 制御パネル EMU支援設備
エアロック
アンビリカル(SCU)
下部胴体収納 バッグ エアロック アダプタプレート
図7-1
EVAを実施するためのシステム全体の構成概要
生命維持システム (LSS) 主 生 命 維 持 シ ス テ ム (PLSS)
水 酸 化 リ チ ウ ム カ ー ト リ ッ ジ
バッテリー
表示制御モジュール (DCM)
二 次 酸 素 パ ッ ク (SOP)
宇宙服アセンブリ (SSA) 上部胴体(HUT)/腕部 下部胴体(LTA)
ヘルメット
通信用ヘッドセット 冷却下着
集尿具
ドリンクバッグ (フ ー ド ス テ ィ ッ ク)
EMUライト 心電計キット グローブ
船外活動ユニット (EMU) EVA工具
EVA支援機器
7.3.1
EMU(船外活動ユニット)EMUは宇宙飛行士を宇宙環境から保護するとともに宇宙飛行士の生命を維持 して、船外活動を行うための装置です。 EMUは大きく2つの部分から構成され ます。
① 宇宙服アセンブリ(SSA:Space Suite Assembly)
② 生命維持システム(LSS:Life Support System )
EMUは計画上、約7時間のEVAが可能です。ただし、酸素の消費量には個 人差があるため、実際にはもう少し長時間の作業が行われることがあります。
EMUの構造を図7‑2 に示します。
図7‑2 EMUの構造
(出典:National Space Transportation Reference. Volume 1 Systems and Facilities)
(1)宇宙服アセンブリ(SSA:Space Suite Assembly) <C改訂>
宇宙服アセンブリは、搭乗員の胴体、四肢、頭部を包み込む人間の形をした圧 力容器で構成され、重さは約120Kgです。又、サイズは各パーツ毎にとりそろえ られているので、その組合せにより大体の人のサイズに合うようになっています。
宇宙服(EMU)は、この宇宙服アセンブリに、生命維持装置を装着して使用 します。
宇宙服は、温度の維持や圧力の確保、微小隕石からの保護等のいろいろな役目 を持つ14層(冷却下着(図7‑6参照)の3層を含む)の生地で構成されています。
(出典資料によっては、アルミ蒸着マイラーの層が7層ではなく5層となっていま すが、1998年の最新の資料では7層に増えています。)
図7‑3 宇宙服を構成する14層(素材には商標名を使用)
① 上部胴体(HUT:Hard Upper Torso)/腕部
上部胴体は宇宙服の上半身であり、次の4つの要素から構成されます。
・胴体部分 ・腰部リング ・首リング
・保護服(TMG:Thermal Micrometeoroid Garment)
胴の部分は硬いグラスファイバー製でできており、この上から全体を保護服で 覆うことにより厳しい外部環境から保護するようになっています。 この胴の部 分に両腕、背中の主生命維持システム(PLSS)、胸の部分の表示制御モジュ ール(DCM)が取り付けられており、着用時にヘルメット、下半身、グローブ、
ミニワークステーションなどを取り付けて使用します。
1層:冷却下着(ナイロンの織物) 2層:冷却下着表層
(ナイロン/スパンディック )
3層:冷却下着 冷却水チューブ
4層:気密維持層
(ポリウレタンでコートされたナイロン) 5層:気密維持層を 拘束する層(ダクロン)
6層:耐熱、微小隕石保護層 (裂け目防止加工されたネオプレーン でコートされたナイロン)
7〜13 層:耐熱、微小隕石保護層 (多層断熱材(計7層):アルミ蒸着マイラー) 14 層:耐熱、微小隕石保護カバー (最外層:ゴアテックスとノーメックス。裏地は ケブラー)
② 下部胴体(LTA:Lower Torso Assembly)
宇宙服の下半分で、腰部、大腿部、膝部、ブーツ等から構成されます。
この下部胴体の最上部の腰部リングが、宇宙服を装着するときの接合部となり ます。
③ グローブ
グローブは、手を保護するとともに指先を動かして、ある程度の細かい作業が できるように作られています。 指先は力を感じやすいようにシリコンゴムででき ています。
表面が非常に高温あるいは低温のものを取り扱う場合はオプションとして耐熱 ミトンを使うことが出来ます。
なお、1987年のSTS‑82から使用されるようになった新しい宇宙服は、国際宇宙 ステーション用に改良されたものであり、低温環境にも耐えられるように指先に ヒーターがつけられています。
④ ヘルメット
ヘルメットはEVA中のクルーの頭部を熱的環境や衝撃等から保護します。内 側には与圧を確保するための耐圧性のプラスチックの容器があり、その上にカバ ーや太陽からの強烈な日ざしを緩和するために金でコーティングしたバイザーや 可動式の3枚(正面と両横)の日除けが装備されています。
作業用の照明として使われるEMUライトは、このヘルメットの上に取り付け られます。
図7‑5 ヘルメットの外観
(出典:EMU Systems Training work book(EMU SYS 2102))
⑤ 通信用ヘッドセット(Comm Cap)
マイクロフォン、イヤフォン、電子回路などを組み込んだ柔らかい布製の帽子 で頭にかぶって使用します。マイクロホンとイヤフォンは、2個ずつあり、同時に 故障しないよう別系統となっています。この帽子はNASAでは、スヌーピーキ ャップと通称されています。 (図7‑2参照)
金でコーティングし たバイザー 可動式の日除け
(閉じた状態 )
日除け(正面)の開閉ノブ
パージバルブ
⑥ 冷却下着
冷却下着は宇宙服を着用する前に着る柔軟性のあるスーツ で、次のものから構成されます。
・スーツ
・冷却水パイプ ・酸素還流パイプ
この冷却下着は、素肌に着用して冷却水により体表から余分 な体温を取り去るとともに、宇宙服の末端から換気ガスを生命 維持装置に還流させるパイプを支えています。 また、心電計 信号調整器や放射線被曝量を管理するための線量計を収める ポケットが取り付けられています。
図7‑6 冷却下着
⑦ 集尿具
使い捨ての大人用サイズの紙おむつ MAG(Maximum Absorption Garment)を冷却 服の下に着用します。
⑧ 心電計キット(Biomed kit)
EVA中のクルーの心電図データを地上でモニターするために、クルーにとり つける電極、コード、信号調整器その他の小物から構成されています。
⑨ 飲料水バッグ(Drink Bag )
21液料オンス(621.6cc )の飲料水を入れるバッグであり、宇宙服胴体内側の ヘルメットのネックリングのすぐ下側に取り付けます。
⑩ フードスティック
包装ごと食べられる棒状に加工したフルーツ。布製の袋に入れて飲料水バック にマジックテープでとりつけます。(注:現在では宇宙飛行士からの要望がないため
(2)生命維持システム(LSS:Life Support System)
LSSは、宇宙服の内部気圧と温度をコントロールし、呼吸用の酸素や電力を 供給する他、通信機能を提供するシステムであり、宇宙服の背中に取り付けられ ています。万一故障などで酸素が供給できなくなった場合に備えて、バックアッ プ用の酸素タンクも装備してあります。宇宙服内は、約0.3気圧(4.3psia)の純酸 素で満たされており、その環境をLSSが維持します。生命維持システムは主に 以下の機器から構成されます。
・主生命維持システム(PLSS:Primary Life Support System ) ・水酸化リチウム(LiOH)カートリッジ
・バッテリー
・表示制御モジュール(DCM:Display and Control Module)
・二次酸素パック(SOP:Secondary Oxygen Pack )
① 主生命維持システム(PLSS)
PLSSは、シャトルの宇宙服を外部に依存することなく、独立して使用でき るように各種機能を詰め込んだ物であり、内部気圧と温度のコントロール、呼吸 用の酸素や電力を供給しています。宇宙服内の空気は、PLSS内の水酸化リチウム カートリッジで余分な水分、二酸化炭素、その他の有害物質等を取り除いて再循 環されています。 また、外部との音声通信や心電図データ、酸素消費量等を知 らせるための通信装置、宇宙服にトラブルが発生した時の警告警報機能を有して います。
図7‑7 PLSSの構成
主酸素タンク 冷却水タンク
酸素レギュレータ バッテリー
アンテナ 通信装置
警告警報システム 水酸化リチウム
カートリッジ
循 環 フ ァ ン /ポンプ/モータ
サブリメータ (冷却器)
② 水酸化リチウム(LiOH)カートリッジ
水酸化リチウムカートリッジは水酸化リチウム、活性炭、微粒子フィルター の3層から成り、呼吸用酸素の浄化のために次の機能を果たします。
・微量成分(有害ガス)の吸着 ・二酸化炭素の吸着
・固体の微粒子や水酸化リチウムの塵の拡散防止
活性炭層で有害な微量成分ガスを吸着し、水酸化リチウム層で二酸化炭素を吸 着し、微粒子フィルターでその他の微粒子を捕らえて宇宙服内に拡散するのを防 止します。これらは、PLSSの背中に取り付けて使用し、軌道上(シャトル内)
で交換可能です。
③ バッテリー
宇宙服のバッテリーには、銀亜鉛電池(26.6 A/H:重量4.3kg)を使用しており、
EMUの全ての電気機器の電源となります。通常のEVA作業(6−8時間程度)
を行うには問題のない容量です。PLSSの背中に装着して使用し、軌道上で交 換できます。また、軌道上でPLSSに装着したまま充電することができます。
④ 表示制御モジュール(DCM:Display and Control Module)
表示制御モジュールは、宇宙服の胸部に装着されており、宇宙服の状態の表示 と各機器の調節を行うためのものです。通信機器、温度調節、換気、電源、宇宙 服内の気圧等の制御が可能なほか、警告警報システム(CWS)も装備していま す。
またエアロック内にいる間は、宇宙服で消費する酸素、電力、冷却水は節約の ため、エアロック経由で供給されますが、そのためのエアロックアンビリカル
(SCU:Service and Cooling Umbilical )もこのDCMの前部に取り付けら れます。 図7‑8に表示制御モジュールの外観を示します。
図7‑8 表示制御モジュール(DCM)の外観
(出典:EVA SUITS AND LIFE SUPRORT SYSTEMS G.LUTZ 1/10/91 )