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シャトルの遠隔マニピュレータ(RMS)運用  .1 シャトル RMS 概要

シャトル RMS(Remote Manipulator System)は、複数の関節を持ち、スペース シャトルの船内から宇宙飛行士の遠隔操作で動かすことができるロボットアーム であり、以下の作業を行うことを主な目的としています。

・人工衛星等の放出/回収

・国際宇宙ステーション(ISS)の組立

・船外活動(EVA)の支援(EVA クルーの移動や足場として使用)

   ・RMS テレビカメラによるペイロードやシャトル外部等の外観点検

図 1.2‑10  RMSの先端で作業を行う EVA クルー(STS‑57)

表 1.2‑4  シャトル RMS の主要諸元(標準ミッション)

項目 主要諸元

関節数

・6関節:肩部=ピッチ、ヨー 肘部=ピッチ

手首=ロール、ピッチ、ヨー

(各関節は、電気モータで駆動)

全長 ・約 15 m 直径 ・約 38 cm

重量 ・約 410 kg (ロボットアームのみ)

最大取扱重量

・ 

約 29.4t

最大先端速度

・ 

約 60cm/秒 (何も把持していない状態)

・ 

約 6cm/秒 (物体を把持した状態) 最大回転速度 ・約 4.7 度/秒

・2台:RMS の肘部、手首に各 1 台

・4台:シャトルカーゴベイの4角に各1台(注 1) テレビカメラ

・ 

1台:カーゴベイの床にキール・カメラを設置可能     (必要に応じて設置) (注 1)

シャトル取付位置

・ 

ペイロードベイ左舷

 (RMS の使用要求が無いミッションでは搭載しない)  打上げ/帰還時には 3 基の固定機構で固定する。

アームの構造材料

・ 

グラファイト・エポキシ複合材

開発 カナダ MacDonald Dettwiler 社(旧 Spar 社)  5 基製作(うち 1 基はチャレンジャー事故で喪失)

 

   注 1  カーゴベイ・カメラ、キール・カメラは、シャトル RMS の構成要素では      ありませんが、RMS 運用時に支援用として使われます。

なお、トラブルにより、シャトル RMS がカーゴベイ内に収納できなくなった 場合、あるいは、RMS で把持したペイロードが、外せなくなった場合には、ペ イロードベイドアを閉じられないため帰還できなくなります。このため、この ような事態が生じた場合には、コンティンジェンシーEVA を行って取り外すこ とになりますが、さらに、万が一のことを考えてシャトルの RMS には、アーム 部を分離して投棄することもできる機構が備えられています。

(1)シャトル RMS の構成

シャトルのロボットアームは、シャトルの後方フライトデッキ(図 1.2‑12 参照)

に装備されている以下の装置類を搭乗員が使用することにより、操作することができ ます。

<船内系の主要機器>

(a) RMS 制御パネル

RMS への電源投入/停止、ヒータ制御等を行うパネルであり、A8U パネルと A8L パネルが主に使われます。(図 1.2‑12 参照)

 

 A8U パネルは、ロボットアームの肩部固定器具の解除、ロボットアーム温度デ ータのモニタ、ロボットアームのブレーキ制御、エンドエフェクタ(把持部)に よるペイロードの把持ステータスのモニタ等が可能です。

 A8L パネルは、ロボットアームを保持している MPM(Manipulator Positioning Mechanism)の開放、ロボットアームに対する電源の投入/遮断、及びヒータ制 御等に使用されます。

  (b) THC(並進用ハンドコントローラ)及び RHC(回転用ハンドコントローラ)  

THC 及び RHC ハンドコントローラは、マニュアル操作でロボットアームを駆動 する際に使用されものであり、 THC(Translational Hand Controller)はロボ ッ ト ア ー ム を 「 前 後 、 左 右 、 上 下 」 方 向 に 制 御 し 、RHC( Rotational Hand Controller)は「±ロール、±ピッチ、±ヨー」方向にロボットアームを軸回 りに制御します。この 2 つのハンド・コントローラーを組み合わせて操作するこ とにより、ロボットアームを動かします。

 

また、ペイロードをエンド・エフェクタで把持/解放する操作は、搭乗員が RHC ハンドコントローラの「Capture/Release スイッチ」を用いて実施します。図 1.2‑13 に RHC、THC の概観を示します。

 

(c) CCTV モニター

テレビカメラからの映像を映し出す 9インチのモニターが 2 台装備されてい ます。1 台のモニター上には 2 台のカメラからのイメージを分割して表示するこ とも可能です。

(ハッチング部が RMS 操作に使用する機器)

図 1.2‑12  シャトル RMS の操作卓

    

         並進用ハンドコントローラー(THC)       回転用ハンドコントローラー(RHC)

図 1.2‑13  回転用(RHC)/並進用ハンドコントローラー(THC) RHC THC

頭上窓(左舷にもう1つある)

CCTV の 制御パネル A7U

CCTV モニタ 1,2

パネルA8U パネルA8L

後部左舷窓 後部右舷窓

注: 上下、左右、前後の表示に関して は、模式的に表現したものであり、実 際はアームの姿勢により異なってきま

<船外系の主要機器>

(a)  ロボットアーム(RMS)  

2 つのブーム(腕)と 6 つの関節を持つ、全長約 15m のロボットアームであり、

アーム先端にはエンド・エフェクター(End Effector)と呼ばれるペイロードや 人工衛星等を把持するためのツールを有しています。(図 1.2‑15 を参照)

(b)  MPM:Manipulator Positioning Mechanism(アーム保持機構)

 

シャトルの打上げ/帰還時に振動等からロボットアームを守るための固定器 具であり、ロボットアームの肘部に 1 箇所、及び手首部に 2 箇所の計 3 箇所で 固定します。

(c)  テレビカメラ/ライト

 ロボットアームの駆動、ペイロードの把持/解放、並びにシャトルオービタ 等の外観点検時等に使用するテレビカメラであり、ロボットアーム上には 2 台

(肘部と手首部に各 1 台)のテレビカメラが取り付けられており、手首部には 照明用のライトを 1 台を装備しています。

 また、ペイロードベイの 4 角にも各 1 台ずつカメラ(ペイロードベイ・カメラ)

があり、一般的には、これら 6 台のカメラを切り替えながら使用し、ロボット アームの操作を行います。

(2)ロボットアームによる把持方法

シャトルの RMS ではどんなものでも持ち上げられるわけではなく、あらかじめ決 められた把持機構を取り付けたものしか持ち上げたり、移動することはできません。

シャトルの RMS の先端には、エンド・エフェクターと呼ばれる中が空洞になってい る円筒形をした装置が取り付けられています。このエンド・エフェクターには「スネ ア」と呼ばれる 3 本のワイヤーが取り付けられています。

一方、持ち上げられるペイロード側には、エンド・エフェクターで把持するための グラップル・フィクスチャー(Grapple Fixture)と呼ばれる把持機構が取り付けら れており、そのグラップル・フィクスチャーから突き出たグラップル・シャフトと呼 ばれる棒状の突起物をエンド・エフェクターの3本のスネア・ケーブルを交差させる ことで中央部にセンタリングして固定し、ペイロードを把持します。

  グラップル・フィクスチャの上には、ターゲットが取り付けられており、RMS 先端 に取り付けられた TV カメラでこのターゲットを見ながら、エンド・エフェクターを グラップル・フィクスチャに精密に接近させることができます。(ターゲット・ロッ ド先端の白い丸がロッド基部の白い円の真ん中に来るように調整すれば、あとは真 っ直ぐ接近させるだけで把持を開始できます。)

図 1.2‑14 ペイロード側に設置するグラップル・フィクスチャ(把持/固定部)

(写真は、MacDonald Dettwiler社のホームページより引用)

ガイド用の傾斜

把持のためのターゲット ターゲット・ロッド (長さ10cm)

電気コネクタ (オプション)

ガイド用傾斜部 基盤: 直径

57cm

長さ約26cm 把持用のシャフト グラップル・カム・アーム 距 離 測 定 と 回 転 ず れ を

把握するための基準線

グラップル・フィクスチャ 3本のワイヤケーブル

電気コネクタ CCTVカメラ

ターゲット

グ ラ ッ プ ル ・ フィクスチャ エンド・エフェクター(注:透けた状態)

ライト エンド・エフェクター

図 1.2‑15 RMS 先端部のエンド・エフェクターで ペイロードのグラップル・フィクスチャを把持する状況

 右上の写真は、グラップル・フィクスチャのロッドをエンド・エフェクター内の3本のワイ ヤで巻き付けて捕まえた状態を示しています。このあと、引き込みを行い固定します。

(写真は、MacDonald Dettwiler社のホームページより引用)

1.2.8.2 3A フライトでの RMS 運用

<D改訂>

(1)Z1トラスの取付け

ユニティにZ1トラスを取り付ける前に、まず、ユニティの天頂部(図1.2‑16参照)の 結合機構であるCBMを起動し、点検します。正常な起動が確認できれば、シャトルの RMSを使ってカーゴベイに固定されているZ1トラスのグラップル・フィクスチャを把 持します。次に船内クルーの操作により、Z1トラスをカーゴベイに固定している PRLA(4本のロンジロン・トラニオンを両舷に固定している機構)とキールピン(カーゴ ベイの底部に固定されているピン1本)の固定を解除し、RMSでZ1トラスを持ち上げま す。(注:シャトルに搭載するペイロードには通常5箇所の固定部が必要です。)

Z1トラス結合までのRMS操作は、ユニティ/PMA‑2がシャトルの後方フライトデッキ (AFD)の 窓の 視 野 を 遮 っ て し ま い 、 直 接 目 視 確 認 が で き な い た め 、TVカ メ ラ や SVS(Space Vision System:P1‑32の補足説明を参照下さい)を使用し、モニター画面 を見ながら操作します。

Z1トラスをユニティの天頂部の結合機構(CBM)に接近させて、双方のCBMを把持させ た後、CBMの16本の駆動ボルトで、Z1トラスとユニティは構造的に結合されます。

図1.2‑16  Z1トラスの取付イメージ

ユ ニ テ ィ 天 頂 部

CBM

① ②

③ ④

(2)PMA‑3の取付け       <D改訂>

ユニティにPMA‑3を取り付ける前に、ユニティの底部のCBM(図1.2‑17参照)を起動し、

点検します。CBMの起動/点検が正常に完了すると、RMSでカーゴベイ内のPMA‑3のグ ラップルフィクスチャを把持します。この状態で、EVAクルーがスペースラブ・パレッ ト(SLP)上に固定されたPMA‑3のボルト結合を解除します。

結合が解除されると、RMSでPMA‑3をカーゴベイから慎重に持ち上げ(注)、ユニティ の底部にCBMを使って結合します。両側のCBMの温度差が小さくなるまでそのまま待機 し、その後、CBMの16本のボルトをきつく締めて気密が保てるように確実に固定しま す。

(注:PMA‑3とSLPの突起部との隙間が狭いため、ゆっくり動作させます。また、EVAク ルーもこの時にPMA‑3の移動状況を確認します。)

図1.2‑17  PMA‑3の取付

ユニティ底部

CBM

③ ④

な場所を大きく広げることができるようになりました。このような運用時には、EVA クルーと RMS の操作担当との間で密接な連絡を取り合いながら RMS を動かします。

<補足説明>

・SVS(Space Vision System:宇宙視覚システム)

SVS は、目標物に取り付けられた SVS ターゲット(通常、黒丸状のマークを使用) を TV カメラで撮影し、このビデオ映像を画像解析することによって、目標物の位 置、姿勢、移動率を実時間で精密に測定するものです。このシステムは、カナダ の Neptec 社によって開発されました。

目標物に取り付けられた複数個のドット・パターンが SVSのターゲットとして使 用されます。これらのターゲットの取り付け位置は地上で 3 次元的に精密に測定 されており、この基準データを元にターゲットの動きを測定します。また、TV カ メラのレンズ特性等も飛行前に把握しておく必要があります。この測定された情 報はモニタ画面にグラフィックスと数値で宇宙飛行士に提供されます。

必要な測定精度を出すためには少なくとも 3 個以上(5 個が望ましい)の SVS ターゲットが見えている必要があります。また、照明の条件や熱による変形等に よる誤差も生じますので、これらを最小限に抑える必要があります。

ISS 構成要素の結合は、シャトル RMS や、SSRMS(宇宙ステーション RMS)を使っ て行いますが、SVS はこれらの結合作業時に、位置決めする時の許容誤差が小さい 構成要素の結合作業時等において不可欠な技術です。

図 1.2‑18 ユニティに設置された SVS ターゲット(白地に黒い丸の部分)