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Ag ナノ粒子の酸化還元電位

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 40-43)

第 2 章 磁 性- プ ラズモン ハ イブリ ッ ド ナノ粒子の生成機構

2.4 ハイブリッドナノ粒子の生成機構

2.4.1.2 Ag ナノ粒子の酸化還元電位

上述のように、電気的に中性のAgクラスターの場合、水相においては粒径が大きくなる につれ電子エネルギーが低下する。一般的に金属ナノ粒子の酸化還元電位は熱力学的サイクル から導出した式(2-3)により記述できる[5,6]

 



 

 

 

r d 0

NP bulk ) AVS 1 /(

1 )

( 8

) 1 2 (

 r

d d r

e z e

Eze z e Φ (2-3)

ここで、eは電気素量、

/( 1)

AVSNP

e z

Eze は真空準位を基準としたナノ粒子の酸化還元電位(V)、Фbulk

はバルクの仕事関数、zはナノ粒子の電荷、ε0は真空の誘電率、rは粒子半径、dは粒子表面保 護剤の全長、εdは表面保護剤の誘電率、εrは溶媒の比誘電率を表す。

/( 1)

AVSNP

e z

Eze

e とすることで ナノ粒子の仕事関数(eV)を求めることができ、ナノ粒子のフェルミ準位は

/( 1)

NPAVS

e z

Eze

e

と表

せる。ナノ粒子が保護剤で修飾されていない場合には、式(2-3)は以下のように簡単化される。

 

r e z e

E Φ

r e

z

ze 0

NP bulk ) AVS 1

/( 8

) 1 2

( 

(2-4)

式(2-4)から、ナノ粒子が帯電した場合、酸化還元電位は電気的に中性のナノ粒子と異なる 値を示すことが分かる。式(2-4)に基づき、ナノ粒子の粒径と帯電量を変化させたときのAuナ ノ粒子及びAg ナノ粒子のフェルミ準位の変化を図2-10a-cに示す。図2-10dには溶媒がTEG のときの中性Agナノ粒子のフェルミ準位の粒径依存性を示す。粒径が小さい方が電子のエネ ルギー準位が高く、粒径が大きくなるにつれ、バルクのフェルミ準位に近づくことが分かる。

これは図2-7の右側に示した水相での電子のエネルギー準位の振る舞いと一致する。

図2-10a-cに示すように、Agナノ粒子が負に帯電するにつれフェルミ準位が高くなること

が分かる。このように帯電したナノ粒子は化学反応性に富むため、触媒として多く利用されて いる。例えばJanaらは、色素の還元触媒として Agナノ粒子を用い、Agナノ粒子が成長する 過程で電子が還元剤からAgナノ粒子に移動し、さらに Agナノ粒子から色素へ移動すること を実験的に見出した[7]。本研究においてもAg ナノ粒子が成長するにつれ、Fe及び Coカチオ ンを還元できる触媒活性を獲得すると示唆されたが、図2-10dから分かるように、電気的中性 なAgナノ粒子の場合には、粒子が成長するとともに電子エネルギー準位は下がるだけであり、

還元触媒活性が増大するとは考えられない。従って、電子が還元剤からAgナノ粒子へ移動す

ることで、Ag ナノ粒子が負に帯電し高いエネルギー準位を得ているのではないかと考えられ る。還元剤からAgナノ粒子への電子移動はAgナノ粒子の表面積、即ちr2に比例する。従っ て、式(2-4)から、Ag ナノ粒子のフェルミ準位は r に比例して増大することが分かる。これら の知見に基づいて、FeCoシェルの形成機構を次のように考察した。

図 2-10 (a) 水中での Au ナノ粒子のフェルミ準位の粒径及び帯電量依存性。(b) 水中、又は (c) TEG 中での Ag ナノ粒子のフェルミ準位の粒径及び帯電量依存性。(赤) r = 25 nm、(橙) 10 nm、

(緑) 5 nm、(青) 3 nm、(紫) 1 nm。(d) 電気的中性な Ag ナノ粒子のフェルミ準位の粒径依存性。

点線はバルクの Ag(111)の仕事関数から求めたエネルギー準位を示す。εwater = 80.1、εTEG = 20.44、

ΦAu(111) = 5.31 eV、ΦAg(111) = 4.74 eV とした[2]

2.4.1.3 FeCoシェルの形成機構

図2-11にAg、Fe、Co及び還元剤であるTEGの電子の室温でのエネルギーダイアグラム

を示す。TEGのエネルギー準位は不明であるが、エチレングリコールのエネルギー準位は−6.9 eV[8]と報告されている。反応溶液中での TEG のエネルギー準位は中間体の形成や立体配置に より高くなると考えられる。Ag、Fe、Coの中で還元電位が高い(エネルギー準位が低い)Ag が反応の最初の段階で還元されAgナノ粒子を形成する。一般に、ポリオールは脱プロトン化

してモノアニオンとなると高い還元力を示すことが知られているが[9]、Ag ナノ粒子の非存在

下では、反応温度250 ºCではFeやCoカチオンの還元が起きていないことから[実験事実(i)]、

この温度領域ではTEGの脱プロトン化によるFeやCoカチオンの直接還元は考えにくい。

図 2-11 TEG、Ag ナノ粒子(Ag NP)、Co、Fe のエネルギーダイアグラム。

一方、先に形成された Agナノ粒子は成長を続けていき、電子エネルギー準位は徐々に下 がっていく。TEGが酸化されるとともにAgナノ粒子にTEGから電子移動がおこり、Agナノ 粒子は負に帯電することで高いエネルギー準位に到達する。そして、まずCoカチオンを還元 できる程度まで、電子エネルギー準位が高くなったところで、CoカチオンがAgナノ粒子の表 面で電子を受け取って還元される。続いて還元電位が最も低いFeカチオンがAgもしくはCo から電子を受け取りその表面近傍で還元される。この仮説は、Ag@Co ナノ粒子が容易にコア シェル構造を形成したのに対し、Ag@Feナノ粒子ではFeは綺麗なシェルを形成しなかった事 実と矛盾しない。従って、Agナノ粒子の周りでまずCoカチオンが還元され、後からFeカチ オンが還元されると考えるのが妥当である。AgとCoの相図[10]及びAgとFeの相図[11]から、

Ag-CoやAg-Feは合金を形成しないのに対し、FeとCoは合金を形成し易いため[12]、Co の還

元が起きた後にFeが還元され、合金化したと考えられる。参考までに Ag-Co、Ag-Fe、Fe-Co の相図を付録に示す。図2-2に示したように、FeCoシェルの組成に傾斜構造が観察されたのは このためである。Coカチオンの還元が起こるのに必要なAgナノ粒子の臨界サイズを求めるこ とは難しい。しかし、Ag@FeCoナノ粒子及びAg@FeCo@Agナノ粒子のAgコアの粒径がいず

れも約10 nmであることから、平均臨界サイズは約10 nmであると考えられる。

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