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化学安定性評価

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 63-67)

第 3 章 交換バイアスを用いた FeCo 磁性 層酸化膜の解析

3.4 ハイブリッドナノ粒子の構造解析

3.4.4 化学安定性評価

Ag コアナノ粒子及び合金コアナノ粒子の化学安定性を、Fe と Co の化学種(Fe0、Fe2+、 Fe3+及び Co0、Co2+、Co3+)の存在割合の経時変化を XPS によって追跡することで評価した。

大気中での保存期間の異なるサンプルをXPS測定に供し、Fe 2p及びCo 2pのスペクトルを取 得した。Fe 2pに関してはFe0、Fe2+、Fe3+、表面の帯電による寄与、サテライトの5つの要素 を考慮し[10]、Co 2p についてはCo0、Co2+、Co3+、サテライトの4 種類の要素を考慮して[10]

XPSPEAK41ソフトウェアを用いてデコンボリューションを行った。デコンボリューションに

際しては、各化学種のピーク位置、半値幅、スピン-軌道相互作用によって分裂したピーク

(2p3/2及び2p1/2)のエネルギー差、面積強度比などに矛盾が生じないようにピークパラメータ ーに厳密な制約条件を設けた上で実施した。XPSで測定したサンプルとしては、合成直後のも の、大気中で2日間静置したもの、大気中で7日間静置したものを用いた。

Agコアナノ粒子のXPSスペクトルを図3-10に、合金コアナノ粒子のXPSスペクトルを 図3-11に示す。デコンボリューション後に得られたピークパラメーターは、Fe 2pについては

表3-3、Co 2pについては表3-4にまとめた。合成直後のナノ粒子のXPSスペクトルから求め

たFeとCoの各化学種の相対存在比を表3-5に示す。どちらのナノ粒子においても2価の化学 種がFeとCoの両方で最も多く検出された。この結果はXRD解析からFeCoの表面は酸化さ れてCo0.5Fe0.5Oとなっていると示唆された結果と整合している。

また、合金コアナノ粒子では、Fe0とCo0の存在割合がAgコアナノ粒子に比べて若干多く なっていた。0価の化学種の存在割合の経時変化を調べたところ、図3-12に示すように、どち らのナノ粒子でもFe0とCo0は最初の2日間で急激に減少し、その後緩やかに減少した。大気 中に7日間放置したナノ粒子では、合金コアナノ粒子における0価の割合がAgコアナノ粒子 のそれより若干高いことが分かる。これはAgのコアよりもAgAuの合金コアを形成すること で、FeCoシェルへの電子移動の効果が増大し、酸化が抑制されたためと考えられる。

XPSは試料表面に敏感であることから、ナノ粒子の酸化が進み、Co0.5Fe0.5O層が厚くなる につれ、コア近傍のFeCoを検出することが難しくなる。一般に、光電子の脱出深さは数nmで あり[20]、CoOの薄膜を通過するFe 2p由来の光電子の脱出深さは約2 nmである[21]。このこと が、2日以降の0価の存在割合の減少速度が緩やかになった一因と考えられる。

因みにAg 3dの内殻準位 XPSスペクトルを 2種類のナノ粒子で比較したところ、粒子種

類や大気中での保存日数にかかわらず、同等のピーク形状であった。合金コアナノ粒子の Ag 3d及びAu 4f XPSスペクトルより求めたAgとAuの組成はAg : Au = 76 : 24であり、理論組成 比とほぼ等しい。

図 3-10 Ag コアナノ粒子の (a-b) 合成直後、(c-d) 2 日後、(e-f) 7 日後の (a,c,e) Fe 2p 及び (b,d,f) Co 2p の XPS スペクトル。

図 3-11 合金コアナノ粒子の (a-b) 合成直後、(c-d) 2 日後、(e-f) 7 日後の (a,c,e) Fe 2p 及び (b,d,f) Co 2p の XPS スペクトル。

表 3-3 Fe 2p の各ピークの結合エネルギー (eV)。括弧内は半値幅 (eV) を表す。

ナノ粒子 保存期間

(日)

2p3/2 2p1/2

Fe0 Fe2+ Fe3+ Fe

surface Fe satelli

te

Fe0 Fe2+ Fe3+ Fe

surface Fe satelli

te

Ag コア ナノ粒子

0 707.3

(2.8)

709.3 (2.8)

711.3 (2.4)

713.2 (3.4)

716.9 (5.1)

720.7 (2.8)

722.5 (2.7)

724.6 (2.3)

726.7 (4.0)

730.8 (5.7)

2 707.3

(3.0)

709.3 (2.7)

711.2 (2.5)

713.3 (3.4)

717.0 (4.8)

720.5 (2.8)

722.5 (3.0)

724.3 (3.0)

726.8 (4.4)

731.5 (6.0)

7 707.3

(2.3)

709.3 (2.8)

711.2 (2.7)

713.3 (3.4)

717.0 (5.7)

720.5 (2.5)

722.5 (3.0)

724.4 (3.0)

726.8 (4.3)

731.2 (6.0)

合金コア ナノ粒子

0 707.3

(2.9)

709.5 (2.5)

711.3 (2.3)

712.9 (3.5)

716.8 (6.0)

720.5 (3.0)

722.7 (3.0)

724.5 (3.0)

726.4 (4.5)

731.3 (6.5)

2 707.3

(2.6)

709.5 (2.5)

711.3 (2.2)

713.2 (3.0)

717.1 (5.8)

720.5 (2.5)

722.6 (3.0)

724.4 (2.9)

726.7 (4.0)

731.4 (6.5)

7 707.3

(2.8)

709.4 (2.6)

711.3 (2.6)

713.3 (3.6)

717.3 (5.6)

720.5 (2.6)

722.7 (3.0)

724.5 (3.0)

726.8 (4.5)

731.7 (6.5)

表 3-4 Co 2p の各ピークの結合エネルギー (eV)。括弧内は半値幅 (eV) を表す。

ナノ粒子 保存期間

(日)

2p3/2 2p1/2

Co0 Co2+ Co3+

Co2+

satelli te

Co3+

satelli te

Co0 Co2+ Co3+

Co2+

satelli te

Co3+

satelli te

Ag コア ナノ粒子

0 777.2

(1.3)

781.5 (3.5)

779.3 (2.5)

785.2 (4.0)

788.7 (3.4)

792.1 (2.0)

796.5 (3.8)

794.2 (2.8)

801.3 (4.2)

805.1 (3.6)

2 777.3

(1.4)

781.3 (3.5)

779.2 (2.4)

785.2 (4.1)

788.7 (3.4)

792.3 (2.1)

796.5 (3.8)

794.7 (2.8)

801.6 (4.2)

805.1 (3.5)

7 777.5

(1.3)

781.4 (3.5)

779.5 (2.3)

785.2 (4.0)

788.7 (4.0)

792.3 (1.8)

796.6 (3.5)

794.8 (2.8)

801.5 (4.0)

805.0 (4.0)

合金コア ナノ粒子

0 777.3

(1.4)

781.4 (3.8)

779.1 (2.4)

785.2 (4.0)

788.0 (3.8)

792.4 (2.0)

796.7 (3.8)

794.3 (2.8)

801.5 (4.2)

804.5 (3.7)

2 777.3

(1.6)

781.2 (3.6)

779.2 (2.4)

785.2 (4.2)

788.5 (4.0)

792.3 (2.2)

796.5 (3.8)

794.5 (2.5)

801.5 (4.2)

804.9 (3.9)

7 777.3

(1.3)

781.3 (3.6)

779.2 (2.4)

785.2 (4.2)

788.4 (4.0)

792.4 (2.0)

797.0 (3.8)

795.0 (2.5)

801.6 (3.7)

805.0 (3.6)

表 3-5 合成直後のナノ粒子の Fe と Co の化学種の組成比。

化学種 Agコアナノ粒子 合金コアナノ粒子

Fe0:Fe2+:Fe3+ 18:65:17 21:54:25

Co0:Co2+:Co3+ 23:46:31 29:41:30

図 3-12 Ag コアナノ粒子(●)及び合金コアナノ粒子(○)における (a) Fe0 と (b) Co0の存在割合の 経時変化。

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