第 4 章 ハイブリッドナノ粒子の表面修飾
4.3 配位子交換によるハイブリッドナノ粒子の水溶化
4.3.2 水溶性ポリマーとの配位子交換
4.3.4.3 吸収スペクトルによる評価
一方、吸収スペクトルの形状からもナノ粒子の凝集を評価することが可能である。金属ナ ノ粒子同士が凝集すると、互いのプラズモンがカップリングすることでLSPRピークが長波長 シフトする。これを利用した計測やセンサーなども報告されている[13-16]。本実験ではPLL−SH
及び PLL−COOH−SH 修飾ナノ粒子を異なる媒質に分散させ、2 時間後の分散液の様子を写真
撮影し、吸収スペクトルを測定した。まず、1000 μg/mLの濃度で純水中に分散したPLL−SH修 飾ナノ粒子とグリシンバッファー中に分散したPLL−COOH−SH 修飾ナノ粒子を準備した。そ の後、これらのナノ粒子分散液をpH = 7の異なる溶媒(PBS、DMEM、10 wt%のFBSを含む
DMEM)に添加し、最終的な粒子濃度が100 μg/mLとなるように分散液を調整した。図4-8に
PLL−SH及びPLL−COOH−SH修飾ナノ粒子を各溶媒に分散させた直後と2 時間後の写真を示
す。図4-9には2 時間後の各々のナノ粒子分散液の吸収スペクトルを示し、LSPR ピーク波長 を表4-1にまとめた。この結果からPLL−SH修飾ナノ粒子はPBSとFBSを含まないDMEM中 では分散不安定となり沈殿することがわかった。PLL−COOH−SH 修飾ナノ粒子の場合は PBS 中のみで分散不安定となり沈殿することがわかった。
4.3.5 水分散Ag@FeCo@Agナノ粒子の磁気特性
水分散ナノ粒子の磁気特性を調べるために、凍結乾燥したPLL−SH修飾ナノ粒子の磁化測
定を SQUID によって行った。なお凍結乾燥は測定前日に行った。PLL−SH修飾ナノ粒子に含
まれる PLL−SH 質量を求めるために窒素雰囲気下で熱重量分析を行った(図 4-10a)。その結
果、ナノ粒子の質量の約50%がポリマー由来であることが示唆された。図4-10bはPLL−SH修 飾ナノ粒子のMSの値を配位子交換後の時間に対してプロットした図である。図中、黒丸は合 成直後のナノ粒子のMSの値を示し、青丸はPLL−SHで配位子交換した後のナノ粒子を水に分 散させた状態で保存した後のMSの値を示す。赤丸はPLL−SHの質量を差し引いて計算したMS
の値である。配位子交換と水中での保存により粒子が徐々に酸化されることが示唆された。
図 4-8 PLL-SH 修飾ナノ粒子(左列)と PLL-COOH-SH 修飾ナノ粒子(右列)を各溶媒に分散させた 直後(左)と 2 時間後(右)のナノ粒子分散液の写真。
表 4-1 水分散ナノ粒子を各溶媒に分散させてから 2 時間後の LSPR ピーク波長。
溶媒 PLL−SH修飾ナノ粒子 PLL−COOH−SH修飾ナノ粒子
水/グリシンバッファー 414 nm 419 nm
PBS 438 nm 434 nm
DMEM(-FBS) 443 nm 422 nm
DMEM(+FBS) 423 nm 421 nm
図 4-9 (a) PLL-SH 修飾ナノ粒子を、水(黒)、PBS(赤)、FBS を含まない DMEM(緑)、または FBS を 含む DMEM(青)に分散させたときの吸収スペクトル。(b) PLL-COOH-SH 修飾ナノ粒子を、グリシン バッファー(黒)、PBS(赤)、FBS を含まない DMEM(緑)、または FBS を含む DMEM(青)に分散させ たときの吸収スペクトル。
図 4-10 (a) PLL-SH 修飾ナノ粒子の熱重量曲線。(b) MSの経時変化。黒:合成直後の Ag@FeCo@Ag ナノ粒子、青:水に分散させた PLL-SH 修飾ナノ粒子、赤:PLL-SH の質量を差し引いた PLL-SH 修 飾ナノ粒子のMS。