第 6 章 総括
A.2 異種金属原子間での電子移動について
A.3.2 拡散律速による核成長 [ 1]
粒子の成長は過飽和状態にあるモノマーが粒子表面へ拡散し、表面で反応することで成長 する。粒子成長速度を定式化するために、核成長している粒子の界面近傍でのモノマー濃度を 考える。図A-6aには半径 r の球状粒子の模式図を示す。周囲の拡散層の厚みがδで、粒子中 央から拡散層内の同心円までの距離がx である。図 A-6bには拡散層での濃度変化を示した。
粒子表面(x = r)におけるモノマー濃度をCiで、バルクでのモノマー濃度をCbで示している。
Ceは粒子からモノマーが溶出するときの流速と粒子に取り込まれるモノマーの流速が等しい ときの粒子界面における濃度で、このとき、固液平衡が成立し、粒子の成長速度はゼロとなる。
粒子近傍のモノマー濃度は時間が経過するにつれ、粒子が成長し、青色で示した過程を辿り、
最終的にCi = Ce = Cbとなり、このとき粒子の成長は止まる。
拡散層中での粒子からの距離xにおける球状表面を通過するモノマーの全流速はフィッ クの法則で表される。
dx DdC x
J 4 2 (A-1)
Dは拡散係数、Cは粒子からの距離xにおけるモノマーの濃度を表す。粒子に取り込まれるモ ノマーの拡散が定常状態であるとき、Jはxによらず定数となる。従って、式(A-1)をr+δから rまでxに対して積分すると、次式が得られる。
) )(
( 4
i
b C
r C
J Dr
(A-2)
また、モノマーの粒子表面での取り込み反応を単純な一次反応と仮定し、kを速度定数とする と、粒子表面において取り込まれるモノマーの流速は次式で記述される。
) (
4 r2k Ci Ce
J (A-3)
式(A-2)と(A-3)から、式(A-4)を得る。
r kr D C C
C
C 1
i b
e
i (A-4)
図 A-6 (a)球状粒子周囲の拡散層。(b)粒子近傍のモノマーの濃度プロファイル。
一般的にナノ粒子の成長機構には2つの律速段階が存在する。拡散律速による成長と表面 での反応律速による成長である。粒子成長が拡散律速により制御されているときD << krとな
り、Ci はCeに近づく。式(A-2)のCiにCeを代入すると次式を得る。
) )(
( 4
e
b C
r C
J Dr
(A-5)
粒子に取り込まれるモノマーの流速は、Vmを固体のモル体積とすると粒子の線成長速度を用 いて式(A-6)で表される。
dt dr V J r
m
4 2
(A-6)
式(A-5)と(A-6)より、
b e
m
1
1 C C
DV r dt
dr
(A-7)
を得る。一方、粒子表面での反応が粒子成長を制御する場合D >> krとなり、Ci はCbに近づ く。式(A-3)のCiにCbを代入し式(A-6)に代入することで、次式が得られる。
) ( b e
m C C
dt kV
dr (A-8)
上式から、表面での反応が律速の場合には粒子成長は粒径に依存しないことがわかる。
ところで、式(A-7)の Ceは厳密には粒子の粒径に依存する。それは粒径が小さくなると表 面の効果に伴い融点が降下する為である。この現象はギブス-トムソン効果と呼ばれ、次式で 表される。
rRT C V
Ce 2 m
exp
(A-9)
C∞は無限平面に対する平衡溶質濃度、σは表面自由エネルギーを表す。ここで、2σVm/rRT << 1 のとき、Ceは式(A-10)、またCbは式(A-11)で記述される。
rRT C V
Ce 2 m
1
(A-10)
RT r C V
Cb 2* m
1
(A-11)
拡散層が無限大と仮定すると、典型的な拡散律速における粒子成長速度は、式(A-7)に式(A-10) 及び (A-11)を代入することで得られ、
r r r K
dt
dr 1 1
*
D (A-12)
RT C KD2DVm2
(A-13)
と表される。式(A-12)が本論文の式(2-5)である。
参考文献
1. Sugimoto, T. Preparation of Monodispersed Colloidal Particles. Adv. Colloid Interface Sci. 1987, 28, 65-108