我が国は、世界一の長寿国となったが、健 康寿命と平均寿命の明らかな乖離は、誰かの れ、市町村には地域居住の継続をめざした地
域包括ケアシステム構築が責務となってい る。さらに2014年には、医療・介護総合確保 推進法として19本の関連法案が一括で審議 され可決された。もはや在宅医療の普及推進 は国家的プロジェクトであり、在宅医療への 期待は一層大きなものとなっている。
はじめよう!在宅医療 ~今、医療の場は地域へ~
http://monowasure.org/ninchiw/information/00000002/ (国立長寿医療研究センター)
Ⅰ. 在宅医療の心と技
Ⅱ. 在宅医療の実際
Ⅲ. 病状変化への対応
図表14
図表14
市町村別在宅看取り率
2011
年人口動態調査死亡票をもとに算出独立行政法人科学技術振興機構(JST) 協力のもと、厚生労働省にデータ提供申請
(*) 不慮の死亡例を除き、「自宅・老人ホーム・老人保健施設・
その他」での死亡数を総死亡数で割ったもの
平均 18.12 % 標準偏差 8.03 %
レンジ 68.75 % (**) 6等分+上位5 % 図表13
図表13
地域包括ケア時代の在宅医療
現代の在宅医療の質は病院医療にひけをとるものではない
● 医療機器 介護機器の発展
● 在宅で使いやすい薬 創薬 投与経路の変更
● 各種介護系生活支援サービスの充実(介護保険制度)
● 地域ネットワークの整備:地域ケア力の向上
緊急通報システム・認知症見守りネット・虐待防止ネット等
● 情報ネットワークの整備:クラウドコンピューティングの活用 電子カルテ スマートフォン テレ・メディスン等
超高齢社会 かかりつけ医のミッション
生活の場で看取る 最善の医療の結果としての安らかな死 訪問看護師との連携の重要性
かかりつけ医:病態判断(診断)・指示・責任
図表15
図表15
定の期間があることの証左といえる。さらに いえば、要介護期間を経て、大部分の高齢者 が命を閉じるということでもある。長年通院 できた外来患者も徐々に移動が困難となった り、認知機能が低下したりして、通院が途絶 えがちとなっている現実は、一般のかかりつ け医の偽らざる実感ではないだろうか。推計 では今後受療率が低下し、多くの患者が虚弱 化し、いわゆる「フレイル」や「サルコペニ ア」など加齢に基づく生活障害と共に暮らす こととなる。要介護状態となった、虚弱な高 齢者に対しての健康課題の解決は、疾病治療 を最優先とする従来の病院完結型の医療シス テムでは困難となっている。猪飼周平氏の著 書「病院の世紀の理論」では、20世紀を病院 の世紀と位置づけ、医療がより福祉的に、地 域的に、包括的になるのは今世紀の必然と結 論付けている。医療が介入した妥当性の尺度 にQOLという新たな物差しが登場し、実際 の終末期医療に対する緩和ケアへのニーズの 高まりは彼の論理を裏付けるものである。
1分1秒命をつなぎ、より長寿のために医療 が求められているのではなく、苦しむことな く、安らかに天寿を全うするために緩和を中 心とした医療が必要とされている。終末期医 療がどのようにあるべきかという医学的な課 題の整理と同時に、過度に病院に依存した終 末期医療から、自らが望む終末期医療の姿を 明確に言語化するのは国民側の課題ともいえ る。
11.おわりに
(図表15)在宅医療にはさまざまな誤解や偏 見があるが、在宅医療の質は、もはや病院医 療にひけをとらない水準となっている。外来 診療の合間に1症例でもよいので在宅医療に 挑戦してみてはどうか。入門症例は、かかり つけ医として信頼関係が、がっちりと構築さ れている患者・家族からの依頼である。しっ かりとしたケアマネジャーがかかわり、24時 間対応の力量ある訪問看護ステーションとの 連携を条件とすれば、24時間の在宅医学管理 はさほど負担にならないはずである。
脱水時の補液や、採尿、採血などは訪問看 護師に任せることができ、病棟での入院患者 管理と手続きは同様である。薬剤師に居宅で の服薬指導を指示すると、必要な薬を自宅ま で運び服薬管理も任せることができる。訪問 看護師が日頃の養生法を適切に指導してくれ れば、安定した全身状態での療養が長期に可 能となり、その間に患者や家族との信頼をさ らに厚くすることができ、その結果看取りま で支えさせていただくことになる。日常の外 来診療とは少し違った成功体験から在宅医療 の素晴らしさを実感していただきたい。
参考文献
1)太田秀樹:在宅医療の過去・現在・未来. 「か かりつけ医の在宅医療 超高齢社会―私たち のミッション. P77-80, 公益社団法人日 本医師会, 2013
2)太田秀樹:地域包括ケアシステムにおける在宅 医 療 . 「 日 本 再 生 の た め の 医 療 連 携」.P210-216, 株式会社スズケン, 2012 3)太田秀樹,猪飼周平:「病院の世紀」から「地域 包括ケア」の時代へ―今まさに起こっている”
改革”を裏付ける理論と実践, 訪問看護と介 護, 17:P1-9, 2012
4)太田秀樹:元気なうちから知っておきたい在宅 医療. 厚生労働省平成24年度在宅医療連携 拠点事業報告書, 医療法人アスムス, 2012 5)太田秀樹:在宅医療 こころと技. 「治す医療 から支える医療へ 超高齢社会に向けた在宅 ケ ア の 理 論 と 実 践」. P2-50, 木 星 舎, 2012
6)太田秀樹:在宅医療普及推進と診療所の役割―
在宅医療支援診療所の現状. 医学のあゆみ 239:P517-523, 2011
7)猪飼周平:病院の世紀の理論, 株式会社有斐 閣, 2010