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5.地域連携(組織・団体)と   在宅療養支援診療所

携すると、医師の負担感は相当軽減される。

さらに、在宅療養支援診療所が連携し、一定 の要件を満たし機能強化型在宅療養支援診療 所として届け出ることで診療報酬がより有利 に評価される。

 現在、地域包括ケアシステム構築が基礎自 治体

(市町村)

の重要課題となっており、保 健所(都道府県)や基礎自治体との連携なく して、高齢者の地域居住の継続を支えること が困難になったと認識すべきである。

 図表は、筆者が運営する医療施設で24時間 365日在宅療養を支援するシステムである。

隣接する3つの市で、それぞれ在宅療養支援 診療所が連携し、機能強化型在宅療養支援診 療所として看取りまで支える在宅医療を提供 している。現在約300症例を対象として、望 まれれば、70%~80%の患者の終末期医療 を実践している。

6.対象疾患による特徴

(図表6)ⅰ)虚弱な要介護高齢者

 脳梗塞後遺症などでは、生命にかかわる疾 病を合併しないかぎり、日々のケアを丁寧に 行うと在宅療養期間は長期化することが多 い。大部分は要介護認定を受けているので、

介護家族への配慮を怠らないよう力量あるケ アマネジャーがかかわることで在宅看取りま で支えることも可能である。認知症が重度化 した病態で外傷や急性疾患などを合併した場 合は、介護家族の意向を重視し治療方針を決 めることが原則である。かかりつけ医の医療 理念や専門性、臨床経験が反映された判断と なる。患者自身に入院による治療の意義が理 解できなかったり、積極的な治療に協力でき なかったりする場合は、在宅医療を継続し、

緩和ケアを中心に自然の経過を支えることも

5.地域連携(組織・団体)と   在宅療養支援診療所

(図表5)良質の在宅医療を長く継続させるに は、 さまざまな社会資源の活用が必要であ る。デイサービスやレスパイトケアを導入す ることで、介護家族の疲弊を防止できる。ま た、療養者も社会交流の場が提供されると、

より活動的になり、いわゆるフレイル予防と なる。さらに誤嚥性肺炎など急性疾患を合併 した場合、積極的な加療によって治癒の期待

虚弱な要介護高齢者

■ 医療

フレイル・老年症候群の理解

認知症の人のケア 緩和ケアの知識・技術 終末期医療 老衰 死期の予後予測困難

■ 介護

療養期間の長期化 老々介護 認認介護 独居

■ 制度

介護保険制度の理解 ケアマネとの連携

■ 課題

居宅系高齢者施設管理者の意識 死亡診断目的の望まれない救急搬送 栄養管理

図表6

図表6

機能強化型在宅療養支援診療所(栃木市・小山市・結城市)

3

か所の在宅療養支援診療所が連携 訪問看護ステーションを併設

図表5

図表5

(図表7)ⅱ)がん終末期

 いわゆるホスピスケアの対象であっても、

重介護期間は2~3週間程度で、多くの症例で は、その時期まで、食事、排せつ、入浴など が自立している。したがって、要介護認定を 申請しても、予防給付の対象となることも少 なくなく、そのうえ介護依存が高まった時期 に区分変更申請を行っても、訪問調査を受け る時期には、すでに他界しているという矛盾 も抱えている。介護保険制度がいわゆるlong term careに対する制度であり、症状変化の 急激ながん末期になじみにくいのは当然とい える。

 緩和ケアが中心となり、介護よりも医療の 必要性が高い。 虚弱な高齢者のがんの場合 は、麻薬など強力な除痛を必要とすることは 比較的少なく、疼痛コントロールに苦慮する ことが少ないが、一方で若年者のがんの場合 は技能や経験が問われことが多い。

 現在でもがん告知を拒む家族と出会うこと は決して珍しいことではなく、対応に苦慮す ることもある。なお、ある程度死期を予想す ることができることは、老衰の終末期医療と の大きな相違といえる。

(図表8)ⅲ)神経・筋難病など

 介護保険の活用の道が閉ざされている場合 もあるが、医療の必要性が高く、人工呼吸器、

酸 素 療 法 ( H O T : H o m e O x y g e n  Therapy)、人工栄養(胃ろう・中心静脈栄 養:ポート)などで管理されていることが多 い。

 進行期では、終末期医療を視野に入れたか かわりが必要であるが、人工呼吸器の装着を 拒む場合など、医師として倫理的課題に直面 することもある。一方で若い症例では、肺炎 を合併した場合でも、治癒が期待できる病態 では、積極的に入院による確実な治療を選択 している。

がん終末期

■ 医療 ハイテク在宅:酸素療法 気管切開 ポート管理 カテーテル管理 緩和ケアの知識・技術・経験 予後予想可能

■ 介護 重介護期間が短い 若年者の場合 家族介護力乏しい

■ 制度 介護保険制度 がん対策基本法 在宅ホスピスケア

■ 課題

予防給付

区分変更申請時死亡 医療費高額

未だ未告知の症例

在宅移行後短期間での死亡

病院医師の在宅医療への認識 図表7

図表7

神経・筋難病

■ 医療

医療依存度高く、徐々に重症化

人工呼吸器 気管切開 胃ろう管理 バルン留置 合併症 入院医療適応判断苦慮

■ 介護

家族的介護 社会的介護

■制度

介護保険制度利用 一部 ケアマネジャー不在?

■ 課題

ケアサービス 地域間格差 基礎自治体に情報乏しい 医療費高額 償還

終末期医療 倫理的課題 人工呼吸器適応の社会的判断

図表8

図表8

(図表9)ⅳ)重症小児

 大部分の症例がNICUからの移行であり、

先天性の疾患によって、さまざまな疾病を合 併していることが多く、人工呼吸器、経管栄 養管理となっている。母親が中心となって介 護していることもあって、介護力は強力であ る。下気道感染症や急性腹症(経管栄養によ る胆のう炎)などで、入退院を繰り返す症例 が多い。NICUを備える総合病院が後方ベッ ドとなっており、悪性腫瘍などでない場合は 看取りを視野に入れてかかわることはない。

 成長という視点も重要で、長期にかかわる ことから就学などの課題も生じることとな る。なお、医療保険制度でのレスパイトケア が認められていないことや、また人工呼吸器 管理の小児を預かる施設も少なく、介護家族 の負担感は大きい。支援制度の充実が望まれ るが、都道府県格差がさらなる課題といえる。

(図表10)ⅴ)障害者

 脳性まひや事故による脊髄損傷、頭部外傷 などでは車いすでの生活が多い。若い症例で は、10年、20年と長期にわたるかかわりとな るが、 比較的安定した療養生活を続けてい て、小さな健康課題、いわゆる発熱、下痢、

脱水など往診によって対応する場合が多い。

生命にかかわる疾病を合併しない限り、入院 加療の適応は一般外来と同様と考えてよい。

 訪問リハビリテーション、訪問歯科診療、

尿道カテーテルなどの留置があれば訪問看護 等の介入が重要となる。

 「ⅵ)その他 精神疾患」などにおいては、

さまざまな理由で医療機関での管理を拒否す る患者も少なくない。在宅での医療管理が妥 当であると判断されれば、在宅医療の対象と 考えてよい。診療報酬上は通院困難者等がそ の対象であるが、患者宅へ赴く必要があれば 生活の場での医療の意義は大きい。

障害者

■ 医療

医療依存度低い 若年者 病態は安定

風邪・便秘・尿路感染など小さな健康問題への対応 口腔ケア リハビリテーション 重要

■ 介護

介護保険対象外 家族介護に依拠

長期化 療養環境整備 テクノエイド 自立支援の視点

■ 制度

障害者総合支援法(自立支援法)

■ 課題

在宅サービス地域間格差 家族の介護負担重い

図表10

図表10

重症小児

■ 医療

医療依存度高い 胃ろう 人工呼吸器 酸素療法 合併症入院加療原則(病院

/

地域

2

人主治医制)

■ 介護

家族介護 介護負担重い(母親による介護)

介護期間長期化(生涯)

■ 課題

社会資源乏しい 地域間格差 成長の視点 やがて成人に 就学(訪問学級 特別支援学校)

レスパイト施設少ない ケアマネジャー不在

図表9

図表9

エコー レントゲン 内視鏡

在宅医療のスキル

下野新聞掲載 2012129

図表11

図表11

活背景を含め、特に認知症が重度で在宅で加 療したほうが患者にとって有益であると判断 されれば、在宅療養を継続しながら加療する ことを勧めている。

 写真にあるように、在宅での胃ろう交換も 可能である。初回の交換は造設医への依頼を 原則としているが、 ろう孔形成されたあと は、特別に開発された内視鏡を用いて迷入が ないことを確認しながら自宅で行うことも可 能である。

(図表12)写真は、在宅での粉瘤の処置であ る。 症例は脊髄小脳変性症で寝たきりであ り、大学病院の神経内科主治医は専門外であ ること、腫瘍が良性であることを理由に経過 観察を指示した。しかし、徐々に増大するた め母親の希望で切除した。発汗が多く、感染 を合併する可能性が高いため摘出の適応があ ると判断した。在宅での小外科や侵襲的処置 を行う場合に重要なことは、患者・家族との 信頼関係である。

 かかりつけ医として長期にかかわった症例 では、在宅での処置や急性期疾患、外傷の治 療を患者・家族から希望されて行うことも多 い。