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医療と介護の一体的な見直し と介護保険制度

(図表5)これは医療・介護サービスの提供体 制改革後の地域包括ケアシステムを一面的に 表現した図である。必要な医療を外来医療や 在宅医療で享受しながら住み慣れた地域に住 み、急性疾患に罹患したら高度急性期や急性 期の病院で入院加療を受け、そこから回復期 や慢性期の病院で必要なリハビリや在宅復帰 支援を提供されて、再び地域へ戻り、そこで 地域包括支援センターや居宅介護支援事業者 のケアマネジャーによるケアマネジメントの もと、必要な予防・介護サービスを受けなが ら、できるだけ住み慣れた地域で暮らし続け ることを目指すことになる。このケアマネジ メントを行う際に、主治医意見書による情報 は単に要介護認定のためだけではなく、その 方の疾患の経過や将来予測、更に今後起こり うる医療ニーズやリスクマネジメント等の情 報や、そこから予測される医療・介護サービ スの必要性の助言等を提供するという点で、

非常に重要な位置を占めることになる。

出典:社会保障審議会介護保険部会(第55回:平成28年2月17日開催)資料 図表4

図表4

【特別養護老人ホーム・

老人保健施設】

【在宅介護サービス】

【急性期病院】

【高度急性期 病院】

【回復期病院】

・医師・看護師を多く配置

・質の高い医療と手厚い看 護により、早期に「急性期 後の病院」や「リハビリ病 院」に転院可能

・いつでも必要な場合に往診してくれる 医師が近くにいて、必要な訪問看護 サービスを受けることができる。

在宅 医療

・サービス付き高齢者向け 住宅や有料老人ホームなど 高齢者が安心して暮らせる 多様な住まい

⽼⼈クラブ・⾃治会・ボランティア・NPO 等

【生活支援・介護予防】

・ボランティア、NPO等の多様な主体による見守り、配食、買い 物支援等の生活支援サービスが充実

・社会参加が推進され地域での介護予防活動が充実

・24時間対応の訪問介護・看 護サービス、小規模多機能型 居宅介護等により、高齢者の 在宅生活を支援

入院医療 介護

「地域包括ケアシステムの整備」

医療、介護、住まい、予防、生活支援サービ スが身近な地域で包括的に確保される体制 を構築

連携強化

・病院の退院調整スタッフが連携先の 身近な病院を紹介

・自分で転院先を探す必要がない

【慢性期病院】

・身近なところで集中的なリハビ リを受けることができる。

・早期の在宅復 帰、社会復帰が 可能

発症 住まい

(患者さん・家族)

・地域の拠点として在宅介護サービス等も積極的に展開

医療・介護サービスの提供体制改⾰後の姿(サービス提供体制から)

外来 医療

歯科 医療 薬局

医師、歯科医師、薬剤師、看護師、介護支援専門員その他の専門職(※)の積極的な関与の もと、患者・利用者の視点に立って、サービス提供体制を構築する。

有床 診療所

※保健師、助産師、診療放射線技師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士、義肢装具士、救急救命士、

言語聴覚士、歯科衛生士、歯科技工士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士、社会福祉士、介護福祉士等

図表5

図表5

(図表6)今後の介護保険制度は、どのように 変革をとげていくのであろうか。その中心的 な概念が『地域包括ケアシステム』の構築で あり、そのために医療と介護のシームレスな 連携が必要となり、平成26年6月に医療と介 護の関係法案が一体的に改正された。介護保 険における主な改正内容が、地域包括ケアシ ステムの構築と、費用負担の公平化である。

 まず、地域包括ケアシステムの構築のため の具体策では、サービスの充実として①在宅 医療・介護連携の推進、②認知症施策の推進、

③地域ケア会議の推進、④生活支援サービス の充実・強化があり、重点化・効率化として、

①全国一律の予防給付(訪問介護・通所介護)

を市町村が取り組む地域支援事業に移行し、

多様化する、②特別養護老人ホームの新規入 所者を、原則、要介護3以上に限定すること があげられている。

 また、費用負担の公平化としては、低所得 者の保険料の軽減割合を拡大し、 その重点 化・効率化として①一定以上の所得のある利 用者の自己負担を引き上げる、②低所得の施 設利用者の食費・居住費を補填する「補足給 付」の要件に資産などを追加することがあげ られている。

 その他にも、①2025年を見据えた介護保 険事業計画の策定や、②サービス付き高齢者 向け住宅への住所地特例の適用、③居宅介護 支援事業所の指定権限の市町村への移譲や、

小規模通所介護の地域密着型サービスへの移 行等があげられている。

(図表7)特に「在宅医療・介護連携の推進」

については、医療と介護の両方を必要とする 状態の高齢者が、住み慣れた地域で自分らし い暮らしを続けることができるよう、地域に おける医療・介護の関係機関が連携して、包 括的かつ継続的な在宅医療・介護を提供する ことが重要とされた。そのため、関係機関が 連携し、多職種協働により在宅医療・介護を 一体的に提供できる体制を構築するため、都 道府県・保健所の支援の下、市区町村が中心 となって、地域の医師会等と緊密に連携しな

図表7

出典:社会保障審議会介護保険部会(第55回:平成28年2月17日開催)資料 図表

図表6

図表8

図表8 進することが重要とされており、「地域医師

会」の役割に言及されたことは注目したい。

(図表8)更に、単身世帯等の増加と共に、生 活支援を必要とする軽度の高齢者が増加する 中、ボランティア、NPO、民間企業、協同組 合等の多様な主体が生活支援・介護予防サー ビスを提供することの必要を指摘する一方、

大多数を占める元気な高齢者自身が、社会参 加・社会的役割を持つことが生きがいや介護 予防につながるとし、 生活支援・ 介護予防 サービスの充実と共に高齢者自身の社会参加 の必要性が強調されていることは注目に値す る。

(図表9)また、予防給付のうち訪問介護・通 所介護については、平成29年度末までに、す べての市町村が地域の実情に応じた取組がで きる介護保険制度の地域支援事業へ移行する ことになっており、ここでも既存の介護事業 所による既存のサービスに加えて、NPO、民 間企業、ボランティアなどの地域の多様な主 体を活用して高齢者を支援すると共に、前述 の通り高齢者は支え手側に回ることの重要性 も示されているのである。

(図表10)なお平成18年度の介護保険法改正 でその規定が削除され、経過措置が切れる平 成29年度末で廃止とされている「介護療養型 医療施設」については、現在、医療内包型施 設【新(案1-1)、新(案1-2)】や医療外付け 型住まい【新(案2)】等の新類型への転換を 図る案を中心に社会保障審議会の特別部会で 検討されているが、現時点(平成28年8月)

ではまだ結論に至っていない状況にある。

図表9

図表9

出典:社会保障審議会介護保険部会(第56回:平成28年3月25日開催)資料 図表10

図表10

介護保険における      かかりつけ医の役割

(図表11)介護保険利用者に対するかかりつ け医の役割としては、1)本人の心身の総合 的健康管理、2)介護者を含めた家族全体の 健康管理、3)本人・家族の意思決定に対す る援助、4)チームアプローチのコーディネー ター等があげられ、これからのかかりつけ医 に求められる機能としては、単に幅広い医療 知識だけでなく、介護や障害、福祉分野にも 一定程度の基礎知識を持った上で、常に生活 の視点としての医療提供の在り方を探求する 姿勢を保ちたいところである。

(図表12)平成26年度診療報酬改定で、地域 包括診療料および地域包括診療加算が新設さ れたが、平成28年度診療報酬改定では、かか りつけ医機能のさらなる評価として認知症地 域包括診療料と認知症地域包括診療加算が新 設された上に、地域包括診療料に係る2次救 急指定病院等の施設基準要件が廃止され、ま た地域包括診療料・加算に係る医師配置基準 も3人から2人へと緩和されているので、変更 のない他の算定要件と共に留意したい。

(図表13)前述の地域包括診療料・加算をと るための要件としての、介護保険制度との関 わりについては、介護保険に係る相談を受け る旨を院内掲示し、主治医意見書の作成を行 い、更には①居宅療養管理指導又は短期入所 療養介護等の提供、②地域ケア会議に年1回 以上出席、③居宅介護支援事業所の指定、④ 介護保険の生活期リハの提供、⑤介護サービ ス事業所の併設、⑥介護認定審査会に参加、

⑦所定の研修を受講、 ⑧医師がケアマネ ジャーの資格を有する、⑨(病院の場合)総 合評価加算の届出又は介護支援連携指導料の 算定、の9項目のいずれかを満たすことが必 須とされているのでご留意いただきたい。

(図表14)介護保険からみたかかりつけ医の 具体的な役割としては、①居宅療養管理指導

(継続的な医学的管理と医療情報提供)、②主 治医意見書作成(認定調査の医学的補完)、③

図表12

図表12

図表13

地域包括診療料の条件(介護保険制度)

① 居宅療養管理指導又は短期入所療養介護等を提供していること

② 地域ケア会議に年1回以上出席していること

③ ケアマネジャーを常勤配置し、居宅介護支援事業所の指定を 受けていること

④ 介護保険の生活期リハを提供していること

⑤ 当該医療機関において、同一敷地内に介護サービス事業所を 併設していること

⑥ 介護認定審査会に参加した経験があること

⑦ 所定の研修を受講していること

⑧ 医師がケアマネジャーの資格を有していること

⑨ 病院の場合は、総合評価加算の届け出を行っていること、

又は介護支援連携指導料を算定していること

介護保険に係る相談を行っている旨を院内掲示し、要介護認定に 係る主治医意見書を作成しているとともに、下記のいずれか1つ を満たしていること。

図表13

介護保険利用者に対する かかりつけ医の役割

1)本人の心身の総合的健康管理 2)介護者を含めた家族全体の健康管理 3)本人・家族の意思決定に対する援助 4)チームアプローチのコーディネーター

図表11

図表11