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考慮する。 十分な問診を行い、 患者とのコ ミュニケーションをとり、生活習慣の修正お よび服薬指導を行う。降圧治療では、利尿薬 を含む作用機序の異なる薬剤を多剤併用す る。降圧薬は十分な用量を使用し、服薬の回 数や時間を考慮する。これらの病態では、臓 器障害が存在する可能性が高いこと、高リス ク群を多く含むこと、二次性高血圧の可能性 があることから、適切な時期に高血圧専門医 の意見を求める。

(図表47)軽症および中等症の本態性高血圧 症患者(WHOステージⅠ、Ⅱ)[平均48.8

±10.3歳]19例を対象として、自転車エル ゴメータ検査を実施した。被験者をテモカプ リ ル 群(2mg:9例)、 ニ フ ェ ジ ピ ン 群

(30mg:10例)の2群に無作為割り付けし、

4週間治療を行った。治療前後に安静時(30 分間横臥位)および多段階運動耐久性テスト の運動前、運動中、運動後、回復期(運動後 10分間仰臥位)の血圧および心拍数を測定し た。さらに、治療前後に、安静時および最大 運動負荷時の血漿中ノルエピネフリン濃度を 測定した。治療前、運動により血圧は有意に 増加し、運動終了後、前値に戻った。治療後 は、テモカプリル群では安静時、運動負荷時、

回復期ともに有意な降圧を示したが、ニフェ ジピン群では安静時と回復期には有意な降圧 がみられたが、運動負荷時には血圧は下がら なかった。また、心拍数もテモカプリル群で は治療前と差はなかったが、ニフェジピン群 では運動負荷時に心拍数の有意な増加を示し た。運動後/前の血漿中ノルエピネフリン濃 度比はテモカプリルでは-40%に比べ、 ニ フェジピンでは200%と増加し、交感神経機 能の亢進が示唆された19)

(図表48)血圧に関する指標をまとめてみる と、表のようになる。JSH20144)では、一般 的には、140/90mmHg未満を目標とする。

75歳以上の後期高齢者では、150/90mmHg 未満を目標とする。心血管病発症の危険が高 い糖尿病や、 蛋白尿陽性の慢性腎臓病では 130/80mmHg未満を目標とする。日本人間 ドック学会の基準値では、147/94mmHg以 下となっているが、日本人間ドック学会判定 基準で異常なしは129/84mmHg以下であ る。一方、特定健康診査(メタボ健診)での 基準値は、130/85mmHg未満となってい る。 それぞれの報告で基準値が異なってお り、混乱をきたしている。

 日本人間ドック学会の今回の「正常」の基 準値は、報道内容などの情報によれば、5万 人規模の持病がなくて検査項目で異常がな た。有酸素運動は、運動や昼間の交感神経系

の過緊張による血圧上昇を減弱する可能性が 考えられ、運動負荷による過剰昇圧群の高血 圧発症の危険を減らす可能性が示唆された。

血圧および心拍数の推移

Arita M. et al. : Hypertension Research 24(6), 671-678(2001)

60 80 100 120 140 160 180 200

(mmHg)220

**

**

**

**

**

**

Rest Max Recovery Exercise

テモカプリル(n=9)

Mean±SE Student T検定

*p<0.05

**p<0.01

収縮期血圧

Rest Max Recovery Exercise

60 80 100 120

(拍/分)140

拡張期血圧

Rest Max Recovery Exercise

ニフェジピン(n=10)

**

Rest Max Recovery Exercise

治療前 治療後

図表47

図表47

血圧に関する指標

収縮期(上の血圧) 血圧に関する指標

拡張期(下の血圧)

日本高血圧 学会の降圧 目標(高血圧 治療ガイド ライン2014 診察室血圧)

若年、中年の高血圧 患者

75歳以上の高齢者 糖尿病患者、慢性腎 臓病患者(蛋白尿陽 性の場合)など

日本人間ドック学会など の調査の基準範囲 日本人間ドック学会の判 定基準「異常なし」

特定健康診査(メタボ健 診)の基準値

60 80 100 120 140 160

90 未満 90 未満 80 未満

94 以下 84 以下 85 未満

140 未満

150 未満 130

未満 147 以下 129 以下 130 未満

図表48

図表48

図表49

ている。その結果、脳卒中や心筋梗塞・腎不 全などの発症が増え、結局は国民の福祉や医 療経済上も重大問題になっている。

 ガイドラインや教科書に書かれている治療 法を中心に、高血圧の治療について述べてき た。しかし、日常診療では患者の病態は一人 ひとり異なるために、ガイドラインの知識を いくらあてはめても解決しないことが多い。

EBMは個別化医療のアクションであり、「エ ビデンスに基づくガイドライン」をマニュア ルのように扱うのだと誤解している人もみら れる。エビデンスは玉石混合であり、その質 と誤差を批評し、妥当性と信頼性を評価する 能力を養うことが肝要である。

 臨床の現場で高血圧患者を目の前にしたと き、まずは血圧の測定を行うが、時を変えて 複数回行う。この際診察室での血圧だけでな く、家庭血圧の測定も併用する。診察室血圧 と家庭血圧の間に診断の差がある場合、家庭 血圧による診断を優先する。診察室血圧が正 常域血圧であっても、診察室外での血圧では 高血圧を示す状態を仮面高血圧という。仮面 高血圧の頻度は10~15%と報告されている。

メタアナリシスのよると、未治療および治療 中の仮面高血圧は、正常血圧に比べて心血管 疾患の予後が約2倍とされている。

 次に行うことは、高血圧による臓器障害の 把握と、二次性高血圧の除外である。高血圧 の持続による心血管病の発症・進展による死 亡や、QOLの低下を抑制するために、高血 圧治療が勧められる。高血圧は、心血管病の 主要な危険因子であり、特に脳卒中の最も重 要な危険因子である。高血圧患者の予後は、

高血圧以外の危険因子と高血圧に基づく脳心 腎疾患など、臓器障害の程度が関与する。脳、

血管、心臓、腎臓、糖代謝評価、自律神経な どの評価が必要である。簡便な起立負荷検査 による血圧変動の指標が、心血管疾患リスク の評価として有用である可能性が考えられる。

 医療は、個人を対象とした行為である。医 療の究極の目標は最適の個別化医療であり、

集団を対象としたEBMの実施ではない。患 者一人ひとりの病態に合わせた、最適の医療 とに計算されたものである。検査値が正規分

布するように、統計的に変換したうえで95%

信頼区間を計算し、その区間の下限値と上限 値を変換前の元の検査値に戻して基準範囲と している。検査値の基準値の算出法として、

極めて妥当な方法で、対象者数も極めて多く 信頼性も高いものである。しかし、心血管病 発症の危険性が高まるかどうか、治療介入の 必要性があるかどうかは検討されていない。

すなわち、この値の範囲であれば大丈夫とい うことを示す「正常」ではなく、正常と思わ れる人の検査の基準値というのが正確な表現 である。

(図表49)日本高血圧学会の血圧分類では、

高血圧を140/90mmHg以上としており、収 縮期、拡張期ともにその基準を下回っている ときに正常域血圧としている。 その中に至 適、正常、正常高値の3つの分類を設けてい る。実際、至適血圧を超えて血圧が高くなる ほど、全心血管病、脳卒中、心筋梗塞、慢性 腎臓病などの罹患リスクおよび死亡リスクが 順に高くなる。その確率は、I度高血圧で約3 倍、II度高血圧で約6倍、III度高血圧で約9倍 とされている。また、高血圧を治療すること によって、心血管病の発症は減ることが確認 されている。この分類は世界共通で、原則と して140/90mmHg以上の人は高血圧として 治療の対象とされている。

おわりに

 高血圧の学問は、20世紀末までに長足の進 歩を遂げてきて、 その成果を実地応用すれ ば、高血圧は今やほぼ完全にコントロール可 能で、高血圧患者といえどもほぼ天命を全う できるようになった。しかし、現状では高血 圧はいまだに世界中で一番多い病気で、日本 人でも約4,300万人が罹患しており、しかも その大部分の人たちが高血圧の真の怖さを知 らないでいる。高血圧は、ほとんど無症状で あるために軽視されがちで、たとえ治療を受 けていても降圧不十分で、140/90mmHg未 満までの降圧達成率は僅かに42%に留まっ

を行うことが求められる。現在、最も予後予 測に有効と考えられているのは、患者個人の リスク層別化である。わが国の高血圧学会の ガイドラインの診察室血圧に基づいた心血管 病リスク層別化では、 メタボリックシンド ローム(Mets)や糖尿病やCKDを伴う場合 は特に、リスクが高くなっている。

  降圧目標としては、 一般的な降圧目標は 140/90mmHg未満とする。心血管病のリス クが高い糖尿病、 蛋白尿陽性のCKDでは 130/80mmHg未満を降圧目標とする。臓器 障害を伴うことの多い後期高齢者では、

150/90mmHg未満を降圧目標とし、最終的 な降圧目標は140/90mmHg未満とする。

 生活習慣の修正は、それ自体で軽度の降圧 が期待されるので、降圧薬開始後も生活習慣 の改善を行う。減塩、体重の減量、飽和脂肪 酸を控え、野菜の積極的な摂取、節酒、有酸 素運動、禁煙が基本である。血圧のレベルが 高くなるほど、生活習慣の改善のみでは目標 降圧レベルに達することは困難であり、降圧 薬による治療が必要となる。

 降圧薬で血圧を下降させることにより、心 血管病の発症を予防できる。この効果は降圧 薬の種類によらず、降圧度の大きさに比例す ることが、大規模臨床試験のメタアナリシス から示されている。Ca拮抗薬、ARB/ACE 阻害薬、利尿薬、β遮断薬の5種類の主要降 圧薬はいずれも心血管病抑制効果が証明され ている。それぞれ積極的適応となる病態があ る。積極的適応がない場合の高血圧に対して は、最初に投与する降圧薬として、Ca拮抗

薬、ARB/ACE阻害薬、利尿薬の中から選 択する。β遮断薬は、単剤あるいは併用療法 において糖尿病惹起作用、臓器障害・心血管 病抑制効果で他薬に劣るエビデンスがある。

 治療抵抗性高血圧およびコントロール不良 高血圧においては、食塩過剰摂取・肥満・飲 酒などの生活習慣、 服薬アドヒアランス不 良、白衣高血圧・白衣現象、降圧薬の不適切 な選択や用量、睡眠時無呼吸症候群、原発性 アルドステロン症などの二次性高血圧、腎機 能低下や体液量増加、ストレス、他薬剤によ る降圧効果の減弱、などの要因を考慮する。

生活習慣の修正および服薬指導を行う。降圧 治療では、利尿薬を含む作用機序の異なる薬 剤を多剤併用する。降圧薬は十分な用量を使 用し、服薬の回数や時間を考慮する。

 運動負荷時の血圧や血行動態は、正常者の 将来の高血圧発症の予知因子ともなり、また 将来の心血管病発症との関連も考えられる。

有酸素運動により、昼間と24時間血圧を有意 に抑制することができた。また、ACE阻害薬 は、短時間作用型Ca拮抗薬に比べ運動負荷 時の血圧を有意に抑制したことから、交感神 経系の過緊張を抑えその有用性が示唆された。

 高血圧の治療は、血圧のレベル、合併症、

病態や保護するべき臓器が幅広く異なること が多く、1例1例の患者の病態をよく考えての 治療が重要である。診察時血圧にのみ頼るの ではなく、ABPMや家庭血圧、運動負荷時血 圧などの指標も参考にして、重篤な心血管病 の発症を予防し、患者に健康で幸せな生活を していただくことの一助になれば幸いである。