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高粘性流体のせん断シミュレーション

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5.4 大変形を考慮した壁境界モデルを用いた流動解析

5.4.2 高粘性流体のせん断シミュレーション

本手法を用いた粘性項の計算精度の確認として,図-5.44 に示すように壁境界を動かす ことによって,水の10万倍の粘性を持つ高粘性流体を対象とする単純せん断試験の2次元 解析を行った.この問題は Couette 流として知られるものであり,流体の両端が壁境界と

吸着することで生じる速度分布の非定常解は,次式に示す級数解より得られる14)

!"#, %& = '(+ ∑+*, *'"−1&* sin 2* #3 exp 2−7*8 88 %3 (5.3) ここで, !は流体の速度, 9は移動条件とする上端境界の速度,#は固定境界とする下端境 界からの距離, は上下の壁境界間距離,:は流体の動粘度である.

本解析ではせん断試験によって生じる速度分布を理論解と比較することで確認を行った.

図-5.44 Couette流問題 (1) 解析モデルと解析条件

上下の壁境界間距離が0.2mである解析モデルを作成し,単純せん断試験の模擬解析を行 った.流体モデルの幅は,自由端境界の影響が小さくなるように壁境界間距離の4倍とし,

中央断面の流速を理論解と比較した.壁面境界の三角形パッチの 1 辺の大きさは,この問 題では影響が小さいため,初期粒子間距離の約2.2倍とした.上部の壁境界は水平方向速度

0.1m/s とし,下部の壁境界は固定条件とした.解析は粘性項の計算を陽解法で行うケース

と,陰解法で行うケースの計 2 ケース行い,陰解法ケースについては,陽解法ケースに使 用した時間増分の10倍の時間増分を設定した.高粘性流れの問題で粘性項計算を陰解法で 行うことのメリットは第 4 章において説明したが,壁面におけるノンスリップ境界の吸着 条件を簡便に満たすことが可能である.計算条件一覧を表-5.6に示し,解析条件の模式図 として陽解法ケースの初期時刻と解析終了時刻における速度分布を図-5.45に示す.

表-5.6 Couette 流問題の解析条件

初期粒子間距離 0 . 0 0 5 [m ]

初期時間増分 5 . 0 e - 5 or 5 . 0 e - 4 [s]

流体密度 1 0 0 0 .0 [kg/ m

3

]

流体粘度 1 0 0 . 0 [Pa・ s]

重力加速度 0 . 0 [m / s

2

]

影響半径 0 . 0 1 5 [m ]

壁境界間距離 0 . 2 [m ]

上部壁速度 0 . 1 [m / s]

図-5.45 初期時刻と終了時刻における流速分布 (2) 解析結果

解析結果より中央鉛直断面における速度分布を下端からの距離で整理し,その時刻歴を 陽解法ケースについては図-5.46に,陰解法ケースについては図-5.47に示す.どちらの 速度分布も理論解とよく一致しているが,陰解法を採用したケースについては,0.01 秒経 過時の流速分布に僅かな誤差が認められる.この誤差は時間増分に起因することを確認し ており,時間増分を細かくすることで解消する.

図-5.46 陽解法ケースの流速分布履歴

0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 0.16 0.18 0.20

0.00 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.10

Z-Coordinate [m]

X-Velocity [m/s]

Numerical t=0.01s Numerical t=0.05s Numerical t=0.10s Numerical t=1.00s Theoretical t=0.01s Theoretical t=0.05s Theoretical t=0.10s Theoretical t=1.00s

図-5.47 陰解法ケースの流速分布履歴 (3) 考察とまとめ

1ステップあたりの計算時間は陰解法ケースの方が長いため,時間増分を陽解法ケースと 同等に設定することは,計算効率の観点からは好ましくない.しかし,粘性項の釣り合い 方程式の計算における線形ソルバーの収束性は,圧力のポアソン方程式に比べて良好であ るため,同じオーダーの時間増分の選択は十分に現実的である.Couette流のように一様な 流れ場の 2 次元解析については,線形ソルバーの収束が非常に速く,この解析における陰 解法ケースの計算時間は,陽解法ケースの約1/9であった.陰解法ケースの時間増分を陽解 法ケースと一致させて計算を実施した場合については更に収束が速く,両ケースの総計算 時間に有意な差は認められなかった.

解析結果より,本手法を用いた粘性項の計算精度を確認し,三角形パッチによる壁境界 モデルが壁境界の粘着条件を満たす上で有効であることを確認した.非定常解を精度良く 計算するには小さい時間増分の設定が必要であるが,ある程度の誤差を許容することで,

陽解法では計算不可能な時間増分を陰解法では設定できることを確認した.

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