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円筒タンクの静水計算による動作検証

ドキュメント内 著者別表示 Watanabe Takashi (ページ 142-146)

本研究において開発した連成解析手法と解析コードの流体-構造連成問題への適用性を検 討するため,固定屋根式タンクのスロッシング問題を対象とした数値解析を実施した.ス ロッシングは 5 章で述べたように,流体が比較的長周期の地震動で加振されることで液面 揺動を生じる現象であり,短周期成分によって容器の壁体が振動することで生じる連成振 動(バルジング)12),13)とは異なる問題である.それぞれの現象は着目すべき振動数域が異 なるため,相互作用はあまり問題にならないと考えられており 13),本研究ではスロッシン グのみに着目した.

本節では,スロッシング解析に適用する前段階の検証として,円筒タンクの静水計算を 行った.静水状態のタンク底面は静水圧による等分布荷重Eを受けており,底面以外の面を 拘束して半径Fの底面を自由とした場合の底面中央の最大たわみ GHIは,端部側面を固定し た円板の等分布載荷の理論解より計算できる14)

GHI JK1

LM) (6.12)

N # #*P' OQ (6.13)

ここで,Nは板の曲げ剛性であり弾性係数Rとポアソン比Sおよび板厚 より計算できる.

開発した解析コードは動的問題を扱うものである.検証のため静水圧をステップ荷重と して載荷するとタンク底面は減衰振動を生じながら,最終的に静的釣り合い状態に至るこ とを確認した.本解析では静水圧下のタンク底面の中央鉛直たわみの妥当性を検証する.

6.2.1解析モデルと解析条件

本章で述べる流体-構造連成解析で対象とする固定屋根式円筒タンクは貯水を目的とする コンクリート製の容器構造を想定した.流動体と構造の解析モデルの中央鉛直断面図を図

-6.6に示す.SPH側の壁面境界はFEMメッシュの表面を抽出したものであり,壁面境界 の頂点とFEMメッシュの節点は座標が一致している.FEM側の円筒タンクはソリッド要素 でモデル化し,メッシュ作成が容易であることから四面体要素によるモデル化を行った.

実用的にはタンクでは要素数を少なくできるシェル要素を用いた方が有用と考えられるが,

本研究では構造の汎用性を考慮しソリッド要素モデルを採用した.なお,簡単のため四面 体1次要素を採用した.

図-6.6 固定屋根式円筒タンクの解析モデル

本解析で作成した円筒タンクモデルは,ソリッド要素サイズの関係からプレート厚さを

一様に0.25mと厚く設定しており,材質は全てコンクリートとして扱った.なお,コンク

リート製タンクはPC鋼材や鉄筋による補強が必要であるが,解析モデルでは鋼材と初期応 力は考慮せず,破壊を考慮しない線形弾性体として扱った.流体と接する円筒タンクの隅 角部については,5章で述べたように大曲率部の粒子密度誤差を原因とする不安定性を抑制 し,粗い時間増分での解析を可能とするために曲率半径0.4mのRを設けた.従って,タン ク底面の厚さが0.25m である部位は半径4.6mの領域となり,静水解析では鉛直たわみに のみ着目することからこれより外側の領域を完全拘束とした.

タンクの貯蔵流体は水であり,液位は7.8mに設定した.表-6.2にFEM解析とSPH解 析のそれぞれの解析条件をまとめて示す.FEM解析で設定したRayleigh減衰については静 水計算には影響がないため,設定値はスロッシング解析について述べる次節で補足する.

表-6.2 FEM と SPH の解析条件一覧 F E M 解 析 条 件

F E M 解 析 条 件F E M 解 析 条 件

F E M 解 析 条 件 解 析 条 件 詳 細解 析 条 件 詳 細解 析 条 件 詳 細解 析 条 件 詳 細 S P H 解 析 条 件S P H 解 析 条 件S P H 解 析 条 件S P H 解 析 条 件 解 析 条 件 詳 細解 析 条 件 詳 細解 析 条 件 詳 細解 析 条 件 詳 細

要素数 3 7 , 8 3 0 粒子数 2 2 2 , 5 6 7

節点数 1 2 , 6 2 6 初期粒子間距離 0 . 1 4 m

弾性係数 2 1 . 0 GPa 流体密度

1 0 0 0 kg/ m

3

ポアソン比 0 . 3 流体粘度 0 . 0 0 1 Pa・ s

密度 2 4 0 0 kg/ m

3

積分半径 0 . 4 2 m

時間増分 0 . 0 2 s 時間増分 0 . 0 0 2 s

6.2.2四面体ソリッド要素の計算精度

前項で述べたようにFEM解析では四面体1次要素を採用しており,部材の曲げが重要と なる問題では,せん断ロッキングが生じることで変形解が過少評価されることが予想され た15).そのためタンク底面の最大たわみの理論解との比較よりむしろ,FEMの解析モデル に等分布荷重を載荷した際の非連成の静的変形解と,流体-構造連成解析による動的変形解 のたわみ量の比較が適切であると考えた.しかし,モデル化によって生じる誤差の大きさ を把握しておくことも重要であり,本項では静水解析精度の予備検討として要素分割と静 的たわみの関係についても確認を行った.

四面体ソリッドの要素分割による解析精度の確認解析については,直径10m,厚さ0.25m の厚肉円板モデルを対象に,要素分割数を変えて3ケースのモデル化を行った.表-6.3に 要素分割と変形解より得られる中央鉛直たわみの関係を整理し,理論解と比較して示した.

また,静的変形解より変位量の分布を各ケースの最大値レンジでコンター表示した上面図 を図-6.7に示す.上面図からは確認できないが,Coarse meshケースとFine meshケースで は板厚さ方向のソリッド層数は1層,Very fine meshケースで3層の要素分割となっている.

表-6.3 要素分割と中央鉛直たわみの関係

図-6.7 円板の等分布載荷解析結果 ケ ー ス 名

ケ ー ス 名ケ ー ス 名

ケ ー ス 名 要 素 数要 素 数要 素 数要 素 数 節 点 数節 点 数節 点 数節 点 数 中 央 鉛 直 撓 み中 央 鉛 直 撓 み中 央 鉛 直 撓 み中 央 鉛 直 撓 み

C o ar se m e sh 5 9 0 2 2 8 1 . 6 0 m m

Fin e m e sh 1 0 , 3 7 2 3 ,2 5 8 8 . 0 0 m m Ve r y fin e m e sh 1 0 6 ,8 2 1 2 4 , 7 4 9 1 6 . 1 2 m m

T h e o r y so lu t io n 2 4 . 7 8 m m

High - o r de r e le m e n t

1 0 , 3 7 2 1 9 , 8 0 7 2 4 . 7 6 m m

解析結果より,四面体 1 次要素を用いた全てのケースで理論解より大幅に小さな鉛直た わみが得られており,円筒タンクの静水解析で得られるたわみ量は理論解の数分の一とな ることが推測できる.なお,参考のために高次要素による検討も行い,Fine meshケースの 要素分割数でNastranの四面体2次要素を用いた場合,変形解は理論解とほぼ一致すること を確認した.

本項の検討より,静水計算による最大たわみを非連成の静的変形解と,流体-構造連成解 析による動的変形解を比較することが適切であることが確認できた.流体-構造連成解析に よる静水計算の動作検証は次項で行う.

6.2.3連成解析による静水計算

節点の支配面積に静水圧をかけて等分布載荷とした非連成の静的解法と,本研究で開発 した流体-構造連成解析手法を用いた動的応答解による静水計算の解析結果について,中央 鉛直たわみの大きさについて表-6.4に整理した.動的解の中央鉛直たわみ量は2秒経過時 から20秒経過時までの平均値としたが,ステップ荷重のかかる解析初期の時間断面を除き,

たわみ量の有意な振動は確認できず,初期の衝撃による振動の減衰後は流動体解析による 水圧と構造解析による復元力が釣り合っていると考えられる.また,中央鉛直断面の鉛直 たわみの分布を図-6.8 に示し,静的解と動的解の 20 秒経過時の変形の様子を変形倍率 1000倍で比較した.

前項で検討した通り,静的解も動的解も理論解に比べて鉛直たわみ量は小さく評価され るが,静的解と動的解の結果については一致していることが確認できる.静水計算は連成 の影響がほぼないため検証解析として十分ではないが,本研究において開発した解析コー ドが正しく機能していることを確認した.

表-6.4 非連成静的解と連成動的解の中央鉛直たわみの比較 ケ ー ス 名

ケ ー ス 名 ケ ー ス 名

ケ ー ス 名 要 素 数要 素 数要 素 数要 素 数 節 点 数節 点 数節 点 数節 点 数 中 央 鉛 直 撓 み中 央 鉛 直 撓 み中 央 鉛 直 撓 み中 央 鉛 直 撓 み

St at ic (n o n C ou plin g) 3 7 , 8 3 0 1 2 , 6 2 6 4 . 3 6 m m Dyn am ic (C ou plin g) 3 7 , 8 3 0 1 2 , 6 2 6 4 . 3 6 m m

T h e o r y so lu t io n 1 7 . 7 5 m m

図-6.8 静水計算結果より中央鉛直断面の鉛直たわみ分布の比較

6.2.4まとめ

本節では開発した解析手法と解析コードの動作検証として,円筒タンクの底面が静水圧 によって変形する問題について,中央鉛直たわみの理論解と非連成の静的解および開発し た連成による動的解の結果を比較した.解析結果は理論解と比較してたわみが小さく評価 される傾向にあるが,これは非連成の静的解も同じであり,四面体ソリッド要素のせん断 ロッキングに起因する問題であることを確認した.非連成静的解と連成動的解の振動減衰 後の解析結果はほぼ一致しており,静水問題に関しては開発した手法で精度良く解析でき ることを確認した.

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