第 3 章 原子核乾板を用いた事前評価法の開発
3.2 微粒子から放出された荷電粒子に起因する飛跡の計算モデル
3.2.2 飛跡読み出しと事前評価に関する考察
飛跡の記録数と読み出し数の関係をFig. 3.21に示す。14 μmの飛跡では、およ そ 300 本の飛跡が記録されると読み出しが飽和する傾向が見られた。そこで、
原子核乾板に記録可能な飛跡数を 300 本以下として、照射条件から兵器級プル トニウムの事前評価が可能なプルトニウム量について検討する。また、記録さ れる飛跡数を検討するにあたり、兵器級をTable 3.3に、原子炉級・燃料級をTable 3.5のものを代表値として扱う。
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α粒子及び熱中性子の照射条件の前提として、FT法では、輸送・照射・冷却・
再輸送に10日と見積もられ [11]、照射熱中性子フルエンスは~1015 cm−2が用い られている。そこで、輸送の前後で試料操作が可能であるとすると、α粒子記録 時間は最長で10日となり、熱中性子フルエンスを抑えることで短縮が可能であ ると考えられる。そこで、α粒子記録時間を1, 5, 10日とし、αTとFTの本数が 同程度かつ合計の飛跡数が300本弱になる時のプルトニウム含有量及び照射条
件はTable 3.6となり、α粒子記録期間が10日とした時にプルトニウム含有量130
fgの微粒子試料の兵器級評価が可能であり、期間短縮により5日で230 fg、1日
で1.3 pg含有試料の評価が可能になる。
また、α粒子記録時間が10日、熱中性子フルエンスを6×1013 cm−2とした時、
兵器級、燃料級、原子炉級の上限含有量と飛跡数をTable 3.7に示した。燃料級・
兵器級の評価が可能な量はそれぞれ85 fg、36 fg以下の場合に限られるが、2.1 節で述べた通り、飛跡数が読み出し可能数を超える場合は、対象の試料を非兵 器級プルトニウムとして評価することが可能である。
さらに、記録飛跡数の統計的な不確かさから、評価グレードの不確かさの扱 いについて検討を行った。前述の照射条件において、評価グレードの閾値に2.2.2 項で求めたRL = 0.3、RH = 1.8を用い、グレード評価にあたって不確かさの分だ
Fig. 3.21 αT記録数と読み取り数の関係
Table 3.5 燃料級、原子炉級プルトニウムの同位体比の一例
原子炉 サンプルID 238Pu 239Pu 240Pu 241Pu 242Pu 燃料級 美浜 3号機 JPNNM3PWR-5 0.425% 74.9% 16.7% 6.72% 1.19%
原子炉級 福島第ニ 2号機 JPN2F2BWR-5 2.18% 47.9% 29.2% 13.0% 7.69%
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け評価値を小さくし、常に安全側になるように評価した。この結果、飛跡数が 少ないほど不確かさが大きくなるため、Table 3.8、Table 3.9に示したようにプル トニウム含有量が少なくなるにつれ評価グレードが過大評価になる。さらに、
プルトニウム含有量毎に、SFCOMPOで得られた130通りのデータについて評価 値の傾向を調べた所、Table 3.10となった。2 fgではほとんどが兵器級に過大評 価しているため、精度良くグレードを評価するには試料の粒径等を基準に、飛 跡数が少なくなり過ぎないように照射条件を設定する必要があるものの、5 fg では兵器級に過大評価した数が全体の半数以下に減っており、さらに含有量が 増えるに連れ評価精度が向上している。以上より、統計的不確かさの影響によ り一部の試料ではグレード評価時に過剰評価が生じるものの、兵器級プルトニ ウムの候補を絞り、早期発見を促す事前評価が可能になる見込が得られた。
Table 3.6 プルトニウム含有量と照射条件の一例
Pu含有量 最小粒径 α粒子照射 熱中性子 αT FT αT+FT 130 fg
(0.36 mBq) 0.28 μm 10日 6×1013 cm−2 154 140 294 260 fg
(0.71 mBq) 0.35 μm 5日 3×1013 cm−2 154 140 294 1.3 pg
(3.6 mBq) 0.6 μm 1日 6×1012 cm−2 154 140 294
Table 3.7 プルトニウム含有量と飛跡読み出しの可不可及び本数
Pu含有量 兵器級 燃料級 原子炉級
130 fg ○ (294) × (450) × (1070)
85 fg ○ (192) ○ (294) × (700)
36 fg ○ (81) ○ (124) ○ (296)
(照射条件:α粒子10日照射、熱中性子フルエンス6×1013cm−2)
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Table 3.8 燃料級プルトニウムにおける統計的不確かさの影響
Pu含有量 Tα TF 総飛跡数 R240 不確かさ R240−不確かさ 評価グレード
50 fg 126 47.4 173 0.549 0.140 0.409 燃料級
20 fg 50.2 19.0 69.2 0.549 0.221 0.328 燃料級
10 fg 25.1 9.49 34.6 0.549 0.313 0.236 兵器級
5 fg 12.6 4.74 17.3 0.549 0.443 0.106 兵器級
2 fg 5.02 1.90 6.92 0.549 0.700 0.151 兵器級
1 fg 2.51 0.95 3.46 0.549 0.989 −0.440 兵器級
Table 3.9 原子炉級プルトニウムにおける統計的不確かさの影響
Pu含有量 Tα TF 総飛跡数 R240 不確かさ R240−不確かさ 評価グレード
20 fg 150 14.8 165 2.86 0.855 2.01 原子炉級
10 fg 74.9 7.40 82.3 2.86 1.209 1.66 燃料級
5 fg 37.4 3.70 41.2 2.86 1.709 1.16 燃料級
2 fg 15.0 1.48 16.5 2.86 2.702 0.16 兵器級
1 fg 7.49 0.74 8.23 2.86 3.822 −0.96 兵器級
Table 3.10 プルトニウム含有量と統計的不確かさを考慮した
評価グレードの評価数
真値 2 fg 5 fg 10 fg 20 fg
兵器級 5 128 54 41 37 燃料級 37 2 75 82 72
原子炉級 88 0 1 7 21
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