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第 2 章 環境微粒子中核物質同位体比 迅速分析法の原理

2.1 迅速分析法の概要

サブマイクロメートル微粒子の分析に有用なFT-TIMS 法は、高感度な測定が 可能であるが、試料操作が煩雑であり、測定に多くの時間を要するという短所 があり、プルトニウムに関する事前評価もまた確立していない。そこで、核物 質を含有する微粒子分析の迅速・効率的な分析のため、本研究は原子核乾板を 用いたプルトニウムグレード事前評価と、RIMSによる同位体比分析からなる迅 速分析法を新規に提案した。分析のイメージをFig. 2.1に、フローチャートをFig.

2.2に示す。

プルトニウムは、240Puの同位体比からTable 2.1に示すように分類が可能であ

り [1]、原料となるウランを低燃焼度の状態で取り出した場合兵器級プルトニウ

ムが得られるが、燃焼度が上がるにつれプルトニウムは兵器利用に適さない燃 料級、原子炉級になる。原子核乾板を用いたプルトニウムグレード事前評価法 は、核物質含有微粒子のスクリーニングと同時に、原子核乾板に記録された飛 跡の読み出しからプルトニウムのグレード評価を行い、兵器級プルトニウムを 早期に発見し、優先的に同位体比分析を行うことで測定の効率化に繋げる。事 前評価を行うためには、FT法と同様にコロジオン薄膜等を使って微粒子試料を 十分に間隔を開けて支持した上で、それを原子核乾板に設置し、原子炉から放 出される熱中性子を照射する。これにより、熱中性子との誘発核分裂により生

Fig. 2.1 迅速分析法

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成される核分裂片飛跡と、α崩壊により放出されるα粒子がそれぞれFT、αTと いう形で同時に記録される。その後、原子核乾板を現像し、自動読み取り装置 を使って飛跡の読み出しを行う。この時、1.3節で述べたように、α 粒子と核分 裂片の阻止能の違いにより、飛跡の濃さや長さが異なることを利用して αT と FTが弁別して読み出され、次節で述べるグレード評価法によりFTとαTの比か らプルトニウムグレードを評価する。また、詳細は3.2節で述べるが、プルトニ ウム含有量が等しい場合、飛跡数は兵器級<燃料級<原子炉級となる傾向があ

Fig. 2.2 迅速分析法フローチャート

Table 2.1 Puグレード [1]

プルトニウムグレード 240Pu存在比 スーパーグレード < 3%

兵器級 < 7%

燃料級 7 – 19%

原子炉級 19%<

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るため、微粒子粒径の制限により最大のプルトニウム含有量を制限した場合、

兵器級プルトニウム起因の飛跡が十分に読み出せる条件であっても、燃料級・

原子炉級では弁別読み出しが困難なほど密に飛跡が記録される場合が生じうる。

この時、飛跡の読み出しが困難なほど試料周辺の飛跡密度が高い場合は、その 飛跡の元となる試料は非兵器級であると判断可能である。したがって、Fig. 2.2 に示すように、試料の粒径を制限した上で、記録された飛跡数が多く読み出し が困難な場合は非兵器級プルトニウムとして評価、読み出しが可能な場合はFT とαTの比からプルトニウムグレードを評価し、兵器級の疑いのある試料は優先 的にRIMSによる同位体比分析を行う。

核物質含有試料のスクリーニング感度としては、FT法と同様に熱中性子誘起 核分裂片の記録・読み出しを行うため、同程度の感度が期待できる。さらに、

FT法ではウラン濃縮度を評価するのに、SEMによる粒径の測定や、エッチング 時間を変えて飛跡の観察を繰り返し行うなどの操作が必要であり、プルトニウ ムグレードを評価するのにαTとFTを記録・読み出しを行うための異なる種類 の固体飛跡検出器や異なる現像条件が必要であるのに対し、原子核乾板を用い ることでFTとαTを一度の現像で可視化し、読み出すことが可能になり、分析 時間の短縮に繋げることが出来る。

RIMSでの分析では、微粒子試料の原子化にレーザーアブレーション(レーザ ー脱離)やイオンスパッタリングを用いることで、試料ステージ上の任意の試 料を原子化することが可能になる。さらに、RIMSの特徴である元素選択性によ り、試料の化学的前処理を行うことなく同重体干渉を回避できるため、試料を 支持材(コロジオン薄膜等)に含まれたままの状態で試料を導入することが可 能になり、TIMSで必要としていた個々の試料に対するマイクロマニピュレーシ ョンや、同重体干渉抑制のための前処理といった試料操作を行うことなく分析 が可能になり、分析時間の短縮が可能である。より詳細な RIMS のシステムや 微粒子試料への適用性は2.3節で述べる。

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