第 4 章 RIMS を用いた高確度同位体比分析のための補正法の開発
4.1 逐次補正法の原理と特徴
RIMSの高精度・高確度測定においては、装置の校正や同位体差別効果の抑制 が必要である。1.4.2 項にて既存の手法を述べたが、いずれも安定同位体の存在 しないウラン・超ウラン核種の微量分析への適用は困難である。そこで、本研 究では、システムのパラメーターと、同位体ごとのイオン信号量の相関を求め、
これらを補正することで、高確度な同位体比分析を可能にする。
本補正は、個々のレーザーパルス照射時のシステムの条件と、測定されたイ オン計数を対応させ、パルス毎にイオン計数のばらつきを補正(イオン計数補 正)することで測定中の系統的な変動を抑え、さらに同位体毎のイオン化効率 の波長依存性を、パルス毎のレーザー波長を使って補正(イオン化効率補正)
することで同位体比を真値に近づけることから、これらをまとめて逐次補正法 と名付けた。一連の分析の流れをFig. 4.1に示す。分析試料の測定の前もしくは 後に、試料形状が似た標準試料を用いてイオン化効率の波長依存性を測定し、
イオン計数補正によって系統的なばらつきを抑えた後に、分析試料測定時のレ ーザー波長からイオン化効率を補正する。標準試料を用いてイオン化効率を測 定する点で比較法と似ているが、逐次補正法においてはイオン化効率の波長依 存性を得ることで、分析試料測定時の波長の変動に対応した補正を可能にする。
以下に、それぞれの補正の特徴を述べる。
Fig. 4.1 逐次補正法を用いた測定の手順
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・イオン計数補正
レーザー出力、プロファイル、照射位置、加速電極の電圧の揺らぎ等、RIMS システムのパラメーターの僅かな変化が、イオン化効率や輸送効率を変化させ、
測定に系統的な不確かさを生じさせる。またレーザープロファイルや照射位置 といったパラメーターの変化は、レーザーの輸送に用いる光学系や、レーザー 発振器そのものが、温度、気圧、振動といった環境の影響を受けることが原因 の 1 つとして考えられる。イオン計数補正では、こうしたパラメーターをイオ ン検出と同時に測定し、イオン計数との相関を多変量解析により求め、この相 関を用いてパルス毎にイオン計数を補正する。また、レーザー波長の変化もイ オン計数に影響を与えるが、次で示すイオン化効率補正で扱うため計数補正で は扱わない。
・イオン化効率補正
RIMSでは励起準位の同位体シフトや超微細構造により、任意のレーザー波長 及び線幅における同位体毎のイオン化効率が異なる。したがって、波長安定下 においても同位体比測定値が真値と一致せず、バイアスが加わった値となる。
さらに、測定中に波長が変化すると、波長に応じて測定されるイオンの同位体 比が変化することになり、系統的な不確かさが生じる。そこで、標準試料を用 いて、レーザー波長とイオン化効率の傾向を調べるため、共鳴波長付近で波長 をずらし、同位体比測定値と真値の差から、任意の波長における各同位体のイ オン化効率を求める。この時、分析試料の測定とドップラー広がりや輸送効率 の違いをなくすため、同様の形状の試料を、同じように原子化することが望ま しいと考えられる。さらに、分析試料測定時の波長の変化を記録しておき、レ ーザーパルス毎に、その瞬間の波長から求まるイオン化効率を用いてイオン計 数を補正する。
微粒子試料分析時に逐次補正法を実現するためのシステムの概念図をFig. 4.2 に示す。共鳴イオン化用レーザーに高繰り返しパルス発振が可能で、安定動作 が期待できる Ti:Sapphire レーザーを用い、個々のレーザーパルス照射毎のイオ ンを区別し複数の同位体の同時測定するため、質量分析計に飛行時間型質量分 析計を、さらに原子化にレーザーアブレーションの使用を仮定した。逐次補正 法を高度に適用するにあたり、各レーザーの照射タイミング・出力・照射位置 を、さらに共鳴励起・イオン化用レーザーでは波長と線幅を、この他、実験室 の温度や気圧といった環境条件やイオン光学系の印加電圧等をレーザーパルス
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と対応付けて記録し、イオン計数の変動や同位体毎のイオン化効率との相関を 求め、補正を行うことを目的とする。
Fig. 4.2 微粒子試料分析における逐次補正法適用の装置概念図
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