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第 5 章 基金会の歴史と現状

第 3 節 非公募基金会をめぐる考察

ことを意味する。事実、05 年に初めて設立された「香江社会救助基金会」が設立されて以 来、09年末までのわずかな期間で、非公募基金会は800団体設立され、基金会全体の43.7% を占めるに至っている。さらに、条例第 26 条では「基金会およびその寄付者、受益者は、

法律、行政法規の規定に基づいて、税収の優遇を受ける」と規定されており、基金会に対 する税の優遇策についても示されており、今後さらに基金会、特に非公募基金会は増加し ていくものと思われる。

はその友人の発意による設立」、「社会的に声望が高い人の発意による設立」、「政治的 背景を持つ人の発意による設立」に下位区分している。次に、「実体の発意による設立」

は、「企業の発意による設立」と「非企業の発意による設立」に分類され、「企業の発意 による設立」はさらに、「国有企業の発意による設立」、「民営企業の発意による設立」、

「外資企業の発意による設立」に分類している。また、「非企業の発意による設立」は、

「社会団体の発意による設立」と「事業単位の発意による設立」に分類され、「事業単位 の発意による設立」はさらに、学校、病院、劇団の発意による設立にそれぞれ細分化され ている(馮, 2010:8)。

(図)非公募基金会分類図

(出典:馮利『2009年中国非公募基金会発展報告―非公募基金会内部治理研究報告』中国 人民大学非営利組織研究所、公益合力管理咨詢(北京)有限責任公司、2010年、9頁)

以上の分類から非公募基金会は、多彩な主体によって担われていることがわかる。近年 では特に企業と個人からの寄付が特に増加しており、2009年の寄付主体に関する統計をみ ると、企業が寄付全体の58.45%を占めて最も多く、次に個人が30.4%であり、両者でもっ

て全体の88.85%を占めている(康, 2011:56)。さらに、社会からの寄付の多くは、表12

の示すように法定 NPO(表 13 では「民間組織」と呼称)にその多くが流れていることか ら、企業と個人からの寄付が主な資金源である非公募基金会にも、多くの寄付がよせられ ていることは容易に想像できる。したがって、企業や個人を中心とした社会からの寄付は、

非公募基金会を通じて相当量社会に配分されているものと推測できる。田中によると、経 159

営学者 P.F.ドラッカーは民間非営利組織の役割として、サービス提供を通じた市民生活の 向上と市民参加による市民性創造があると指摘しており(田中, 2008: 14)、非公募基金会 による市民(企業家含む)や企業に対する寄付の機会の提供は、市民参加による市民性創 造というドラッカーの指摘する民間非営利組織の役割を果たす上で極めて重要な役割を果 たすものといえよう。

(表13)社会からの寄付金額の推移(単位:100億円)

社会からの 寄付金

民政部門 への寄付金

各種民間組織 への寄付金

2000 9.3 5.4 3.9

2001 11.7 7.6 4.1

2002 19.0 11.1 7.9

2003 41.0 29.2 11.9

2004 34.9 17.1 16.9

2005 60.3 31.3 29.0

2006 83.1 43.0 40.1

2007 132.8 50.9 81.9

2008 744.5 479.3 265.2

2009 507.2 66.5 440.7

(出典:中華人民共和国編『中国統計年鑑―2010』 中華人民共和国国家統計局、2010年、904頁)

3-2.非公募基金会の現状と課題

非公募基金会の現状と課題について陳暁虎らは、次の(1)~(9)ような指摘をして いる(陳, 2010: 28)。

(1)発展が速く、(団体数)増加の勢いが公募基金会を超えている。

(2)基本基金の規模が除々に拡大している。

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(3)創設者は企業、高等教育機関、著名人が主である。

(4)非公募基金会の収入は年々上昇し、純資産の規模が拡大している。

(5)公益支出の増加に伴い、行政資本が除々に減少している。

(6)初期段階のカテゴリーの細分化が起こっている。

(7)地方で登記した非公募基金会が主力である。

(8)非公募基金会の発展について地域差が発生している。

(9)活動分野に格差が生じている、と指摘している。

(1)から(6)までは、すでに指摘しているためここで改めて繰り返すことはしない。

(7)の地方登記が主力であることについて、趙冠軍らはその背景に、非公募基金会の展 開する公益プロジェクトには地域の制限がないこと、中央政府への登記には資金面の問題 で容易に登記できないことがあると述べている 113。しかし、これは北京や上海など、大都 市に非公募基金会が少ないという意味ではない。ここでいう地方とは、中央省庁の民政部 ではなく、直轄市(北京市、天津市、重慶市、上海市)を含む第一級行政区以下の人民政 府民政部門に登記しているという意味である。仮に、民政部に登記する場合には、基本財 産が2000万元以上という多額の資金が必要である(基金会管理条例第6条)。十分に普遍 性のある統計とはいいがたいが、「報告」のアンケート調査に回答した18の非公募基金会 のうち、2000万元以上の登記資金を有していたのは、わずか4団体であった(馮, 2010: 15)。

ここからも非公募基金会の民政部登記が難しいことがある程度読み取れる。また、これは 公募基金会もその数に含まれているが、2012年末時点において、民政部に登記している基 金会は199団体で、一方、第一級行政区以下の人民政府民政部門に登記しているのは2830 団体(中国国家統計局, 2013: 783)であり、全体の70.3%を占め、圧倒的に地方に登記し ている基金会が多かった。この背景には、基金会設立のために必要な基本財産額が、第一 級行政区以下の人民政府民政部門に登記する方が低額であるためと思われる。非公募基金 会の場合、基金会をどこに設置しても実施する公益活動は全国で展開可能なため、どの地 域でも基金会を設置することができ、各々の地域で市民の公益意識向上に寄与できる可能 性もある。しかし、ここでいう地方は、第一級行政区以下すべてが範囲に含まれるので、

北京や上海などの大都市圏に非公募基金会が集中している可能性を否定できない。このこ とは(8)の非公募基金会の発展に地域差が生じているという指摘にもつながる。

表 14 の基金会地域別団体数を見てみると、公募基金会の団体数を含んでいるとはいえ、

113趙冠軍・宋揚(2007)「中国非公募基金会調査」『中国現代企業報』7月24日記事。

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基金会の数は確かに沿海部の都市圏に多いことがわかる。この背景には、基金会に出資し ている企業、または富裕層が沿海都市部に集中しているためと思われる。実際、非公募基 金会の事務所が出資企業の入っているビルの中に設置されていることも多い。例えば、国 内のエコロジー・コミュニティの構築を促進している北京万通公益基金会は、万通地産股 份有限公司が建設した「万通中心」(万通センター)の中に他の万通グループの企業とと もに入居している。しかし、このような非公募基金会の発展が地域によって不均衡である という指摘についても、非公募基金会の場合、実際の公益活動が全国で展開可能であり、

資金源が企業中心であるため、組織の持続可能性を図るためにはある程度許容されるもの ではないかと思われる。但し、ドラッカーの指摘する民間非営利組織の役割の 1 つである 市民性の創造という側面においては、地域的な差異が発生する可能性は否定できない。

次に、(9)の公益活動に従事する領域で不均衡な状態が現れているという現状について、

非公募基金会のみの統計がないため詳細は不明だが、表15の2008年末における基金会全 体の分野別団体数を見ると、教育分野(450団体)や社会サービス分野(320団体)、文化 分野(94団体)、科学技術と研究分野(67団体)がその他の分野と比較して多いことがわ かる。その背景には、教育分野や社会サービスの分野が、市民生活に直結するものであり、

また、中国の政府や社会にとって、深刻な社会問題である都市部と農村部の社会的・経済 的格差の解消に関わる活動だからと推察される。

一方で、宗教や省エネ・環境、国際および渉外分野における組織が比較的少ないことに ついて、康は、それらの分野が政治的に敏感であるためと指摘している(康, 2011: 16)。

具体的には「省エネ・環境の組織は、多くが政策提言の機能を有しており、組織は多くは 公に政府を批判し、国家の政策に関与さえする、またいくつかの組織は、激しい行動を採 ることが多い。したがって、政府はそれら組織に対して厳格な管理を行う。国際および渉 外領域の場合は、国家機密、外交安全などの問題に及ぶため、登記登録できる組織が比較 的少ない」(康, 2011: 15-16)と分析している。

本章のまとめ

以上が、主な非公募基金会の現状と課題であるが、その他、企業や個人が設立した非公 募基金会に対して、出資企業もしくは出資者からの独立性が確保されていない、と多くの 研究者や実務家、メディア関係者らが指摘している。例えば、徐宇珊は「基金会は現在、

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