• 検索結果がありません。

台湾における民間非営利組織をめぐる制度

第 2 章 台湾における民間非営利組織の歴史と制度

第 2 節 台湾における民間非営利組織をめぐる制度

台湾では、民間非営利組織という名詞を冠する法律は存在せず、一般的に「民法」の規 定に基づいて社団法人、財団法人および非法人団体が民間非営利組織の要素を備えた団体 として考えられている(但し、一部、サラモンが示したような性質を備えていない団体も 存在する 34)。その他、「民法」の規定に基づく分類法以外にも、社会団体、財団法人、基 金会、工会、商会、職業公会、及び寺廟と教会を台湾における民間非営利組織(政府に登 録していないものは除く)と見なす分類法もあるが(官, 2010: 1)、分類の根拠が不明瞭で あるため、本論文では、「民法」の規定に基づく分類法を採用し、考察を進める。

2-1. 社団法人

社団法人(以下、社団)は、「民法」に基づいて設立される法人で、社員によって構成さ れる団体である。社団は営利を目的とする団体(「民法」第 45 条)と公益を目的とする団 体(同法第46条)に分けられる。営利を目的とする社団を設立する場合は、民法の他、特 別法の規定に基づいて設立される(同法第 45 条)。これには「公司法」に基づいて設立さ れる企業が該当する(肖, 2009: 29)。したがって、営利を目的とする社団は、民間非営利組 織の範疇には含まれない。公益を目的とする社団は、さらに公益性社団法人と中間性社団 法人に分けられる。公益性社団法人は、各行政レベルの農会や同業公会が該当し、董事会 や理事会によって管理される組織であり、中間性社団法人は、公益でも営利目的でもない 社団で、同郷会や宗親会などが該当する(肖, 2009: 29)。

公益を目的とする社団を設立する場合、団体所在地の裁判所に法人格取得のための登記 を行う前に、主管機関の許可を得なければならない(同法第 46 条)。社団の最高意思決定 機関は総会で、総会では定款の変更や、理事・監事の任免、理事・監事の職務執行の監督、

社員の除名を決定する(同法第 50 条)。その他、公益を目的とする社団を詳細に規定する 法律として「人民団体法」がある。

「人民団体法」は、1942年に「非常時期人民団体組織法」として制定され、元々職業団 体を規定する法律であった。89 年に改正され「動員戡乱時期人民団体法」となり、改正前 の全20条から全67条となった。特徴としては第2条で「人民団体の組織と活動は、憲法

34例えば、営利を目的とする社団法人や政治団体など。

62

違反あるいは共産主義の主張、国土分裂の主張をしてはならない」と規定されたことや、

人民団体の種類に既存の職業団体に加えて、政治団体と社会団体が加えられたことなどが 挙げられる。

この法律改正の背景には、1986年の民主進歩党(以下、民進党)の設立と、87年の戒厳 令の解除による民間非営利組織の増加があるといえよう。87年12月15日に開催された立 法院内政・司法委員会において当時の内政部長呉伯雄は、「非常時期人民団体組織法」の改 正の理由として、社会の仕組みの変化・多様化による市民の公共部門に対する関心の向上、

各種組織の増加、政治参加の要求の高まりなどを挙げている(立法院, 1987: 144-145)。「非 常時期人民団体組織法」の改正に係る委員会では主に、法律名に「動員戡乱時期」という 名詞を付けるか、先述の第2条条文を入れるか、人民団体の種類に政治団体を加えるかの3 点について多くの時間が割かれた。例えば、尤清委員は「『非常時期人民団体組織法』は、

人民結社の自由を束縛し、制限し、取り締まる法律と見なされ社会から非難されてきた。

…(中略)本草案の名称に『動員戡乱時期』と付けることは、『動員戡乱時期国家安全法』、

『動員戡乱時期集会遊行法』と同じく、『動員戡乱時期』という虚偽の名称で人民の結社を 制限、取り締まるもので、本法の立法目的である人民の結社の自由を保障するものでない ことがわかる。また、本草案第2条では国安法が強調する3原則と重複している」(立法院,

1987: 189)と指摘している。また、王義雄委員は「非常時期人民団体組織法」の修正には、

執政党である国民党の心理的なものが背景にあるとした上で、86年に民進党が成立した後、

執政党は社会を一元的にコントロールすることが難しくなり、政治経済を一元統治できな いと判断した執政党は、人民団体法の修正を企て、政治的な優越性を維持していると批判 し(立法院, 1987: 197)、人民団体法に政党に関する規則を加えることに異議を呈した。さ らに許栄淑委員は、尤の主張と同様に、第2 条規定にある3原則が「動員戡乱時期国家安 全法」と「動員戡乱時期集会遊行法」の内容と重なると主張した上で、政党政治を進めよ うとする中で、なぜ3原則の規定が人民団体組織法内に必要なのかと述べている(立法院, 1987: 201)。

ここまでを見ると、少なくとも1942年に制定された「非常時期人民団体組織法」は、結 社の自由を保障するような性質のものではなく、反対に制限するためのものであったこと、

また 86 年の民進党の設立や戒厳令の解除によって強まる社会からの民主化要求に対して、

国民党政権は自らの政治的優位性を保持しながら制度改革を進めなければならず、その結 果として「非常時期人民団体組織法」の改正が行われたことが読み取れよう。その後「動

63

員戡乱時期」という名詞は、92年の改正時に削除され、第2条も、憲法が保障する人民の 結社の自由と言論の自由に明らかに適合しないということで 2011 年に削除された。ただ、

08年6月に開かれた司法院大法官会議で第2条はすでに違憲とされており、実質的な効力 は2011年によりも前に失われていたと思われる。

現行の「人民団体法」に基づいて団体を設立する場合、まず満 20歳以上の発起人30名 以上が必要で、次に申請書、定款の草案、発起人名簿をそろえて主管機関 35に設立申請を 行う(第8条)。次に、設立が認可された時点で発起人会議を開催し、準備委員を選定した 上で、設立準備委員会を組織し、設立大会を開催する(第9条)。設立大会後30 日以内に 定款、会員名簿、採用職員の経歴が記載された名簿を作成し、主管機関に登録申請をし、

登録証明書と印鑑を公布する(第 10 条)。主管機関による登録審査終了後、該当する地域 の地方裁判所に法人登記の手続きを行い、法人登記終了後30日以内に、登記証書の写しを 主管機関に送る。その他、人民団体の設立に当たっては、法的に特に制限されていない場 合は、設立地域に 2 つ以上の団体名の異なる同レベルで同種の団体を組織しなければなら ない(第7条)。

以上が人民団体を設立する際の主な法規定である。その他、団体の種類ごとに若干の規 定が存在する。社会団体は「人民団体法」第39条で、文化、学術、医療、衛生、宗教、慈 善、体育、聯誼、社会サービスあるいはその他の公益を目的とする団体とされ、職業団体 は「人民団体法」第35条で、同業関係の協調によって、共通の利益を増進し、社会経済建 設の促進を目的とする同一業種による単位で、団体あるいは同一の職業の従業員によって 組織される団体と規定されている。職業団体は具体的に、農会、漁会、工会、工業団体、

商業団体、自由職業団体とされている。政治団体については、先述のサラモンらの定義に 当てはまらず民間非営利組織と見なすことはできないため省略する。

社会団体は2011年末現在、合計3万8026団体あり、01年末の1万8695団体と比較す ると、約2倍の規模にまで拡大している。職業団体は2011年末現在、1万620団体あり、

01年末の4440団体と比較すると、社会団体同様、約2倍の規模にまで拡大している。

35主管機関とは中央や省では内政部、直轄市では直轄市の市政府、県(市)では県(市)政 府である。しかし、団体の事業目的によって各該当する事業主管機関の指導と監督も受け る(人民団体法第3条)。

64

2-2. 財団法人

財団法人(以下、財団)は、「民法」に基づいて設立される法人で、寄付財産を有し、寄 付行為に基づいて活動を行う団体である(肖, 2009: 30)。財団は、官有垣によると一般性財 団法人基金会、宗教法人および特殊性財団法人に分けられる(官, 2006: 211)。特殊性財団 法人とは、政府の寄付によって設立された財団法人や私立学校法によって設立された学校、

医療法に基づいて設立した病院などを指す(官, 2006: 211)。一般性財団法人基金会は、特 殊性財団法人と宗教法人を除いた民法に基づいて設立される基金会が該当する。

財団の設立は許認可制で、法人は主管機関に登記しなければ設立できない(民法第30条)。 設立順序は、まず業務を監督する主管機関(以下、業務主管機関)に設立申請をし、許可 を得る(民法第 59 条)。業務主管機関は、団体の事業内容によって異なり、中央省庁(部 もしくは委員会)あるいは地方の行政機関である。次に、「民法」第10条規定に基づいて、

事務所所在地の地方裁判所に登記手続きを行う。手続きが認められると法人格が付与され、

財団法人の設立となる(肖, 2009: 33-34)。江明修は、このような許認可制を採用している 背景には、財団法人のむやみな設立の防止と、管理を強化するためと指摘している(江, 2006: 132)。

財団の設立過程の特徴は、「民法」の規定以外に財団を詳細に規定する統一的な法律が存 在しないため、各業務主管機関が「民法」の規定に基づいて、許認可のための行政規則を 作成していることである。現在、全国レベルで活動を行う財団を許認可する行政院では、

20の省庁が「財団法人設立許可及監督準則」もしくは「財団法人設立許可及監督要点」と いう名称の行政規則に基づいて、許認可を行っている。その中身は各機関によって異なり、

例えば設立のために必要な基本財産の金額は、最低では500万元、最高で3000万元と、そ の差は大きい。その他、理事や監事の定員や彼らの選定基準についても機関によって異な る(表 2)。江は、このような行政規則は、民法によって権限が授けられたものではなく、

すでに効力は失われているため、行政院は速やかに関連法規を制定すべきと主張している

(江, 2006: 133)。江が主張する財団を統一的に規定する「財団法人法」は、法務省によっ

て草案が作成され、立法院に提出されたが、通過には至っておらず、現在、再度法務部で その中身が検討されている36

各種財団の数について、詳細な最新の統計は見当たらず、官が2010年6月に作成したデ

362013年1月8日に法務部法律事務司に対して行った電話での聞き取りに基づく。

65