第 II 部
7.1 不静定はり
7.1.1 はりの支持条件
1スパンで突き出しなしのはりについて,両端の支持条件に関してまとめると,次表のようになる.
支持端タイプ 不静定/静定 名称 固定端-固定端 不静定 固定はり
固定端-単純支持端 不静定 一端指定,他端単純支持はり 固定端-自由端 静定 片持ちはり
単純支持端-単純支持端 静定 単純支持はり 単純支持端-自由端 つりあい不可 なし
自由端-自由端 つりあい不可 なし
7.1.2 固定端-固定端支持の固定はり
任意の位置に1個の集中荷重を受ける場合 図7.1のようにA,B端ともに固定端支持された,a̸=bなる非対 称な場合を考えると,反力RA,RBおよび固定端支点モーメントMA(時計回り正),MB(半時計回り正)は それぞれA,Bにおいて異なる値を持ち,後述するように不静定問題であるからこれらの値を決定することが第 一の課題である.力のつりあいから,
W −RA−RB= 0 であり,荷重点Cの周りの力のモーメントのつりあいより,
−MA−RAa+MB+RBb= 0
未知量4に対して独立な関係式が2であるから,不静定問題であることがわかる.未知量決定の前に,はりの軸 方向にx軸を取り,Aをx= 0,Cをx=a,Bをx=l=a+bとして,2つの区間AC,CBに場合分けして,
せん断力F(x),曲げモーメントM(x),たわみ角I(x),たわみv(x)を書き出してみる.
区間AC:0≤x < a A端から長さxの部分を切り出し,切断したX端に下向きのせん断力Fと反時計回りの 力のモーメントMを付加すると,力のつりあいから
F−RA= 0 (0≤x < a) であり,Xの周りの力のモーメントのつりあいから,
−MA−RAx+M = 0 (0≤x < a) であるから,
F =RA (0≤x < a) M =RAx+MA (0≤x < a) と表すことができる.たわみとたわみ角はそれぞれ,
i=
∫ −M
EI dx= 1 EI
∫
[−(RAx+MA)] dx
= 1 (
−RAx2−M x+C )
(0≤x < a)
図59: (a)固定はりと(b)その自由物体図,および,(c)x < a(d)x > aのそれぞれにおける長さxのはりの自 由物体図.
v=
∫
idx= 1 EI
∫ (
−RA
2 x2−MAx+C1 )
dx
= 1 EI
(
−1
6RAx3−1
2MAx2+C1x+C2 )
(0≤x < a) 区間AC:a≤x≤l
A端から長さxの部分を切り出し,切断したX端に下向きのせん断力Fと反時計回りの力のモーメントM を 付加すると,力のつりあいにW が加わり,
W +F−RA= 0 (a≤x≤l)
であり,Xの周りの力のモーメントのつりあいは,反時計回りのW(x−a)を加えて
−MA−RAx+W(x−a) +M = 0 (a≤x≤l) であるから,
F =−W +RA (a≤x≤l) M =−W(x−a) +RAx+MA (a≤x≤l)
と表すことができる.a≤x≤lのたわみ角とたわみをそれぞれ,i′,v′のように表記し直し,X =x−aのとき
dX = dxであることを用いると,i′,v′はそれぞれ,
i′ =
∫ −M
EI dx= 1 EI
∫
[− {−W(x−a) +RAx+MA}] dx
= 1 EI
( W
∫
XdX−RA
∫
xdx−MA
∫ dx
)
= 1 EI
(W
2 X2−RA
2 x2−MAx+C3 )
= 1 EI
{W
2 (x−a)2−RA
2 x2−MAx+C3 }
(a≤x≤l)
v′=
∫
idx= 1 EI
∫ {W
2 X2−RA
2 x2−MAx+C3
} dx
= 1 EI
(W 2
∫
X2dX−RA 2
∫
x2dx−MA
∫
xdx+C3
∫ dx
)
= 1 EI
(1
6W(x−a)3−1
6RAx3−1
2MAx2+C3x+C4 )
, (a≤x≤l) のように表される.
以上の積分で生じた積分定数を加えて未知量は4から8に増加したので,計8個の独立な条件式が必要である が,既に2つの条件式があるので,後6個の条件式が必要である.前章で行ったように,固定端でのたわみ角と たわみがゼロであるという境界条件を2つの支点に適用して,4つの条件式が得ら,残りの2つについては,た わみとたわみ角のそれぞれに関して場合分けされた2つの式がx=aにおいて等しいという,2つの連続の条件 をもって充足させるので,適当な順序で求めていけばよい.x= 0の固定端Aにおいてi= 0より,
0 = 1 EI
(
−RA
2 02−MA×0 +C1
)
, ∴C1= 0 を得る.x= 0の固定端Aにおいてv= 0より,
0 = 1 EI
(
−1
6RA03−1
2MA02+ 0×0 +C2 )
, ∴C2= 0 を得る.x=aの荷重点Cとその近傍においてたわみ角が連続であることから,
x→a−0lim i(x) = i′|x=a すなわち,
1 EI
(
−RA
2 a2−MAa+ 0 )
= 1 EI
{W
2 (a−a)2−RA
2 a2−MAa+C3
}
, ∴C3= 0 を得る.x=aの荷重点Cとその近傍においてたわみが連続であるから,
x→a−0lim v(x) = v′|x=a すなわち,
1 (
−1R a3−1M a2+ 0×0 + 0 )
= 1 {
1W(a−a)3−1R a3−1M a2+ 0×0 +C }
が成立し,上式より,
C4= 0 を得る.x=lの固定端Bにおいてi= 0であることから,
0 = 1 EI
(W
2 b2−RA
2 l2−MAl+ 0 )
, ∴l2RA+ 2lMA=W b2 である.ここで,l−a=bを用いた.同端x=lにおいてv= 0より,
0 = 1 EI
(1
6W b3−1
2MAl2−1
6RAl3+ 0 + 0 )
, ∴l3RA+ 3l2MA=W b3
であるので,未定係数RAとMAに関する2つの式を連立させて,A端での反力RAと固定モーメントMAに ついて解くと,
RA=3l×W b2−2×W b3
3l×l2−2×l3 = (3l−2b)W b2
l3 =(3a+b)b2 l3 W MA=W b3−l×W b2
3l2−l×2l = (b−l)W b2
l2 =−ab2 l2 W を得る.よって,
i= 1 EI
(
−RA
2 x2−MAx+ 0 )
= 1 EI
{
−1 2
(3a+b)b2 l3 W x2−
(
−ab2 l2 W
) x
}
= W b2 l2EI
(
−3a+b
2l x2+ax )
(0≤x < a)
i′ = 1 EI
{W
2 (x−a)2−RA
2 x2−MAx+ 0 }
= 1 EI
{W
2 (x−a)2−1 2
(3a+b)b2 l3 W x2−
(
−ab2 l2 W
) x
}
= W 2EI
{
(x−a)2−(3a+b)b2
l3 x2+ 2ab2 l2 x
}
(a≤x≤l)
v= 1 EI
(
−1
6RAx3−1
2MAx2+ 0 + 0 )
= 1 EI
{
−1 6
(3a+b)b2
l3 W x3−1 2
(
−ab2 l2 W
) x2
}
= W b2 6l2EI
{
−(3a+b)
l x3+ 3ax2 }
(0≤x < a)
v′= 1 EI
(1
6W(x−a)3−1
6RAx3−1
2MAx2+ 0 + 0 )
= 1 EI
{1
6W(x−a)3−1 6
(3a+b)b2
2l3 W x3−1 2
(
−ab2 l2 W
) x2
}
= W 6EI
{
(x−a)3+(3a+b)b2
2l3 x3+3ab2 l2 x2
}
(a≤x≤l)
を得る.
x=x1において,たわみvが最大値vmaxとなるとすると,x=x1におけるたわみvのxによる1階微分に 相当するたわみ角がゼロとなっていなければならないから,
i|x=x1 ≅ dv dx
¯¯¯¯
x=x1
= 0
となる.a=bのときは,荷重点がx=l/2の中点において最大たわみを生じるが,a > bのときは,荷重点と 中点が一致しないため,最大たわみを生じる点は荷重点から中点のある方向にずれる.左端から最大たわみ点ま での距離をx1と定義すると,たわみvが最大値vmaxとなる点は,l/2< x1< aの範囲に位置することになる.
x1< aの範囲でのたわみ角はi′ではなくiを用いればよく,上式に従ってそれをゼロとすると,
W b2 l2EI
{
−(3a+b)
2l x21+ax1 }
= 0 x1
(
x1− 2la 3a+b
)
= 0 となる.x1≅0であるから,最大たわみを与える距離x1は
x1= 2la 3a+b
のように求まる.x=x1をたわみの式に代入して最大たわみvmaxを求めると,
vmax= W b2 6l2EI
{
−3a+b l
( 2la 3a+b
)3 + 3a
( 2la 3a+b
)2}
= W b2 6l2EI
{
−2a ( 2la
3a+b )2
+ 3a ( 2la
3a+b )2}
= W 6EI ·b2a
l2
( 2la 3a+b
)2
が得られる.0< b < aのときのx1とaの大きさを比較するため,x21−a2の計算を行うと,
x21−a2= 4l2a2−(3a+b)2a2
(3a+b)2 =a24(a+b)2−(3a+b)2
(3a+b)2 = −5a2+ 2ab+ 3b2 (3a+b)2
= −2a2+ 2ab−3a2+ 3b2
(3a+b)2 =2a(b−a) + 3 (b−a) (b+a) (3a+b)2
= (b−a){2ab+ 3l}
(3a+b)2 <0 であり,さらに,x21−(l
2
)2 は x21−
(l 2
)2
= 4l2a2 (3a+b)2−l2
4 =l2{
16a2−(3a+b)2}
4 (3a+b)2 = l2{4a+ (3a+b)} {4a−(3a+b)}
4 (3a+b)2
= l2(7a+b) (a+b)
4 (3a+b)2 = l3(7a+b) 4 (3a+b)2 >0 のように正の値になるので,0< b < aにおいては,x1が
l
2 < x1< a
7.1.3 単純支持-固定端はり:自由-固定端はりの重ね合わせによる反力導出
ξ=aの点Bに集中荷重を受ける場合 単純支持端と固定端からなる長さlの単純支持はりにおいて,単純支持 端(x= 0)から距離a(=l−b)の位置に集中荷重Wを受けるとき,単純支持端における反力RAを重ね合わ せの原理を用いて求める.すなわち,単純支持端と固定端からなるはりを,二つの片持ちはり(1)固定端からb の距離(すなわち自由端からaの距離)に集中荷重W を受ける自由端(x= 0)と固定端(x=l)からなる片 持ちはり(2)自由端(x= 0)に集中荷重−RAが作用する片持ちはりの重ね合わせと見なし,自由端同士の重 ね合わせが固定端の条件であるたわみゼロを満たすとして,反力などを求める.
まず,(1)に関連して,長さl (=a+b)のはりにおいて,左端からの距離x=aの点に集中荷重W を受ける とき,その荷重点から距離x=lに位置する右端固定端までのたわみv,たわみ角iを求めよう.この荷重点を 自由端に置き換えた長さbの片持ちはりを想定すると,置き換えた自由端に集中荷重W を受けるときのたわみ とたわみ角がそれぞれ求めるv,iに相当する.自由端と見なす荷重点を原点(x′= 0)とするx′軸を新たに設 定すると,x′ =x−aであるので,固定端がx′ =b ,左端の自由端がx′ =−aとなり,たわみとたわみ角は上 の式で,lをbで書き換えた式に相当する.よって,
θ= W 2EI
(x′2−b2)
(0≤x′≤b) θ(x) = W
2EI
{(x−a)2−b2}
(a≤x≤l)
v= W 6EI
(x′3−3b2x′+ 2b3)
(0≤x′≤b) v(x) = W
6EI
{(x−a)3−3b2(x−a) + 2b3}
(a≤x≤l)
x=aの荷重点におけるたわみ角とたわみをそれぞれ,iaとvaとすると,これらは上式にx′= 0を代入して,
ia=−W b2
2EI, va =W b3 3EI
のように決定される.左端自由端(x′=−a)と荷重点(x′= 0)の間では,曲げモーメントはゼロであるので,
この範囲の任意の位置xにおけるたわみ角は常にiaと一致する.
i=ia=−W b2
2EI (0≤x≤a)
たわみは,x′=x−aであり,dx′= dxであるから,長さlのはりの左端からの距離x=aの位置,すなわち右 の固定端から集中荷重W を受けるとき,自由端に生じる最大たわみv0は,
v0=va+
∫ 0
−aiadx′ =W b3 3EI +
∫ a
0
(
−W b2 2EI
) dx
= W b3
3EI −W b2
2EI [x]a0 =W b3
3EI −W b2 2EIa
= W b2
6EI (2b−3a)
のように求められる.よって,自由端(x= 0)と固定端(x=l)からなる片持ちはりにおいて,固定端からb の距離(すなわち自由端からaの距離)に集中荷重W を受けるとき,荷重点でのたわみvWは,上式のv0に一 致するので,
vW=W b2
6EI (2b−3a) = W b2
6EI [2b−3 (l−b)]
=W b2
6EI (3l−b)
と書くことができる.同じ片持ちはりが自由端に上向きに集中荷重−RAを受けるときの自由端(x= 0)のたわ みvRAは,v= W
6EI
(x3−3l2x+ 2l3)
のWを−RAに置き換えて,x= 0を代入したものと等価である.よって,
vRA =−RAl3 3EI
と表される.集中荷重W の作用と集中荷重−RAの作用の重ね合わせにより,自由端のたわみがゼロになると 見なし,
vW+vRA = 0 W b2
6EI (3l−b)−RAl3 3EI = 0 これより,
RA= (3l−b)b2
2l3 W = (3l−(l−a)) (l−a)2
2l3 W
= (2l+a) (l−a)2 2l3 W が求められる.力のつりあい条件
W −RA−RC= 0 より,
RC=W −RA=W−(3l−b)b2 2l3 W =
(2l3−(3l−b)b2 2l3
)
W =2l3−3lb2+b3 2l3 W
と求められる.C点の固定モーメントMCを時計回りとして仮定して,点C周りでの力のモーメントのつりあ い条件を考えると,
RAl−W b−MC= 0 であるから,固定モーメントMCは,
MC=RAl−W b=(3l−b)b2
2l3 W l−W b=3l2b2−b3l−2l3b
2l2 W = −b(
−3lb+b2+ 2l2)
2l2 W
= −b(b−l) (b−2l)
2l2 W =−(l−a) (l−a−l) (l−a+ 2l)
2l2 W =−a(
l2−a2) 2l2 W のように表される.以上により,SFD,BMD,たわみ角,わたみを順次求めることができる.
a ≤ ξ ≤ bのCD間に一様分布荷重を受ける場合 前節の集中荷重の場合の,単純支持端Aの反力RA = (2l+a) (l−a)2(
2l3)−1
W と固定端Cの固定モーメントMC=−a(
l2−a2) ( 2l2)−1
W をもとに,一様分布荷 重の場合単純支持端Aの反力RAと固定端Bの固定モーメントMBを計算する.単純支持端Aを原点として固 定端Bに向かってξ軸を取り,Aから距離ξにある任意の微小区間dξを考えると,a≤ξ≤bにおいては,微 小荷重wdξによって生じる単純支持端Aの微小反力dRAと固定端Bの微小固定モーメントdMBを求める問題 は,微小荷重wdξを前節の集中荷重Wに置き換えたときの反力と固定モーメントの問題に帰着する.すなわち,
wdξ⇒W, a⇒ξ, b⇒l−ξ, RA⇒dRA, MC⇒dMB として,
(2l+a) (l−a)2 (2l+ξ) (l−ξ)2
MC= −a(
l2−a2)
2l2 W ⇒ dMB= −ξ( l2−ξ2)
2l2 wdξ
のように微小反力と微小固定モーメントを表現できる.等分布荷重の場合のRAとMBはξに関して分布荷重の 作用する範囲であるaからa+b (=l0)までの積分を行って,
RA=
∫ a+b
a
(2l+ξ) (l−ξ)2
2l3 wdξ= w 2l3
∫ a+b
a (2l+ξ) (l−ξ)2dξ
= w 2l3
∫ l0
a
(2l3−4l2ξ+ 2lξ2+l2ξ−2lξ2+ξ3)
dξ= w 2l3
[
2l3ξ−3l2ξ2 2 +ξ4
4 ]l0
a
= w 8l3
[8l3(l0−a)−6l2(
l02−a2)
+l40−a4]
MB =
∫ a+b
a
ξ( l2−ξ2)
2l2 wdξ=−w 2l3
∫ a+b
a
(l2ξ−ξ3) dξ
=−w 2l3
[ l2ξ2
2 −ξ4 4
]l0
a
=−w 8l3
[2l2(
l20−a2)
−(
l04−a4)]
のように求められる.