断面二次極モーメントを用いた別解 直径Dの円形断面において,任意の半径rとr+ ∆rの2つの円に囲まれ る円環の微小断面積∆Aはランダウ記号のスモールオーを用いて,
∆A=π(r+ ∆r)2−πr2=πr2+ 2πr∆r+π(∆r)2−πr2= 2πr∆r+π(∆r)2
= 2πr∆r+o(∆r)
のように表され,これは∆r→0のとき,微分記号表記を用いて dA= 2πrdr
のように表記される.円形断面の図心Gを貫くx軸の周りでの断面二次極モーメントIpは,
Ip≡
∫
Ar2dA=
∫ D/2
0 r2×2πrdr= 2π [r4
4 ]D/2
0
=π 2
(D 2
)4
= πD4 32
である.円の図心を通り直交するy軸,z軸に関する断面二次モーメントをそれぞれ,Ix,Iyとすると,対称性 からこれらは等しいので,
Iy=Iz でなければならない.また,r2=y2+z2であるから,
Ip=
∫
r2dA=∫ (
y2+z2) dA=
∫
y2dA+
∫
z2dA=Iy+Iz
= 2Iz が成立する.よって,
Iz=Ip
2 =πD4/32
2 = π
64D4 が導かれる.
図 21: ねじりモーメントが作用する2つの仮想断面で挟まれた微小領域.
3.2.1 中空丸軸のせん断応力分布
せん断応力τ [Pa]はフックの法則
τ=Gγ (22)
により,横弾性係数G[Pa]とせん断ひずみγの積として表される.ここで,θ¯≪1とすると,円形断面の中心 からの距離r[m]における回転形式のせん断ひずみγは半径r,ねじれ角θ¯[rad]の円弧長さθr¯ [m]の丸軸長さ l [m]に対する比として近似され,
γ= tanγ+o(γ) =θ¯
lr+o(θ¯)
=θr+o(θ), (
|γ| ≤¯¯
¯¯θ¯ lr¯¯
¯¯=|θr| ≤¯¯¯r lθ¯¯¯¯≪ r
l ≤ R l
)
のように表される.ここで,θ
θ=θ¯ l
は比ねじれ角と呼ばれ,[rad/m]で表記される単位長さあたりの角度変位の単位であり,通常の丸軸はl > Rで ある.結局,回転形式のせん断応力τはねじれ角θ¯を用いて
τ(r) =G· θ¯
lr (23)
のように表される.今,中空丸棒に外力たるトルクT が作用しており,これとせん断応力分布τ=τ(r)に基づ く円形断面の力のモーメント和がつりあわねばならない.すなわち,
T−
∫
Aτ dA·r= 0 が成立する.ここで,dA= 2πrdrであるので,ねじりモーメントTは
T =
∫
Aτ(r)·r·dA=
∫ R
nRG· θ¯
lr·r·2πrdr=Gθ¯ l
∫ R
nR2πr3dr=Gθ¯ l ×2π
[r4 4
]R
nR
=Gθ¯ l ·π
2R4( 1−n4)
=Gθ¯
l ·Ip(R, n) すなわち,
T =GIp
θ¯
l, θ¯= T l
GI , ( Ip=π
2R4(1−n4))
(24)
のように表される.括弧内の断面二次極モーメントIpの導出は次節を参照せよ.上式を用いて,応力の式を書 き直すと,
τ(r) = T
Ipr (25)
が得られる.0< n <1の中空丸軸,n= 0相当の中実丸軸の両方とも,最大せん断ひずみτmaxはr=R=d/2 のときに生じ,
τmax= T IpR= 2
π· T
R3(1−n4) (26)
と表される.同様にねじれ角θ¯(≡lγ/r)は θ¯= T l
GIp = 2
π· T l
GR4(1−n4) (27)
と書け,比ねじれ角θ (≡θ/l)¯ は
θ= T GIp = 2
π· T
GR4(1−n4) (28)
である.
3.2.2 中空丸軸の断面二次極モーメントの導出
断面積A,長さl,半径Rの丸軸の位置xの円形仮想断面において,半径がrとr+ ∆rの円に囲まれる円環 の微小断面積∆Aは
∆A=π(r+ ∆r)2−πr2=πr2+ 2πr∆r+π(∆r)2−πr2= 2πr∆r+π(∆r)2
= 2πr∆r+o(∆r)
のように表され,これは∆r→0のとき,微分記号表記を用いて dA= 2πrdr
のように書き直される.今,x軸に垂直なyz平面上に円形断面が存在し,その直径がd(= 2R)である中実丸軸 の断面二次極モーメントIpを考えると,Ipとは円形断面の中心軸であるx軸周りにおける距離の二乗のモーメ ントを意味するから,
Ip≡
∫
Ar2dA=
∫ d/2
0 r2·2πrdr= 2π [r4
4 ]d/2
0 = π 2
(d 2
)4
=π 2R4
= 1 2
(πR2) R2= 1
2AR2 (
=
∫
A(y2+z2)dA )
である.これに対して,断面内直径(中空直径)d1と断面外直径d2 (> d1)を有する中空丸軸の断面二次極モー メントは
Ip=
∫ d2/2
d1/2 r2·2πrdr=
∫ d2/2
d1/2 2πr3dr= 2π [r4
4 ]d2/2
d1/2=π 2
{(d2
2 )4
− (d1
2 )4} となる.今,R=d2/2であり,かつ,内直径の外直径に対する比を
n = d1 (<1)
図22: 端部から一定の仮想断面に力のモーメントが作用する丸軸.
と書くとすると,nR=d1/2となり,中空丸軸の断面二次極モーメントは Ip(R, n) =
∫ R
nRr2·2πrdr=θ¯ l
∫ R
nR2πr3dr= π
2R4(1−n4)
のように書き直され,これは,n= 0に相当する中実丸軸の断面二次極モーメントの(1−n4)倍である.中実丸 軸の直径dと中空丸軸の外直径d2が等しいならば,0 < d1 < d=d2であるから,中実丸軸の断面二次極モー メントが中空丸軸のそれより大きいのは自明であるが,同じ断面積の中実丸軸と中空丸軸について比較した場合 には,
π (d
2 )2
=π (d2
2 )2
−π (d1
2 )2
d21+d2=d22, d2
d22 = 1−n2 であるから,0< d1< d < d2であり,
∫ d2/2
d1/2 r2·2πrdr
∫ d
0 r2·2πrdr
= π 2
(d22 2
)4
(1−n4) π
2 (d2
2
)4 =d22 d2
(1−n4)
= 1−n4
1−n2 = 1 +n2>1
であるから,中空丸軸の方が中軸より大きい断面二次モーメントとなる.一般に,部材の重量と材料コストはそ の断面積によって決定されるため,断面積を変更せずに,断面二次極モーメントあるいは断面二次モーメントを 増強したいのであれば,中空化はそれを実現する有効な手段であるため,中空構造の部材がしばしば設計される.
ポイントを学ぶ材料力学・例題3.1 両端A,Bを固定された中空丸軸の任意の点CにねじりモーメントT が 作用するとき,荷重点Cの回転角θ¯を求めよ.
解答 ねじりモーメントに関するつりあいの条件式
T−TA−TB= 0 と点Cにおける両側のねじれ角が等しいので,
θ¯ = ¯θ = ¯θ
が成り立つ.θ¯A,θ¯Bはそれぞれ,TA,TBによって生じたものであるから,
T Ip =
∫
A{τ(r)·dA} ·r
∫
Ar2·dA =
∫
AGγ·rdA
∫
Ar2·dA =
∫ R
nRGθ¯
lr·r(2πrdr)
∫ R
nRr2·2πrdr
=Gθ¯ l
θ¯A=θAa=TAa GIp θ¯B =θBb= TBb GIp
と書けるので,θ¯A= ¯θBと連立させ,
TAa=TBb
が得られる.これとねじりモーメントに関するつりあい条件式を連立させて,
TA= b a+bT TB= a
a+bT であるので,
θ¯= a
GIpTA= a GIp · b
a+bT = ab GIp(a+b)T
が得られる.中空円柱の外直径と内直径をそれぞれd2,d1とすると,断面二次極モーメントIpは Ip=
∫
Ar2·dA=
∫ d2/2
d1/2 r2·2πrdr= 2π [r4
4 ]d2/2
d1/2= π 2
{(d2
2 )4
− (d1
2 )4}
であるので,これを上の式に代入して,
θ¯= abT G(a+b)· 1
Ip = abT
G(a+b)· 2·24
π(d42−d41) = 32ab
πG(a+b) (d42−d41)T を得る.