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両端が剛体壁により変形が拘束された線膨張係数αの棒部材に作用する圧縮力 温度t1 [C]のときに長さlで ある縦弾性係数E,直径dの円形断面棒部材を図2.8のように剛体壁に固定する.この部材の長手軸方向に温度 上昇に対して線膨張係数α[m/C]で膨張するとするとすると,温度t2 [C] (> t1)のときに部材に生じる圧縮 ひずみ,圧縮応力,圧縮力を求める.このように温度変化に起因して生じる内力を熱応力という.仮に,剛体壁 で拘束する前に,温度がt1からt2まで上昇したとすると,このときの伸びλ

λ=αl(t −t )

であり,その伸びひずみϵ

ϵ= λ

l =α(t2−t1)

のように表される.よって,この熱応力問題は伸びλを生じた棒の全長l=l+λを基準長さとして,剛体壁の 拘束による未知の圧縮力Pを作用させてϵlの縮み変形を生じさせ,圧縮後の棒の長さをlにするというもので ある.このときの伸びを正とするひずみϵ (<0)は変形後長さlの変形前長さlに対する差を変形前長さlで除 するというひずみの定義から,

ϵ= l−l

l = l−(l+λ) l+λ = −λ

l+λ = −λ l(1 +λ/l)

≈ −λ

l (=−ϵ)

のように表される.ここで,λ/l1として近似を用いた.上式から,伸びを正とするひずみϵ (<0)は縮みを 正とするひずみϵ (<0)で近似されることがわかる.今,圧縮応力をσとするフックの法則を考えると,圧縮ひ ずみは−ϵあるいはϵで表されるから,圧縮応力σ

σ=E(−ϵ) =E λ l(1 +λ/l)

≈Eλ

l ==(t2−t1), (σ >0, t2> t1) のように表され,さらに,部材が剛体壁から受ける圧縮力P は断面積をAとすると,

P=σA=AE(−ϵ) =AE λ l(1 +λ/l)

≈AEλ

l =AEϵ=AEα(t2−t1) によって与えられる.ここで,断面積A

A=π (d

2 )2

であるから,圧縮力P

P = πd2

4 E λ

l(1 +λ/l)

πd2 4

l = πd2

4 (t2−t1)

であることがわかる.次に,熱膨張と圧縮力の両方に基づく総変形量に着目して圧縮力Pを求めよう.長さlに 熱膨張による伸び変形量ϵlおよび,圧縮力による変形量−ϵl(1 +ϵ)を加えたものが剛体枠組みに固定された長 さlであることから,

l+ϵl−ϵl(1 +ϵ) =l

が成立し,上式に熱膨張ひずみϵ=α(t2−t1)を代入して,l (̸= 0)を消去すると,

ϵ(1 +ϵ) =(t2−t1) が得られる.ここで,1≪ϵとすると,圧縮ひずみϵ

のように表され,線膨張係数と温度変化に比例することがわかる.上式をフックの法則 P

π(d

2

)2 = に代入すると,圧縮力P

P ≈πd2

4 (t2−t1) のように表される.

線膨張係数の異なる2つの部材が連結されかつその両端を剛体壁により拘束された棒の変形 図2.9のような線 膨張係数と縦弾性係数がそれぞれα1,E1である棒部材1と線膨張係数と縦弾性係数がそれぞれ,α2,E2であ る棒部材2を連結し,かつその両端を剛体壁で拘束し,温度を室温から温度t [C]だけ上昇させたときの軸力 P,応力σ,ひずみϵを求める.ここで,棒部材1,2の断面積はそれぞれ,A1A2であり,それらの室温にお ける長さをそれぞれ,l1,l2とし,剛体壁間の距離Lはにl1+l2に等しいとする.部材1,2にそれぞれ生じる 幾何学的変化量ϵ1l1,ϵ2l2は部材それぞれにおける熱膨張による伸びと未知の軸力Pの作用による変化量の和で ある.よって,部材1の熱ひずみと未知の軸力Pによるひずみをそれぞれ,ϵt1,ϵP1とし,部材2についても同 様にϵt2,ϵP2を定義すると,部材1,2それぞれについて,

ϵ1l1=ϵt1l1+ϵP1l1(1 +ϵt1), ϵ2l2=ϵt2l2+ϵP2l2(1 +ϵt2) が成立する.ここで,ϵt11,ϵt21であるとすると,

ϵ1≈ϵt1+ϵP1, ϵ2≈ϵt2+ϵP2

のように近似される.熱膨張による部材1,2の縮みϵt1l1,ϵt2l2はそれぞれ,線膨張係数α1,α2を用いて,

ϵt1l1=α1tl1, ϵt2l2=α2tl2

のように表され,部材1,2はともに軸力P で圧縮されるので,それぞれのフックの法則がϵP1,ϵP2を用いて,

P

A1 =E1ϵP1, P

A2 =E2ϵP2

のように書かれる.ここで,Pの符号は引張り力を正とした.剛体壁の拘束によって部材1と部材2の長さの合 算は温度上昇前後で等しいことが幾何学的に明らかであるから,

l1+l2= (l1+ϵt1l1+ϵP1l1) + (l2+ϵt2l2+ϵP2l2) すなわち,

t1+ϵP1)l1+ (ϵt2+ϵP2)l2= 0 が成立する.以上により

(

α1t+ P A1E1

) l1+

(

α2t+ P A2E2

) l2= 0 A2E2A1E1α1tl1+A2E2P l1+A1E1A2E2α2tl2+A1E1P l2= 0 (A2E2l1+A1E1P l2)P+A1E1A2E21tl1+α2tl2) = 0

図 16: ボルトとナット.

が得られるので,軸力P

P =−A1E1A2E21l1+α2l2)

A2E2l1+A1E1l2 t= α1l1+α2l2 l1

A1E1 +Al22E2t

のように決定される.温度が上昇するt >0のとき,上式のPP <0となり,実際には圧縮力であることが わかる.さらに,部材1,2の垂直応力をそれぞれ,σ1,σ2とすると,これらは

σ1= P

A1 =−E1A2E21l1+α2l2)

A2E2l1+A1E1l2 t, σ2= P

A2 =−A1E1E21l1+α2l2) A2E2l1+A1E1l2 t

のように表され,t >0ではσ1,σ2がともにゼロより小さく,圧縮応力を生じることがわかる.また,垂直ひず みϵ1,ϵ2として,

ϵ1=ϵt1+ϵP1=α1t+ P

A1E1 =α1t− 1 A1E1

A1E1A2E21l1+α2l2) A2E2l1+A1E1l2 t

= {

α1−A2E21l1+α2l2) A2E2l1+A1E1l2

} t=

{

α1−α1l1+α2l2 l1+AA12EE12l2

} t

ϵ2=ϵt2+ϵP2=α2t+ P

A2E2 =α2t− 1 A2E2

A1E1A2E21l1+α2l2) A2E2l1+A1E1l2 t

= {

α2−A1E11l1+α2l2) A2E2l1+A1E1l2

} t=

{

α21l1+α2l2)

A2E2

A1E1l1+l2 }

t

を得る.部材連結部の変位量を部材1の他端から部材2の他端の方向を正とするλによって定義すると,

λ=ϵ1l1= {

α1−A2E21l1+α2l2) A2E2l1+A1E1l2

}

tl1=(A1E1α1−A2E2α2)l1l2

A2E2l1+A1E1l2 t (=−ϵ2l2)

のように表される.温度が上昇するt >0であり,かつA1E1α1> A2E2α2ならば,連結部がλの正方向に移動 する.

ポイントを学ぶ材料力学・例題2.4 図のように,縦弾性係数E2,断面積A2,長さlを有する黄銅管の両端に 剛体板を当て板として配置し,縦弾性係数E1,断面積A1の鋼性ボルトで締め付ける.このとき,剛体板が円形 断面管の両端に接してから,さらに1回転締め付けた.ボルトと黄銅管それぞれに生じる応力σ1,σ2を求めよ.

解答 ナットとボルトのヘッド部を剛体と見なす.もし,円形状断面積A1のボルト首下部分も剛体であり,環 状断面積A2の黄銅(真鍮)管のみ弾性体と見なせば,ピッチがpであるボルト・ナットのn回転相当の締め付 けをすると,ナットの変位量npだけ弾性を有する黄銅管が剛体でナットとボルトの剛体ヘッドから圧縮力を受 けて伸びの変形を生じたであろう.今,黄銅管に加えて,ボルトの首下部分が弾性体であると考えるため,ボル ト・ナットの締め付けにより,黄銅管は圧縮力を受けて縮み,首下からナットの位置までのボルト部分は引張り 力を受け伸びの変形を生じる.締め付け前の首下からナットの位置までの距離と黄銅管の長さが共にlに等しい とし,ボルト・ナットのn回転相当締め付け時のボルト部分と黄銅管の(伸びを正とする)変形量をそれぞれ,

λ1(>0),λ2 (<0)とすると,変形後の首下からナットまでの距離が黄銅管の長さに等しいこと,すなわち l−np+λ1=l+λ2

が条件となる.ここで,λ1 ,λ2 はそれぞれ関連するボルト首下部の断面に生じる引張り応力σ1 (>0)と黄銅 管断面に生じる応力σ2 (<0)と,フックの法則

σ1=E1λ1

l , σ2=E2λ2 l により関連付けられるので,上の2式を連立させて,

−np+1

E1 =2

E2

の関係が得られる.さらに,σ1σ2はボルトの首下剛体に関する力のつりあい条件 σ1A1+σ2A2= 0

を満たすので,ボルト・ナットのn回転締め付けにおける,首下からナット位置までのボルト部に生じる引張り 応力σ1,黄銅管の応力σ2,および,関連する変形量λ1λ2

−np+1

E1 = l E2

−σ1A1 A2 σ1

( l

E1 + lA1 E2A2

)

=np

σ1= E1E2A2

(E1A1+E2A2)lnp σ2= E1E2A1

(E1A1+E2A2)lnp λ1= σ1l

E1 = E2A2

E1A1+E2A2np λ2=σ2l

E2 = E1A1 E1A1+E2A2np

のように順次求められ,これらがナットの変位量npの関数となることが分かる.1回転締め付けにおけるσ1σ2n= 1を代入して,

σ1= E1E2A2

(E1A1+E2A2)lp σ2= E1E2A1

(E1A1+E2A2)lp のように求まる.

図17: 両端が剛体壁に密着する部材.

例題で学ぶ材料力学・例題1.10 長さL,一様な断面積A,縦弾性係数Eの円形断面棒を考え,その左右両端 のA,Bが剛体壁によって完全に固定されている.今,AとBの間にあり,左端Aからa(=L−b)の距離に位 置するC点の断面が右向きの軸方向荷重Pを受けるとき,左右両端の剛体壁に生じる反力RA,RBとC点の移 動量δを求めよ.

解答 点Cでの力のつりあいより,

P−RA−RB= 0

が成立する.点Cへの軸方向荷重Pにより,AC部分には引張り力が,BC部分には圧縮力が生じ,棒の両端が 剛体壁に隙間なく連結されているので,AC部分は伸び,BC部分は縮んで,棒全体の変形量は相殺されること になる.AC部分の伸びをδA(>0),BC部分の縮みをδB (>0)とすると,

a+b= (a+δA) + (b−δB) のように,変形前後の棒の長さは一致するから,

δA=δB でなければならない.変形量δA,δBに関して,フックの法則,

RA

A =A

a, RB

A =B

b が成立するので,これらをδA=δBと連立させて,

RAa−RBb= 0

を得る.これと,力のつりあい式P−RA−RB= 0を連立させて,RA,RBについて解くと,

RA= b

a+bP, RB= a a+bP これらをフックの法則と連立させて,点Cの変位量δ

δ= ab

(a+b)AEP (=δA=δB) のように表される.

例題で学ぶ材料力学・例題1.12 自然長l0(>0)の2本の鋼棒材からなる枠組み構造に,自然長がl0よりλ(>0) だけ大きい長さl (=l0+λ)の銅棒を圧入したところ,鋼棒材の長さはl0からδ(>0)だけ増加し,l (=l0+δ) となった.両部材に発生している応力と増加量δを求めよ.鋼部材の縦弾性係数と断面積はそれぞれEs,As

図18: 枠組みに圧入された部材.

解答 銅棒の圧入により,枠組構造から引張り力となる反力を受けて,2本の鋼棒材それぞれが長さl0からlに 同時に変化したことになるので,2本の鋼棒材に生じているひずみをϵsとすると,

ϵs= l−l0

l0 = (l0+δ)−l0

l0 = δ l0

と表される.銅棒材に関しては,圧入前に長さl(=l0+λ)であったものが,圧入後に鋼棒材と同じl(=l0+δ) の長さに変化したことになる.λ/l0が1に比べて十分小さいとすると,引張りを正とする銅棒材のひずみϵc

ϵc= l−l

l =(l0+δ)−(l0+λ)

l0+λ =−λ+δ

l0+λ = −λ+δ l0

( 1 + λ

l0 )

−λ+δ

l0 =−λ−δ l0 ,

(

λ l0 1

)

のように近似され,(λ−δ)/l0の圧縮ひずみが生じたことになる.鋼と銅の部材それぞれの断面に生じる引張り 応力σsは,フックの法則により,

σs=Esϵs=Esδ l0

のように表され,λ > δであり,ϵcが引張りを正とするひずみとして定義されていることに注意すると,圧縮応 力σcはフックの法則により,

σc=Ecc|=Ec¯¯

¯¯ −λ+δ l0(1 +λ/l0)

¯¯¯¯

≈Ec¯¯

¯¯−λ−δ l0

¯¯¯¯=Ecλ−δ l0

のように表記される.次に,剛体壁が鋼棒材を反力Rs(>0)で引張り,銅棒材をRc (>0)で圧縮するとすると,

左の剛体壁に関して力のつりあいを考えて,

−2Rs+Rc= 0

が成り立つ.引張り力Rs,圧縮力Rcはそれぞれ,鋼と銅の棒材内の仮想断面の軸力とつりあっているから,

−Rs+σsAs= 0 R −σ A = 0

でなければならない.上の3式を連立させて,

sAs=σcAc であるので,これとフックの法則の2式を連立させて,

2Esδ

l0As=Ecλ−δ l0 Ac となるので,これより,

δ= AcEc 2AsEs+AcEcλ

が与えれる.これを,フックの法則の2式に代入することにより,引張り応力σsと圧縮応力σcσs= AcEcEs

2AsEs+AcEc λ

l0, σc= 2AsEsEc 2AsEs+AcEc

λ l0 のように得られる.

3 断面図形の性質と丸軸のねじり