第 II 部
6.9 せん断力によるはりのたわみ
が成立するので,
F =RA=wl 2 −wx M = wl
2 x−w 2x2=w
2
(lx−x2)
が得られる.このせん断力Fをたわみvsの式に代入し,さらにv0= 0とすると vs(x) = κ
GA
∫ x
0 Fdx+v0= κ GA
∫ x
0
(wl 2 −wx
)
dx= κ GA
[wl 2 x−w
2x2 ]x
0
= κw
2GA(xl−x2) = κw 2GA
[
− (
x− l 2
)2 +l2
4 ]
が与えられる.x=l/2としたとき,たわみは最大値 vs max= κw
2GA l2
4 =κwl2 8GA
を取る.一方,曲げモーメントM によるたわみ角とたわみは,たわみの微分方程式より i(x) = w
24EI
(4x3−6lx2+l3) v(x) = w
24EI
(x3−2lx2+l3)
が既に求められており,x=l/2の中央点においてたわみが最大値 vmax= w
24EI {(l
2 )3
−2l (l
2 )2
+l3 }
= 5wl4 384EI
を取る.せん断力による最大たわみvs maxの曲げモーメントによる最大たわみvmaxに対する比を求めると,
vs max
vmax =κwl2
8GA ·384EI 5wl4 =48κ
5 (k
l )2
E
G, k=
√I A
を得る.ここで,kは中立軸に関する断面二次半径である.幅b,長さhの長方形断面の場合,k2 = h2/12,
κ= 3/2であり,さらに,材質は鋼であってE/G= 2.6,h/l= 10であるとすると,たわみの比は vs max
vmax = 48 5
3 2
h2 12
2.6 l2 = 3.12
(h l
)2
= 0.0312
となり,高々3%程度という小さな値となる.よって,たわみの計算において,せん断応力の効果はしばしば無 視される.
例題で学ぶ材料力学・例題4.1 外径d2,内径d1の円管の主軸に関する断面二次モーメント,断面係数,断面 二次半径を求めよ.ただし,d1= 10 cm,d2= 8 cmとする.
解答 円管の断面二次極モーメントIpは Ip=
∫
r2dA=
∫ d2/2
d1/2 r2·2πrdr= 2π
∫ d2/2
d1/2 r3dr= 2π [1
4r4 ]d2/2
d1/2
=π 2
{(d2 2
)4
− (d1
2 )4}
= π 32
(d42−d41)
である.円管の中心を通る直交する2つの主軸であるx軸,y軸に関する断面二次モーメントをそれぞれ,Ix, Iyとすると,これらは等しいので,
Ix=Iy であるから,
Ip=
∫
r2dA=∫ (
x2+y2) dA=
∫
x2dA+
∫
y2dA=Ix+Iy= 2Ix である.ゆえに,
Ix=Iy =Ip
2 = π 64
(d42−d41)
= π 64
(104−84)
= 290 [cm4] である.断面係数Zと断面二次半径kはそれぞれ,
Z = I d2/2 = π
32 d42−d41
d2
= π 32
104−84
10 = 58 [cm3]
k=
√I A =
vu ut π
64
(d42−d41) π(d2/2)2−π(d1/2)2 =
√ d42−d41 16 (d22−d21)=
√(d22+d21) (
d42−d41) 16 (d22−d21) =
√d22+d21 16
=
√102+ 82
16 = 3.20 [cm]
例題で学ぶ材料力学・例題4.2:はりの中央に集中荷重を受ける単純支持はりの最大曲げモーメントと最大曲げ 応力 長さl = 15 mの単純支持はりの中央にW = 400 Nの集中荷重が作用している.はりは一様な長方形断 面を持ち,その幅と高さはそれぞれ,20 mm,40 mmである.最大曲げ応力を求めよ.
解答 両端AとBが単純支持されたはりにおいて,はりの中央Cに1個の集中荷重W が作用するときのたわ みをvを求める.AとBの反力をそれぞれ,RAとRBとすると,力のつりあい方程式は
W −RA−RB= 0 であり,左右対称性より
RA=RB
としてよいので,反力は
W
と求められる.左右対称であることから,左半分のみについて考えればよい.全長lのはりから左端のx= 0か ら長さxの部分を切り出し,右端に反時計回りの曲げモーメントMを付加すると,右端の周りの力のモーメン トのつりあい方程式は
−RAx+M = 0 であるから,位置xの断面における左半分の曲げモーメントは
M(x) =RAx= W 2 x,
(
0≤x≤ l 2
)
のように表され,右半分は,上式のxをl−xで置き換えた M(x) = W
2 (l−x),
(l
2 ≤x≤l )
のよって与えられる.よって,はりの最大曲げモーメントははりの中央断面であるx=l/2において生じる.最 大曲げモーメントはMmaxは上の曲げモーメントの式にx=l/2を代入して,
Mmax= W 2
l 2 = W l
4
と求まる.また,幅と高さがそれぞれ,bとhである長方形断面の断面係数Zは Iz=
∫
Ay2dA=
∫ h/2
−h/2y2·bdy=b [y3
3 ]h/2
−h/2= 2b [y3
3 ]h/2
0 =bh3 12
Z= I h/2 =
∫
Ay2dA h/2 =
∫h/2
−h/2y2·bdy
h/2 = b
h/2 [y3
3 ]h/2
−h/2= 2b h/2
[y3 3
]h/2
0 = 2b h/2
(h/2)3 3 =bh2
6 であるから,最大曲げ応力σmaxは
σmax= Mmax
Z = W l 4
6
bh2 =400×15
4 · 6
20×10−3×40×10−3 = 281×106= 281 [MPa]
によって与えられる.
例題で学ぶ材料力学・例題4.3:軸力と曲げモーメントによる片持ちはりの応力 片持ちはりの自由端A点に,
BからAの方向の荷重W と,反時計回りの支点モーメント M0=W c
が作用している.A点から距離xの仮想断面の曲げモーメントを求めるため,左端がA点である長さxのはり を考えて,右端仮想断面に反時計回りの曲げモーメントM があるとするをA点の周りのモーメントのつりあい から,
M0+M = 0, ∴M =−M0=−W c
が成立する.また,仮想断面に引張りの軸力Nがあるとして,AからB方向を正としてはりの軸方向の力のつ りあいを考えると,
−W+N = 0, ∴N =W
が成り立つ.曲げモーメントM によってはりABの上面には引張り応力が,下面には圧縮応力が生じ,中立面 に関する断面図形の対称性よりこれらの絶対値は等しい.引っ張りを正の符号と定めて,さらに,軸引張り力N
由来の引張り応力をσ1と定義し,曲げモーメント由来の応力をσ2 (>0)のように表すとすると,上面と下面に 現れる応力の合計は,それぞれ,σ1+σ2,σ1−σ2と書ける.ここで,σ1,σ2はそれぞれ,
σ1= W bh
σ2=M
Z = W c
∫
Ay2dA·(h/2)−1 = W c (h/2)−1∫h/2
−h/2y2·bdy = W c
(h/2)−1·2∫h/2
0 y2·bdy
= W c
(h/2)−1·2b [y3
3 ]h/2
0
= W c
(h/2)−1·bh3 12
= 6W c bh2
のように表されるから,上面と下面のそれぞれに生じる応力および,N 由来の応力のM 由来の応力の対する比 σ1/σ2は,
σ1+σ2= W
bh +6W c bh2 =W
bh (
1 +6c h
)
σ1−σ2= W
bh −6W c bh2 =W
bh (
1−6c h
)
σ1/σ2=W bh
(6W c bh2
)−1
= h 6c
のように与えられる.上の式はhに比べてcが大きいと,右辺の値は小さくなり,応力に関して,曲げモーメン トのみが支配的となる.
例題で学ぶ材料力学・例題4.4:等しい最大曲げ応力を生じる正方形断面と円形断面の2つのはりの重さの比 曲 げ応力を等しくすることは,両断面のはりの断面係数を等しくすることを意味する.一辺の長さaである正方形 断面,すなわち,幅と高さがともにaである長方形断面の断面係数Zaは
Za =
∫a/2
−a/2y2·ady
a/2 = 2a∫a/2
0 y2dy a/2 = 4
[y3 3
]a/2
0 = a3 6 であり,直径dの円断面の断面係数Zdは,
Zr= I d/2 =
∫d/2
−d/2y2·dA
d/2 =
∫d/2
−d/2y2·2(
r2−y2)1/2
·dy d/2
のように表される.ここで,直径d = 2r の円の断面二次モーメントI に関しては,y = rsinθとおくと,
r2−y2=rcosθ,dy=rcosθ·dθであるので,
I=
∫ r
−ry2·2(
r2−y2)1/2 dy=
∫ π/2
−π/2r2sin2θ·rcosθ·rcosθ·dθ
=r4
∫ π/2
−π/2sin2θcos2θdθ= 2r4
∫ π/2
0 sin2θcos2θdθ
= 2r4
∫ π/2
0
(1 2sin 2θ
)2
dθ= r4 2
∫ π/2
0 sin22θdθ
と変形できる.さらに,Θ = 2θとすると,dΘ = 2dθであり,cos 2Θ = 1−2 sin2Θが成立するので,結局,直 径d= 2rの円に関する断面二次モーメントIは
I= r4 2
∫ π
0 sin2Θ·dΘ 2 = r4
2
∫ π
0
1−cos 2Θ
2 dΘ
= r4 4
∫ π
0 (1−cos 2Θ) dΘ = r4 4
[ Θ−1
2sin 2Θ ]π
0
= πr4
4 =π(d/2)4 4 =πd4
64 によって与えられる.これを用いて,断面係数Zdは
Zd = I d/2 = 1
d/2 πd4
64 = πd3 32
のように表される.円形断面係数Zdを正方形断面の断面係数Zaと等しいので,
πd3 32 = a3
6 d a=
(16 3π
)1/3
のように直径と正方形の一辺の長さの比を得る.一方,体積密度ρの同じ材質の円形断面と長方形断面のはりの 重さの比Wd/Waははりの体積比Vd/Vaに相当し,はりの長手方向の長さlが一定であり断面形状が変化しない 場合であるから,結局,はりの重さの比は
Wd Wa =ρVd
ρVa = ρlAd ρlAa = Ad
Aa = π(d/2)2 a2 = π
4 (d
a )2
=π 4 ×
(16 3π
)1/3×2
=π 4 ×
(16 3π
)2/3
= 1.12
のようにはりの断面積Ad/Aaの比に一致する.
例題で学ぶ材料力学・例題4.5:安全率と最大曲げモーメントおよび曲率半径 幅と高さがそれぞれbとhであ る長方形断面の断面二次モーメントIは
I=
∫
Ay2dA=
∫ h/2
−h/2y2·bdy= 2b
∫ h/2
0 y2dy= 2b [y3
3 ]h/2
0
=bh3 12
であるので,中空長方形断面の断面二次モーメントは,中空でない長方形の断面二次モーメントI1から中空長 方形の断面二次モーメントI2を引いたものであるから,
I1−I2= 80×10−3×(
120×10−3)3
12 −64×10−3×(
104×10−3)3 12
= 80×1203−64×1043
12 ×10−12= 5.52×10−6[m4] = 5.52×102 [cm4] のように計算できる.よって,断面係数Zが
Z= I1−I2
h/2 = 5.52×10−6
(120×10−3)/2 = 9.20×10−5[m3] = 9.20×10 [cm3]
のように与えられる.許容応力をσa1とすると,引張り強さσB (=Pmax/A)が300MPa (
= 300×106Pa) は σa1と安全率f = 3の積であるから,σB=σa1·f が成り立つ.よって,許容応力は
σa1=σB
f = 300×106
3 = 1.00×108 [Pa] = 100 [MPa]
である.この値が比例限界強さに相当する降伏応力150MPaより小さい値であることからフックの法則に基づい てこの問題を扱ってよいことがわかる.許容応力σa1とそれを与える曲げモーメントM の関係は断面係数Zを 用いて,
σa1= M Z のように表されるから,曲げモーメントとして
M =Z·σa1= 9.20×10−5×1.00×108= 9.20×103 [Nm]
を得る.これとE= 70 [GPa] (
= 70×109 [Pa])
より,曲率半径ρは,
ρ= EI
M =70×109×5.52×10−6
9.20×103 = 4.2×10 [m]
のように求められる.
例題で学ぶ材料力学例題5.1 一様な断面をもった長さlの片持ちはりの自由端からaの距離に集中荷重が作用 する場合のたわみ曲線を求めよ.また,l= 5 m,a= 1 m,W = 1 kN,E= 206 GPa,I= 1.05×10−6m4の ときの最大たわみおよび最大たわみ角を求めよ.
解答 左端Aを自由端,右端Cを固定端とする長さlの片持ちはりにおいて,Aからaの距離にあるB点に集 中荷重W が作用しているので,応力を考える仮想断面の位置xが0≤x < aとa≤x≤lのどちらの範囲にあ るかで,場合分けをする.
0≤x < aのとき,A端から長さxの位置までのはりを切取り,右端に未知の曲げモーメントM とせん断力 Fを付加すると,力のつり合いと右端周りの力のモーメントのつり合いより,
F = 0, M = 0 が得られ,曲げモーメントがゼロであるから,たわみの微分方程式は
d2v dx2 =− 0
EI となる.積分を行ってたわみとたわみを求めると,
i=
∫ 0
EIdx= C1
EI v=
∫ ∫ 0
EIdxdx=
∫ C1
EIdx= 1
EI (C1x+C2) のように表される.
a≤x≤lのとき,長さxのはりを切取り,右端に反時計回りの曲げモーメントM と鉛直下向きのせん断力 Fを追加すると,力のつり合いと右端周りの力のモーメントのつり合いより,
M +W(x−a) = 0
M =−W(x−a) が得られる.曲げモーメントをたわみの微分方程式に代入すると,
d2v
dx2 =−−W(x−a) d2v EI
dx2 = W
EI(x−a) となるので,積分を行ってたわみ角を求めると,
i=
∫ W
EI (x−a) dx= W EI
[(x−a)2 2 +C3
]
のように表され,x=lの自由端でたわみ角i= 0である境界条件を代入すると,
0 = W EI
[(l−a)2 2 +C3
]
, ∴C3=−(l−a)2 2 を得る.さらに積分を行うと,たわみは
v=
∫ W EI
[(x−a)2 2 +C3
]
dx= W EI
[(x−a)3
6 +C3(x−a) +C4 ]
= W EI
[(x−a)3
6 −(l−a)2
2 (x−a) +C4 ]
のように表される.上式で,x=lの固定端でたわみv= 0であるから,
0 = W EI
[(l−a)3
6 −(l−a)2
2 (l−a) +C4 ]
, ∴C4=(l−a)3 3
のように決定される.はりのたわみ曲線はx=aにあるB点において,連続であるから,場合分けして求めた 2つのたわみ角と2つのたわみはx=aにおいて,それぞれ相等くなければならない.よって,
C1
EI = W
EI (0 +C3) 1
EI (C1a+C2) = W EI
[
0−0 +(l−a)3 3
]
が成立する.これらにより,
C1=W C3=−W(l−a)2 2
C2=W(l−a)3
3 −C1a=W(l−a)3
3 −−W(l−a)2
2 a= 2W(l−a)3+ 3W(l−a)2a 6
=W(l−a)2(2l+a) 6
を得る.よって,たわみ角とたわみは
i=−W(l−a)2
2EI , (0≤x≤a) i= W
EI
[(x−a)2
2 −(l−a)2 2
]
, (a≤x≤l)
v= 1 EI
(
−W(l−a)2
2 x+W(l−a)2(2l+a) 6
)
= W(l−a)2 2EI
(
−x+2l+a 3
)
, (0≤x≤a)
v= W EI
[(x−a)3
6 −(l−a)2
2 (x−a) +(l−a)3 3
]
, (a≤x≤l)
のように表せる.上の4つの式のうち,第1式と第2式に注目すると,ABの部分においてたわみが最大となっ ていることが自明であり,その最大たわみ角は
imax=−W(l−a)2
2EI =− 1×103×(5−1)2
2×206×109×1.05×10−6 =−0.00370 [rad] =−2.12 [deg]
のように与えられる.たわみは,第3式,第4式より,x= 0で最大となることが自明であり,その最大たわみ の値は,
vmax= W(l−a)2 2EI
(
−0 +2l+a 3
)
=W(l−a)2(2l+a) 6EI
= 1×103×(5−1)2×(2×5 + 1)
6×206×109×1.05×10−6 = 1.36×10 [m] = 13.6 [cm]
と求められる.
例題で学ぶ材料力学例題5.2 一様な断面を持った長さの単純支持はりABの左端Aから任意の距離a(右端B から距離b=l−a)に1個の集中荷重W が作用するとき,たわみ曲線,両端A,Bのたわみ角,および最大た わみを求めよ.ただし,l= 5 m,a= 3 m,W = 1 kN,E= 206 GPa,I= 1.05×10−6 m4とする.
解答 はりに作用する力は図bに示されるように,荷重W にそれぞれ支点A,Bの反力であるRA,RBを加え た3つであり,これらの間には,点Bを中心とする力のモーメントのつりあい
bW−lRA= 0 と点Aを中心とする力のモーメントのつりあい
−aW +lRB= 0 が成立する.よって,2つの反力は
RA=b
l ·W, RB= a l ·W によって与えられる.
次に,はりの左端の点Aからの距離をxとすると,x=aにある荷重W の存在を考慮して,0 ≤x≤aと