雪や寒さによる トラブル
事例2 凍結による
トラブル
は効果があるものの、ベランダに水が溜ることは想定してお らず、2階のベランダにプール状に水が溜まったのは、ベラン ダの専用使用権を有するAさんが、管理組合の呼びかけに もかかわらず、排水目皿の清掃を3年間、一度もしなかった ことが直接の原因だと思われる。」
理事会はAさんにこのように説明する一方、全戸に排水 目皿の清掃を呼びかけ、管理会社には1階ベランダ床の排 水管の末端の日常点検を指示し、翌日から、管理人が全て の排水管を毎日点検して歩き、記録を残すようにした。
築13年目、60戸のBマンション理事会は、昨年大規模修 繕を終えてほっと一息ついていた。大規模修繕後のアンケ ートで、今後理事会で検討して欲しい項目として挙げられた のは、マンション住民の高齢化にともなって提案されたこと ばかりだった。
・ガスを使わないオール電化のための電気容量の増加 ・階段や廊下への手摺の設置
・玄関前通路にロードヒーティング
理事会では、こうした課題に対して、順番に業者から見積 を取り、長期修繕計画の見直しに着手。
このマンションの除雪業者との委託契約では、降雪10セ ンチ以上になると、駐車場の機械除雪と、玄関前通路の人
力除雪をすることになっている。
しかし、この年の冬は例年になく雪が多く、朝除雪しても、
夕方までにまた積もってしまうような状態で、管理人は毎日 玄関前通路の除雪に追われた。管理人が休みの日は、一 部の住人が除雪をかって出てくれて、常に除雪が行き届い ているのだが、2月の日曜日の夕方、朝から降り積もる雪で通 路がかまぼこ状になっていて、入居者の70歳の女性が玄関 前で滑って足を骨折してしまった。
いつも除雪をしている人たちは、今日に限ってそれぞれ 外出しており、除雪が行き届かなくて残念だ、と自分のこと のように悔しがった。
この事故をきっかけに、玄関前だけでもロードヒーティング をしようという機運が盛りあがり、このマンションはこの年の夏、
通路の改修工事に着手した。
事例を参考にしながら、トラブルの芽を摘むヒントを考 えてみましょう。
事例1では、雪庇・落雪の問題を取り上げましたが、注意 していただきたいのは、新築から10年以上も問題がなかった マンションでも、最近になって雪庇の落下による大きな事故 が起きているということです。
これまで何ごとも起きていないから、大丈夫だと考えたくな るのは人情ですが、たとえば2002年1月21日から翌日にかけて、
真冬にもかかわらず札幌で78ミリもの降雨があり、測候所・
観測史上の最大値を更新しました。前夜までにたっぷりと 積雪があり、そこに時ならぬ豪雨が加わって、いたるところに シャーベット状の水たまりができ、町じゅうが水浸しの様相を
呈しました。
このようなときには、建物まわりにとくに注意が必要です。
雪庇の雪もたっぷりと水を吸って、落下すると雪とは思えな いような破壊力をもつことが予想されます。
危険を予知する「監視の目」は、多いほどよいので、管理 人まかせにせず、全戸に注意を呼びかけて、安全を守る意 識を高めるとよいでしょう。
危険な個所を発見したら、
・ロープと看板で立入禁止の表示をする ・それから雪庇を落とす
・恒久的な対策として、通路に屋根を架けたり、屋上に ルーフヒーターの設置を検討する
などの処置が考えられます。
災害は忘れた頃にやってくると言いますが、雪庇・落雪 対策を考えるには、「今まで安全だったから」という過信を捨 てることが必要です。
事例2では、ベランダの排水管の凍結の問題を取り上げ ました。この事例のように、屋内に浸水したケースはそう多く ないかも知れませんが、排水不良のためベランダに水が溜ま るという事例はかなりあります。
事例にもあるとおり、そのほとんどは目皿の掃除をしてい ないことが第一原因ですので、春と秋には、「ベランダの清 掃週間」のようなキャンペーンをして、全住戸にベランダ排水
解決の糸口
北海道特有の問題といえば、まっさきに挙げられる のは、雪と寒さでしょう。
主として雪がもたらす問題は、雪庇・落雪による危 険や破損をはじめ、除雪・排雪にともなう契約上のト ラブル、またロードヒーティングの維持費負担の問題 などがあります。
また寒さがもたらす問題としては、凍結による給排 水の故障、屋外施設の凍上、コンクリートの凍害、室 内の結露など、それだけで1冊の本が書けるほどです。
ここで は、
事例3
除雪の状態が悪く、
転んで骨折
解決のポイント
PO INT
目皿の点検と清掃を呼びかけるようにしましょう。また、この 事例では、ベランダでペットのブラッシングをしていますが、こ うした何気ない行為が事件の引き金になっている事を認識
すべきでしょう。
凍結によるトラブルとしては、他にも、次のような事例があ ります。
①新築の100戸のマンションで、関西出身ではじめて北海道 の冬を過ごす入居者が、洗面所の窓を開け放したままにし ていたために、明け方に気温が低下して洗面台の給水管(銅 管)が凍結しひび割れ、それが日中の暖気で融けて下階に 漏水した。北海道の寒さを知らなかったことが原因で、マン ション内でも水道凍結事故が起き得るという事例。
②築10年、70戸のマンションで、管理人が玄関で異臭を発見。
調べてみると、玄関の床下配管スペースに汚物が溜まって いる。玄関脇の汚水枡を点検したところ、枡が傾いて汚水 管との接続部が割れていた。原因は、ロードヒーティングで 融けた水分が排水枡の脇に流れ込み、ヒーターのスイッチが 切れると凍結するために、排水枡が徐々に押されて枡と汚 水管のジョイントで隙間ができて、漏れだした汚水が配管の 下を伝って配管スペースに逆流していたため。
汚水枡が傾かないように処置するとともに、管理人の日 常点検リストに排水枡のチェックを加えたそうです。
③コンクリートの外部非常階段に、電気式ロードヒーティング が敷設されているケースで、雪が積もるとヒーターが入って融け、
それが排水されずに凍結するため、2年で床が凍害でぼろ ぼろになった。アフターサービスで、階段を全面補修して、ロ ードヒーティングは電源を撤去。
冬期間、舗装が冷え切ったままだとトラブルにならないのに、
ロードヒーティングをして雪を融かすことによって、新たな凍 結被害を産んでいる事例があります。ロードヒーティングのポ イントは、融けた水をきちんと排水することです。
事例3では、マンションの敷地内通路で、たまたま除雪が 追いつかず、お年寄りが転倒して怪我をした事例ですが、
それがきっかけになってロードヒーティングを敷設することに なりました。マンションの居住者の高齢化が進むと、このよう な事例が増えてくると思われます。もちろん、ロードヒーティン グの敷設費用、維持保全費用、燃料費などを、きちんと試算 しないと組合会計の大きな負担になります。
除雪契約では、以下のようなトラブルもあります。
「除雪車が車止めや花壇を壊してしまったが、除雪業者は、
保険を掛けているから、元通りにすると言ったのに、いつま でたっても直さない。」
「昨年までの除雪契約より、3割も安くなるというので、新 しい業者と契約した。前の業者は、機械のほかに5人くらい できめ細かい人力除雪をしてくれたが、新しい業者は機械 除雪だけで、クルマの出し入れに不便が生じ、契約した理
事会が非難されている。」
「午前3時から除雪車が入ったため、駐車場の隣に住む 住人から、うるさくて眠れないと管理組合に苦情がきた。」
いずれも、除雪委託契約を結ぶときに、契約内容を十分 に打ち合わせしなかったことがトラブルの原因になっています。
保険を掛けているなら、その保険証書の写しをもらうとか、
除雪前の駐車場各所の写真を撮っておくなどの配慮が必 要でしょう。
除雪の内容についても、何時頃、どんな条件で出動する のか、雪の仮置き場があるのか、排雪の方法は…と、細かい 打合せをしないと、トラブルの原因になります。
結露については、専有部分の換気設備の動かし方や、
窓の性能、家族構成、暮らし方などによって、同じマンション の中でもまったく問題が生じていないお宅と、カビだらけにな ってしまうお宅が混在しています。結露は、専有部分の問 題であり、管理運営上のトラブルではないので、ここでは触 れませんが、もし苦情が多いようなら、全戸にアンケート調査 をして、実態を把握するとよいでしょう。場合によっては、ア フターサービスの対象になる可能性があります。
北海道特有の、雪や寒さが引き起こすトラブルは、主とし て設備的なトラブルと言えます。その解決のポイントをまとめ ておきましょう。
1.原因を監視して取り除く
・雪の状態を監視して、雪庇を落とす
・排水管の出口を監視して、凍っていたら融かす ・広報して、監視の「目」を増やす工夫をする 2.原因を直して取り除く
・ロードヒーティングは、排水の経路を確保する ・凍結防止装置(ヒーター)を取り付ける
ベランダとバルコニー
一 口 メ モ・バルコニー balcony
建物の外壁から突きだした、屋根のない屋外の床(ル ーフ・バルコニー)。
・ベランダ veranda
建物から張り出した縁。通常、庇(屋根)のあるもの をいう。