マンションに関わる損害保険の種類はそう多くあり ません。保険に入っていたおかげでいざというとき に助かったという管理組合の事例は枚挙に暇があり ません。具体的な事例を見ながら保険について考え てみましょう。
事例1 掛け捨て保険から
積立保険に変更
事例2
保険代理店を過信しないで 保険金を受け取ることに成功
事例3
個人賠償責任保険を
15年間に4回適用
このうち、2件は天井が濡れた程度で下階の方が被害を 訴えなかったので、問題になりませんでした。
他の4件では、天井のボードやクロスの張り替えのほか、
家具がそってだめになったり、高級布団を濡らしたりして、個 人賠償責任保険の対象になりました。最低でも20万円ほど になり、80万円ちかく査定された例もありましたから、もし個 人賠償責任保険に入っていなかったらたいへんなことにな っていたと理事会では話しています。
新築1年目のマンションで、深夜、2階の専有部分の玄関ド アの下よりエレベーターホールに向かって水が流れ出し、翌
朝には1階玄関ホールの天井から水がぼたぼたと落ちると いう事故が起きました。
漏水の原因は8階ベランダに設置されていたボイラー内の 給水管が、凍結により破裂し、そこから漏れた水がベランダ へと次々に落下し、1階の排水管が凍結していたため2階の ベランダで冠水。逃げ場のない水がサッシの敷居を乗りこえ て室内に浸入し、室内を水浸しにした後、玄関からエレベー ターホールへ。
事故の主原因は、8階の居住者が正月休みに家を空ける際、
玄関のブレーカーを元から切ってしまったため、ボイラー内の ヒーターが切断されたことと、1階の排水管が地盤面付近で
凍結していたことの2点が複合して起きたものとわかりました。
ボイラーメーカーの説明では、ブレーカーは冬季間絶対切 らないようにとシールが貼ってあり、使用者側の操作ミスだと
言いました。
・エレベーターピット内部に溜まった水を汲み出し、濡れ た部品を交換
・1階天井の電気配線は全て漏電チェック ・1階天井張り替え、全面的に再塗装
・自動ドア点検、配管の防露材取替え、内部乾燥作業等 この費用800万円は8階の使用者ミスによる個人賠償責 任保険か、パイプの凍結による施設賠償責任保険か、判断 が難しい部分がありましたが、両方の保険を包括した積立 保険に加入していたので、素早い手当ができました。最終 的には、すべて施設賠償責任保険を適用して解決したとの ことです。
個人賠償責任保険は各個人が保険料を負担して加入 するべき性質のものですが、現実には、ひとりでも加入しな い人がいると意味がないので、管理組合として一括で個人 賠償責任保険に入ることを検討する必要があります。
事例4のような共用部分が原因か専有部分が原因かと いう微妙な判断が要求される場合も、施設賠償責任保険と 個人賠償責任保険を、同じ代理店を通して、同じ保険会社 にしておくことで、何度も被害などの確認を受けなくても済み、
また違う保険会社間による見解の相違もなく迅速に対応し てもらえるので、管理組合が施設及び個人賠償責任保険を 合わせて検討し、同一の保険会社等を選択することが得 策です。
ここで、マンションにおける保険の基本的な考え方を確認 しておきましょう。
マンションで爆発や火災で損害が生じた場合の修繕費用 については、専有部分と共用部分とで別個に考える必要が あります。専有部分の修繕費は当然のことながら、区分所 有者が個々に負担することになります。共用部分は区分所 有者全員の共有物ですから、それぞれの持分割合に応じ て全員の負担になります。この共用部分の修繕費用の財 源として、次の三つが考えられます。
①修繕積立金を取り崩す
②損害が生じた時点で区分所有者全員から持分割合に 応じて徴収する
③火災保険を手配しておき、その保険金で修復する
まず、積立金を取崩す方法ですが、将来改修工事をする 際に資金の不足が生じる危険が生じます。また、新築後間 もないマンションの場合は積立金も十分な額になっていな いおそれがあります。次に全員から修理費を徴収する方法 では、突然修理費を請求されてすぐ資金の手当のつかな い区分所有者もなかにはいるかもしれません。また、損害の 箇所が自分の直接使用しない共用部分であった場合の感 情的な反対論も軽視できません。③の火災保険による方法は、
罹災時に区分所有者に出費を求める必要はありませんし、
もっとも合理的な方法といえます。そこで、管理者が共用部 分に関する保険を一括で手配をしていれば、万一の保険
事例4
共用部分と専有部分の保険を 同じ会社にして素早い対応
保険の活用のヒント
自分の不注意で水漏れ事故を起こして下階に迷惑 をかけたらたいへんですが、もし自分が被害を受けた としても、上の階の不注意に対して、損害を請求する
のは気が重くなります。ましてや、本人の不注意でなく、
長年の使用によって配管に亀裂などが生じた結果、
漏水事故が起きたとしたら、なおさらです。ときには、
近隣関係がきまずくなることも考えられます。
ですか ら、
全戸が個人賠償責任保険 に入っていると安心です。
金請求の手続きも1回ですみます。
ガラスの破損や機械の故障は火災以外による被害も予 想されます。共用部分であれば、その損害はやはり居住者 全員の負担になります。ガラスの破損はガラス特約またはガ ラス保険、エレベーターや受電設備の故障は機械保険でカ
バーされます。
共用部分の保険としては、管理組合が一括契約する「マ ンション修繕費用積立保険」などがあります。
昭和60年に(財)マンション管理センター登録のマンション 管理組合向け商品として損害保険会社21社の共同保険 にて、マンション修繕費用積立保険が発売されました。その後、
金融の自由化等が図られたため、平成9年に共同保険での 募集は中止され、その代わり新たに損害保険会社12社が 参入し、各社独自商品として現在の「マンション修繕費用積 立保険」が発売されました。
(1)共同保険ではなく保険会社が個別に引き受ける方 式に変更された
(2)補償内容は旧保険とほとんど変わらない
(3)この保険の契約者には付帯サ−ビスがついている なお、付帯できる特約の種類、サービスの内容等については、
各社違いがありますので、保険会社に直接問い合わせてく ださい。
保険には、掛け捨て型と積立型があります。ペイオフの一 部解禁後「分譲マンション向けの積立火災保険の契約が 伸びている」といわれています。しかし、万が一、保険会社 が破たんした場合、損害保険契約者保護機構がマンション 向け火災保険に関して補償するのは原則として保険金も 満期返戻金も90%まで。さらに積立型の場合、予定利率が 引き下げられたときは満期返戻金はその90%を下回りますし、
破綻後、一定期間に解約をした場合には、通常の解約返 戻金よりも低くなる場合があります(平成14年10月現在)。し たがって、経営の健全性にも注意を払い会社を選ぶことを こころがけ、場合によっては、変更も視野に入れてください。
最近、損保各社が管理組合の要望を反映した新型保険 を出しています。数社から話を聞き、比較して選んでください。
なお、分譲直後のマンションでは、管理組合が設立されて いないために、契約者が管理会社名義になっているケース があります。マンションの火災保険・施設賠償責任保険など の契約は、保険料は管理組合が支払っても、契約者が管 理組合名義でなければ、保険金が支払われる場合、管理 組合ではなく、契約者に支払われます。場合によっては、管 理組合は保険料だけ支払って、保険金は受け取れないこと になります。また、積立保険の場合は、満期返戻金は管理 組合にではなく、契約者に支払われます。このようなトラブ ルを防ぐためにも、契約者名義は「○○マンション管理組合 理事長△△△△」と管理組合の代表者名義にしておきまし ょう。
なお、マンションの居住者を対象にした「団地保険」があり ます。
団地保険は賃借人も含めマンション居住者向けに開発さ れた保険で、マンション生活を取り巻く各種の災害、事故に よる損害を補償する総合保険といえます。この保険には「物 保険」「費用保険」「傷害保険」および「賠償責任保険」の 4つがセットされています。
1.管理組合が検討すべき保険は下記の3点セットを基本に 考える
・火災保険(共用部分)
・共用施設賠償責任保険(施設+昇降機)
・個人賠償責任保険(一括加入)
2.多彩な新型保険が出てきているので複数社から提案を 受けて選択する
3.マンションにとって、積立型がよいのか掛け捨てにするか 検討する
4.保険証券の契約者の名義を確認し、理事長名義でない ときは理事長名義に変更する