安全な暮らしと言えば、警察・消防・救急を思い浮 かべるでしょうか。
マンションでは、多くの人がひとつ屋根の下で暮ら していますから、不測の事態がいつ起こってもおかし くありません。マンションで実際に起こった事例やそ の予防措置の事例を一緒に学びましょう。
事例1 倒れた入居者の
身元が不明
事例2
「一石三鳥」の
消防訓練
あるとか、○号室に足の不自由なお年寄りがいるとか、そう いう情報を教えて貰うと効果的な救助活動ができるので協 力してください。人命にかかわることですから。」
このやりとりを聞いていた住民から、「そうだよね、入居者 名簿をつくろう。」という声が上がりました。昨年の理事会が 入居者名簿の整備を呼びかけてアンケートを取った時は、
プライバシーを訴える入居者がいて、断念した経緯があった ので、あらためて「安全」のために、入居者名簿を整備する 提案をすることにしました。
消防訓練のおかげで、もう一つ前進したことがあります。
この春から避難通路になっているはずのベランダにタイヤ を置いたりスチール製の物置を置く住戸が増えはじめて、理 事会としては気になっていたのですが、消防訓練の講評の 中で、火災の時には人命に関わることなので避難通路は確 保するようにという指導があり、これを広報したところ、間もな くベランダがすっきりしました。
理事会では、消防訓練は一石三鳥の効果があったと、喜 んでいます。
築5年目、10階建てのマンションで平成×年×月×日、午 前8時頃、40分ほど停電しました。
停電によりポンプが止まり水道の水が出なくなりました。
暖房機器も止まりました。
エレベータは完全に停止し、オートロック式の玄関自動扉 はロックがかかったまま、まったく出入りができなくなりました。
インターホンも通じませんから、来客を知らせる手段もなく なります。
火災報知器の赤い電灯はついていますし、非常用蛍光 灯もバッテリーが付いていることをはじめて知りました。
この日の停電でわかったことは、入居者はもちろん管理組 合も停電時の対応を知らされていないということです。また、
マンションという建物がいかに電気に頼って維持されている かということも痛感しました。
大震災、大災害に備えるためにも、マンションの危機管理 対策マニュアルをつくろうと、理事会では真剣に話し合って います。
築3年目、70戸のマンションでは、管理会社の立会により 管理委託契約書に記載された「24時間通報システム」につ いて、理事会で確認しました。
理事長が他のマンションで「管理会社を変更して、新しい 会社が非常通報システムの配線工事に来たところ、契約書
に記載された5種類の通報のうち、2種類の信号しかつなが っていなかったことがわかった。10年間ものあいだ、毎年30 万円も払ってきたのに、考えもしないことだった。」という話を 聞いたことがきっかけでした。
自動火災報知設備、ガス漏れ感知器設備、非常押しボタ ン設備、受水槽満水減水警報、給水ポンプ異常信号、排水 ポンプ異常信号の6点について、電話回線を通じて警報信 号を送信すると説明を受けました。
この信号は、[マンション]→[警備保障会社]→[管理会社]
と通知され、信号を受けた警備保障会社が真っ先に駆けつ けるとのこと。
実際に、通報装置に、どの信号が送られて来ているか確 認し、警備会社に連絡したうえで、ひとつずつテストしました。
ただちに警備会社から電話があり、すべての信号が正しく 通報されていることを確認できました。
エレベーターのインターフォンも、どこにつながっているかを 確認しました。
日中、管理人がいるときは管理人室のインターフォンを呼 び出しますが、一定時間を超えると自動的にエレベーター保 守会社に電話がつながることも確認しました。
理事会では、マンションに備え付けられている「安全装置」
は当たり前に作動していると思っていましたが、確認作業を 通じてマンションの仕組みがよくわかり、安心できました。
入居者名簿について
マンションの緊急事態としては、地震・台風・火災・漏水な どさまざまなことが考えられます。そういった事態に備えて最 低限度の入居者情報を管理会社と理事会では確保してお く必要があります。
プライバシーを理由に、名簿を整備していないマンション が多くありますが、財産を管理する管理組合が権利者であ る組合員の名簿も持たずに、適切な管理などできるはずもあ りません。また住民同士もどんな人が一緒にいるのか知らな いまま、「互いに協力して、本当に住みよいマンションづくり」
をできるとも思えません。
駐車場利用者の名前と部屋番号の一覧表でさえ、プライ バシーの侵害だと反対する人がいたため、その人の部分だ け空欄にしてリストを配布している管理組合もあります。
注意しなければいけないのは、「名簿を整備する」という ことと、「整備した名簿を配布する」こととは意味が違うのに、
事例3 停電で、
マンションのすべての機能がマヒ
事例4
自動通報システムの 作動の確認
安全な暮らしのヒント
では、
マンションには、いろいろな危険が潜んでいることや、
その危険を予防するための仕組みや装置があること を見てきました。
事例のように、万一にそなえて、点検しておくことは、
危機管理対策の第一歩です。
安全に暮らすために必要なことを 考えてみましょう。
そのことが混同されたまま、賛成を得られないケースがあるよ うです。
名簿を配布するかどうかは慎重な判断が必要です。女 性のひとり暮らしがわかってしまうような名簿の作り方は避け、
部屋番号と世帯主の名字だけにするなど工夫が必要です。
最近は、表札を出さない人もいますから、隣に住んでいる人 の名前さえもわからないというマンションがあります。名簿の 配布は良いコミュニティをつくるための最初の一歩になるこ とでしょう。
管理組合が整備する名簿には、最低限、次のような情報 が必要です。
①区分所有者の氏名(単独所有か、共有かも明記)
・法人所有の場合は、所在地・担当部課・担当者名・電 話番号
・賃貸化した場合の不在区分所有者の場合は、現住所・
電話番号
・外国に居住している場合は、国内の連絡先の名前・
住所・電話番号
②居住している家族全員の名前
・高齢者や介護を必要とする人の状況
・非常時の連絡先……電話番号・不在時の連絡先・携 帯電話・ファクシミリ
電子メールアドレス・携帯電話ア ドレスなど
連絡の方法は、さまざまな手段が あるので網羅しておく
③賃貸や社宅などにすむ居住者の氏名
管理組合名簿のほか、管理規約原本とか管理会社から もらう預かり証、各種証券類などの保管に頭を痛めている管 理組合もあります。集会室がある場合は鍵の掛かる書庫に 保管している例が多いですが、集会室のないマンションの 場合は理事長宅に保管するのではなく、近くの銀行で貸し 金庫を借りて保管しているマンションもあります。
そうした場合、理事長が台帳のコピーを手元においてい るのだそうです。貸金庫(年間12,000円)は自宅保管よりい ろいろな意味で安全だと思います。
長期不在者対策についても触れておきます。
専有部分を長く空けると、排水口のトラップ(封水)が乾 燥して、居室に下水管の臭いがこもります。異臭が拡散して 近隣に迷惑をかけることがあります。
上階で漏水事故を起こしたなどの緊急事態で状況確認 をしたい場合もあります。
また、排水管清掃や各種点検など、建物全体で一斉に作 業したい場合もあります。
このような場合、管理会社に鍵を預けるなり、近くに住む 人を緊急連絡先に指定して預かってもらうなり、いくつかの 方法を決めておき、長期不在者の協力を得られるように広 報しておくことが大切です。不在者としても、新聞受けの中 身を取り出して欲しいとか、ときどき、窓を開けて風を通して もらいたいなどの要望を持っていることが多いですから、協
力を得られるような方法があると思います。
防火管理者について
防火管理者とは、その建物の消防・防災設備の維持管理、
また、その建物に関係する人を対象に消防訓練などを行い、
消火・防災についての意識づけなどを行う責任者のことを いいます。なお、防火管理者になるためには、マンションの規 模によって1日ないし2日間の防火管理講習を修了し、修了 証を持たなくてはなりません。
通常、50人以上の居住者が住むマンションにおいては、
管理組合理事長が防火権原者となり、防火管理者をマンシ ョン居住者の中から選任することになります。また、消防署 へ消防計画書を作成し提出しなければなりません。強く指 導するかどうかは、多少の地域差があるようです。
もし、防火権原者が防火管理者を選任しない場合は、消 防法に罰則があり、処罰されます。また、防火権原者・防火 管理者には、当該建物・設備・点検などに何らかの過失・原 因が認められる火災・事故などの場合は、更なる罰則がある ことも併せて知っておく必要があると考えます。
消防計画書は、自らの生命、身体、財産は、まず自ら守る という自主防火管理の原則に基づき作成します。一定の形 式に沿ってつくれば難しくはありませんが、マンションの実情 に合った、実際に役に立つ計画でなければ意味がありません。
マンションに備えつけてある「自動火災報知器」の写真を撮 影し、火災が起きたときには、順番にどのボタンを操作すれ ばよいのかを誰が見てもわかるようにしている管理組合もあ ります。
役にたつ消防計画をつくり、入居者全員に配布して、毎年、
消防訓練を欠かさないマンションは、それ自体がコミュニティ づくりだといえるでしょう。
防犯について
近くに大きなスーパーができたとたん、自転車の盗難が多 くなったなどの話を聞くことがあります。オートロックなのに、
玄関を開けたらいっしょに見知らぬ男が入ってきて、エレベ ーターに乗り合わせて事件になったケースもあります。
警察庁は「安全・安心まちづくり推進要綱」を制定し、全 国警察に指示し関係団体にも協力を要請しました。その中 から、マンションの共用部分に関係のある項目を紹介します。
他から見通しがきくことおよび明るくすることがどの項目にも 共通する大切なチェックポイントになっています。
理事会で危険を感じるところがないかをチェックしてみて はいかがでしょうか。
①玄関出入り口
・出入り口は、周囲や管理人室から見通しがきく ・玄関扉の内側・外側は、人の顔や行動を明確に識別
できる程度以上の明るさがある
・共用玄関扉は、各住戸のインターホンと連動した電気 錠とオートロック機能を持っている
②エレベーターホール
・共用出入り口付近から見通しがきく