第2章 中山間地域の変容と現状
第6節 集落機能の変容
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同様に、耕作地(畑)の把握状況についても尋ねたところ、山林よりはよく把握 されていた(図 2-21)。この結果からも、畑は自家消費する程度の利用で、休耕地 となっている割合が高いことが推察できる。
図2-21 他出子(首都圏)の実家所有の耕作地の把握状況(n=65) 資料:筆者作成
さらに、他出子の帰省の回数を尋ねたところ、回答者の平均年齢が67歳という高齢 であったせいもあろうが、実家には「誰も残っていない」と回答した者が43%であっ た。帰省の頻度は、大半が1年に2回前後であり、1割は「帰省しない」と回答して いる。
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表2-11 地域の祭事・社会参加
資料 筆者作成
第2項 集落の生活で変化したもの
「表 2-12」は、筆者が行ったヒアリング調査(2010 年)の結果である。集落の 生活で変化したことの上位は、「鳥獣被害の増加」「歩かなくなった」「近隣との交流 機会の減少」「交通手段」である。
表2-12 地域で変化したもの(n=63)
資料:筆者作成
ヒアリング内容を以下に記す。
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(1) 鳥獣被害の増加
増加したのは、2009年頃からで、被害は年々増加している。集落によっ て被害の状況は違うが、一部の集落を除いて大半の集落で被害に遭って いる。鳥獣被害の増加にともない、畑作を止めてしまう家が多くなって いる。
(2) 交流機会の減少
近隣との付合いが減少している。かつては口頭での情報伝達が多く、近 隣の家によく足を運んだ。この時に「茶のみ」をよくしていた。しかし、
今では用件は電話で済ませ、近隣であっても訪問することはない。また、
祭事や行事が減少している。そのため、世代が違えば、同じ「班」であ っても顔がよく分からない。
(3) 交通手段―歩かなくなった
自家用車での移動が常である。集落内でも自家用車で移動しているため、
歩く人を見かけなくなった。昔は山林や耕作地まで徒歩で移動していた ため、道すがら人によく会った。この時は情報交換の機会でもあった。。
例えば、「崖が崩れそうだ」「川が氾濫している」という危険な個所の 情報は口コミで伝達されていた。しかし、今は大半の住民は山林には行 かない。畑や田に行くことがあっても車で移動するため、人と会わなく なっている。
集落内を人が歩かなくなっていることは、一人暮らしの住民にとって は不安だという。「近隣の情報が入らない不安」と「人と話す機会ない ことの寂しさからくる不安」である。
上記のように、情報伝達や世代間交流が希薄化している一方で、「充実した」もの として、「医療・福祉機関」「道路」「集会所」がある。特に、医療・福祉機関の充実 には、住民は満足していた。ただし、自分で車を運転できない者にとっては交通手 段が課題である。
第3項 新たな定住者の意向
近年、人口減少・高齢化対策として、新たな定住者の誘致が進められている。新 たな定住者は、どのような理由からこの地域を選択しているのか。また、定住して 不自由に感じることについて調査を行った。
旧長谷村では、2005年の市町村合併以前に、定住者を増加させることを目的とし て、村営の集合住宅建設が実施されている。集合住宅入居者の大半は旧長谷村以外 からの入居者である。その入居者を対象として、①この地を選択した理由、②不自 由に思うこと、③住み続けの意向等についてアンケート調査(2011年)と、ヒアリ
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ング調査を実施した(2012年)。これを資料として、新たな定住者の意向を探る。
1)この地域を選んだ理由と移住者の職業
「図 2-22」はこの地域選択の理由である。上位順に「自然環境に恵まれている」
「職場が通勤圏内であった」「子供を自然の中で育てたい」「家賃が安い」であった。
中でも、「自然環境に恵まれている」が8割を超えている。「職場が通勤圏内であっ た」も59%が理由にあげており、雇用の場との距離を重視していることが明らかに なった。そこで入居者の職業をみてみると、近隣の市町村へ通勤する会社員と地元 の公務員が多かった。
なお、集合住宅以外の新たな定住者達にも同じ調査をしているが、彼らの理由も 職業に深く関わっていた。彼らの職業は、木工職人、スポーツインストラクター、
民宿経営、飲食店経営、陶芸家、芸術家などである。山村の特徴である森林豊かな 自然環境は、彼らの職業には欠かせない環境であった。
図2-22 この地域を選んだ理由と移住者の職業(n=17) 資料:筆者作成
2)不自由に思うこと
不自由に思うことは全般的に少なかった。幾分高かったのは「買い物をする場所 が遠い」と「教育機関が遠い」であった(図 2-23)。不満が少ないのは、この地を 選択した理由の8割が「自然環境に恵まれている」となっていることから、自然環 境に恵まれていれば何らかの不便は当然あるという認識を持っているためであろう。
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図2-23 不自由に思うこと(n=17)
資料:筆者作成
3)住み続けの意向
約 6 割が住み続けたいと思っていたが、「どちらとも言えない」も3割を超えて
いる(図 2-24)。迷う理由は、集合住宅の間取りと広さにあった。子供が小さいう
ちは問題ないが、子供が大きくなり部屋が必要になった際には部屋数が足りないと いうと思っている。広さがあれば継続してこの地域で住み続けたいという者が多か った。
「この地域に住んで良かったと思うことは何か」の回答で多かったのは、「地元住 民は親切である」「高齢者はいろいろな相談に乗ってくれる」「自然の中で子供がの びのび育っている」であった。
図2-24 住み続けの意向(n=17) 資料:筆者作成