第 5 章 集落機能を補完する事業・活動
第3節 自主財源による生活圏の整備
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表5-1 長野県の高齢者の買い物環境と大宮産業の高齢者の買い物環境の比較
資料:筆者作成
86 図5-5 三次市
資料 Mapion
第2項 住民有志による小学校存続のための対策
青河地区では、有志9名が100万円ずつを出資し、賃貸業(有限会社「ブルーリバー」) を始めた。この事業によって新たな定住者14世帯、62名が増加した。
賃貸住宅会社設立の発端は、地区の小学校の廃校問題であった。1つの小学校が成立す るために必要な生徒数は 20 名である。しかし、青河地区では若年層の減少によって、こ の 20 名の確保が厳しい状況であった。そこで考えられたのが上記の方法で、児童や幼児 を持つ家族を誘致して定住してもらう計画であった。「ブルーリバー」は、地区の小学校に 通学することを条件に、賃貸住宅を安価な家賃で提供した。
小学校の存続を考えた背景には、住民達にとって小学校が1つのコミュニティとして機 能する歴史的・文化的な拠点となっていたからである。出資者達は、「学校が無くなること でコミュニティも同時に希薄化していくのでは」との危機感があったと述べている。
有志9名の出資金で不足する資金は、9名が連帯保証人となり地元の信用金庫や JAか ら借り入れを行った。賃貸住宅の入居が始まったのは2003年(平成15年)からである(図 5-6)。
家賃は2~5万と安価であるが、入居の条件は、①小学生以下の子供がいる、②学校教 育への理解と協力ができる、③学校行事に積極的に参加する、④常会(自治体)への参加 である。厳しい条件ではあるが、賃貸住宅の居住者の中からは、この地域に馴染み、その 後マイホームを建てて定住を決めた家族がいる。
「ブルーリバー」は新たな賃貸住宅の建設と、空き家のリホームも手掛けて、それを賃 貸住宅に活用している。有志9名の事業を見守るなかで、「我が家で良かったら利用してく
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ださい」と空き家の提供を申し出るする住民が増加したとう。空き家の提供では荷物を処 理しなければならないという問題があるが、「ブルーリバー」では、家主の家財道具は別に 保管する場所を設置することで解決している。さらに、空き家提供という協力は、古民家 の再生事業へと発展している(図5-7)。
賃貸住宅は若年層には好評である。「自然の豊かな環境で子供を育てられる」「車を利用 すれば、広島市内をはじめとして近隣の町への交通アクセスが良い」「地元住民と交流でき、
受入体制が良い」と述べている。
図5-6 賃貸住宅 図5-7 古民家再生の賃貸住宅 2013年9月撮影 2013年9月撮影
第3項 青河自治組織の暮らしサポート事業
小学区を存続させるために有志9名によって立ち上げられた有限会社「ブルーリバー」
は、集落全体のコミュニティの再生にも繋がっている。有志による活動は、集落住民の間 に共有意識を生み、協力体制が確立されて行く。このことは、集落住民自らが、それ以外 の課題解決に乗り出す契機となった。次に紹介する「暮らしサポート事業」である。
1)事業内容
青河地区では、生活インフラ整備支援する事業として「暮らしサポート事業」をはじめ た。事業の内容は、①業者紹介サポート、②代行サポート、知識・情報サポート、③輸送
(送迎)サポート、④その他の必要に応じたサポートである。中でも、高齢化の送迎サポ ートは、高齢者にとっての有用なサポートとなっている。この事業は補助金を活用してい ない。「補助金を利用すれば、一定の束縛がともなうために自由度がなくなる」との理由か らである。
高齢者や免許取得していない者は、公共交通の閉鎖により買い物店や医療機関への足を 絶たれる。移動手段の確保が必須となる。そのニーズに応えるこのサポートの利用料金は
年間6,000 円である。つまり、年会費6000円を支払えば、送迎サービスをはじめとした
各種のサービスが利用できるのである。
88 2)利便性と課題
上述したように、この事業には補助金はいっさい使用されていない。自主運営である。
高齢者世帯の通院や買い物に便利であることが評価され、参加者は増加している。基本 の運行回数は、一日3便、週3回であるが、必要な時には臨機応変に対応しているという。
それが、住民の評価をさらに高めているようである。
資料によると、最多利用者は通院に 461 回使用している。用途別では、通院と買い物、
役場や金融機関、地域の活動が多い。庭先からの「ドア・ツー・ドア」で対応してくれる システムは好評である。
課題は、事故の際の補償問題と増便の要望への対応である。運転手はボランティによっ て賄われているため、事故の補償対応ができない。また、住民からは運行回数を増やすこ とを要望されているが、現状の会費では賄えない。会費の値上げが必要となるが、値上げ となると全体の同意を得るのは容易ではない。金銭的な問題が絡む運営上の問題には大き な課題が残されている。
第4項 賃貸事業と暮らしサポート事業成功の要因
賃貸事業成功の要因は、第一に危機意識の共有であろう。小学校廃校によってコミュニ ティが崩壊するのを座視できない有志が活動を起こした。有志の活動は集落住民の共感を 呼び、協力体制が構築されていった。新たな住民を迎える賃貸住宅は、新旧住民が交流す るコミュニティの活動を生み、それは地元住民がコミュニティの重要性を再認識する契機 となったと考えられる。2つ目の要因として、賃貸住宅を活用したいという若年層の存在 がある。若年層のニーズと、安価な家賃と近隣の町への車を利用した交通アクセスの良さ がマッチした。近隣を高速道路が走る利便性と、子育てに良い自然環境の両方があること は彼らを引きつけるに足る好条件だったのである。
サポート事業成功要因の第一には、賃貸住宅の成功により取り戻した住民の自信をあげ たい。課題は自分達で解決できるという自信が、サポート事業の原動力となったのである。
「自由度がなくなる」と、補助金を活用していない理由を述べているのは、自分達の課題 は自分達で解決するのが最善であると判断しているからで、それも自信のあらわれであろ う。2つ目としては、利用費の安さである。年会費6,000円は月換算で500円である。こ の金額で一定の交通手段が保証されるのだから安い。安心感と、1回のタクシー代より安 価に利用できる交通システムの利便性とサポートを受けられる安心感から、住民に支持さ れる事業になっていると考える。