第2章 中山間地域の変容と現状
第4節 健康、医療・介護の現状
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図3-8 仲間や友人と知り合ったきっかけ
資料:筆者作成
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男性の「健康」者の平均年齢は77.0歳、「健康ではない」者の平均年齢は76.2歳である。
女性はそれぞれ76.2歳、77.3歳である。年齢による差はほとんどみられない。この結果 は高齢化は健康喪失に直接繋がるものではないことを示唆する。
表3-2 性別2分類の平均年齢
資料:筆者作成
2)生活機能(ADL)と生活満足度(QOL)
「健康」な高齢者と「健康でない」高齢者のQOL(生活満足度尺度K)3とADL(老研 式活動能力指標)を確認する。古谷野亘(2004)4は、高齢者のQOLを評価する際には高 齢者自身の評価と高齢者自身以外の「客観的な指標」の2つの視点が必要であると述べて いる。本論では高齢者自身の主観的評価だけをみている。したがって、ここでは高齢者の QOLを評価することに主眼を置かず、健康者と非健康者の差を確認するだけにとどめるこ とにした。ADL(老研式活動能力指標)については、在宅高齢者の「高度な生活機能を測 定するように設計された尺度」であることから、高齢者の活動能力の指標として使用する。
アンケート調査の結果における、高齢者のQOL(生活満足度尺度K)は、男性と女性と もに2群間の差が確認された(表3-3)。特に、男性は「健康」群8.5、「健康ではない」群 4.3 で、その差が大きいことが確認された。また、ADL(老研式活動能力指標)において は、男女ともに2群間の差は小さかった。
表3-3 性別2分類のADLとQOLの得点
注:QOL 得点範囲(0-9)、ADL 得点範囲(0-13)
資料:筆者作成
3)火元の管理
山間地域の集落で暮らすには、「火もとの管理ができる」ことが重要な条件になる。山林 に囲まれた環境では火事がもっとも恐れられており、親族は高齢者が火を使うことを心配
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する。そこで、ADL の13項目の設問の中から、「食事の支度ができるか」という設問に着 目し、一人暮らしの高齢者の回答をみてみた。食事の支度ができるということは、火を使 って生活できているということであると推測した。
食事の支度ができている一人暮らし高齢者の平均年齢は、男女ほぼ同じ79歳であった。
最高齢は男性87歳、女性89歳であった。男女ともに80歳前後までは一人暮らしができ る可能性が高いことが示唆された。
表3-4 一人暮らしの高齢者における食事の支度ができる
平均年齢と最高齢
資料:筆者作成
第2項 高齢者の「生きがい」
高齢者は、主観的健康感によって、「生きがい」に違いがあるだろうか。前項でみた、「健 康」と「健康ではない」の2群間で生きがいについて差があるかどうかを検証する。
男性高齢者では、「健康」群の上位3位は「野菜づくり」42%、「趣味」39.1%、「仲間と の交流」39.1%であった。「健康ではない」群の上位3位は「家族との交流」40.5%、「趣 味」35.7%、「仲間との交流」「野菜づくり」35.7%であった(図3-9)。全ての項目におい てカイ2乗検定を行ったが、2群間での有意差は認められなかった。
女性高齢者では、「健康」群の上位3位は「野菜づくり」69%、「家族との交流」45.2%、
「近隣住民との交流」45.2%で、「健康ではない」群の上位3位は「近隣住民との交流」50.0%、
「友人との交流」50.0%、「家族との交流」43.3%であった(図3-10)。全ての項目におい てカイ2乗検定を行った結果、「野菜づくり」(χ2(1)=9.36, p<0.01)と「仲間との交流」(χ 2(1)=6.36, p<0.05)において有意差があった。
以上から示唆される点は、以下の4点である。
(1)「健康」な高齢者は、男女ともに「野菜づくり」が生きがいとなっている。特に、女 性はこの傾向が強い。
(2)「健康ではない」場合、「生きがい」のトップは、男性高齢者は「家族との交流」で ある。それに対して、女性高齢者は「近隣住民との交流」「友人との交流」が、「家族と の交流」より上位にきている。女性は近隣や友人との交流を大切に思う傾向が強い。
(3)男性高齢者は、健康状態に関係なく「趣味」が2位である。しかし、女性は「趣味」
より近隣の友人との交流を好む傾向にある。これには2つの要因が考えられる。1つは、
趣味を行う場所までの交通手段である。運転免許取得率が低い女性は交車を必要としない
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近隣で「生きがい」を見つけていると推測される。2つ目は、文化・風習の問題である。
筆者が行ったヒアリング調査では、女性は「昔から趣味で外出するという発想がなく、近 隣や家族のことを気にして、趣味で外出することはできなかった」そうである。近年では そういう風習も薄れているとはいえ、未だに都市部ほどには女性が趣味を自由に行える環 境ではないことが示唆される。
図3-9 男性の2分類(「健康」「健康でない」)における生きがい
資料 筆者作成
図3-10 女性の2分類(「健康」「健康でない」)における生きがい
資料 筆者作成
56 第3項 高齢者の健康と外出行動
高齢者の外出行動は活動性と関連している。身体的活動は体力維持につながり、外出す るには身だしなみを整えたり、適度な精神的緊張を伴う。また、社会の新しい波に触れる ことは重要なことであり、肉体的にも精神的にも活動化を促す[直井:2001]。外出は高齢期 には重要な行動である。
横山ら(2005)の研究によれば、外出頻度の低い「閉じこもり」の要因の1つが「外出 が嫌い」であるという。筆者のアンケート調査結果では、高齢者の男女ともに6割が外出 を「好き」と回答している。外出を好まない傾向を示しているのは男女ともに15%前後で あった(図3-11)。
図3-11 高齢者の外出の好み
資料:筆者作成
外出頻度が少ない要因は何であろうか。1つは、交通手段が関係していると考えられる が、別の要因として主観的健康感が関与しているとも考えられるので、それを検証した。
結果を「」に示した。
アンケート調査の「あなたは外出が好きですか」という設問に対して、「好き」「まあ好 き」と回答した者を「好き」群、「あまり好きでない」「好きでない」と回答した者を「嫌 い」群と操作的に定義した。この2群と、「健康」「健康ではない」の2群とのクロス集計
表が「表3-5」である。外出が「嫌い」群は、「健康」群より「健康ではない」群のほうに
幾分多いことがみてとれる。
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表3-5 2分類(「健康」、「健康ではない」)別外出の好み
資料:筆者作成
第4項 看病・介護
中山間地域の高齢者の最大の関心事は看病・介護である。アンケートの結果では、高齢 者の病気の際の看護・介護は半数が同居家族によって行われている。同居家族がいない者 は、別居子や親戚によって行われている(図3-12)。
女性は「家のそばの親しい人」が23.4%となっており、少なからず家族以外の人によっ て担われていることが明らかになった。男性の場合は13.4%である。男女の差はカイ2乗 検定で有意差があった(χ2(1)=3.92, p<0.05)。女性の場合、「家のそばの親しい人」が女性 同士、別居子や親戚同様の役割を担っていることが示唆された。
図3-12 病気の際の看護者は誰か
資料:筆者作成
第5項 高齢者の配偶者喪失時の心の支え 1)アンケート調査から
高齢者にとって、配偶者喪失時の心の支えは重要である。そのとき誰が支えになったの かをアンケート調査結果より検証する。設問は「配偶者を亡くされ辛かった時心の支えに なった人はどなたでしたか(複数回答)」であった。また、旧長谷村とは別に、筆者は都市 部(新宿区5)でアンケート調査を実施した。その結果と比較対照することで、中山間地域 の課題について論究する。
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旧長谷村の高齢者の回答では、「別居の子供」が65.8%と最も多く、以下、「親戚」55.6%、
「同居している家族」39.4%、「家のそばの親しい人」36.8%の順であった。他方、都市部 の高齢者の回答は「同居している家族」55.2%、「別居の子供」51.7%、「親戚」24.1%、
「家のそばの親しい人」24.1%の順である(図3-13)。筆者が注目するのは、「家のそばの 親しい人」が役割を果たしている割合が都市部より多いことである。
図3-13 配偶者喪失時の心の支え
資料:筆者作成【山本:2008】
2)面接調査から
配偶者を喪失した状況にどのように適応して日常の生活を送っているのかを詳しく知る ために、面接調査(面接時間は一人30~50分)を行った。以下、旧長谷村の5名、都市 部2名、計7事例を紹介する。
【旧長谷村】
事例1(80歳代女性、配偶者喪失後10年以上経過、一人暮らし)
葬式の時に、参列者から声をかけてもらった一言が生きる張り合いになった。その一言 は、「旦那さんはいい人生だったね」だった。それまで夫に精一杯仕えてきた人生だったの で、主人が良い人生だったということは、自分にとっても良い人生だったのだと思えた。
現在の生活は、息子が近くの町に住んでいることで、困ることはない。楽しみは、「一人 暮らしの会」というのがあって、その仲間との会話である。独り者同士で、話が合う。病 院に行っても、集会に行っても、何処ででも、この「一人暮らしの会」の顔ぶれが揃って いる。一人暮らしの人は話し相手が欲しいのだろう。
昔は近所で茶飲みをよくしたが、最近では集落を出歩く人がいないため、話し相手がい なくて寂しい。