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閣僚会合以後における FCDI の活動

ドキュメント内 ―インドシナ総合開発フォーラムを中心に― (ページ 154-192)

第 5 章 閣僚会合以後における FCDI の活動と FCDI の終焉

第 1 節 閣僚会合以後における FCDI の活動

閣僚会合以後、FCDI の活動はどのように展開されるようになったのであろうか。結論を先に 述べると、第2回FCDI閣僚会合が開催されることはなかった618。閣僚会合以後は、FCDIの下 に、シンポジウムや作業委員会が個々に展開されるにとどまった。

その意味で閣僚会合以後、FCDI の求心力は低下していったとの見解が先行研究でも多数を占 めている。そのため、閣僚会合以後のFCDIの活動に関しては、シンポジウムや作業委員会の内 容に簡単に触れられている程度である。また、閣僚会合以後に作成されたFCDIに関する外交記 録も、大半の研究では使われていない。それゆえに、研究が手薄になっているのが現状である。

インドシナ・メコン地域開発をめぐる他の協力枠組みが活発化してくる時期において、求心力 を失ったFCDIを考察する必然性は低いと考えられるかもしれない。しかし、閣僚会合の開催以 後にFCDIの下で展開されたシンポジウムや作業委員会に対する取り組みを、外交記録を通して 跡付けることで、当時の政策担当者がどのような認識の下でFCDIに臨んでいたかを明確にでき る。ひいては、FCDIの形成過程をより明確にできる。また、閣僚会合以後に作成された資料は、

筆者が開示請求に初めて公開された資料である。したがって、資料紹介という点からも、閣僚会 合開催以後における活動を跡付ける作業は意義を有する。

第1項 民間シンポジウム

1.1 民間シンポジウム開催に向けての協議

閣僚会合の開催以後、FCDIの下で最初に取り組まれた活動は民間シンポジウムの開催である。

民間シンポジウムに関しては、準備会合開催の時点で話し合われた。ただし、1994年5月の時点 では、民間シンポジウムの開催時期は、「閣僚会合の内容等を更に詰めた上で検討する」619ことに なっており、まだ具体的な構想はなかった。その後、1994年11月16日の時点で、民間シンポジ ウムは、「ビジネスマン、学者、NGOが参加し、閣僚会議の成果を民間と共有すると共に、民間 部門と意見交換を行うことを目的とする」620ことで合意された。この時点では、閣僚会合と民間 シンポジウムはセットで行われることが想定された621

当初、民間シンポジウムの開催は、日本政府の主催で行う計画を立てていた。しかし、ESCAP による積極的な参加表明と働きかけにより、日本側が譲歩した622。その結果、民間シンポジウム

618 第3章の閣僚会合に向けた協議でもみたように、もともと政策担当者は、閣僚会合は1回のみの開 催であることを想定していた。

619 外務省アジア局南東アジア第一課「インドシナ総合開発フォーラムに関するADBとの打合わせ」

外務省大臣官房総務課外交記録・情報公開室, 1994.5.23.

620 外務省アジア局南東アジア第一課「インドシナ開発フォーラムに関する在京仏大の照会(メモ)」 外務省大臣官房総務課外交記録・情報公開室, 1994.11.16 p.3.

621 同上

622 外務省アジア局「事務連絡(民間シンポジウム、その2)」(恩田駐タイ大使から外務大臣宛て)外

はESCAPの主催となった。なお、シンポジウムはバンコクで開催された。その理由は、「ASEAN 諸国並びにインドシナ諸国からの参加を容易ならしめるとの観点」623があったからである。また、

ESCAP会議場で開催された理由は、「インドシナ3国へのタイの関与を必要以上にクローズアッ プさせない等の配慮から、いずれの国に対してもニュートラルな立場をとれる国際機関(ESCAP)

を会場とすることが望ましい」624と考えられたからである。

シンポジウムの目的は、閣僚会合直前の1995年2月22日時点で改めて定義された。その目的 とは、「2月のフォーラム閣僚会合の結果を民間に周知することを第一義的な目的とするが、併せ て、今後の本件フォーラムの運営・議論の参考とするため、民間からの意見聴取も行う。また、

民間内の意見・情報交換のための場を提供する」625ことと定義された。このシンポジウムは、閣 僚会合のフォローアップと位置付けられたのである626

先行研究においても、民間シンポジウムの目的として、①民間人に対する閣僚会合の成果の宣 伝、②民間人に対するインドシナ開発に関する意見を表明する機会の提供、③民間人同士による インドシナ開発に関する情報交換をする機会の提供という3つ目的が挙げられている627。民間シ ンポジウム開催の1カ月前には、先行研究で指摘されている3つの目的が出揃った。

1.2 民間シンポジウムの開催

こうして閣僚会合開催後、アドバイザリー・グループの設置に先立ち、1995年3月24日にバ ンコクのESCAP会議場において、民間シンポジウムが開催された。

シンポジウムで意図された「民間」の定義とは、①インドシナ諸国で活動する非政府機関、② 学者、③産業界(開発分野の関係者も含む)であり、参加人数は500名を超えた628。議長は成蹊 大学の廣野良吉教授が務め、閣僚会議の内容・成果のレビューがなされるとともに、「インドシナ 3 国における民間セクターの発展」と「インドシナ総合開発における民間セクターの参加」とい うセッションで議論が進められた629

シンポジウムにおいては、ADB・UNDP・ESCAP から、それぞれ閣僚会議の成果が報告され た。すなわち、インフラ分野、人材育成分野、貿易・投資・環境分野における討議・成果につき、

それぞれの国際機関から報告がなされた。いずれの報告においても、民間からの支援に対して言 及がなされた。また、NGOからも積極的な参加があった630

務省大臣官房総務課外交記録・情報公開室, 1994.12.06, 外務省アジア局「事務連絡(インドシナ総合 開発フォーラム)」(恩田駐タイ大使から外務大臣宛て)外務省大臣官房総務課外交記録・情報公開室, 1994.12.15.

623 外務省アジア局「民間シンポジウム(ESCAPへの要請)」外務省大臣官房総務課外交記録・情報 公開室, 1994.12.20.

624 同上

625 外務省アジア局南東アジア第一課「『インドシナ開発フォーラム』閣僚会合 共同ステートメント:

予想される内容」外務省大臣官房総務課外交記録・情報公開室, 1995.2.22.

626 外務省大臣官房報道課「『インドシナ総合開発フォーラム』閣僚会合の開催について」外務省大臣 官房総務課外交記録・情報公開室, 1995.1.31.

627 井野・前掲論文, 1995 p.28.

628 同上

629 同上

630 NGOからは主に、①開発案件の実施における環境への配慮の必要性、②環境・社会法制の不備の 改善要求、③作業委員会におけるNGOの意見の反映の3つが主張された。外務省アジア局「インド

参加国の中では、タイの積極的なイニシアティブが顕著であった。とりわけ、民間活動のみな らず、インフラ整備と人材育成の分野における貢献を積極的に進めていくことが、タイ側によっ て強調された631。さらに、アドバイザリー・グループに向けても、積極的に貢献していく旨がタ イ側から表明された632

シンポジウムの内容は、以下の通りである。

「閣僚会合の成果の報告」のセッションでは、藤崎アジア事務局長より閣僚会合の背景、目的、

討議概要、具体的成果の 4 点に関して報告が行われた。こうした報告が行われた理由は、FCDI の活動に弾みを付けるためにも、FCDIの存在を民間に周知させる必要があったからである。

シンポジウムでは、インドシナ3国が留意すべき点として、以下の6つが確認された。すなわ ち、①持続的な政治的安定、②環境に配慮した経済・社会開発に対する強い政治的コミットメン ト、③貯蓄率の向上、④企業家精神の育成、⑤適切なマクロ経済政策、⑥法整備と効率的・清潔 な行政である633

また、地域協力の重要性を確認するとともに、①市場経済化の推進における地域的アプローチ、

②マクロ経済政策における地域アプローチ(周辺諸国との調整)、③援助側が同地域の優先課題に 対応して、援助計画の在り方、使用できるスキームを自ら改革すること、④フォーラムの弾みを 利用して、3国が情報交換・相互理解を批准し、地域としての比較優位を高めること、⑤ASEAN が、先進国と共同の三角協力等によって3国に対する支援を強化することなどが提言された634。 第2項 FCDI合同打ち合わせ会合

1995年6月30日には、FCDIに関する合同打ち合わせ会合が、ヴィエンチャンで開催された。

ヴィエンチャンで開催されたのは、「タイをはじめ複数の国、機関が、ICD635活動の趣旨からして、

インドシナ3国のいずれかの都市で開催することを通じ、これら諸国の意識の覚せいと主体性を こぶ(鼓舞)すべきと主張した結果」(括弧内は筆者)636である。この会合では、作業委員会とア

シナ総合開発フォーラム民間シンポジウム(記者会見)」(大塚駐タイ臨時代理大使から外務大臣宛て)

外務省大臣官房総務課外交記録・情報公開室, 1995.3.27.

631 外務省アジア局「民間シンポジウム(報告)(2の1)(第1062号)」(大塚駐タイ臨時代理大使か ら外務大臣宛て)外務省大臣官房総務課外交記録・情報公開室, 1995.3.30.

632 同上

633 杉下恒夫「インドシナ3国への民間開発協力 『安定した政府』など条件(解説)」『讀賣新聞』朝 刊, 19面, 1995年4月18日, 外務省アジア局「インドシナ総合開発フォーラム民間シンポジウム(記 者会見)」(大塚駐タイ臨時代理大使から外務大臣宛て)外務省大臣官房総務課外交記録・情報公開室, 1995.3.27.

634 外務省アジア局「インドシナ総合開発フォーラム民間シンポジウム(記者会見)」(大塚駐タイ臨時 代理大使から外務大臣宛て)外務省大臣官房総務課外交記録・情報公開室, 1995.3.27, 外務省アジア局

「民間シンポジウム(報告)(2の2)(第1063号)」(大塚駐タイ臨時代理大使から外務大臣宛て)外 務省大臣官房総務課外交記録・情報公開室, 1995.3.30, Asia Division Ministry of Foreign Affairs of Japan, Forum Comprehensive Development of Indochina Private Sector Symposium Chairman’s summary, 1995.3.24.

635 ここで、ICDとはインドシナ総合開発フォーラム(Indochina Comprehensive Development)を 指す。

636 外務省アジア局南東アジア第一課「インドシナ総合開発フォーラム合同打合せ会合(第1857号)」

(恩田駐タイ大使から外務大臣宛て)外務省大臣官房総務課外交記録・情報公開室, 1995.7.3.

ドキュメント内 ―インドシナ総合開発フォーラムを中心に― (ページ 154-192)