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開発型証券化の マクロ経済的意味

ドキュメント内 2003July-August Vol (ページ 66-70)

東北文化学園大学 総合政策学部

矢口 和宏

制緩和の推進を強く主張する立場がある。

この 2 つの立場の違いは、マクロ経済の需 要と供給に関係している。前者の立場は、

需要サイド、いわゆるマクロ経済の総需要 に影響を与えるような政策が有効であるこ とを主張したものであり、積極的な景気対 策を主目的とする。

図 1 では、総需要曲線の右方向へのシフ ト(AD1→AD2)として表され、GDPと物価 水準はともに上昇する。学説的には、ケイ ンズ政策の流れにある。

一方、構造改革や規制緩和の推進を主張 する立場は、供給サイドの調整を図るよう な政策が有効であることを主張したもので ある。供給面からマクロ経済を刺激するこ とにより、マクロ経済の潜在能力を高め、

中・長期的に安定した経済成長を達成する ことがマクロ経済政策として有効であると 指摘する。図 1 では、総供給曲線の右方向 へのシフト(AS1→AS2)として表される。

■■3.開発型証券化のマクロ経済効果 開発型に限らず、資産流動化型の不動産

証券化には、景気対策の政策手段として有 効なのではないかという期待がある。なか でも、開発型証券化は、未利用の土地、い わば「眠っている土地」を起き上がらせるこ とによる都市再生への期待が持たれている。

以下に、開発型ではない証券化と開発型の ケースに分けて、それらのマクロ経済効果 について論じる。

<資産流動化型の不動産証券化のケース>

不動産証券化に期待される国民経済的な 効果として筆頭にあげられるのは、不動産 の流動化による有効利用の促進である。こ こで注意が必要なのは、すべての不動産が 流動化されるのではなく、有効利用状態に ある不動産の流動化が促進されることにあ る。それは、有効利用がなされていない不 動産の収益性は低く、そのような不動産の 証券化は困難となるからである。その意味 では、証券化は土地の有効利用を促進する しかけを内包している。このことは、証券 化が、経済政策上、資源配分の効率化に寄 与するスキームであることを示している注2。 土地は限りある資源であるから、その有効 図1 マクロ経済における総需要曲線(AD)と総供給曲線(AS) 

物価水準(P) 

  AD1 AD2

P* 

AS1 AS2

Y*  GDP(Y) 

→ 

→ 

利用を促進することは重要である。資源が 有効に使われるからこそ、安定した経済成 長が達成され、ひいては、国民の厚生の増 大にもつながるのである。

資産流動化型の不動産証券化は、資源配 分という景気対策と比較すればやや長期的 な視点に立つ問題への寄与が大きく、マク ロ経済的には、需要サイドよりも供給サイ ドに与える影響が強い。このことは、証券 化が短期的な景気対策よりも、中・長期的 な経済成長の達成に貢献する制度であるこ とを表している。前述した図 1 で表せば、

総需要曲線よりも、総供給曲線に与える影 響の方が大きいということである。

このような視点からすれば、不動産証券 化に景気回復策としての期待を寄せるのは 不十分であり、そもそも目的が違っている。

では、開発型証券化のマクロ経済効果につ いては、どのように考えられるだろうか。

<開発型証券化のケース>

開発型証券化は、新たな不動産開発に対 して実行されるわけであるから、証券化の 段階で、新たな建築物(住宅、SCなど)が 建てられる。このことは、建設投資や住宅 投資の増加であり、国民経済計算上では、

設備投資と住宅投資の増加に該当する。設 備投資や住宅投資は、マクロ経済の総需要 の構成項目であり内需であるから、開発型 証券化によって総需要は刺激される。厳密 には、各産業への波及効果等を考慮する必 要があるが、開発型証券化は公共投資と同 様の効果を持ち、短期的な景気対策として も機能し得る制度である。前述した図 1 で 表せば、開発型証券化の拡大は、総需要曲 線を右方向にシフトさせる。

近年の経済状況においては、従来から行

われていた、土地を担保にした借り入れに よる不動産開発が難しくなっている。これ は、企業金融での資金調達の難しさ、さら にはそのことの一側面であるが、開発リス クの大部分をひとつの企業が引きうけるこ との難しさを表している。その点、開発型 証券化は、資産金融としての特徴を持ち、

開発リスクを証券の発行をとおして広い主 体に分散できるので、この不況下でも不動 産開発を促進させる。このことは、証券化 に景気の下支えという役割が期待できるほ か、今後の発展次第では、新たな需要創出 の担い手になる可能性があることを示して いる。

また、開発型証券化の主体は、基本的に 民間部門である。そして、不動産開発の収 益性や適合性は格付け等を通じてさまざま な主体に評価される。このことは、マーケ ットによる不動産開発の評価であり、従来 にはあまりなかったしかけである。近年、

公共投資の非効率的な配分が問題になって いるが、収益性という観点からは、開発型 証券化にはそのような非効率性は許されな い。民間部門による収益性のある開発が実 行されるという意味では、開発型証券化は 望ましいといえる。次節では、住宅建設と 国有地の売却に関し、その開発型証券化と の関係について若干の言及を試みる。

■■4.開発型証券化の適用

開発型証券化による住宅建設はすでに実 現化されており、主に、首都圏での分譲マ ンション建設に利用されている。分譲マン ションは持家であるが、開発型に限らず不 動産証券化は、賃貸住宅にも十分適用され 得る制度である。その場合は、毎月の家賃

収入がキャッシュフローとなって、証券の 利払いや配当の原資に充てられる。賃貸住 宅の場合は、入居者の回転が比較的頻繁で、

その時々の経済情勢によって家賃の改定が しやすく、安定したキャッシュフローも得 られやすい。そのため、開発型証券化による 賃貸住宅の建設は、今後増加するであろう。

とくに日本では、諸外国と比較して床面 積が広く質の良い借家の供給が不足してい る。経済政策的な観点からも、質の良い借 家の供給は求められている。開発型証券化 は、十分なキャッシュフローが必要となる が、それは質の良い借家を建設しなければ 得られないものであり、開発型証券化に期 待される分野である。

2000年には、証券化の条件を付けた国有 財産(更地)の売却が行われた。政府の財政 赤字は、もはや国債の増発では対処できな い状況になっている。そのため、国有財産 の民間部門への売却が促進されており、こ の動きは今後も増加するであろう。また、

以前より、都心部には低度利用の国有地が 存在するといわれ、それらの「眠っている 土地」の有効利用が必要だという指摘が強 かった。

国有地には、利便性の高い地域に存在す るものもあり、このような場合は、開発型 証券化による開発が適している。ただ、国 有地といえども、十分なキャッシュフロー が見込めるような、魅力のある開発プラン が重要になることはいうまでもない。

■■5.おわりに

本稿では、資産流動化型の不動産証券化、

とくに開発型証券化のマクロ経済効果につ いて論じた。不動産証券化の国民経済的な 効果は、何よりも不動産の流動化による有 効利用の促進にある。マクロ経済的には、

総需要よりも、土地という資源の効率的な 利用を意図した総供給に影響を与える仕組 みである。開発型の場合には、新たな建設 投資や住宅投資が生まれるので、その場合 は、総需要に対してプラスの影響が生じる。

開発型証券化は、不動産開発の収益性や 適合性がマーケットによって評価される。

そのため、無駄で非効率的な不動産開発は 排除される。未利用地の流動化を促し、都 心部における有効な不動産開発を進めるう えでは、このしかけが重要になる。開発型 証券化のマクロ経済効果は、どうしても景 気と関連しがちになるが、有効な不動産開 発を推進させることも重要である。未利用 地(「眠っている土地」)を流動化させ、都 市の再生を図るうえでも、開発型証券化は 必要不可欠といえる。

注1 このような見解は、国土庁「不動産の証券化に関する研究会―報告書」(2000年)で示されており、

筆者も同様の見解を持っている。

注2 矢口和宏「マクロ経済政策手段としての不動産証券化」(ARES Vol.2/2003年)も参照されたい。

1969(昭和44)年に東京で生誕。 

株式会社ライフデザイン研究所(現第一生命経済研 究所)を経て、1999年より東北文化学園大学総合政 策学部講師となる。 

専門は土地・住宅の経済政策及び高齢者福祉の経 済分析。 

やぐち・かずひろ 

ドキュメント内 2003July-August Vol (ページ 66-70)