第 2 部 鉱業投資ガイド Investment Guide for Exploration and Mining
1 金属市場動向 Minerals Market Trend
1.2 鉱業インフラストラクチャー Mining Infrastructure
1.2.1 鉱物資源探査及び鉱業界 The Exploration and Mining Industry
1.2.1.2 鉱業業界の働き How the industry works
情報は探査事業における最重要要素である。国内の多くの地質調査機関によって、競争前 地球科学情報が整備され、この中には過去の探査事業で得られた膨大な蓄積データが含まれ ている。こうして良質の情報が低料金コストまたは無償で入手可能である。このような情報 の多くはインターネットでも入手できる。(情報の詳細については第 7 章参照)
地球科学情報とともに特にビジネスチャンスに関する産業情報や経営情報も重要である。
情報収集の最良の方法は、個人的ネットワークや業界の会議、イベントで情報交換をして入
手できる。また、一般情報から特殊な情報までを掲載した政府、民間の様々な出版物もある。
Mining News のようなインターネット上の一般的な情報誌もよく読まれている。Minmet (http://www.minmet.com.au)のように商業的なデータベースもあり、企業動向、開発権、生 産動向情報等の過去から現在にいたる情報を得ることができる。
資源開発産業では、情報をいかに早く入手できるか、そしてそれに基づく意思決定のスピ ードが成功への大きな鍵である。したがって、企業が成功するには、情報源に対する理解を 高め、ネットワークを広げ、情報に基づく意思決定を迅速に実行できるような内部体制を構 築する必要がある。これは、オーストラリアの鉱業環境で操業する日本企業が挑む必要のあ る最大の課題であるとかんがえられる。
探査鉱区 Mineral Tenements
オーストラリアでは、探査鉱区は容易に取得することができる。多額の資本も必要なく、
比較的簡単な条件で、誰でも探査事業を始めることができる。また、探査鉱区は一定の条件 のもとで自由に売買できる。各州・準州の鉱業所管省は、鉱山開発の初期段階での探査事業 者の役割を理解しており、事業者が事業に真の関心を持ち、これを実現させていく限り、関 係者間での探査鉱区取引きを妨げることはない。先住民所有地における一部の例外を除き、
探査鉱区及び採掘鉱区は譲渡可能である。このような開発権の自由な取引環境は、円滑な事 業推進を可能とし、投資家や企業は技術的、専門的な分野に専念し事業を推進することがで きる。
プロジェクトフェーズ Project phases
探査事業のプロセスは幾つかの段階に分けることができるが、情報に基づいた案件発掘段 階から資本に依存した生産段階まで、下記のような一連のフェーズがある。
• 案件発掘 (情報収集)
• 初期探鉱
• Pre-FS、FS 調査
• 建設
• 操業生産
大規模鉱業企業では、こうした探査フェーズ全体を企業内で実行できるが、最近では探査 事業をアウトソーシングする傾向が強くなっている。Rio Tinto や Anglo American 等のグ ローバル企業は、案件発掘から、探査、開発、生産への過程を企業内で独自で行う傾向にあ るが、BHP Billiton のような企業では、独自で探査を実行するより、小規模探査企業(ジ ュニア)等を活用して探査事業を進めている。このような企業アプローチに定型の進め方は なく、常にフレキシブルに状況に対応しながら事業を推進することが大切である。
案件発掘段階は、特に知識、情報、迅速性に依存するところから、しばしば個人またはジ ュニアがこのフェーズで活躍している。重要なことは、獲得可能な探査プロジェクトに関す
る知識、そのプロジェクトの有望性の評価能力、ならびに試すい調査調査ターゲットを抽出 する能力等である。多くの場合、こうした案件発掘にかかわる小規模な探査事業者は、試す い調査まで実施することはない。この段階での作業の多くは、机上の詳細なデータ分析であ る。また、この段階では、岩石試料採取、化学分析、トレンチ(costeaning)等に限られて いる場合もある。また、この様な初期段階で土地アクセス問題を解決することも重要である。
初期探鉱 Initial Exploration
基礎的なデータ分析を基に対象地域が絞りこまれ、予備的な調査が実施された後、対象地 域の全域または部分的に探鉱を進めるか、または事業計画を断念するかの意思決定がなされ る。一部の有望性のある部分についてのみその後の探査を進める場合、鉱区の一部を放棄す るか第三者に売却する。
探査は、その都度、探査結果を検討して少しずつ進められる。それぞれの段階に要するコ ストは、企業規模、鉱床の有望性よって異なる。一例としては、一般的に 1 シーズン 25 万 豪ドル程度が、広域的な試すい調査、試料分析にかかる。この段階で、事業をそれ以上推進 する価値があるかどうか決められる。
開発可能性 Feasibility
開発可能性の検討は、探査プロジェクトの実施中において継続して行われる。探査がやや 進んだ段階で、試すい調査、地質調査の評価と簡単な市場調査を含めた Pre-FS 調査が実施 されることがある。さらに最終的な融資審査のためにバンカブル FS 調査(Bunkkable Feasibility Study : BFS)によって、開発可能性が評価される。こうしたプロジェクトの 評価をどのように行うかは事業者によって異なるが、探査フェーズでのリスクの高さから、
一般的にはプロジェクトの進捗を詳しくモニターし、探査目標、手法等の見直しを行い、フ ァイナンシャルリスクを最低に抑える努力を行う。
JORC 規程(p37 参照)に沿った鉱物資源量、鉱石埋蔵量の報告を可能とする十分な量の試 すい作業を行った時点で、BFS が実施され、開発まで進むかどうかの判断が行われる。こう した最終段階の評価作業では、鉱山開発に必要な資本金は金融機関から融資されるところか ら、「Bankable」という表現が使われる。この段階になると、一般投資家や株主も投資意思 決定に必要な正確な情報を必要としている。
ファイナンス及びディールメーク Financing & Deal Making
探鉱及び鉱山開発事業は高いリスクを伴い、継続的に発生する探鉱資金の調達は常に大き な課題である。しかしながら、オーストラリアにおいては、すでに発達した鉱業活動を背景 に、市場の状況にもよるが探鉱資金が調達できる確立した環境が整っている。探鉱資金を十 分に持たない小規模の企業は、探鉱の各段階及び対象となる鉱区の有望性に応じてファイナ ンスの調達が可能である。探鉱が始まったばかりの時期において、しばしば個人の実業家ま
たは個人を集めた小さなグループが融資を行っている。多くの場合、鉱区権はこのような 人々がわずかなコストで取得し、元手(seed money)は、既存データや現場での基礎的な調 査から得られたデータを検討するために使われる。
こうした探鉱活動のすべての例に当てはまる決まったビジネスモデルはなく、関係者次第 によってビジネスアレンジメントは異なるが、基本的には対象鉱床の価値に対して合意を形 成することである。一般的には対象鉱床の有望性に見込みがあると判断された時点で、共同 事業者を捜し、その共同事業者が鉱区の探査をさらに進めるか、または権益と引き換えに更 なる探鉱資金の投資を行う。合意された探鉱プログラムが終了した後、成功の見込みが依然 継続している場合、最初の事業所有者はさらに自身の権益シェアを減らし、スポンサーとな る共同事業者が追加投資を行う場合もある。
また他の方法としては、鉱区権を他の企業に売却し、その代わりにその企業の株を取得し たり、その鉱区から開発された生産物の製錬ロイヤルティ(開発された金属の価値に対する 一定の割合)に関する権利を取得したりする。このような戦略は、買収企業が開発のさまざ まな段階にあるいろいろな鉱区を有することが多いので、最初の事業所有者の探鉱リスクを 減らす。
同様に、事業者または鉱区権所有者が、複数の鉱区をパッケージとしてまとめて、証券取 引所での新規株式公開(Initial Public Offering:IPO)によって資金調達を行うこともあ る。こうした場合、一般的には、こうした事業の発起者は、プールファンドやベンチャー投 資者のような、有力な投資家を一人ないし二人持っており、彼らが上場に必要な株数を準備 し、小規模の投資家による信頼性を向上する。IPO が成功すると、新しく上場された会社は 上場ジュニア探鉱企業となる。こうして集めた資金が使われると、ジュニア企業の役員は証 券取引所において、追加投資を新株発行または新株引受権発行等の方法で求める。
しばしばジュニア企業は、他のジュニア企業または主要鉱山企業と戦略関係を強め、リスク をさらに低くするよう努める。このような理由から、ジュニア企業の大半がジョイントベン チャーの対象となるポートファリオのみならず、他の企業がジョイントベンチャーとして参 入できる鉱区を持っている。
前述のように、探鉱産業では意思決定のスピードが非常に重要である。通常は初期探鉱段 階の交渉は公式の場では行われない。個人的な交友関係や業界での評判が重要であり、そこ から生まれる高度な信頼関係に基づく暗黙のビジネスルールが基本となる。高いプロジェク トリスク及びリスクシェアリングの必要性が認識される場合、一回の会議で決断がなされる 場合もある。これに対し、鉱物資源量の姿が明らかとなり、プロジェクトが確実な価値を持 つこととなった場合、開発プロセスはより公式なものとなる。
銀行あるいは特殊な投資企業は、探鉱初期段階では、個々のプロジェクトに対する高額な 融資を行うことはないが、バランスの取れた投資ポートフォリオを維持するため、通常は、
複数の探鉱企業の資本シェアを所有している。
しかしながら、事業が進む過程で金融機関の役割が重要となってくる。プロジェクトの有