第 2 部 鉱業投資ガイド Investment Guide for Exploration and Mining
2 探鉱・採鉱の監督管理 Administration of Exploration and Mining
2.9 ウラン政策 Uranium Policy
オーストラリアのウラン輸出政策は、ウランが他の鉱物資源及びエネルギー資源と基本的 に相違するという前提にたっている。オーストラリアからの輸出ウラン及びそれから製造さ れる派生物質が核兵器の開発に使用されたり、その他の軍事目的に使用されることがないよ う な セ イ フ ガ ー ド と な っ て い る 。 こ れ は オ ー ス ト ラ リ ア 原 産 の ウ ラ ン
(Australian-Obligated Nuclear Material:AONM)が、核燃料サイクルの中を進む際、そ の量を正確に測定することによって実行される。このために、現在、イエローケーキのみの 輸出が可能である。
オーストラリアのウラン資源埋蔵量は世界最大で約 40%を占めている。オーストラリア の最近の酸化ウランの生産量と輸出量は平均 10,000t/年である。オーストラリア産ウラン は原子力発電用のみに使用されている。ウラン輸出は、北朝鮮等の国への輸出や、核兵器に 使用されることがないよう、確実な契約のもとに供給されている。2003/04 年度までの 5 年 間でオーストラリアは、20 億 A$を超える 44,330t の酸化ウラン精鉱(37,591tU)を世界 11 か国に輸出した。オーストラリアは 2005/06 年度には 10,964t の酸化ウラン精鉱
(9,297tU)を輸出した。これは輸出額にして 475.1 百万 A$であった。
オーストラリアでは、ウランはエネルギー源として使用されておらず、少量のウランが医 療及びその他の目的に使用されている。
2.9.2「3 鉱山政策」の影響 The Legacy of the Three Mines Policy
オーストラリア憲法では、鉱業に関する立法など諸権限は州政府にあり、連邦政府は州政 府の協力がなくしてはその政策を進めることはできない状況にあるが、外国との貿易・通商 に関しては権限を有しており44、ウラン資源の輸出を規制する立法及び検疫・通関などを通 じて、実質的にウラン資源の輸出をコントロール下に置くことが可能である。また、オース トラリア国内には原子力発電はなく、ウラン資源の市場が自国内には存在しないことから、
ウラン資源の輸出をコントロールすることは、即ちウラン資源開発をコントロールすること になる。「3 鉱山政策」は、ウラン資源の輸出を制限することで間接的かつ実質的にウラン資 源開発を制限していた。
「3 鉱山政策」とは、1984 年に当時連邦政府の政権の座にあった労働党が、Ranger 鉱山(NT 州)、Nabarlek 鉱山(QLD 州)、Olympic Dam 鉱山(SA 州)の 3 鉱山に限りウラン資源の輸出を 認めたことを言う。
その後、1996 年に自由党と国民党の連立政権に代わると、「3 鉱山政策」に当初より反対し ていた両党は「3 鉱山政策」の廃止を決め、近年はウラン資源生産を拡張するとの方針を示し ているが、鉱業に関する立法などの諸権限は州政府にあり、かつ州・準州政府の全てが労働
44 オーストラリア憲法には連邦政府の権限が列挙されているが、その中では鉱業に関する事項は挙げられていない(第
51 条など)。また、同条 1 項、34 項は貿易に関する連邦政府の権限を規定。
党政権であるために連邦政府はその拡張を進めることができず、これまでオーストラリア国 内のウラン資源開発は進んでいない。地球温暖化対策、最近のウラン需要拡大見込みや価格 の上昇など、ウラン資源開発を取巻く環境は大きく変化している。
オーストラリアの労働党はウラン鉱山の増加には反対の立場を正式には保っている。州レ ベルでは、一部の労働党政治家はウラン鉱山開発の阻止を企てている。しかし、ウラン価格 の高騰と明白な資源のポテンシャルから、ウラン資源が最も豊富な SA 州労働党政府は、ウ ラン鉱業に対する立場を変えつつある。
しかし 2005 年 10 月に開催された SA 州労働党の大会では、党中央の意向に沿って反ウラ ン鉱山の方針を再確認し、周囲を驚かしている。この背景にもかかわらず Quasar の Arkaroola 鉱区(Alliance Resources 社)、Challenger West プロジェクト(Hindmarsh Resources 社/Southern Gold 社)、Mount Yerila(Red Metal Ltd 社)などの新しい会社が 探査活動を行っており、SA 州内のウラン探鉱45は大幅に増加している。
更に、他州については、WA 州は環境への影響の観点から、QLD 州は州内の石炭産業を圧迫 するとの観点から新しいウラン資源開発を禁止する方針を示しているほか、NSW 州に至って はウラン資源探査をも禁止しているなど、州政府レベルでの反ウラン鉱山の方針は依然維持 されている。
2.9.3 NT 州のウラン開発への連邦政府の権限
Commonwealth Authority over NT Uranium Mine Development
NT 州政府はウラン鉱業に反対の立場をとっている。しかし、他州の鉱業に対する権限と は異なり、NT 州は実質上ウランに対して権限を持たない。NT 州は法律上(特に憲法上)、州 とは異なる扱いをうける46。鉱物(mineral)に関しては、「NT 州にある鉱物に関する連邦の全 ての権利(interest)は(Atomic Energy Act 1953 及びその Act のもとで定められた規則...
に規定された物質(substances)以外)は本条により、その日(施行日)をもって帰属する」
(Northern Territory (Self-Government) Act 1978 第 69 条(4))と規定されていることから、
ウランに関する権限は NT 州には帰属しないことになる。
また、連邦政府が準州に対して立法措置を行うことができることから47、ウラン開発に関 する立法も可能と考えられ、労働党 NT 州政府の反ウラン鉱山の方針が示されたにも関わら ず、ウラン資源の輸出を増やしたい連邦政府は、ウラン資源に限って準州内のウラン鉱業ラ イセンスの付与に関する権限を有するとしたのである48。
45 7.2.2 参照
46 北部準州は Northern Territory (Self-Government) Act 1978 によって設立・権限が規定されている。
47 憲法第 122 条に基づいて、連邦政府が準州自治のために立法することがあるが、準州の独立性を認めず、準州と連邦
の政策が異なる場合に連邦政府が準州の法律を無効とする場合が多いと言われる。1995 年に北部準州が安楽死を許可 する法律を制定したが、1996 年に連邦政府(連立政権)はそれに反対し、同法を無効とする立法措置(Northern Territory Act 第 50 条 A の追加)を行ったなど。
48 2005 年 8 月 4 日の連邦政府の発表
2.9.4 最近の政策動向 Recent Developments
2005 年 8 月、連邦政府は、ウラン産業の枠組み 3 年計画(「Three years Uranium Industry Framework49」)を発表した。この計画の目的は、(1)ウラン資源輸出の障害をなくすこと、(2) 全国的に一貫性があり効果的な規則を制定すること、(3)国民にウラン資源利用について啓 蒙することなどであある、また、州・準州、企業、先住民グループなどと協議し、政策の実 現に向けた特別委員会を設置するなどの施策を講じるとしている。当面の政府の目標は、5 年以内に NT 州に第 2 のウラン鉱山を開発すること、2010 年までにオーストラリアのウラン 資源輸出量を年間 10,000t から 30,000t に引き上げること、輸出金額を現在の 2 倍の年間 10 億豪ドルにすることとしている50。
49 2005 年 8 月 11 日の連邦衆議院議員 Ian Macfarlane 氏による「オーストラリアのウラン輸出産業の将来」
50 2005 年 8 月 11 日付け The Australian 紙,“Nuclear power play”より