第 2 部 鉱業投資ガイド Investment Guide for Exploration and Mining
2 探鉱・採鉱の監督管理 Administration of Exploration and Mining
2.8 先住民土地アクセス、先住権、土地保有権
2.8.2 先住民族の土地所有 Indigenous Freehold
上記にように 1960 年代になって、一部の州において先住民に対する土地所有権が認めら れるようになった。1966 年の SA 州の先住民土地信託法「Aboriginal Lands Trust Act (South Australia)」は、オーストラリア国内で、初めて先住民の土地所有権を政府が認めた象徴的 な法律である。また同法の下では、権利の維持や先住民保護区域の管理を先住民を代表して 行うトラストが設立された。1970 年代からは、連邦政府は先住民族の利益のために内陸部 を中心として土地取得を始めると同時に、さまざまな法律を制定して、一部の連邦領土を先 住民族に返還し、あるいは先住民が返還要求の申し立てをすることを可能にしてきた。連邦 政府が NT 州(当時はまだ連邦政府管轄下であった)を対象に制定した先住民土地所有法
「Aboriginal Land Rights (Northern Territory) Act 1976」は、先住民が NT 州の 40%以 上の広い地域を所有する結果になった。
SA 州では 1981 年 3 月 19 日に、ピチャンチャチャラ(Pitjantjatjara)族の土地所有権 を、さらに、1984 年にはマラリンガ チャルチャ(Maralinga Tjarutja)族の土地所有権 を認める法案が可決された。SA 州は全土の 19%40が先住民土地所有権の対象となっており、
この中には州北西部に位置するアナング-ピチャンチャチャラ(Anangu-Pitjantjatjara ) 族が所有権を持つ、鉱物資源の豊富な地域も含まれている。
連邦政府は先住民団体による土地の取得・管理を支援する先住民及びトレス海峡島民土地 基金「Aboriginal and Torres Strait Islander Land Fund :the Land Fund」(以下「土地 基金」)と先住民土地コーポレーション「Indigenous Land Corporation (ILC)」に予算供与 を行っていたが 2004 年 6 月でこれを停止した。その時点で基金の総残高は約 13 億豪ドルで あった。ILC はこの残高による利子を利用してそれ以降の土地取得を行う必要があり、2006 年 2 月末時点では国内に 199 の土地を所有している。
土地基金は、約 13 億豪ドルの資本金を持ち、先住民の土地の取得と管理に関する支援を 行っている。同基金によって取得された土地は先住民所有地としてよりも、先住民放牧リー
40 http://www.pir.sa.gov.au/pages/petrol/access_land/aboriginal.htm:sectID=158&tempID=8
ス地(pastoral leasehold)として取得される傾向がある。これは WA 州に多く見られるよ うに、所有できる土地に限りがあるからである。先住民放牧リース地として取得された土地 は、引き続き放牧リース地として分類されるので、先住権法「Native Title Act」(下記の 先住権参照)の対象となる。連邦政府の関係法改正により、NT 州における先住民土地所有 権の許可は 1997 年41以降一例もない。
表 17 各州・準州の先住権関係法規
州 Indigenous Land Legislation 先住民所有に関する法律 NT 州 Aboriginal Land Rights (Northern Territory) Act 1976 (Cth)
Aboriginal Land Act 1978 (NT)
Cobourg Peninsula Aboriginal Land, Sanctuary and Marine Park Act 1981 (NT) Nitmiluk (Katherine Gorge) National Park Act 1989 (NT)
VIC 州 Aboriginal Lands Act 1970 (Vic) (Framlingham, Western Victoria and Lake Tyers, Gippsland);
Aboriginal Lands (Aborigines' Advancement League) (Watt Street, Northcote) Act 1983 (Vic) (Northcote, metropolitan Melbourne);
Aboriginal Land (Northcote Land) Act 1989 (Vic);
Aboriginal Lands Act 1991 (Vic) - (various Aboriginal burial grounds in former mission cemeteries at Corranderrk, Ebenezer, and Ranatiyuck);
Aboriginal Land (Manatunga Land) Act 1992 (Vic) (Robinvale, Murray Valley).
WA 州 Aboriginal Affairs Planning Authority Act 1972 (WA) Aboriginal Communities Act 1979 (WA)
QLD 州 Aboriginal Land Act 1991 (Qld)
Torres Strait Islander Land Act 1991 (Qld) Community Services (Aborigines) Act 1984 (Qld) Community Services (Torres Strait) Act 1984 (Qld) Land Act 1994 (Qld)
Aborigines and Torres Strait Islanders (Land Holding) Act 1985 (Qld) Local Government (Aboriginal Lands) Act 1978 (Qld)
Nature Conservation Act 1992 (Qld) NSW 州 Aboriginal Land Rights Act 1983
SA 州 Pitjantjatjara Land Rights Act 1981 (SA) Maralinga Tjaruta Land Rights Act 1984 (SA) Aboriginal Lands Trust Act 1966 (SA)
Aboriginal Lands Parliamentary Standing Committee Act 2003 (SA) TAS 州 Aboriginal Lands Act 1995 (Tas) and Nature Conservation Act 2002 (Tas)
41 http://www.clc.org.au/ourland/nativetitle.asp
ここで大切なことは、先住民が所有する土地に対しては、先住権が適用されないことであ る。連邦最高裁判所(The High Court)によると、政府が私的保有者等(先住民の土地所有 者も含むと理解されている)に土地の所有権を移転した場合、先住権が消滅すると判断して いる。つまり、先住権とは、土地所有権より劣る権利であり、対象となる土地のリース権保 持者の権利を大きく侵害することがない範囲で、先住民に限られた伝統的活動のみを許容す る権利であるということもできる。
一般的な土地所有の場合、その所有者は法が許す範囲で様々な行為の自由が認められてい るが、先住民所有土地の自由な売買は制限されており、その他の一般的な土地所有権とは性 質が異なる。しかし、その土地を所有する先住民の同意を条件に、土地所有権を持つ先住民 土地新信託(Aboriginal Land Trust)を通じ、当該土地を先住民関係団体あるいは一般事 業者に対してリースすることは可能である。土地所有権を持つ先住民グループは、先住権法 の対象にならないので、先住権申請を行う必要はないし、申請自体も連邦先住権調停機関 National Native Title Tribunal:NNTT)の仲裁対象とはならない。
2.8.2.1 先住民土地における鉱業活動 Mining on Indigenous Freehold Land
NT 州と SA 州において鉱業活動を行う際に、先住民土地所有権に留意する必要がある。探 鉱開発権の申請方法及び認可プロセスは、どちらの州・準州でも同様であるが、対象となる 土地を所有する先住民の土地信託「Aboriginal land trust」による場合のみが許諾・同意 に関する決定力を持っている。
先住民所有地における探鉱・開発を行う場合、その州・準州の一般的な鉱業法と先住民土 地権法の二つの法律に従うことになる。NT 準州では鉱業法「Mining Act(NT)」と先住民土 地権法(「Aboriginal Land Rights Act (ALRA)」42が、SA 州では鉱業法(SA)「Mining Act (SA)」 と 先 住 民 土 地 ピ チ ャ ン チ ャ チ ャ ラ / マ ラ リ ン ガ 土 地 法 「Aboriginal Land Pitjantjatjara/Maralinga Lands Act」が適用される。探鉱権が許可されるためには、対象 となる土地を所有している先住民が所属する先住民土地管理協会及び州の所管大臣の同意 が必要である。先住民所有土地において探鉱事業を実施する場合、これに先立って探鉱権を 申請する必要があるが、先住民所有土地における探鉱許可を得るための 3 つのステップは以 下のとおりである。
ステップ 1:鉱業法「Mining Act」に従って申請を行う。これに対して州の所管大臣は事 業者が鉱業法に従って交渉を行うことに対して同意する。
ステップ 2:該当する州の先住民土地法「Aboriginal Land Act」に従い、探鉱権申請者 は対象となる土地を所有する先住民が所属する先住民土地管理協会「Land Council」と交渉 を行う。先住土地所有者は当該土地の一部、あるいは全体に対し、探鉱権申請を拒否するこ とができる。先住民による拒否権が行使された場合、その後 5 年間は猶予期間(Moratorium
42 http://www.minerals.nt.gov.au/pls/portal30/docs/FOLDER/DBIRD_ME/LAND_ACCESS/MINERALS/TENURE/GUIDEA5015 -06-04.PDF
Period)となり、探鉱開発に関する交渉を再開することは出来ない。但し、交渉が決裂して から 2 年後に、所管大臣の同意の下、先住民土地管理協会は交渉を再開することができる。
交渉が決裂して 5 年経てば探鉱権申請者は、先住民土地管理協会と交渉再開ができるが、こ の場合、申請者は 30 日以内に新たな申請書を先住民土地管理協会に提出する必要がある。
申請者は探鉱権の許可を得た後、さらに採掘権リースの申請を希望する場合は、先住民土地 権法による土地管理協会からの同意を得る必要はないが、同法 46 条に従い先住民土地管理 協会と鉱業協定(mining agreement)を結ばなければならない。
ステップ 3:鉱業法に従って探鉱権の許可または不許可を決定する。探鉱権許可の条件が 満たされているか否かによって所管大臣が決定する。