第 2 部 鉱業投資ガイド Investment Guide for Exploration and Mining
6 地域社会及び環境問題 Community and Environmental Issues
6.1 産業コード及びベストプラクティス Industry Codes and Best Practice
ベストプラクティス(Best Practice)の概念は、オーストラリアの産業界における規制 の中で最も重要であり、鉱業界全体にも適用されている。その概念は、自己啓蒙、政府主導 の指導、奨励等が、産業界の効率的な自己管理システムを推進することである。ベストプラ クティスの概念は、伝統的なミニマムスタンダードに基づく記述式(Prescritive)システ ムに比べて、技術や環境の変化に対し、より効果的、迅速に対応できるとされている。
規制基準に拘束されているミニマムスタンダードによるセイフティーネットが依然とし て適用されているが、規制官庁の視点は、従来からの産業界に対する懲罰を通じた規制政策 による影響力行使から、最低条件を上回るパフォーマンスを推奨し、より協力的な取り組み に変わってきている。他の産業界の場合と同様に、鉱業に関しても、「共同者としての取り 組み」(partnership approach)という言葉がこの制度を説明するものとしてよく使用され る。この概念は、ビジネスにおいて改善をたゆまなく行うという概念と類似している。また 最新の技術や考え方を維持しながら、業務の全要素及び安全性に関する段階的な改善を必要 としている。
ベスト・プラクティスは事業所ごとに適用されるべきもので、鉱山の現場毎、地域毎に異 なるものである。ある事業所でベストプラクティスであっても、他の事業所では非効率また は不適切な業務慣行であることもあり得る。採鉱企業や規制官庁は、新しい開発マイルスト ーンを作ることによって、ベストプラクティスに取組むことになる。日常的に実行するベス トプラクティスのみが、将来のベストプラクティス作りの基盤となる。ベストプラクティス とは、プロセス重視、情報公開、鉱業に影響を受ける地域コミュニティーの参加のような従 来的なアプローチではなく、技術、継続的な改善、環境の質、積極的な企画及び研究、パフ ォーマンスや成果の独立的評価を行うことである。
下記に示すオーストラリアの二つの鉱業管理規程は、事業報告の公正さ、責任、透明性及 び誠実性に関する受容可能な水準を守るための実践的ガイドである。上記の必要条件または それ以上の条件を満たす代替規程がない場合、これらの規程を遵守する必要がある。これら の規程は、定期的に見直しされており、企業の責任として最新のベストプラクティスに追随 していなければならない。
6.1.1 大洋州鉱石埋蔵量委員会規程(JORC 規程)
The Australasian Joint Ore Reserves Commission Code (JORC Code) www.jorc.org
JORC 規程は、オーストラリアにおける探鉱結果、鉱物資源量、鉱石埋蔵量の公開報告に 関する基準、手引きを示したものである。JORC 規程は、過去の鉱業界で使われていた報告 様式の不明確を最小限に抑え、様式を統一する目的で策定された。また、JORC 規程は、鉱 物資源量、鉱石埋蔵量を報告する立場にある資格保有者(Competent Person)の資格、経験
条件も規定している。
JORC 規程は、大洋州採鉱冶金学会(Australian Institute of Mining and Metallurgy:
AusIMM)、オーストラリア地質技師協会(Australian Institute of Geoscientists:AIG)、
オーストラリア鉱業協会( Minerals Council of Australia:MCA)が策定、管理を行って おり、これらの団体の加盟者すべてを拘束するものである。JORC 規程を管理する JORC 委員 会は 1971 年に創設され、1989 年に最初の JORC 規程が発表されるまで、鉱物資源量、鉱石 埋蔵量等の公開報告や分類様式の取りまとめを行ってきた。JOPC 規程は、1989 年版の策定 意向、継続的に改定が行われ、最新版は JORC 規程(2004)である。また JORC 規程は、オー ストラリア証券取引所(Australian Stock Exchange:ASX)の上場基準にも組み込まれてお り、ASX 上場企業の事業活動を拘束するものである。
JORC 規程は鉱業金属機関委員会(CMMI)により公的報告の統一国際標準のベースとして 使用されたことから、鉱物資源報告の国際的な基準と手引きにも準拠していることになる。
6.1.2 VALMIN 規程 Valmin Code www.ausimm.com/codes/valmin.asp
VALMIN 規程は、1995 年に AusIMM によって作成、正式導入され、その後 1998 年に改訂さ れた後、現在 VALMIN(2005)が使用されている。VALMIN 規程は、オーストラリアの企業法
( Australian Corporation Law ) の 下 に 、 ASX 及 び オ ー ス ト ラ リ ア 証 券 投 資 委 員 会
(Australian Securities and Investments Commission:ASIC)に対する報告書を含むすべ ての企業報告書を作成する際に適用される。
VALMIN 規程は、鉱物資源及び石油資源に関連する資産、証券の査定、評価報告書の作成 準備の標準様式を定めるものである。VALMIN 規程の適用は、規制機関(ASX /ASIC)や市場 関係者(たとえば主要会計事務所等)からも正式な支持を受けている。また、プロジェクト の評価及び査定においても、一般的なベストプラクティスの手引きとして取り入れられてい る。
6.1.3 環境管理規程 Code for Environmental Management www.minerals.org.au/environment/code/code_2000
環 境 管 理 規 程 は 、 1996 年 12 月 に オ ー ス ト ラ リ ア 鉱 業 協 会 ( Mineral Council of Australia:MCA)のイニシアチブとして始まった。環境管理規程の創設は、鉱業界が環境パ フォーマンス及び社会への説明義務等を明確化した重要なステップとなった。環境管理規程 は、企業が、地域社会の要望、査定、懸案事項等に対し、協議、環境パフォーマンスの実行、
継続的改善、公開報告等を通して取り組む際に中心的なガイドとなるものである。環境管理 規程への署名企業は、環境管理に積極的に取り組むことを宣言したことになる。最新の環境 管理規程(2000)への署名企業数は 39 社である。
6.1.4 EPA シリーズ EPA Series
http://www.industry.gov.au/content/itrinternet/cmscontent.cfm?objectID=BF645BCB-964A-B247-A9E94E25110BDA2E
環境遺産省は、オーストラリアの産業界と共に、環境パフォーマンスの向上に資するため の政策の実行を行っている。環境保護を単なるコストではなく便益とみている企業の数は増 加しつつある。幾つかの産業分野において、資源回収、廃棄物に関し自然環境に対する影響 を低減している。
この様な政府と民間産業界との共同作業の結果として「ベストプラクティス」シリーズが 製作され、資源産業が採用している環境管理慣行を、一般公衆がより良く理解できるよう必 要な情報を提供している。これまでに 25 冊の小冊子が発行され、中には、オーストラリア 産業を代表する資源生産企業が使用している環境管理ペストプラクティスの一部を含んで いる。これらのガイドは、法的規制で定められている基準を超える、環境保全に対する実用 的で費用効果の高い取り組みを強調している。