第 9 章 式とグラフ 125
9.2 いろいろな直線のグラフ
9.2.2 金属の線膨張 ( 線膨張率 )
金属は,温度が高くなるにつれて膨張します. この場合, 1 [◦C] 当りの膨張を 体積で示す場合と,線の長さで示す場合の2通りの表し方があります. このうち, 線で示すものを 線膨張率 ( 記号 : α ) といいます. ここでは線膨張について述 べます.
例題 2. 30.0000 [cm]の鉄線の長さを,それぞれの温度において測定したところ,
次のような結果を得ました.
温度 t[◦C] 20 45 70 95 120 長さ l [cm] 30.0000 30.0104 30.0212 30.0300 30.0380
(1) グラフをかこう.
(2) 25 [◦C] ごとの温度変化に対する伸びの表をつくり,線膨張率を求めよう.
ただし,線膨張率は,次のような式になります.
線膨張率(α) =
伸びた長さ[m]
温度差 [K]
元の長さ [m]
(単位は [1/K] )
(3) 20 [◦C] を基準の長さにして,長さを示す一般式を求めよう.
(4) 鉄道のレールの長さを20 [◦C]のとき25.000 [m]としよう. 冬の−10 [◦C]
のときと比べて, 夏の 50 [◦C] のときのレールの長さは何 [cm] 長くなり ますか. ただし,線膨張率は, (2)で求めた値を使用する.
(5) 砂漠の温度は昼と夜とで温度差が大きい. 砂漠の中に 100 [km]のパイプ ラインを引くとき, 60 [◦C] 違ったなら,パイプラインの長さは何[m]違っ てきますか. また, このとき実際にはパイプの伸張に対して, どのような 工夫をしたら良いのか考えよう.
解答
9.2. いろいろな直線のグラフ 133 (1) グラフ
線膨張率の測定 (2) 線膨張率の求め方
線膨張率(α) =
伸びた長さ[m]
温度差 [K]
元の長さ[m]
(単位は[1/K] ) で求められる. 20 [◦C]のときと, 120 [◦C] のときのグラフの直 線上の 2 点より,その差を求めると,
α =
0.300420−0.300000 120−20
0.300000 = 0.000014 [1/K]
になる. すなわち線膨張率は, 1.4×10−5 [1/K] である. (3) この測定は20 [◦C]を基準にしてあるのでt[◦C] における求め
る長さを l, 20 [◦C] における元の長さをl0 とすると l = l0
1 + (t−20)×1.4×10−5 で示される.
(4) 上の式で−10 [◦C] における長さをl0 = 25 [m] ,とすると温度 差は, 50−(−10) = 60 [◦C] である. 従って
l = 25
1 +{50−(−10)} ×1.4×10−5
= 25.021 になり 2.1 [cm]長くなる.
(5) l = 1.00×105( 1 + 60×1.4×10−5) = 1.00084×105 になり 84 [m]長くなる.
練習 2. 30.00000 [cm] のタングステン線の長さを測定したところ次のような結 果を得ました.
温度 t [◦C] 20 40 60 80 100 長さ l[cm] 30.00000 30.00222 30.00491 30.00722 30.00944
(1) グラフをかこう.
(2) 20 [◦C] ごとの伸びの表をつくり,線膨張率を求めよう. (3) 20 [◦C] を基準の長さにして,長さを示す一般式を求めよう.
(4) 0 [◦C] におけるタングステン線の長さが 50.00000 [cm]でした. 500 [◦C]
の長さを求めよう. ただし,線膨張率は(2)で求めたものを使用する.
解説 電流を流すため,ガラスの内部に金属線を封入した器具があ ります. ガラスは線膨張率が小さいので, 封入する金属も小さい率 のものを選ぶ必要があります. もし率が大きい金属を使うと, ガラ スが壊れてしまうことがあります. タングステン線が用いられる理 由は,線熱膨率が小さい金属だからです.
表 9–1主な金属の線膨張率 Pt 0.090 Au 0.142 Ag 0.193 Cu 0.162 Al 0.237 Fe 0.138
Ni 0.125 W 0.045
(×10−4 [1/K] ただし, 0 [◦C] から 100 [◦C]付近の値) この表からタングステンの線膨張率がいかに小さいかわかります.
9.2. いろいろな直線のグラフ 135 練習 3. ニッケル線の電気抵抗と温度の関係を調べたところ次のような結果を 得ました.
温度t [◦C] 20 40 60 80 100 比抵抗 ρ [µΩ·cm] 6.900 7.020 7.144 7.272 7.360 次の問いに答えよう.
(1) 抵抗と温度の関係をグラフ化しよう.
(2) 温度係数を求めよう. (温度係数とは温度が1 [◦C] 上昇すると比抵抗はい くら上がるかをいいます)
(3) 比抵抗と温度の関係式を求めよう.
(4) 0 [◦C]および 500 [◦C]の比抵抗を求めよう.
注意 比抵抗の場合も線膨張と同様な式で示される. すなわち ρ = ρ0
1 + (t−20)×k k:温度係数 の関係が成り立ちます.
解説 電熱器(トースタ,オーブン,電気ストーブなど)の発熱体は, 電気抵抗の大きな金属を用います. また, 金属は温度が上昇すると 抵抗が大きくなり, 電気を通しにくくなります. 比抵抗が大きいほ ど,電気は通しにくくなり,発熱します. 代表的な金属はニッケルと クロムの合金で,ニクロム線と呼ばれています. ニクロム線は,ニッ ケルとクロムの割合が82 : 18 の合金です. これは20 [◦C] における 比抵抗が約 100 [µΩ·cm] であり, 温度係数が 0.0012 です. 従って, 比抵抗の値は,ニッケル線に比較してニクロム線は約14 ∼15 倍大 きいのです.
9.3 2 次式で表わされる事象
数学で学んだことを軽く,復習しておきましょう. 一般に2次関数は次のよう に表わされます.
y=a x2+b x+c (a , b , cは定数で a6= 0 ) この2次関数の頂点の座標を求めるために,式を変形をすれば
y=a
x2+ b a x
+c
=a (
x+ b 2a
2
− b2 4a2
) +c
=a
x+ b 2a
2
− b2−4a c 4a とすることができます. ここで
p=− b
2a , q=− b2−4a c 4a とおけば,上の2次関数は,
2次関数のグラフ y = a(x−p)2+ q
の形となります. これはy=a x2 のグラフをx 軸方向にp,y 軸方向にq だけ 平行移動したものですから, y=a x2+b x+c のグラフはy=a x2 のグラフで ある放物線を
x 軸方向に p=− b
2a , y 軸方向にq=− b2−4a c 4a 平行移動したものです. 従って,頂点の座標は,
− b
2a , − b2−4a c 4a
となります. ただし, a >0 のときは下に凸, a <0 のときは上に凸の形です. 例題 3. 時速144 [km] (秒速40 [m] = 40 [m/s] ) で野球のボールを垂直に上の 方向に投げた. その結果を示すと次のようになりました.
時間t [ s ] 0 2 4 5 6 7 8
距離 l [m] 0 60 80 75
(1) 高さ方向の距離 lをyとし,時間 tをxと置き換えると, yはどのような 2次関数で表わされるか求めよう.
9.3. 2次式で表わされる事象 137 (2) y=a(x−p)2+q の形にし, p および q を求めよう.
(3) 6 秒後, 7 秒後, 8 秒後の高さを求めよう.
(4) 横軸に時間(秒)をとり,縦軸に距離をとってグラフをかこう. 解答
(1) 高さをy,時間をxとすると, 2次関数はy=a x2+b x+cで 表されます. 時間 0すなわち x= 0 のとき,高さy = 0 . 従っ て, c= 0 であり, y=a x2+b x で表されます. 時間が2秒,
4秒のときを計算すると
x= 2 秒のとき y = 60 = 4a+ 2b · · · 1 x= 4 秒のとき y = 80 = 16a+ 4b · · · 2 ×1 2−2 より文字bを消去すると
120 = 8a + 4b
−) 80 = 16a + 4b 40 = −8a
a = −5
1 式に代入して b= 40すなわち
y=−5x2+ 40x · · ·3
(2) y=−5x2+ 40x=−5 (x2−8x) =−5 (x2−2·4x)
=−5 (x2−2·4x+ 16−16) =−5
(x−4)2−16
=−5 (x−4)2+ 80
この結果からわかることは, 4 秒後に最高の高さになり, その
高さは 80 [m]です. (この変形は,数学で習ったのを思いだし
てください.)
(3) 3 式に x= 6,7,8を代入すると,それぞれ 60 , 35 , 0 [m]に なります. これをまとめると次のようになります.
時間 t [ s ] 0 2 4 5 6 7 8
距離 l [m] 0 60 80 75 60 35 0
(4) これをグラフ化すると次のようになります.
練習 4. 長さ 12 [m]のまっすぐな棒を4 本に切って長方形を作るとき,一辺の
長さx [m]と面積 y [m2]の関係について次の問い答えよう. (1) どのような2次関数で表わされるか求めよう.
(2) y=a(x−p)2+q の形にし, p およびq を求めよう. また, xがいくらの とき最大でその面積はいくらですか.
(3) x が1 , 2 , 3 , 4 , 5 , 6 [m]のときの面積を求めよう.
(4) 横軸に一辺の長さをとり,縦軸に面積をとってグラフをかこう. 練習 5. 幅40 [cm]のトタン板の両側
を直角に等しい長さを折り曲げて雨ど いを作るのにその断面積y[cm2]と折 り曲げる長さ x [cm]の関係について 次の問いに答えよう.
(1) y は,どのような2次関数で表されるか求めよう.
(2) y=a(x−p)2+q の形にし, p およびq を求めよう. また, xがいくらの とき最大でその面積はいくらですか.
(3) x が2 , 4 , 6 , 8 , 10 , 12 , 14 , 16 , 18 [cm]のときの面積を求めよう. (4) 横軸に一辺の長さをとり,縦軸に面積をとってグラフをかこう.
9.3. 2次式で表わされる事象 139
発展 対数で表される事象
今まで学んできたグラフは,縦軸も横軸も等間隔の目盛りでかいてきました. これを方眼グラフと呼びます. このような目盛りでは,グラフが直線にならず曲 線の特性になる場合があります.
ところが,縦軸と横軸の目盛りを対数間隔でとるグラフもあるのです. これを 両対数グラフと呼びます. また,一方の軸が対数間隔で,他方が等間隔のグラフ を 片対数グラフと呼びます.
このようなグラフを使用すると,広い範囲にわたる数値を扱えます. また,対 数特性の曲線を直線でかくことができます.
[例1 ] 抵抗と温度の一般式の求め方 (片対数グラフの場合)
サーミスタは温度感知素子です. これは酸化物半導体でできていますが,温度 が上昇すると電気抵抗が少なくなるものと, 逆に電気抵抗が多くなるものとあ ります. 常温では,一般的に金属は電気抵抗が少ないのに対して,半導体は電気 抵抗が大きいのです. しかも金属は温度が上昇すると電気抵抗が増加するのに 対して,半導体は減少します. 従って,半導体は低温では電気抵抗が大きくなり, 半導体のラジオは南極のような寒い所では聞こえなくなることがあります.
あるサーミスタの特性を測定したところ次のような結果を得ました. 温度 t[◦C] 19.2 30 40 50 60 70 80 電気抵抗 R [Ω] 2000 1500 1000 700 480 300 200
これを普通の等間隔でグラフ化したものが次のページ左側の図であり,電気抵抗 を対数目盛り,温度は等間隔で表示したものが次のページ右側の図です.
等間隔の目盛りでかかれた左側の図から,一般式を求めることはできません. 一方,右側の縦軸が対数目盛りの図は,縦軸がlogR なので, logR=a+b xと いう式で示されます.
ここで logR =y とおくと y = a+b x になります. この式は1次関数であ り, a はy 軸の切片, b は傾きです. また, 対数計算から logR =a+b x の式 から logをはずすと R= 10a+bx になるので, aの値は, log 4600 = 3.66 とな ります.
傾きを求めるために2点を取ると, x1= 0 のとき y1 = log 4600 = 3.66 であ り, x2 = 100のとき y2= log 100 = 2 です. 従って,傾きは
∆y
∆x = y2−y1
x2−x1 = 2−3.66
100−0 =−0.0166
になりますから,一般式は
R= 10(3.66−0.0166x)= 103.66×10−0.0166x = 4600×10−0.0166x と表されることになります.
サーミスターの抵抗と温度の関係 サーミスターの抵抗と温度の関係 (正方方眼紙使用) (片対数方眼紙使用)
この例のように, 自然現象はしばしば対数関数的に表わされることが多いの です.
[例2 ] 両対数の場合
[例1 ]では,片対数の例を述べましたが,両方が対数で示される例もあります. これは y=a xb という形で示される自然現象です. たとえば,皆さんも知って いる冷蔵庫に脱臭剤が入れてあります. これは活性炭(炭の粉を固めた物と考え てください.)ですが,活性炭はにおいを吸収する目的で入れてあります. そのと きの吸着量と濃度の関係は,吸着量を y ,濃度をx としますとy=a xb で示さ れます. この場合には, 両辺の常用対数を取ると, logy = loga+blogx とな ります.
ここでY = logy ,A= loga,X= logx とおくとY =A+b Xとなり, 1次 式になります. Y 軸の切片からA= logaを,傾きからbを求めることができる わけです.
9.3. 2次式で表わされる事象 141
専門科目へのステップ・アップ
「化学系」
実験には定性的なものと定量的なもの とがありますが,定量的な実験のうち分 析機器を使用する場合は必ず「検量線」
として出てきます. 例えば溶液の濃度を 知りたいとします. その場合, 既知濃度 の溶液を5種類準備して測定します. そ の結果は, 濃度を横軸, 測定結果を縦軸 にしてグラフ化します. そして未知の濃 度を測定し, 測定値にプロットし, 検量 線より未知濃度を調べます.
また, 物質の持つ性質を調べる場合にも使われます. 例えば, 活性炭に酢酸 が吸着される場合(活性炭は,冷蔵庫の脱臭剤にも使われています), 濃度(C) と吸着量(y)との関係は,次のようなフロインドリッヒの吸着等温式として示 されます.
y=k Cn (k は定数 )
実験は, 5種類の濃度(C)の酢酸の溶液を用意し,活性炭に吸着された酢酸 の量(y) を求めます. 濃度(C)と吸着量をグラフ化します. フロインドリッヒ の式が指数で表されているので,両辺の常用対数をとりグラフ化します.
logy= logk+n logC
ここで, logy=Y , logk=a, logC=x とおくと Y =a+n x
になります. この式は1次式なので, グラフ化することにより, 直線の傾きか ら nの値を,Y 軸の切片からaの値を求め,さらに計算により k を求めるこ とができます.
このように化学系では,実験結果をグラフ化し,定量的な測定や経験的な法 則を導くことを頻繁に行います.
問題
問題 1. 例題 1のバネ ( 長さL = 30 [cm] )を2本並列にして,これ全体を一 つのバネとみなし,バネの伸びと比例定数を考えてみましょう.
(1) 比例定数 kはどのような値になると思いますか.
(2) 2本を並列にしたこのバネにおもりをつけていった場合,おもりの重量W
[N] とバネの伸びの関係を推定してグラフに表しなさい.
問題 2. 問題 1に関して実験を行った結果を下表に示します. この値をグラフ に記入して,両者を比較してください.
表 長さ L= 30 [cm] のバネを2本並列にした場合 おもりの重量 W [N] バネの伸び x[cm]
0 0
2.0 1.2
4.0 2.2
8.0 4.8
12.0 7.2
問題 3. 問題 2の実験結果から比例定数 k を求め, x とW の関係式を求めな さい. また,このバネで,おもりを 14.0 [N] としたとき,バネの伸びはどれくら いになるか求めよう.