第 7 章 常用対数の計算 93
7.3 対数の応用
7.3.1 星のお話
7.3. 対数の応用 103 逆に星の明るさのお話のように,小さな数字を表すときも便利です. 1
1000000 の場合,
1
1000000 = 10−6 常用対数をとると ( 底の10は省略できるのでしたね),
log 1
1000000 =−6 このように, −6 という数字で表せます.
どうでしょう. 対数を使うとゼロの数にまどわされなくてすむことがわかり ますね.
星の等級も対数を使って表しています. どのように対数が用いられているか をこれから見ていきましょう.
1等星を基準にとって, 10等級増えた場合,つまり11等星を例にとって考え てみましょう. 先に述べたように明るさは 1
10000 になるのですから
11−1 =k×log 1 10000
ただし, kは等級と明るさの関係を示す定数とします. 左辺はこの場合, 10等級 増えたことを表し,右辺で log 1
10000 は log 1
10000 =−4 となります. 以上のことから上式は
10 =k×(−4) k=−2.5 となります.
では,すべての場合に対応できる式を考えてみましょう.
m を星の等級, F を 星の明るさ,そしてF0 を 1等星の明るさ とすると, m−1 =−2.5 log F
F0 という式が成り立ちます.
さて,金星が「宵(よい)の明星」,「明(あ)けの明星」と呼ばれ,その明るさ から,よくUFO などと間違えられたりすることがあるのは皆さんもよくご存知 でしょう. 時には −4等級にも達し, 1等星よりも明るくなるのです. 少々奇異 な感じを受けるかもしれませんが, 1等星より明るい星はマイナスの等級になる のです.
では,たとえば −4 等級であったときに,これが1等星の何倍の明るさである かを調べるために,先の式にあてはめてみましょう. すると,
−4−1 =−2.5 log F F0
−5 =−2.5 log F F0
log F
F0 = −5
−2.5 = 2
1等星の何倍の明るさか,ということですから,ここでは F F0
を求めたいとい うことになります. よって,
log F F0
= 2 F
F0 = 102 ( logX =a は X= 10a なので ) 1等星の100倍の明るさになることがわかりました.
ところで,星の明るさを考えるときは,距離を考えることも大切です. 私たち に届く星の明るさは,星からの距離の2乗に反比例します. 当然ですが,遠いほ ど暗く見えるわけですね.
簡単にするため, 2つの星が等距離では等しい明るさであるとしましょう. それでは右の図を用いて話を進めます.
先に述べた明るさと距離の関係より, F1
F2 = D22 D12 =
D2 D1
2
= D1
D2
−2
となります. また,
m1−1 =−2.5 log F1
F0 m2−1 =−2.5 log F2
F0
ですから
m1−m2 =−2.5×
log F1
F0 −log F2 F0
7.3. 対数の応用 105 となります.
さらに上式において対数の性質 log x
y = logx−logy を考えると m1−m2 = −2.5× {( logF1−logF0)−( logF2−logF0)}
= −2.5×( logF1−logF2)
= −2.5 log F1
F2 と変形できました. ここに F1
F2 = D1
D2 −2
の関係を代入すると
m1−m2 =−2.5 log D1
D2
−2
となります. logXn=nlogX という対数の性質がありましたね.すると上式は, m1−m2 =−2.5×(−2) log D1
D2 = 5 log D1
D2 これで等級差と距離の関係が求まりました.
対数を使えば,宇宙のことをもっと調べられそうですね. 対数はいろいろなと ころで使われています. それだけ広い範囲の数が,私たちのまわりで使われてい るということなのです.
例題 1. 地球から4.85×10−6 [pc] (パーセクparsec : 天文学で距離を表す単位) のところにある太陽は −26.7等級に見えます.もし,太陽が 10 [pc]の距離にあ るとすれば,何等級に見えますか. (本当は,距離を表すのは[m]を使うべきです が,なにしろ宇宙は広いので計算を簡単にするため,ここでは [pc]を使います.) ただし, log 4.85 = 0.6857とします.
解答
m1 =−26.7 [等級], D1= 4.85×10−6 [pc], D2 = 10 [pc]
m2 を求めたいので m1−m2= 5 log D1 D2
の式を使いましょう. すると
m2 =m1−5 log D1 D2
となり,値を代入すれば
m2 = −26.7−5 log( 4.85×10−7)
= −26.7−5 ( log 4.85−7 )
= −26.7−5 ( 0.6857−7 )
= 4.9 [等級] となります.
コーヒー・ブレーク
明るい? 暗い? 私たちの太陽
10 [pc]の距離に置いたときの恒星の等級を絶対等級 といいます. 例題1か
らわかるように,私たちにとって明るい太陽も意外に暗い星なんですね! ちなみに, 1 [pc] = 3.0857×1016 [m]です.
( P. 113の章末の問題4の表の値と比べてみましょう)
練習 10. 等距離に置いたときの星の明るさが同じとして,距離を10倍離したと き,この2つの星は何等級の差になりますか.