第 4 章 のと里山海道で実施された ASR 劣化橋脚に対する大規模更新の事例検証
4.2 のと里山海道(旧能登有料道路)の概要
4.2.2 のと里山海道(旧能登有料道路)におけるこれまでの ASR 対策
(1)ASR劣化に至る概要9)
のと里山海道における橋梁の建設時期は,能登地区での社会資本構築の増加に伴い,能 登半島北部で産出する第三紀中新世以降に生成した新鮮ないしやや変質した安山岩がコン クリート用砕石として流通した昭和40年代後半から50年代に集中しており,1990年(平 成2年)頃から橋梁の下部構造の一部にASRによる劣化が確認されるようになった。また,
1991年(平成 3年)にスパイクタイヤの使用が禁止されて以降,路面凍結防止の目的で散 布している多量の凍結防止剤(NaCl)の影響も加わり,ASR によるひび割れ,内部劣化お よび鉄筋破断など重大な劣化形態が発見されるようになった。そのため,全国に先駆けて ASR により劣化した橋梁の点検,調査・診断および補修,補強対策の検討,さらには対策 効果を検証するためのモニタリングによるデータ収集などが進められてきた。
(2)これまで実施した点検および調査の経緯9)
のと里山海道では,有料道路時代の1994年(平成6年)~1995年(平成7年)にかけて
『土木研究所資料-橋梁点検要領(案)』(昭和63年7月)に準じて橋梁下からの外観目視 点検を実施している。その後,2001年(平成13年)に同要領に準じた近接もしくは遠望目 視点検および点検ハンマーを用いた打音調査を実施している10)。その際,図-4.2.2に示す19 橋の下部構造でASRによる劣化が確認された。また,2002年(平成14年)からは1回/
年の頻度で巡回点検を行っており,2007年(平成19年)の能登半島地震後には『橋梁定期 点検要領(案)』(平成16年3月 国土交通省 国道・防災課)に準じた全橋点検を実施して いる。さらに,劣化が著しい下部構造からはコンクリートコアを採取し,室内試験を実施 している。主な実施項目はコアによる圧縮強度・静弾性係数試験,残存膨張量試験(アル カリ溶液浸漬法(カナダ法),飽和塩化ナトリウム溶液浸漬法(デンマーク法)),塩化物イ オン量およびコアの薄片研磨試料の偏光顕微鏡観察などである。表-4.2.1に ASR 劣化橋梁 19橋の概要を示す。
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図-4.2.2 のと里山海道のASR劣化橋梁位置図9)
橋 台 橋 脚
A 2径間単純プレビーム合成桁橋 逆T式 二柱式ラーメン 47.200 1981(S56). 6
B
A1~P1:単純ポステンT桁橋 P1~A2:5@単純RC中空床版橋 +4@3径間連続門型ラーメン橋
逆T式 二柱式門型ラーメン 277.000 1980(S55). 3
C 4径間連続PCTラーメン橋 ラーメン式 T形(矩形柱中空) 305.000 1978(S53). 9
D 3径間連続鋼I桁橋 A1:逆T式
A2:ラーメン式 T形(矩形柱) 89.000 1981(S56).12
E 3径間連続上路式トラス桁橋 ラーメン式 壁式(矩形柱) 195.000 1982(S57).11
F 8径間単純ポステンT桁橋 逆T式 T形(矩形柱) 294.000 1981(S56). 7
G 4径間単純鋼I桁橋 逆T式 T形(矩形柱) 150.000 1979(S54). 9
H 6径間単純鋼I桁橋 逆T式 T形(矩形柱) 200.000 1978(S53).11
I 9径間単純ポステンT桁橋 逆T式 T形(矩形柱中空) 320.000 1980(S55). 3
J A1~A2:2径間連続鋼I桁橋 A2~A3:単純鋼I桁橋
A1,A3:逆T式
A2:ラーメン式 T形(円柱中空) 146.500 1979(S54). 9
K 3径間連続上路式トラス桁橋 ラーメン式 I 形 206.000 1978(S53). 7
L 4径間連続門型RCラーメン橋 な し 二柱式門型ラーメン 72.000 1977(S52). 5
M 9径間単純プレテンT桁橋 逆T式 P4以外:T形(矩形柱)
P4:T形(小判柱) 192.000 1980(S55). 2
N A1~P1,P2~A2:単純鋼I桁橋
P1~P2:単純上路式トラス桁橋 逆T式 壁式(小判柱) 135.000 1975(S50).12
O 2径間単純鋼I桁橋 A1:ラーメン式
A2:扶壁式 T形(矩形柱中空) 105.000 1978(S53). 5
P A1~PA1:単純プレテンT桁橋 PA1~A2:4径間連続Tラーメン橋
A1:逆T式 A2:箱 式
PA1:壁式(矩形柱)
P1~P3:矩形柱中空 430.000 1978(S53). 6
Q 3径間連続RCラーメン橋 な し 二柱式門型ラーメン 43.200 1976(S51).12
R 単純ポステンT桁橋 逆T式 T形(矩形柱) 57.000 1976(S51).12
S 2径間連結プレテン床版橋 逆T式 壁式(矩形柱) 32.500 1978(S53). 3
橋 梁 名
下 部 構 造
上 部 構 造 完 成 年 月
橋 梁 形 式
橋 長
(m)
表-4.2.1 のと里山海道のASR劣化橋梁の概要9)
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(3) のと里山海道におけるASR劣化橋梁の概要11)-13) 1)建設された年代について
のと里山海道にて ASR による劣化を受けた 19橋(図-4.2.2参照)の建設年月は表-4.2.1 のとおり,1975年(昭和50年)から1982年(昭和57年)の間であり,1986年(昭和61 年)の『アルカリ骨材反応暫定対策』適用以前の橋梁である。
2)ASRの発生および鉄筋破断の内訳
多くのASR劣化橋梁が存在する柳田I.C以北の25橋を対象に,ASRにより劣化した下部 構造(橋脚・橋台)でのASRの発生割合は,対橋梁総数では66.4%,対橋脚総数では70.4%,
対橋台総数では59.6%となっている。
3)橋脚の鉄筋破断の状況および対策工
能登有料道路のASR劣化橋梁19橋のうち,10橋の橋脚で鉄筋破断を確認しており,橋 脚部位ごとの鉄筋破断状況および対策工は表-4.2.2のとおりである。主な破断箇所は張出ば りの主鉄筋,スターラップおよび折曲げ鉄筋の曲げ加工部,柱では帯鉄筋の曲げ加工部,
フーチングでは上面主鉄筋の曲げ加工部である。対策工については橋脚においては耐震補 強として実施したPCおよびRC巻立てと同時に施工したものや橋脚横梁において,全面打 替えを行ったものもあった。また,フーチングについては断面増厚を行い,周囲をPCで締 付けを実施したものもあった。さらに,橋梁の構造変更をともなう対策を実施した橋梁も あった。
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表-4.2.2 のと里山海道での鉄筋破断が確認された橋梁および破断箇所7)
箇所 径
A1橋台
(逆T式)
たて壁
(橋座部)
2005
(H17) 橋 座 筋 D16 ・添え筋溶接
・部分打替え 2005
(H17) スターラップ D19 2007
(H19) 下面主鉄筋 D22 フーチング
(隅角部)
2007
(H19) 上面主鉄筋 D19 ・添え筋溶接
・部分打替え はり
(橋座部)
2006
(H18) 橋 座 筋 D16 ・断面修復
(柱RC巻立て工同時施工)
フーチング
(隅角部)
2007
(H19) 上面主鉄筋 D25 ・断面増厚
(貫通PC鋼材設置)
F 8径間単純 ポステンT桁橋
1981 (S56)
A1橋台
(逆T式)
たて壁
(橋座部)
2004
(H16) 橋 座 筋 D16 ・断面修復
(落橋防止工同時施工)
スターラップ D19 下面主鉄筋 D25 スターラップ D19 下面主鉄筋 D25 H 6径間単純鈑桁橋 1979
(S54)
P1橋脚
(T形(矩形柱))
フーチング
(隅角部)
2007
(H19) 上面主鉄筋 D19 ・添え筋溶接
・部分打替え 柱
(隅角部)
2007
(H19) 帯鉄筋 D16
・添え筋溶接
・断面修復
(柱RC巻立て工同時施工)
フーチング
(隅角部)
2007
(H19) 上面主鉄筋 D19 ・添え筋溶接
・部分打替え スターラップ D19
上面主鉄筋 D32 下面主鉄筋 D25 上面主鉄筋 D16 側面鉄筋 D16 スターラップ D19 上面主鉄筋 D32 下面主鉄筋 D25 柱
(隅角部)
2007
(H19) 帯鉄筋 D16
・添え筋溶接
・断面修復
(柱RC巻立て工同時施工)
フーチング
(隅角部)
2007
(H19) 上面主鉄筋 D19 ・添え筋溶接
・部分打替え スターラップ D16
折曲げ鉄筋 D29 上面主鉄筋 D29 フーチング
(隅角部)
2007
(H19) 上面主鉄筋 D19
・添え筋溶接
・部分打替え
・断面増厚 たて壁 2007
(H19) 側面鉄筋 D16 ・添え筋溶接
・断面修復 フーチング
(隅角部)
2007
(H19) 上面主鉄筋 D19 ・添え筋溶接
・部分打替え A3橋台
(逆T式)
フーチング
(隅角部)
2007
(H19) 上面主鉄筋 D16 ・添え筋溶接
・部分打替え 橋 座 1994
(H6) 橋 座 筋 D16 ・添え筋溶接
・断面修復 頂 版 2000
(H12) 側面鉄筋 D16 ・添え筋溶接
・断面修復 M 9径間単純
プレテンT桁橋
1980 (S55)
P6橋脚
(T形(矩形柱))
フーチング
(隅角部)
1999
(H11) 上面主鉄筋 D16 ・添え筋溶接
・断面修復 O 2径間単純鈑桁橋 1978
(S53)
P1橋脚
(T形(矩形柱中空))
はり
(張出し部)
2001
(H13) スターラップ D16 ・はり全面打替え P 単純プレテンT桁橋+
4径間連続PCTラーメン橋 1978 (S53)
PA1橋脚
(壁式(矩形柱))
フーチング
(隅角部)
2007
(H19) 上面主鉄筋 D25 ・添え筋溶接
・断面修復 P1
(二柱式門形ラーメン)
フーチング
(隅角部)
2007
(H19) 上面主鉄筋 D22 ・添え筋溶接
・断面修復 P4
(二柱式門形ラーメン)
フーチング
(隅角部)
2007
(H19) 上面主鉄筋 D22 ・添え筋溶接
・断面修復 R 単純RC床版+
単純ポステンT桁橋
1976 (S51)
P2橋脚
(T形(矩形柱))
フーチング
(隅角部)
1998
(H10) 上面主鉄筋 D16 ・断面増厚
(構造変更)
計
Q 3径間連続 門型RCラーメン橋
1976 (S51)
13橋 29部位
・添え筋溶接
・断面修復
A2橋台
(ラーメン式)
K 3径間連続 上路式トラス橋
1979 (S54)
A1橋台
(ラーメン式)
J 2径間連続鈑桁橋+
単純鈑桁橋
1979 (S54)
P1橋脚
(円柱中空)
はり
(張出部)
2005 (H17) P3橋脚
(T形(矩形柱中空)) はり 2003
(H15) ・はりの全面打替え
I 9径間単純 ポステンT桁橋
1979 (S54)
P1橋脚
(T形(矩形柱中空))
P2橋脚
(T形(矩形柱中空))
はり
P4橋脚
(T形(矩形柱中空))
2001
(H13) ・はりの全面打替え
フーチング
(隅角部)
2004 (H16)
・断面増厚
(プレストレス導入)
はり
(張出部)
2000
(H12) ・張出部の全面打替え
P2橋脚
(T形(矩形柱))
はり
(張出部)
2001
(H13) ・張出部の全面打替え
E 3径間連続 上路式トラス橋
1982 (S57)
P2橋脚
(壁式(矩形柱))
G 4径間単純鈑桁橋 1979 (S54)
P1橋脚
(T形(矩形柱))
・添え筋溶接
・部分打替え 橋
梁 名
橋梁形式 完成
年度
鉄筋破断 部 材 対策工
(形 式)
部 位
(箇 所)
確認 時期 (年度)
曲げ加工部に破断 が確認された鉄筋
D 3径間連続鈑桁橋 1981
(S56) P1橋脚
(T形(矩形柱))
はり
(張出部)
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