第 3 章 能登地方で使用された河川産骨材のアルカリシリカ反応性と外来塩分環境下におけ
3.5 結 論
本章では,石川県および富山県にて使用されてきたコンクリート用骨材のアルカリシリ カ反応性を調査するとともに,近年実施された橋梁およびトンネル覆工コンクリートの詳 細点検結果と使用環境条件を基にASR劣化度の特徴を整理し,それらの関連性について検 討した。さらに,多種の点検手法を採用し,それら手法の補修工法選定に対する有用性を 検証した。また,簡易なASR診断手法の1つとして,酢酸ウラニル蛍光法に代わる方法と して,ゲルフルオレッセンス法を採用し,ASR の有無を判定する上での有効性について調 査した。
本章より得られた主要な結果を以下に示す。
(1) 同一の施工時期でほぼ同じ産地の骨材を使用した異なる環境にある2つの橋梁を調 査した結果,ASR劣化には差が認められた。この理由として,海岸からの飛来塩分 の影響が考えられ,卓越した風向にある橋梁では,コンクリート中の塩化物イオン の濃縮量が多く,ASR劣化が大きい傾向を示した
(2) 簡易なASR診断手法の1つとして,酢酸ウラニル蛍光法に代わる方法として,低濃 度の酢酸とウラニルを含む希釈酢酸ウラニル溶液を用いて判定を行うゲルフルオレ ッセンス法を採用した。本調査においてASRの有無を判定する上で,容易にかつ早 期に結果を出すことができ,ASRの有無を判断するには,非常に有効であった。
(3) 自然電位差法により橋梁下面の調査を行ったところ,鉄筋の腐食の可能性と外観点 検結果の状況がほぼ一致した。このため,自然電位差を用いて,補修範囲の決定す るための1つの手法として使用できた。
(4) 橋面でのひび割れ位置と鉄筋の腐食範囲との関連性が見られた。このため,橋梁の 点検において,橋梁下面だけではなく,路面の状況を点検することが,鉄筋の腐食 等と関連性が認められ,重要であることが判明した。
(5) ASR劣化の進行度が異なっている同一トンネルの両坑口部において,ASR劣化が進 んでいる坑口側では最大風速時の風向が卓越し,コンクリート中にて4kg/m3を超え
- 83 -
る高い濃度の塩化物イオンが検出された。このことから,ASR劣化を促進させる要 因として高い塩化物イオン濃度が関与していたと考えられる。
(6) トンネル覆工部におけるASR劣化として表面には現れずに,内部で進行していた。
この理由として,トンネル内の湿度と中性化が関係していると考えられた。さらに 覆工部のASR劣化度の違いは覆工コンクリート内部の湿度分布が影響していた。こ のため,構造物の管理者としてはトンネル坑口等の調査結果によりASRが疑われる 場合,トンネル覆工コンクリートの点検では表面の外観だけで劣化の診断を行うこ とは覆工内部のASRを見逃す危険性があることが推察された。
(7) 終点側坑口部で,コアにより採取した薄片を用いて,偏光顕微鏡観察を行った結果,
頁岩粒子の膨張ひび割れが見られた。ひび割れにはアルカリシリカゲルが充填し,
骨材粒子内からセメントペーストへと進展し,粒子に接する気泡もアルカリシリカ ゲルに充填されていた。また,アルカリシリカゲルの一部はロゼット状に結晶化し ていることが確認できた。
(8) 覆工コンクリートの劣化部から採取したコアを用いて蛍光顕微鏡観察を実施した結 果,コアの全面に終点側坑口部と同様に深さ方向に対して鉛直に層状に約30mm間 隔でひびわれが生じていた。ただし,ひび割れは表面から約30mmの間ではほとん ど見られず,表面にはほとんど表れていない状況である。拡大による観察にて,安 山岩を貫通するひび割れが見られ,また,砂を貫通するひび割れも発生していた。
蛍光顕微鏡観察は肉眼では見えないひび割れを発見するだけでなく,骨材を貫通す るひび割れや骨材から伸びたひび割れをとらえることができた。さらに,覆工コン クリートの表面部では若干のひび割れやポップアウトがあるのみで通常の点検では ASR が生じていることが推察することができない状況であるが,実際には内部で ASRが進行していることがあった。
- 84 - 参考文献
1) 国土交通省:アルカリ骨材反応抑制対策(土木構造物)実施要領,2002.
2) 鳥居和之,野村昌弘,南善導:北陸地方の川砂のアルカリシリカ反応性とアルカリ溶 出性状,セメント・コンクリート論文集,No.60,pp.390-395,2006.
3) 津田 誠,麻田正弘,参納千夏男,鳥居和之:富山産河川砂利のアルカリシリカ反応 性と外来塩分環境下でのASR劣化構造物の特徴,コンクリート工学年次論文集,Vol.37,
No.2,pp.1363-1368,2015.
4) 大代武志:河川産骨材のアルカリシリカ反応性とASR劣化橋梁の維持管理に関する研 究,金沢大学学位請求論文,2009.
5) 石川県ASR対策検討委員会資料
6) ASTM C 1260 : Standard Test Method for Potential Alkali Reactivity of Aggregates-Mortarbar Method,Vol.04.02,pp.40-46,2000.
7) 野村昌弘,平 俊勝,鳥居和之:コアによるコンクリート構造物のアルカリシリカ反 応の判定,コンクリート工学年次論文集,Vol.23,No.1,pp.1147-1152,2001.
8) 掛布眞司,山本満明,鳥居和之:ASTM C 1260による骨材のアルカリシリカ反応性と コアの残存膨張性の評価,コンクリート工学年次論文集,Vol.23,No.2,pp.601-606,
2001.
9) 参納千夏男,丸山達也,山戸博晃,鳥居和之:ゲルフルオレッセンス法によるASR簡 易診断手法の開発,コンクリート工学年次論文集,Vol.35,No.1,pp.973-978,2013.
10) 小林一輔,森 弥弘,野村謙二:圧縮載荷試験によるアルカリ骨材反応の診断方法,土 木学会論文集,No.640,V-18,pp. 151-154,1993.
11) 独立行政法人土木研究所技術推進本部構造物マネジメント技術チーム,日本構造物診 断技術協会:自然電位法による鉄筋腐食技術に関する共同研究報告書,2007.
12)公益社団法人日本コンクリート工学会ASR診断の現状とあるべき姿研究委員会:ASR
診断の現状とあるべき姿研究委員会報告書,2014.
13)野村昌弘,鳥居和之,青山實伸:北陸地方の河川産骨材を使用したコンクリートのア ルカリシリカ反応性の評価法の開発,材料,Vol.53,No.10,pp.1065-1070.
14)久保善司,平 俊勝,野村昌弘,鳥居和之:ASR により損傷したコンクリート構造物
の内部湿度分布について,コンクリート工学年次論文集,Vol.24,No.1,pp.1635-1640,
2013.
- 85 -