第 4 章 のと里山海道で実施された ASR 劣化橋脚に対する大規模更新の事例検証
4.3 対象橋梁および補強工法の概要
4.3.4 対象橋梁の補修・補強の概要
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図-4.3.9 損傷・補強状況概要図(I橋)
P5 P6
P7
P8 P4 P3 P2 P1 P1~P4 ASR劣化橋脚
PC巻立て補強 RC巻立て補強
プレキャストパネル
巻立て厚=250mm
主鉄筋:D32, 帯鉄筋:D22 巻立て厚=主鉄筋:D41,550mm
帯鉄筋:D22, PC鋼より線1S17.8 RC巻立て補強橋脚 PC巻立て補強橋脚
図-4.3.10 橋脚補強概要図(I橋)
図-4.3.11 RC橋脚補強概要図(I橋)
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図-4.3.12 フーチング補強概要図(I橋P2橋脚)側面図
図-4.3.13 フーチング補強概要図(I橋P2橋脚)平面図
- 111 - (2) P橋の補修概要18)
P橋は昭和53年に建設され,昭和43年の道路橋下部構造設計指針に基づいて設計された,
単純プレテンション方式T桁+4径間連続Tラーメン橋梁で既設橋脚の断面形状は矩形断 面である。本橋梁におけるPA1橋脚はT桁橋とTラーメン橋の掛け違い部の橋脚である。柱 隅角部に軸方向に沿ったひび割れが生じ,また,地震時保有水平耐力法ならびに動的解析 による耐震性能照査を行い,耐震性能を満足しないことがわかった。そこでRC巻立て,PC 鋼材巻立て,鋼板巻立ての工法比較の結果,ひび割れに対する一体性や経済性に優れる,
PC鋼材巻立て工法により補強が実施された。
PC鋼材巻立て工法の設計における特徴として以下の点がある。
① 設計の基本的な考え方は道路橋示方書に準拠し,保有水平耐力法による検討を実施する。
② 既設橋脚コンクリートの圧縮強度,静弾性係数については必要に応じて実構造物と合わ せた値に低減する。
③ 橋脚のじん性向上はプレキャストパネル内に設けられたPC鋼材によるものとし,耐力の 向上はパネル内側に設ける軸方向鉄筋により確保する。
④ PC鋼材の有効プレストレス力は降伏点荷重の1/3とする。これは耐震性向上の観点から
設定された値である。
PC鋼材巻立て工法はASRによる膨張力に対して既設橋脚をPC鋼材で締め付けること(プ レストレス導入)により,膨張を抑制する効果を発揮する。そこで,プレストレスによる 断面中心方向の圧縮応力を算出した。拘束力の算出は以下の式で求めた。
σ=P/(a・R)
σ:プレストレスによる中心方向圧縮応力度(N/mm2) P:プレストレス力(N)
a:PC鋼材の配置ピッチ(mm) R;PC鋼材の曲げ半径(mm)
橋脚の補強断面図を図-4.3.14に示す。また,施工中の各段階の写真を写真-4.3.24~写真 -4.3.27に示す。
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図-4.3.14 PC鋼材巻立て補強断面図(P橋)
写真-4.3.24 PC鋼材巻立て補強施工(I橋)
軸方向鉄筋建込み状況
写真-4.3.25 PC鋼材巻立て補強施工(I橋)
プレキャストパネル架設状況
写真-4.3.26 PC鋼材巻立て補強施工(I橋)
PC鋼材の緊張状況
写真-4.3.27 PC鋼材巻立て補強施工(I橋)
二次コンクリート打設状況
- 113 - (3)O橋の補修概要
O橋は昭和53年に建設され,昭和43年の道路橋下部構造設計指針に基づいて設計された。
また,O橋は橋脚高が42mと高く,効果的かつ現実的な補強を直ちに実施することが困難で あったため,当面,ひび割れの進展をモニタリングにて監視することにした。しかし,そ の後も柱頭部のひび割れ幅が増加し続けており,ASRによる劣化は収束していないことが判 明したことから,柱の鋼板巻立てと同時に梁の打替工を実施した。対象路線は能登と加賀 を結ぶ重要路線で,緊急輸送路にも指定されていることから長期間の通行止めは不可能で あった。このため,打替え時には通行止めを行わない施工が必須となり,橋脚高が高いが,
検討の結果,通行車両を通しながらの施工が可能との判断で行うこととした。その施工方 法は橋脚の両側に仮支柱(ベント)を設置して,設置後上部工からの荷重をベントに切り 替え,その後橋脚横梁を撤去し,配筋を行いコンクリートの打設し,養生後に上部の荷重 を新たな橋脚に受け替えて,最後にベントの撤去を行った。
図-4.3.15に補強全体図を示す。その際,図-4.3.16に示すように柱頭部では,既設柱コンク リートの残存膨張による打替えた梁へのひび割れの進展防止を目的としてPC鋼棒による梁 と柱との接合箇所の締付け(プレストレス導入)を実施した。図-4.3.17に柱頭部に設置した
PC鋼棒の詳細図を示す。PC鋼棒はφ26mmのタイプを使用した。さらに図-4.3.18に示すとお
り,PC鋼棒の配置は橋軸方向および橋軸直角方向それぞれ4列とした。写真-4.3.28に鋼板 巻立て補強完成および写真-4.3.29に橋脚柱頭部のPC設置状況について示す。
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図-4.3.7 PC鋼材巻立て補強断面図(P橋)
図-4.3.17 PC鋼棒詳細図(O橋)
P C 鋼棒
P C 鋼棒 打替え
鋼板巻立て補強
図-4.3.16 鋼板巻立て補強概要図(P橋)
図-4.3.15 鋼板巻き立て補強全体側面図(O橋)
- 115 - 写真-4.3.28 鋼板巻立て補強完成後状況
(O橋)
写真-4.3.29 鋼板巻立て補強完成後柱頭 部PC設置状況(O橋)
橋軸方向 橋軸直角方向
図-4.3.18 橋脚柱頭部PC鋼棒設置図(O橋)
- 116 - (4)E橋の補修概要
E橋は昭和57年に建設され,昭和43年の道路橋下部構造設計指針に基づいて設計された。
E橋は前述の写真-4.3.16,写真-4.3.17に示すのとおり,ASRに伴い網の目状にひび割れ が発生しており,圧縮・静弾性係数試験の結果,特にひび割れの発生が多いはり中央部で は建設当時の設計基準強度の約 5 割しかなかった。さらに,飽和塩化ナトリウム溶液浸漬 法による残存膨張量試験の結果,養生日数が91日間で,橋脚の柱部では0.13%で膨張性は 不明確な範囲とされている0.1%~0.4%の中となった。このため,ASR対策と耐震補強対策 を兼用して,橋脚およびフーチングについては鉄筋コンクリートによる巻立てもしくは増 厚工法を採用した。
増し厚だけで,耐力(許容応力度)を確保するためには,試算の結果,既設厚さ2.5mに 対して6.0mの増し厚が必要となり,現実的ではない。フーチングは耐震補強においてレベ ル2地震動を考慮した対応として,RC巻立て工法では鉄筋が高密度配筋になり,鉄筋間隔 の確保が困難となることが判明した。
このため,橋軸方向の曲げ耐力を満足する増し厚1.0mを確保したうえで,橋軸直角方向 には別途,対策方法の検討を行った結果,高強度鉄筋よりさらに降伏点の大きいPC鋼線を,
緊張せずに鉄筋扱いとして用い,試算した結果,削孔間隔は@900にすることができた。
PC鋼線の許容応力度は,道路橋示方書・同解説(Ⅲコンクリート橋編)22)に規定がある が,問題となるのは,PC鋼線を緊張なしで,鉄筋扱いで用いるため,コンクリートのひび 割れ幅に対する配慮を,PC鋼線の許容値に考慮するかどうかである。この点について,検 討対象が地震時であり,荷重の作用する時間が短く,コンクリートのひび割れ等の影響を 考慮する必要が少ないことから,PC鋼線の許容値を設定するにあたり,ひび割れに対する 配慮は考えないものとした。
PC鋼線の許容応力度を設定するにあたり,鋼管・コンクリート複合構造橋脚設計マニュ アル23)を参考にし,レベル1地震時の許容引張応力度は,道路橋示方書・同解説(Ⅲコン クリート橋編)22)の規定値,降伏強度の 90%以下であるσpa =1440N/mm2 に対してかな り安全側のσpa=880N/mm2と規定した。
橋軸方向は,既設鉄筋がD29@150とD25@150の2段でありレベル2地震動までの耐力 が確保できることから,補強は行わない方針とした。
フーチングの補強方法は“できる限り既設を痛めない”を基本と考えており,削孔数を 減らすことができる,鉄筋扱いでPC鋼線を用いる工法で,補強を実施した。
補強設計図および補強時の施工写真を図-4.3.19,写真-4.3.30,写真-4.3.31に示す。施工手 順は掘削,均しコンクリート打設後既設フーチング削孔部のはつりおよび削孔を行い,そ の後既設コンクリート表面のチッピング,アンカーを設置し,フーチング補強の鉄筋組立 て,シース管取付,型枠設置後にコンクリートを打設し,PC鋼線を挿入,定着後にグラウ トの注入を行い,その後に柱部の補強を実施した19)。
- 117 - 写真-4.3.30 フーチング拡幅部シース管
設置状況(E橋)
図-4.3.19 橋脚およびフーチング耐震補強図(E橋)
橋軸方向
写真-4.3.31 フーチング拡幅部PC鋼線 設置状況(E橋)
- 118 - (5)R橋の補修概要
R橋は前述の写真-4.3.20~写真-4.3.23に示すのとおり,上部および下部,基礎構造とも,
ASRによるひび割れが発生していた。
建設後15年が経過したころから,橋梁の上部構造及び下部構造ともにASRによるコンク リートのひび割れが確認された。断面修復工事に着手した際の平成10年に橋脚のフーチン グの隅角部に写真-4.3.22に示す幅1cmの大きな亀裂が確認された。これはわが国で最初の 鉄筋破断の発見事例であった。はつり調査の結果より,写真-4.3.23 に示すように橋軸方向 上面の主鉄筋(D16)が曲げ加工部ですべて破断していた。このため,フーチング躯体のコ ンクリートの強度とASR劣化状況を把握するために,フーチング上面と下面より多くのコ アを採取し,コアによる室内試験を実施した。
コンクリートの圧縮強度はフーチング上面の表面付近で13~16MPa程度まで低下してい たが,表面より1m以深の試験可能なコアでは設計基準強度以上の強度があった。その一方,
フーチング下面では,試験位置に関わらず設計基準強度以上の強度があった。しかし,コ ンクリートの静弾性係数は,健全なコンクリートの30%~70%程度まで低下していた。
コンクリートの各種試験より,劣化原因は安山岩砕石によるASRであると判断できた。
これまで,土中部にあるフーチングは,温度変化を受けにくく,乾湿の変化も少ないので,
水分は十分に存在するにも係らず,ASR は比較的に発生しにくいと考えられていた。しか し,この橋梁ではアルカリシリカ反応性の高い安山岩砕石を使用していたために,コンク リートのアルカリ総量値が 2.4kg/m3程度にも係らず,ASR による過大な膨張が発生したも のと推定された。さらに,フーチング内の組立て筋や端部の囲み筋が不足していたので,
鉄筋による十分な拘束効果が発揮されず,主鉄筋の破断により躯体内部に大きな割れが進 展したものと考えられた。
橋脚及び橋台は昭和 51 年に建設され,昭和43 年の道路橋下部構造設計指針にて設計さ れていた。このため,ASRによる劣化に対する補修•補強対策と耐震補強とを同時に実施す ることとした20)。
本橋梁では,側径間部のRC床版橋にもASRによる著しい劣化が確認され,また,道路 橋示方書の変遷にともない,橋台の断面力も不足していた。このため,本橋梁のすべての 部材に対して,ひび割れ注入や断面修復または部分的な打ち換えの対策では橋梁全体の性 能回復は困難であると判断した。
そこで,既設下部構造の抵抗力を無視するとともに,ASR による膨張が今後も継続する ことを前提として,以下の 3 工法の対策について比較検討を行った。その結果,経済性と 施工性に最も優れた第2案を選定した。
第1案:全橋補修(既設構造利用)
第2案:橋脚補強及び側径間部にボックスカルバート(橋脚構造変更)
第3案:橋脚補強及び橋台新設(橋脚構造変更)
第 2 案では,図-4.3.20 に示すとおり,既設橋脚と橋台の中に新たにボックスカルバート