第 4 章 のと里山海道で実施された ASR 劣化橋脚に対する大規模更新の事例検証
4.3 対象橋梁および補強工法の概要
4.3.2 対象橋梁の選定と岩石・鉱物学的特徴
(1) 対象橋梁の選定および供用条件
図-4.3.1~図-4.3.5に対象橋梁の一般図および表-4.3.1に調査対象橋梁とそれら橋脚および 橋台のASR劣化状況と補修・補強工法を示す。対象橋梁の選定はPC 巻立て工法とRC巻 立て工法のASR抑制効果を検証,同一橋梁で比較するため,I橋を選定し,さらにPC巻立 て工法における橋脚の断面形状の影響を検討するために,長方形の橋脚断面を有する P 橋 を対象とした。さらに,鋼板巻立てによるASR抑制効果検証のため,O橋を選定し,フー チングへのASR対策の検証としてE橋を選定した。また,R橋にて構造変更によるASR劣 化橋梁の補強対策の検証を行った。調査対象は能登地方にほぼ同一時期に架橋されていた 供用30年以上が経過した橋梁であり,年間を通じて伸縮装置から凍結防止剤を含む路面排 水が漏水し,ASRが促進しやすい環境となっている。
(2) 対象橋梁の岩石・鉱物学的分析
表-4.3.2 に調査対象橋梁,それらの橋脚およびフーチングごとの使用骨材と ASR劣化度 の評価を示す。対象橋梁の粗骨材は,すべて奥能登門前産(剱地)砕石が使用されており,
細骨材は中能登産山砂もしくは富山県産川砂と中能登産山砂の混合したものである。参考 にほぼ同時期に施工されたのと里山海道の海浜部にて使用されている粗骨材は手取川産か 庄川産の河川産砂利であり,細骨材は手取川産もしくは常願寺川産が使用されていた。ASR 劣化度は海浜部とE橋を除き,ASR劣化度は目視レベルで「Ⅰ」の幅5mm以上の一方向に 卓越した連続的な割れが生じていた。
写真-4.3.2~写真-4.3.5 に橋梁ごとに採取し製作した薄片を用いた偏光顕微鏡観察結果を
示す。E橋は10~15mm程度の安山岩粒子が反応していた。ASRゲルが骨材からセメント
ペーストに激しく達し,ゲルスポットが認められるため,顕微鏡レベルでのASR劣化度は
「ⅰ」と判定した。I橋は5mm~20mm程度の安山岩粒子が反応していた。比較的大きなひ び割れ内に存在するゲルは,変質したため,外側は結晶化,内側は通常のゲルの 2 層構造 を成していた。顕微鏡レベルでの ASR 劣化度は「ⅰ」と判定した。O 橋は 10mm~15mm 程度の安山岩粒子が反応していた。ひび割れ内に存在するゲルは同様に 2 層構造を成して いた。顕微鏡レベルでのASR劣化度は「ⅰ」と判定した。P橋は0mm~13mm程度の安山 岩粒子が反応しているが,ひび割れやASRゲルを明確に判定できない。顕微鏡レベルでの ASR劣化度は「ⅱ」と判定し,外観レベルと異なる結果となった。
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図-4.3.1 I橋の橋梁一般図
図-4.3.2 P橋の橋梁一般図
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図-4.3.3 O橋の橋梁一般図
図-4.3.4 E橋の橋梁一般図
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図-4.3.5 R橋の橋梁一般図
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表-4.3.1 調査対象橋梁のASR劣化状況と補修・補強工法
対象橋梁 建設
年 補強年 下部工 形式
構造 高
柱断面
寸法 ASR劣化状況
帯鉄筋 の 状況
補修・補強工法
I 橋
P1 橋脚
S55 H14~
H16
張出式 橋脚
(基部 付近の み中空)
26.5m 3.8×
3.8m
柱基部付近の 隅角部に大き なひび割れ
破断
帯鉄筋復旧(フ レア溶接)+
RC巻立て補強 P2
橋脚 26.5m 同上
柱基部付近の 隅角部に大き なひび割れ
未確認 PC巻立て補強 P
橋 PA1
橋脚 S53 H19 壁式橋
脚 29.5m 10×
3m
柱隅角部に非 常に大きなひ び割れ
建設時 から接 続なし
PC巻立て補強
O 橋
P1 橋脚
S53 H17~
H18
中空式 張出式
橋脚 42.1m 4×4m 柱鉛直方向に
ひび割れ 健全 鋼板巻立て補 強+梁打替え A1
橋台
ラーメ ン式橋
台 5.9m 10.7×
0.6m
主鉄筋方向に
ひび割れ 健全 無し
(ひび割れ注 入のみ)
E 橋 P2
橋脚 S57 H19 張出式
橋脚 33.0
m
4.1×
9.1 m
柱横梁部およ びフーチング 上面にひび割 れ
破断
帯鉄筋復旧+
柱:RC巻立て 補強 フーチン グ:RC計算に よる巻立て補 強
R 橋
A1, A2
橋台 S51 H10~
H11
張出式 橋脚か ら橋台 に構造 変更
8.8 m -
フーチング隅 角部に大きな ひび割れ
破断
フーチング巻 立て補強+側 径間部にボッ クスカルバー トを構築し,構 造変更
表-4.3.2 橋梁ごとの使用材料とASR劣化度の評価
粗骨材 細骨材 目視レベル 顕微鏡レベル 海浜a 1973 橋 台
たて壁
川砂利 (手取川)
川砂 (手取川)
ASRによる
劣化なし -
海浜b 1972 橋 台 たて壁
川砂利 (手取川)
川砂
(手取川) Ⅲ ⅳ
海浜c 1972 橋 台 たて壁
川砂利 (庄 川)
川砂
(常願寺川) Ⅱ ⅱ
D 1981 橋 脚
フーチング
安山岩砕石
(剱 地) 中能登産山砂 Ⅰ ⅰ
E 1982 橋 脚
フーチング
安山岩砕石
(剱 地) 中能登産山砂 Ⅱ ⅰ
I 1979 橋 脚
フーチング
安山岩砕石 (剱 地)
富山県産川砂,
中能登産山砂混合 Ⅰ ⅰ
O 1977 橋 脚
はり
安山岩砕石 (剱 地)
富山県産川砂,
中能登産山砂混合 Ⅰ ⅰ
P 1977 橋 脚
柱
安山岩砕石 (剱 地)
富山県産川砂,
中能登山砂混合 Ⅰ ⅱ
Ⅰ:幅5mm以上の一方向に卓越した連続的な割れ
Ⅱ:幅1mm以上の広範囲にわたる連続的なひび割れ
Ⅲ:幅1mm未満の局部的な微細なひび割れ 目視による
ASR劣化度判定
橋梁名 建設年 部 位
使用骨材 ASR劣化度
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写真-4.3.2 E橋から採取したコンクリート薄片の偏光顕微鏡観察
写真-4.3.3 I橋から採取したコンクリート薄片の偏光顕微鏡観察
1.0mm 1.0mm
単ニコル 直交ニコル(鋭敏色検板使用)
単ニコル 直交ニコル(鋭敏色検板使用)
1.0mm 1.0mm
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写真-4.3.4 O橋から採取したコンクリート薄片の偏光顕微鏡観察
写真-4.3.5 P橋から採取したコンクリート薄片の偏光顕微鏡観察
単ニコル 直交ニコル(鋭敏色検板使用)
単ニコル 直交ニコル(鋭敏色検板使用)
0.5mm
1.0mm 1.0mm
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(3) 対象橋梁のコア採取による残存膨張量試験結果
1)コアの残存膨張量の測定方法
のと里山海道のように,NaCl として凍結防止剤散布により外部からのアルカリ供給の影 響を受ける構造物においては,ASR による残存膨張性を評価する方法として,最も適切な 試験法であると考えられている飽和塩化ナトリウム溶液浸漬法を用いた。この飽和塩化ナ トリウム溶液浸漬法の試験方法は,写真-4.3.6のようにコアに測定リングを設置後,50℃の 飽和NaCl溶液に浸漬し,写真4.5.7に示すように膨張量の経時変化を材齢91日まで測定す る。なお,残存膨張性の判定基準は,骨材のアルカリシリカ反応性の判定基準に準拠して,
材齢91日における膨張率が0.4%以上の場合は「残存膨張性あり」,0.1~0.4%の間の場合 は「不明確」,0.1%以下の場合は「残存膨張性なし」とした。
写真-4.3.6 残存膨張量測定用の供試体
写真-4.3.7 コンタクトゲージによる膨張量の測定
- 101 - 2)コアの残存膨張量の測定結果
橋脚のはり,柱,フーチング等の各部位から採取したコアの残存膨張量試験の結果を図
-4.3.6に示す。飽和塩化ナトリウム溶液浸漬法による残存膨張量の試験結果と目視調査によ
り判定したそれぞれの部位のASR劣化度との間には相関関係が認められた。すなわち,橋 脚の横ばりは雨水および路面排水を直接的に受ける部位であり,他の部位に比べてASRの 進行が速く,早期にコンクリートの膨張性が低下していた。特に,I橋,O 橋は ASR劣化 が最も顕著であり,膨張率の値が0.1%~0.2%まで低下しており,この結果だけでの判断と すると,路面からの雨水や凍結防止剤を含んだ水分からASRの反応が促進され,ASR反応 がし終わったように推察される。参考までに,両橋では,最終的には打替えを行っている。
一方,柱はばらつきが大きいのが特徴であった。柱は降雨の影響を比較的受けにくく,
鉄筋比も大きいのでASR劣化の進行が横ばりと比べて遅くなり,建設後20年以上経過して いても0.4%を超える膨張量を示すものがあった。フーチングはI橋のみのデータであるが,
地下水が豊富な立地条件を考慮すると劣化の進行が速く,横ばりと同程度まで膨張量が低 下していた。
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図-4.3.6 コアの残存膨張量試験の結果(デンマーク法)
-0.1 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
0 2 4 6 8 10 12 14
膨張率(%)
試験期間(週)
I 橋(22年経過)
O橋(24年経過)
膨張性なし 不明確 膨張性あり
(a)橋脚横梁
(b)橋脚の柱部
-0.1 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
0 2 4 6 8 10 12 14
膨張率(%)
試験期間(週)
G橋(21年経過)
H橋(21年経過)
I 橋(22年経過)
M橋(16年経過)
O橋(24年経過)
膨張性なし 不明確 膨張性あり
(c)橋脚のフーチング
-0.1 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
0 2 4 6 8 10 12 14
膨張率(%)
試験期間(週)
I 橋(25年経過)
膨張性なし
不明確
膨張性あり
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