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世界子供白書 2016

であろう。ある試算では、すべての低所得国が収益配分および保健セクターへの財政 配分に対して、より厳しい基準を満たそうとした場合、約 740 億米ドルの財政ギャッ プが生じるという。これは本質的に示唆的な数値にすぎないものの、2030 年の子ど もと母親の保健ターゲットを実現するために要するであろう、国際的な追加公的融資 の概算値を示すものとなる

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貧困層向けのサービスに財政を割り当て、貧困者たちからは費用を取り立てず、保 険でカバーする方法は、多少の成功を収めている。しかし、これまでの経験では、対 象を絞って財政を割り当てる方法は、サービスの利用にわずかしか影響を及ぼさない ことが分かっている。国民全体にわたってリスクを分散することができる、既存の国 民健康保険制度に貧困世帯を加入させられるよう財政を使うことの方が、好ましい結 果が得られている

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例えば、ブラジルの家族保健プログラムでは、当初立場の弱い人たちが住む地域に 重点を置き、1998 年から 2010 年までの間にサービス対象者を 1,060 万人から 1 億人まで拡大した。このプログラムでは、同国の地方自治体の 90% 以上に対して、

利用時に費用がかからない保健ケアへのアクセスを提供している

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タイの国民皆保険スキーム(UCS)では、多数の保険未加入者を国家プログラムの 保護下に置くことで公平性を強化し、貧困層の間における「高額医療費」の負担を大

コラム 1.3.バングラデシュが示す、子どもの生存率改善の 持続的前進における課題

近年バングラデシュでは、5 歳未満児の死亡率の低減に着実 な前進が見られる。その一部は、コミュニティ・レベルでの保 健支援の拡大によってもたらされている。こうした前進がさら に加速するか否かは、妊産婦ケアおよび専門技能を有する保健 従事者による立会いのより広範かつ公平な提供にかかってい る。

低いベースからスタートした同国は、どちらの提供範囲もす でに急速な拡大を成し遂げている。保健施設で生まれる子ども の割合は、2000 年から 2014 年の間に 8% から 37% まで増 加した。また、専門技能を有するサービス提供者による妊産婦 ケアの対象範囲も、33% から 64% に拡大した。

しかしながら、依然として大きな格差が残っている。専門技 能を有する保健従事者による妊産婦ケアへのアクセスにおける 貧富間の格差は、ごくわずかしか縮小されていない。ケアを利 用できる女性の比率は最貧困層の女性が 36% であるのに対し、

最富裕層の女性は 90% である。2014 年に専門技能を有する 保健従事者による立会いがあった女性の貧困層対富裕層の比率 は約 1 対 4 であり、シレット地区およびバリサル地区が国内

の他の地区から大きく後れをとっていた。また 2014 年には、

推奨される最低 4 回の妊産婦ケアを受けた女性は 3 分の 1 に 満たなかった。

一方で前向きな話題として、バングラデシュでは、保健施設 での出産については公平性の実現に向けて前進している。

2004 年、保健施設で出産した女性の最貧困層対最富裕層の比 率は 1 対 12 であったが、2014 年までにその比率は 1 対 4 にまで改善された。

妊産婦および子どもの健康の改善を持続させるために、異な る社会集団間や経済集団間における格差のさらなる縮小が必要 であるとの認識に基づき、政府は主要な支援に対する一連の公 平性目標を導入している。それらの目標は、低所得コミュニ ティ、都市部のスラム地区、実績の低い行政区、少数民族が居 住している地域(バングラデシュ南東部のチッタゴン丘陵地帯 など)におけるサービスの対象範囲をモニタリングするための 基準となる。これらすべてが総合的にモニタリングされれば、

同国の最も立場の弱い母親や子どもたちに対する公平性の実現 に向けた潜在的道筋を示すことになる。

出典:バングラデシュ国立調査研修所(NIPORT)、Mitra and Associates、ICF International「バングラデシュ人口統計健康調査 2014 年:主要指標」ダッ カ(バングラデシュ)およびメリーランド州ロックビル(米国)、2015 年。

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世界子供白書 2016 子どもの健康:公平な人生のスタート

>> 適切かつ公平な財政

コラム 1.4.公平性医療基金を通じて貧困層に無料の保健ケアを提供

コラム 1.5.栄養不良をなくすことで、不平等な機会のサイクルを断ち切る

カンボジアでは、子どもの生存率およびその他の保健指標に おいて目覚ましい前進が見られる。2000 年から 2015 年まで の間に、5 歳未満児死亡率は出生 1,000 人あたり死亡者数 108 人から 29 人まで減少し、世界で最も急速な減少ペースと なった。同期間中には、母子保健施設の利用の劇的な増加が見 られた。同国の公平性医療基金(HEF)を通じて提供される社 会保険が、この成功において重要な役割を果たしている。

HEF は、非政府組織が政府出資金とドナーからの寄付金を併 用して、貧しい患者の治療費を公共保健施設に支払う、マルチ ステークホルダー型の取り組みである。この仕組みによって、

不正な治療費を請求するという慣行がほぼ根絶された。また、

スタッフや施設に患者の治療に対する金銭的インセンティブを 提供することで、ケアの質の改善にも貢献している。

HEF は本質的に、貧困層に無料の保健ケアを提供する購買制 度である。2013 年の時点で、この基金はカンボジアの 81 の 行政区のうち 51 区の 250 万人を超える人々を対象として、

100 万件を超える保健センターでの診察をサポートした。

調査では、HEF が運用されている地区ではそれがインクルー ジョン(誰もが受け入れられる社会)に向けた大きな力となり、

貧困層のためのアクセス改善と自己負担金の削減をもたらして いることが示されている。しかし、これまでの成果には限界が ある。おそらく施設までの距離やケアの質を理由として貧困層 の推定 40 ~ 50% の人々は HEF を利用しておらず、また貧困 線をわずかでも上回っている人々は対象から除外されている。

2014 年には、1 億 5,900 万人の 5 歳未満児が発育阻害に 陥っていた。また一方で 4,100 万人の 5 歳未満児が肥満状態 にあり、その数は増加しつつある。発育阻害や他の形の栄養不 足は社会的不公平性を反映しており、発育阻害は貧困のマー カーとして使うことができる。

アフリカやアジアでは、GNP の 11%が栄養不良のために失 われている。幼児の栄養不良をなくすことには複数のメリット がある。就学期間が少なくとも 1 年長くなり、貧困が減少し、

女性の能力が強化され、そしてこれらの結果として、世代を超 えて繰り返される貧困のサイクルを断ち切ることができる可能 性がある。

十分な食料を摂取して良好な栄養状態を維持する権利を、誰 もが保有している。その権利を実現することは、人生の中でよ り幅広い機会を得るために必須となる良好な健康状態に対する 権利を含めた、子どもたちの権利を行使する上で不可欠である。

これは、政府、市民社会、国連、寄付者、企業、科学者で協 働し、国家的に推進されるプロセスを通じてあらゆる形の栄養

不良の撲滅に取り組む、栄養改善拡充のための枠組み(SUN)

運動を支える原理である。SUN の加盟国は、手頃な価格で栄 養価の高い食料へのアクセスの強化や、それに対する需要の拡 大に取り組んでいる。

2016 年 3 月の時点で、コンゴ民主共和国、エチオピア、ハ イチ、キルギス、ペルー、スリランカなど 56 カ国が SUN に 加盟している。SUN の対象となる子どもたちは、8,280 万人 に上る可能性がある。

ペルーでは、国家プログラムの Incluir para Crecer(成長 のためのインクルージョン)が、栄養不良の削減と成長の促進 のために社会的不公平性および貧困を減らすことを目的とし て、最も貧しい地域の子どもと妊産婦に重点を置いている。

2006 年以降、同国における発育阻害は、2004 ~ 2006 年の 約 30% から 2014 年には 15% にまで半減している。最貧困 世帯の子どもたちの間における発育阻害の有病率は、同期間中 に 54% から 34% まで低下した。

出典:Kelsall, Tim, and Seiha Heng, ‘The Political Economy of Inclusive Healthcare in Cambodia’, ESID Working Paper no. 43, 2014 年 12 月 16 日。

出典:ユニセフ「Improving Child Nutrition: The achievable imperative for global progress」New York、2013 年、およびユニセフのグローバル・ニュートリション・デー タベース(2016 年)。

幅に削減して、必須保健サービスへのアクセスを向上させた

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。UCS の立ち上げから 1 年以内に、それまで保険に加入していなかった 1,800 万人の人々を含めタイの総人 口の 75% が保険の保護下に置かれることとなった

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ルワンダでは、国民健康保険制度(Mutuelle de Santé)によって人口の約 90% を

保険の保護下に置き、極度の貧困層には無料で保険サービスを提供している。このプ

ログラムが開始されてから最初の 10 年間で、医療費の自己負担額が総額の 28% か

ら 12% まで減少した

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。またカンボジアの公平性医療基金は、同国における保健制

度の対象範囲および公平性の強化において、極めて重要な役割を果たしている(コラ

ム 1.4. を参照)。